今まで更新ができず、申し訳ありませんでした。
原因不明のスランプに襲われ、執筆する意欲が持てませんでした。
これからは自分のペースで執筆を進めていきますので、応援をよろしくお願いいたします!
では、欧我&小傘vs心華&メディの後半戦!
始まります!
勝負の行方はどうなるのでしょうか!!
「行くよ!」
そう意気込むと、肩に担いでいた傘を振りまわして大量の光弾を全方位に生み出した。放たれた光弾は真っ赤に輝きながら突き進む。対する心華ちゃんは手鏡を前に掲げ、微動だせずに力と集中力を高めていく。
「はぁっ!」
小傘の放った弾幕に対抗するかのように、メディちゃんが毒で生成した紫色の弾幕を放出した。すると、心華ちゃんが待ってましたと言わんばかりに鏡を目の前に突き出す。
「バイバーイッ!」
その声と共に蓄えていた力を放出し、鏡面からまばゆい光を放つ。メディちゃんが放った弾幕はすべて鏡から放たれる光に取り込まれた。これでは光のせいで迫ってくる弾幕が全く見えない。
「「毒&鏡符『アシッドヘビーレイン』!!」」
2人の能力が組み合わさったスペルカードの宣言と共に鏡を大きく振るうと、そこには…
「なに!?」
毒の弾幕がまるで豪雨のように大量に降り注いできた。数が増えた弾幕は小傘の放った弾幕を飲み込み掻き消すと、スピードを緩めずに襲い掛かってきた。目の前で起こった出来事に驚きを隠せない小傘は瞬きも忘れて迫りくる弾幕の雨をじっと見つめている。って、このままじゃ大量の毒を食らってしまう!慌てて小傘に近寄ると空気を固めて分厚い壁を作り出した。その直後毒の弾幕は空気の壁にぶつかり、ジューッっという何かが溶けるような音が辺りに響いた。どうやら間一髪間に合ったようだ。
「小傘、怪我は無い?気を抜かないでね」
「うん、ごめんなさい」
項垂れた小傘の頭を優しくポンポンと叩き、じっと心華ちゃんを見据える。それにしても、一体何をしたのだろうか。明らかに光に包まれる前より弾幕の量が増えている。ざっと見て、約2倍と言ったところだ。
…そっか、増幅だ。弾幕を光で包み込み、鏡に映して数を2倍に増やした。さっき心華ちゃんが叫んだ言葉も「バイバイ」じゃなくて「倍々」だ。反射といい増幅といい、鏡の特性を上手く活用しているな。まあ手鏡の付喪神だから当然か。
「よし、ここから反撃するよ!」
「うん!スペルカード!」
「化符『忘れ傘の夜行列車』!!」
発動した直後どこからともなく大量の傘が列をなして現れ、大量の御札の形をした弾幕を放出した。まるで列車のように一列に連なった傘は真っ直ぐ心華ちゃんに狙いを定めて突き進む。
「メディちゃん、下がってて」
札の弾幕を避けながらそう言うと、再び自分の前に手鏡を掲げてじっと力を集中させていく。そして傘の列が目前まで迫った時、心華ちゃんはスペルカードを発動した。
「反符『反鏡のビトレイ』!!」
スペルカード発動と共にまばゆい光を放つ鏡。連なった傘が光に飲み込まれると、突然向きを反転させて大量の御札の弾幕をばらまきながらこちらに迫ってきた。
「そんな!?私のスペルカードが!」
驚きの声を上げる小傘の横で、迫りくる傘の列をじっと見つめる。まさか光だけではなく相手の放ったスペルカードまで反射できるとは思わなかった。こちらが放った弾幕を鏡で反射させ自分の物としてしまうこのスペルカード。名前の通り
っていうか流暢に分析している暇はないか。そうこうしているうちに傘の列は目前まで迫ってきた。あれは生半可な攻撃ではびくともし無さそうだ。こうなったら、ぶった斬るまで!
「神断『ダーインスレイヴ』!!」
空気を固めて大剣を作り出し、思いっきり振り下ろした。振り下ろした大剣は迫りくる傘を両断し放たれた弾幕がお札の弾幕を次々と掻き消していく。その状態のまま大気を蹴って前に飛び出し、反射されて襲い掛かってくる傘をことごとく破壊して回った。そしてその勢いのまま心華ちゃんに斬りかかった。
「そうはさせないわ!」
溜まった疲労によって反応が遅れた心華ちゃんを庇うようにメディちゃんが目の前に躍り出ると、両腕に猛毒を纏わせる。猛毒はグニャグニャと形を変えると二振りの剣に変化し、俺のダーインスレイヴを受け止めた。ガキンという金属同士がぶつかり合ったような音が響き、ギリギリと拮抗する。まさかメディちゃんにこれ程までの力があるとは思わなかったが、負けてたまるか!
