こんにちは、作者の戌眞呂☆です。
ついに、欧我と文の結婚式が始まります。
未だに不安を取り除けていないんですが、どっちにしろ結婚することは以前から決めていました。
この章は2人をこれでもかっていうくらいラブラブにしようと思います。
できるかどうか不安ですが、頑張ります。
では、結婚式を翌日に控えたカップルの2人をお楽しみください。
第31話 結婚式の前日 ★
文との結婚式を翌日に控えた早朝。
俺は白玉楼の台所にこもってただひたすらに料理を作っていた。何の料理かって?そりゃあ明日の結婚式のだよ。
結婚式の記事が掲載された文々。新聞を見たアリスさんが名乗り出て、結婚式用のタキシードとウェディングドレスを作ってくれた。さらにケーキを作ってあげると言われたので、頂いたスポンジと大量のイチゴを送っておいた。手先が器用なアリスさんの事だから、きっと豪華なものに仕上がっているだろう。ただ問題は魔理沙さんだ。アリスさんのケーキ作りを手伝ってくれているのだが、飾りつけに不気味なキノコを用いないか心配だ。
まあでも、その豪華なケーキに負けないようにこっちも頑張らないと。
今回の料理はビュッフェスタイル。大量の料理を並べて、自由に取ってもらうことにした。
本当は豪華なコース料理がいいと思ったのだが、結婚式の料理の作り方を知っているのは咲夜さんや陽炎さんなど極僅かしかいないし、食材も思うように集まらなかった。だから、みんなと相談を重ねた結果この形に決まったのだ。
料理は、俺以外では紅魔館で咲夜さんと陽炎さん、白玉楼で妖夢、そして藍さんが用意することになっている。
昼近くになり、大かた料理を終えることができた。
後は会場で温めたりちょっとした仕上げをすれば完成だ。
能力を発動し、その料理を固めた空気で包む。中の空気を抜いて真空に近づけることによって腐食と酸化を抑えることができる。やっぱり俺の能力は万能だな、と自画自賛してみる。
よし、休憩するか。
緑茶セット一式(急須、湯飲み、茶葉、お湯)を持ち、自分の部屋に向かった。
「ふぅ~。」
畳の上にあぐらをかき、湯飲みを唇から離した。やっぱり緑茶を飲むと心から安らぐことができる。台所に浮かんで黙々と料理を作り続けたことによって両腕に疲労が溜まってズキズキとした痛みが走る。
まあでも、この痛みがあることによって頑張ったなと思うことができる。これが生きている証拠…あ、俺、既に死んでいるか。
「ん?」
部屋の外から聞こえる足音によって思考が中断された。一体誰が来たのだろうか。
障子に映る影の形から判断すると…
「欧我、おじゃまします。」
「うん、いいよ。」
障子を開けて部屋に入ってきたのは、最愛の人で婚約者の射命丸文だ。
文は部屋に入るなり、あぐらを組んだ俺の脚を枕にしてごろんと寝転がった。
「ちょっ、文!?」
「色々と飛び回って疲れたのよ。だから休ませて。」
大好きな人の大好きな笑顔に押され、俺は頷く事しかできなかった。部屋に入って来ていきなり寝転がったから驚いたけど、こんな近くで大好きな笑顔を見ることができて本当に幸せな気分だ。逆向きだけど。
目を閉じて体を休ませている(としておこう)文の顔を見ていると、これまで文と一緒に過ごしていた何気ない日常が次々と浮かんでくる。妖怪の山で文と出会い、ともに取材を行い、永嵐異変を潜り抜け、そして影鬼異変で文をかばって命を落とした。それまで俺達は恋人として支え合い、協力しながら過ごしていた。
でも、明日、俺達はとうとう結ばれて夫婦になる。そう考えたら、心の中に幸せと共に湧いてきた感謝の気持ち。文は、俺にとってなくてはならない大切な人なんだ。
「文。」
「ん?」
名前を呼ぶと、文は目を開けた。よかった、寝てはいないようだ。
目を合わせたまま、にっと微笑んだ。
「大好きだよ。」
「えっ?」
俺の突然の告白を受け、文の顔がうっすらと赤みを帯びた。
「な、何よ突然。」
「改めて言いたくなってね。愛しているよ、この世界の誰よりも。」
「むー。」
文は嬉しさと恥ずかしさのあまり顔を一層赤くして目線をずらした。
あれ、頬を膨らませて。突っついてやる。
「ひゃっ!?」
人差し指で文の左のほっぺを突っついた瞬間、文は驚いて飛び上がった。そして左の頬を押さえながら目を大きく見開いて俺の顔をじっと見つめている。その行動やしぐさが面白くて、つい吹き出してしまった。
「な、何するんですか!?笑わないでください!」
「ごめんごめん。でも、とても可愛くて。」
「むぅ~。」
そう唸った途端文が俺の頬を目がけて腕を伸ばしてきたので、その手を払って阻止した。
「欧我だけずるい!私も!」
「させるか!」
次々と迫る文の腕を払い続け、文のほっぺを狙って腕を伸ばした。
文はその腕を払いのけて腕を伸ばすが、それを受け止める。
しばらくの間お互いに笑いながらじゃれ合っていたが、
「うわっ!?」
バランスを崩し、文を畳に押し倒してしまった。
「ごめん。大丈夫?」
うわ、顔が近い。
「あやややや、とうとう欧我に押し倒されてしまいました。」
文は優しい笑顔を浮かべながらそのようなことを口にした。
どうやら痛くはなかったようだが、いきなり何を言い出すのだろう?
「さあ、私は何をされてしまうのでしょうか。」
「え?一体何を……っ!?」
文がそっと目を閉じた。唇を少し突き出しながら。
その様子を見た途端、俺の体を電流が駆け巡った。これって、キスしてもいいってことだよな!?
意を決して、文の唇にそっと唇を近づける。
ゆっくりと、文の息遣いを感じながら、そっと…
「欧我、いますか?」
しかし、唇が重なり合う直前誰かが部屋の障子を開けた。そして中の2人の様子を見た途端
「し、失礼しましたぁ!!」
という声と共にバタンと大きな音を立てて障子を閉めた。その後ドタドタと縁側を走る音が聞こえ、そして再び静寂に包まれた。
あの声…。
「あやや、もう少しだったのに。」
「まったく、妖夢ったら。もう!」
何というタイミングで来たんだろう。それよりも、さっきの光景を見られたなんて恥ずかしすぎる!
「欧我が遅いからですよ。交代します!」
「えっ、ちょっ!?」
突然文が上体を起こし、俺の体に手を当てて力を込めた。
驚いてその力に抵抗することができなかったため、今度は俺が文に押し倒された形になった。
「文…。」
あれ、文の顔がさっきよりも赤くなっている。ふふっ、仕方ないね。
今度は文と同じように目を閉じた。
心臓がドキドキと早鐘を打ち、鼓動が早くなる。しかし、決して目を開けようとはしなかった。
文の息遣いが徐々に近づいてくる。しかし…
「欧我、いるかしら?」
今度は幽々子様かよっ!!
「あら、邪魔しちゃったかしら?」
タイミングが悪すぎだよ。まさかこうも同じタイミングで邪魔されるなんて…。
はぁ、仕方ない。
能力を発動して、幽々子様と2人の間の空気を固めて真っ白な壁を作り上げた。よし、これで誰にも邪魔されないぞ。
「文、愛している。」
「私もよ、欧我。」
文の首に腕を回し、そっと唇を重ね合わせた。