感想でそれぞれの持つ“強さ”について教えていただき、ありがとうございます。
俺も皆さんに負けないような強さを持って頑張ります。だって、ライバルには負けたくありませんから。
それに、このような強さがあってもいいと思います。
“弱い”という強さもね。
妖夢は未だにぐっすりと眠り続けている。
自分を高めるために各上の相手に立ち向かっていく心の強さ、信念という強さを持っている。
常に努力を惜しまない姿勢は、俺も羨ましいと思っている。
妖夢って、本当に強いんだね。
手を伸ばし、そっと頭をよしよしと撫でた。
「あら、浮気はだめよ。」
「ひっ!?」ビクッ
突然聞こえた声に驚いて思わず身構える。
すると、目の前にスキマが現れてそこから紫さんが顔を出した。
「えっ!?ゆ…ゆか」
「しーっ!」
その様子に驚いて声を出すと、紫さんは口元に人差し指を立てて静寂を促す。
慌てて口をつぐんだ。しかし、時すでに遅かった。
「どうした?」
障子を開け、藍さんが部屋を覗き込んだ。
紫さんは頭をひっこめるとスキマを消した。…どうやら藍さんは気づいていないようだ。
「あ、いえ、何でもありません。」
「…そうか。」
そして障子を閉めた。
その直後、橙ちゃんの「藍しゃま遊ぼ!」という声が聞こえたかと思うと中庭を駆けまわる音が聞こえた。
…何とか気づかれずに済んだみたいだ。
「ふふ、橙も相変わらずね。」
「ええ。でも、どうして紫さんがここに?冬眠しているんじゃなかったのですか?」
ついさっき藍さんから紫さんは当分目覚めないと聞かされていただけに、俺も紫さんは寝ているだろうと思っていた。
それなのに、どうしてここにいるんだ?
「悪いけど冬眠していると言う事にしておいてね。私はただあなたにお礼を言いに来ただけ。」
「お礼…ですか?」
「そう。私は常々、藍にいつかは式神から自力で抜け出せるように成長して欲しいと思っているわ。でも、藍はいつも受動的で自分からこうしたいという姿勢が見られないの。でも、今日貴方が藍に火をつけてくれたみたいね。それが嬉しいから、お礼を言いに来たのよ。」
「そうでしたか。いえ、どういたしまして。…そうだ、紫さんも一緒に。」
「悪いけど私は遠慮するわ。だって冬眠中ですもの。それよりも、藍に負けないように私も強くならないとね。」
そう言うと、紫さんはスキマの中に消えていった。
そっか、紫さんも藍さんのことを思っていたんだね。
お互いを思いあうその心の強さは、本当にうらやましいな。
俺も、負けちゃいられないか。
誰にも負けないように、自分の心を強くしていかないと。それが、ライバルってもんだろ。
「俺は負けないからな、妖夢。」
「ん…うう。」
妖夢の寝ている部屋で以前鈴奈庵から借りてきた理科の教科書を読んでいると、不意に妖夢の声が聞こえた。
「おはよう。」
「欧我…。」
目を覚ました妖夢に笑顔で笑いかけると、妖夢の目に涙が溜まり始めた。
そして布団を頭までかぶると、声を上げて泣き出してしまった。
聞こえてくる妖夢の声から推測すると、どうやら藍さんに勝てなかったショックと自分の弱さが悔しくて泣いているようだ。
「わ、私っ…幽々子様を…お守りできるくらいっ、強くなりたいのに…。これじゃあ…弱いままじゃあダメなのに…っ。」
「ダメなんかじゃねぇよ。」
気付いたら、俺はそう呟いていた。
「…え?」
「いいか、よく聞け。弱いっていうのは“欠点”なんかじゃない。そこからまだまだ強くなれるっていう、無限の可能性を秘めた“強さ”なんだよ!」
昔、どこかで聞いて心に重くのしかかった言葉。
自分の弱さが嫌になった俺にとって、その言葉はまさに暗闇に差し込んだ一筋の光だった。
その言葉のおかげで、俺は立ち直ることができた。
だから、妖夢も立ち直ってほしい。
その願いを込めて、妖夢に言い聞かせた。
「ううっ、でも…」
「でもじゃない。それに、負けて悔しかったんだろ。その気持ちがあれば十分さ。自分を非難するんじゃなくて、もっと自分を信じてあげたらどうだ。」
そう言い残し、教科書を持って空中に浮かび上がった。
しばらく一人にしておこう。
障子の前まで移動すると、妖夢の方に振り返って笑顔を浮かべた。
「大丈夫だよ、妖夢は誰にも負けない強い心を持っている。それがあれば絶対に強くなれるさ。」
そう、誰からも羨ましがられる強い心をね。
障子を開け、部屋を後にした。
「ふぅ…。」
縁側に出て、大きく深呼吸をする。
妖夢のライバルである以上、俺もうかうかとしていられないな。
誰にも負けないように、己と心を強くしないと。
いつの間にか縁側に幽々子様の姿は無く、藍さんと橙ちゃんは寄り添いあうようにして寝息を立てている。おそらく遊びすぎて疲れてしまったんだろう。2人とも可愛い寝顔だ。
風邪をひいてしまっては困るので、自分の部屋から毛布を持ってくると2人を包むように優しくかけてあげた。
そして、白玉楼の外に出て弾幕を放つ練習を始めた。
誰にも負けないように、自分の出せる最高の弾幕を作り出すために、そして自分なりの強さを見つけるために…。
「ふぃ~。」
夢中で弾幕を放ち続け、疲れがどっと押し寄せてきた。
しかし、そのおかげで自分の弾幕のバリエーションを増やすことができたし、新しいスペルカードを編み出すこともできた。
散りかけている桜の木の枝に腰を掛け、何もせず体を休めている。
「ここにいましたか。」
「あれ、妖夢?」
いつの間にか桜の木の根元に妖夢の姿があった。
枝から降り、妖夢の様子を確認する。どうやら回復したようだ。
「体はもう大丈夫?」
「うん。」
俺の問いかけに妖夢は首を縦に振った。
その様子と笑顔を見て、俺はほっと胸を撫で下ろした。
「さ、帰りましょう。そろそろ夕食を作る時間ですよ。」
「うん、わかった。」
2人並んで白玉楼へと帰って行った。
どうでもいいけど、文字数が2222文字。
ぞろ目キター!!