「うおおおおおおりゃああああああ!!!」
全身の力を両腕に集め、雄叫びとともに力任せに大きく振り払った。
「きゃああああああああ!!!」
メディちゃんの体は力に負けて弾き飛ばされ、冥界の彼方へと消えていった。
「はぁ…はぁ…」
ダーインスレイヴは霧となって消滅し、深呼吸をして呼吸を整える。さっきの一撃で思っていたよりも体力を消耗してしまったようだ。でも、それも相手だって同じこと。小傘がいることを考えれば、幾分かはこちらが有利だ。
「よくも…」
その声につられて心華ちゃんの方を見上げると、俯いて肩を小刻みに振るわせていた。歯を食いしばり、拳をぎゅっと握りしめて。次の瞬間、体内に溜まった怒りをぶちまけるかのように声を荒立てた。
「よくもメディちゃんを!許さない!絶対に許さないんだからぁ!」
そして怒りに任せスペルカードを発動させる。その直後心華ちゃんの背後に4枚の鏡が形成される。
「喰らいなさい!鏡符『ミラージュ・ドッペルウーマン』!!」
スペルカード発動とともにその鏡に飛び込むと、なんと4つの鏡全てに心華ちゃんの姿が映し出された。まるで分身したかのような光景に目を奪われていると、鏡の中の心華ちゃんは不敵な笑みを浮かべる。危険を察知し慌てて鏡から距離をとった。
「逃がさない!ドドドドーン!」
しかし、俺を追いかけるかのように鏡が動き出し、一斉に真っ赤な輝きを放つ米粒状の光弾を打ち出した。いきなり発射された弾幕に驚いてしまったためガードが遅れ、弾幕をもろに喰らってしまった。体中に次々と打ち込まれる弾幕によって痛みが体中を駆け巡る。両手を顔の前で交差させて防御の姿勢をとるが、それでも容赦なく襲いくる痛みに耐えきれず悲鳴が漏れる。
「欧我ぁぁ!!このっ、傘符『大粒の涙雨』!!」
小傘の悲鳴にも似た声で宣言されたスペルカード。発動と共にまき散らされた大粒の弾幕に不意を突かれ、心華ちゃんの攻撃が止まった隙を突いて慌てて距離をとる。
「欧我、死なないで!」
「大丈夫、俺はもう死んでいるから」
目に涙を浮かべて駆け寄ってきた小傘の頭を優しくよしよしと撫でる。小傘に2回も救われた。その感謝の気持ちを込めてにっと笑顔を浮かべた。
「でも、助かったよ。ありがとう」
「うん!」
お礼の言葉を述べると、小傘は涙を指で拭って頷いた。いつもの小傘とは違う、今まで知らなかった本当に頼もしい一面を垣間見て驚いたけど、初めて会った時と比べて成長したね。何かとても嬉しいよ。
「小傘ちゃん、邪魔はしないで!これ以上邪魔をするなら容赦はしないわ!」
「それはこっちのセリフよ!もう許さないんだから!」
「そう!なら小傘ちゃんもこの弾幕を食らえ!」
心華ちゃんはそう叫ぶと再び鏡から弾幕を放出した。小傘は俺を守るように目の前で傘を構える。
「小傘!鏡を壊せ!4枚の中で他の3枚よりもほんの少し早く動く鏡、それが本体だ!!」
「なんですって!?」
心華ちゃんが驚きの声を上げたところを見ると、どうやら図星のようだ。俺はあの時ただ何もせず弾幕を食らっていたわけではない。このスペルカードを突破するためのヒントを探し出すため、観察とイメージを続けていたのだ。そして見つけた突破のヒント。それは本体が入り込んだ鏡が、他の鏡よりも一瞬早く動くことだ。おそらく本体の動きを真似するようにほかの3枚が動くためだろう。
小傘は俺の言葉を聞くと頷いてじっと4枚の鏡を見つめる。そして後ろに振り返って俺と目線を合わせた。
「…ああ、分かった」
その目線で小傘の作戦を読み取り、脳内でイメージとして映像化する。よしじゃあ早速行こう!
「分かったところで無駄よ!あなたたちにこのスペルカードは突破できないわ!」
そう言うと心華ちゃんの目の前にもう一枚の鏡が出現し、これで鏡の数は合計5枚に増えた。さらに5枚すべてがバラバラに飛び回り、一斉に弾幕を打ち出した。
「負けてたまるか!虹符『アンブレラ驚きトルネード』!!」
空気を固めて作り上げた2本の傘を両手に握りしめ、身体を高速回転させて虹色の光弾を全方位にまき散らした。おびただしい数の虹弾は心華ちゃんが放ってきた弾幕を次々と相殺していく。心華ちゃんも負けじと5人がかりで弾幕を放ってくるが、俺はそれ以上の弾幕を放って次々と掻き消した。もちろん、このスペルカードには弾幕を相殺させるという目的とは別に、もう一つの目的がある。それは…
「私、目は良い方なのよ」
「えっ!?」
その声と共に、突然心華ちゃんの背後に小傘の姿が現れた。そう、このスペルカードに秘められたもう一つの目的、それは心華ちゃんの気を引かせて小傘の行動から注意を逸らす事だ。うん、どうやら本物を見抜く事が出来たようだね。
小傘は空気を固めて作りだしたグローブを纏わせた右手を振りかぶり、力を集中させていく。そして、心の中に湧き上がってくる思いをすべて込めた拳を鏡面に叩き付けた。
「きゃああああああ!!!」
鏡が粉々に割れる音と共に響く心華ちゃんの悲鳴。それと同時に残された4枚の鏡は霧のように消滅していった。俺達が見つめる中、心華ちゃんの身体は力なく地面へと落ちていった。
「心華ちゃん、ごめん…」
そう呟いた小傘の瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。