レストラン白玉楼   作:戌眞呂☆

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あの、前回の更新で最後に出てきた女の子。
読んでくれた皆様がその女の子の予想をしてくれたのは嬉しかったんだけど、実は誰も正解してはいませんでした。

それを見てると、とても申し訳なく思えてきて。
だから始めに言っちゃいます。
この女の子はモブキャラです!!
欧我が最近出会ったモブキャラの女の子と言えば・・・

そうです、あの子です。
 


第21話 お礼の油揚げ

 

「ねぇ、妖夢。あの女の子は。」

 

 

「え?」

 

 

妖夢は首をかしげながら目の前から歩いてくる女の子に目を凝らす。

着ている着物の柄は違うけど、背丈や髪形はあの子と同じだ。

 

 

「あっ!あの時の!」

 

 

「そう、俺たちが妖怪から助けた女の子だよ。」

 

 

初めてのお買い物に出た時に、命蓮寺の参道で3体の妖怪に囲まれていた女の子だ。

妖怪を投げ飛ばすことで追い払い女の子を助けたけど、その時のショックで一時的に記憶を失ってしまった。その女の子に関しての情報を集めるために広場で即席の焼きそば屋台を開いたことで、たまたま通りかかった慧音さんによって女の子の所在が分かり、慧音さんがその子の家まで送って行ってくれた。

あれから会っていないけど、もう笑顔を浮かべるまで回復したんだ。

 

その女の子はこちらの存在に気づくと、頭を下げてお辞儀をしてくれた。

俺達も会釈をし、その女の子に近づいて行った。

 

 

「こんにちは。」

 

 

「こんにちは。あの時はありがとうございました。」

 

 

挨拶をすると、笑顔で元気に挨拶を返して再びお辞儀をした。

見た目はものすごく幼いのに、声は落ち着いていて大人っぽい印象だ。それに礼儀正しいし。

 

 

「いや、俺達はただやるべきことをしただけさ。それに、その様子だと無事に回復したみたいだね。」

 

 

「はい、おかげさまで。」

 

 

うん、かわいらしい笑顔だ。

無事に回復できたと知って、ほっと胸を撫で下ろした。

 

 

「そう、よかった。私は魂魄妖夢。あなたは?」

 

 

「私は弥生。よろしくね、妖夢さんに欧我さん。」

 

 

「うん、よろしく…って、どうして俺の名前を?」

 

 

「ふふふっ、だってあの時に名前を教えてくれたじゃないですか。」

 

 

あの時?…あっ。

妖怪から助けた直後、この女の子の名前を聞くために自分から名乗ったんだ。

でも記憶を失っているから答えることができなかった。

 

そっか、覚えていてくれたんだ。

 

 

「そうだ!ぜひお礼をさせてください!ついて来て!」

 

 

そう言った途端、弥生ちゃんは妖夢の腕を引っ張って駆けだした。

 

 

「わっ!ちょっと!」

 

 

妖夢は転びそうになるも、何とか踏ん張って足を動かした。

…分かったよ、そんな顔をしなくても追いかけるよ。

 

妖夢の後を、苦笑いを浮かべながら追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父ちゃん、ただいま!」

 

 

弥生ちゃんに連れてこられた場所は、人間の里で有名な豆腐屋だった。

まさか、豆腐屋の娘だったとは思わなかった。

 

弥生ちゃんの声を聞き、店の奥からがたいのいい男性が出てきた。

ねじり鉢巻きに口髭と、いかにも大将らしい風貌だ。

その男性は弥生ちゃんの姿を見ると笑顔を浮かべる。…予想外に優しい笑顔だ。

 

 

「おう、いらっしゃい!ゆっくり見ていってくれ!」

 

 

そして俺たちの姿を見ると、そう元気に言った。

人は見かけによらないんだな…。

 

店内に並べられた豆腐を見つめていると、弥生ちゃんの声が聞こえてきた。

 

 

「あのね、この人たちが私を助けてくれたんだよ!」

 

 

「なんだって!?そいつは本当か!そっか、ありがとうよ!」

 

 

不意に腕を掴まれ、ブンブンと上下に振られた。握手にしては力が強すぎるだろう。

妖夢も同じように力強く握手をされている。

その握手に戸惑いながらも笑顔を浮かべてその握手に応えている。

 

少し強引なのはイメージ通りかな。

 

 

「そうだ!お礼として油揚げを持って行ってくれ!うちの油揚げは美味いぞ!なんたって全て手作りだからな。」

 

 

そう言いながら、店にある油揚げをかき集めていく大将。

どんどん大きくなる油揚げの山。

 

 

「えっ、でもそんなにいいんですか?」

 

 

「いいんだ、貰って行ってくれ。俺の娘という宝物を護ってくれたんだ。これぐらいじゃ足りないが、お礼がしたいんだよ!」

 

 

そして、あっという間に店内の油揚げは空っぽになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いくらなんでも多すぎだよね。」

 

 

豆腐屋を後にし、冥界を目指して空を飛んで行く。

俺の両手には油揚げがたくさん詰められた袋が下げられている。

油揚げってこんなにも重いのかっていうくらいずっしりとした重さがある。

 

 

こんなに大量の油揚げを食べ切れるのだろうか。

 

 

「そうですね。でも、せっかくの気持ちは受け取りましょう。」

 

 

そうだよね。

娘を救ってくれたお礼にとくれた大量の油揚げ。その気持ちに応えるためにも、これを完食しなければ。

 

 

「うーん、藍さんがいればな。」

 

 

「うん。でも、どこにいるのかは分かりませんが…。」

 

 

そう言いかけて、妖夢は空のある一点を見つめた。

「何かがこっちに来る。」そう呟くと背中から楼観剣を引き抜いた。

実は俺も感じていた。空気の激しい流れを感じる。この流れは、何者かが猛スピードで向かってくる。

 

探知「欧我の領域(俺のテリトリー)」を発動し、空気の流れに意識を集中させる。

すると、こちらに向かって来る者の正体を捉えることができた。

2本の尻尾と9本の尻尾を持つ2人組の妖怪といえば…。

 

 

「ふっ、噂をすれば何とやらだ。」

 

 

「えっ?噂?」

 

 

どうやら妖夢は誰が来るのかが分からないようだ。

しきりに目の前から迫ってくるものに目を凝らしている。

 

まあ仕方ないか。ここからじゃ目視できない。

 

 

「相手がその気なら受けて立つまで。ちょっと行ってくるよ。」

 

 

そう妖夢に言うと、大気を蹴って2人組めがけて飛んだ。

 

すると、目の前から大量の楔状弾幕が迫ってきた。

その弾幕の隙間を縫いながら、能力を発動して姿を見えなくする。

どうやらこの状態になると、弾幕を無効化できるみたいだ。弾幕が次々と俺の身体を通り抜けていくが、ダメージは全く感じられない。

 

姿を消したまま突き進むと、相手の姿を見ることができた。うん、イメージ通り。

 

 

「よっ、橙ちゃん。」

 

 

迫ってきた人物、橙ちゃんの背後に回って能力を解除し、両肩にポンと手を置いた。

 

 

 

「にゃああ!いっ、いつの間に!?」

 

 

かなりびっくりしたようだ。ちょっと驚かせすぎたのかな。

 

 

「でも、どうして攻撃してきたの?また藍さんからの命令?」

 

 

「そうだ、私が命令したのだ。橙のさらなる成長のために。」

 

 

その言葉とともに、背後から藍さんが姿を現した。

あれ?なにこのデジャヴ…。

 

 

「はぁ、だからと言っていきなり攻撃してこないで下さいよ。こっちには油揚げがたくさんあるというのに…。」

 

 

そう言って両手に下げる2つの袋を見せた。

その瞬間、藍さんの目の色が変わった。

 

 

「油揚げ…だと?」

 

 

「藍しゃま、目が怖いです。」

 

 

橙ちゃんが怯えたような声で言った。

確かに、この獲物を狙う肉食動物のような眼をされては怖い。しかも涎が…。

 

…まあいいや。

 

 

「もしよかったら、これから一緒に白玉楼へ行きませんか?そこで一緒に料理をして油揚げを食べましょう。」

 

 

「えっ、良いのか?」

 

 

「はい。それに、こちらは初めから藍さんたちを呼ぶつもりでいましたからね。言わば、幸せのおすそ分けです。」

 

 

俺の言葉を聞いた途端、藍さんと橙ちゃんはまぶしい笑顔になった。

 

 

「そうか、ではお言葉に甘えましょう。」

 

 

「わーい!欧我の料理が食べられる!」

 

 

嬉しそうにはしゃぐ2人を連れて妖夢の元に戻る。

そして、4人で冥界へと向かった。

 


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