水の都とことり   作:雹衣

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最近知った事実
灯里ちゃん、ことりちゃんより年下だった


第4話

この後、アリシアさんと灯里さんから色々なことを聞きました。

ここは24世紀の人が住めるように開拓された火星(アクア)。その中でもここは地球(マンホーム)のヴェネツィアに模して作られた街で「ネオ・ヴェネツィア」と呼ばれていること。

……はっきり言ってもう頭の中がパンクしそうです。そんな私の事を察してか、アリシアさんがもう休むよう勧めてくれました。

「じゃあ、ひとまず私は帰るけど……灯里ちゃん。ことりちゃんをよろしくね」

「はひ、アリシアさん。お休みなさーい」

「お休みなさい」

そう言うと普段着に着替えたアリシアさんはARIAカンパニーから出て行きました。

そしてその後水無さんに勧められ、一度シャワーを浴びました。足とか汚れていたので正直助かりました。

「ことりちゃん、二階にベッドが有るからそれを使ってね」

「はい、ありがとうございます」

どうやら灯里さんはここに住んでいるようです。アリシアさんはアパートを借りて居るみたいですが、灯里さんは借りないのかな?そういうルール?

ARIAカンパニーの二階はベッドとか箪笥とかが置かれていて、いかにも女の子な雰囲気の部屋です。特に急いで片づけたような感じもなく、いつも清潔に保たれているのが分かります。そしてその部屋の床には枕と布団が敷かれていました。私がシャワーを浴びているときに敷いてみたい。

「ぷいにゅ」

私が部屋を見渡していると、ベッドの上から鳴き声が一つ聞こえました。そっちの方向を向くとそこには白いおっきい生き物……確かアリア社長だっけ?

彼(彼女?)はベッドの上で前足を上げ、招き猫みたいに手をクイクイっと動かしています……こっちに来いって意味かな?

「ぷいぷい」

私が近づくとアリア社長はベッドから飛び降りてしまいました。……ベッド使っても良いってことかな?よく分からないけど好意に甘えることにしました。ベッドはふわふわしていて何かシャンプーの香りがします……う~ん気持ちいい。ついつい頬ずりしたくなる感触。

「ことりちゃん。入るよ~」

私がベッドを触っていると扉がコンコンと小気味よくノックされました。声からして水無さんみたいです。私が扉を開けるとピンク色のパジャマに猫みたいな帽子を被った水無さんが立っていました。その姿はお人形みたいでちょっと可愛らしくい

「あ、ことりちゃん。大丈夫?ベッドで良い?布団の方が良いかな?」

「あ、それは水無さんの好きなように……」

「そういえばことりちゃん。灯里で良いよ。ことりちゃんの方が年上なんだし」

「え、そ、そうなの?」

「ことりちゃんは何歳なの?」

「え、えーっと……ぎりぎり16歳」

「じゃあ、やっぱり私の方が年下だよぉ」

「え、えぇー!」

私はその事実に少し驚いてしまいました。だ、だってあの私に手を差し伸べてくれた時の表情とか、私を色々気遣ってくれる感じから絶対年上だと思っていたのに!まさかの水無s……灯里ちゃんの告白に口をパクパクとさせていると灯里ちゃんはその様子を見て、思わずといった感じで笑っていました。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、少し暗くするね」

「はい、分かりました」

私の言葉にことりちゃんは可愛らしい声で返事をしてくれました。電気を小さな豆電球が付く位の明るさにして私は床に敷いた布団に入ります。私は真っ暗にして寝ると怖くて寝れないんだけど、ことりちゃんもそういうのなのかな?特に気にすることもなくベッドで目を閉じています。

にしても21世紀の日本かぁ……。私が生まれてくるよりも200年くらい前のマンホームどうなってたんだろう。あ、花火とかもアクアと同じように本物だろうし。いろいろ聞いてみたいなぁ……。

「う、うぅ~ん……」

なんて私が思ってると、ベッドの方からうめき声が一つ。声の主はもちろんことりちゃんでした。

「ことりちゃん。どうしたの?」

「あ、みずな、灯里ちゃん。その何というか寝付けなくて」

そういうとことりちゃんは困った感じで苦笑いをしていました。それもそうだよね。急に自分の全く知らない世界に放り出されたらどんな所でも不安で寝れなくなっちゃう。私だってそうなっちゃうかも……なるよね?

「そ、その、枕が変わっちゃったから……」

私が心の中でことりちゃんの状況を想像していると恥ずかしそうに小さな声でことりちゃんが話してくれました……って枕?

「ああ!旅行とか行った先の枕だと中々寝られないときって有りますよね」

「う、うん。私、いつも使ってる枕じゃないと寝れなくて……」

そういうと頬を赤くしながら小さく笑いました。ちょっと無理をしている感じだけど、気は楽になったみたい。

「じゃあ、眠くなるまでお話でもしましょうか?」

「話?」

「そう。ねえ、ことりちゃんのお話聞きたいな」

「わ、私の?」

私の申し出にことりちゃんは目を丸くして驚いていました。でも、暫くすると「うーん……」と悩む声が私の耳には聞こえてきました。

「でも、そんなに面白い話有るかな……」

「じゃあ、ことりちゃんって何か得意な事ってある?」

「得意な事……あ、お菓子なら少し作れるよ」

「そうなの!?凄いなぁ」

ことりちゃん、お菓子作れるんだぁ。アリシアさんは時々作ってくれるけど、私は作ったことが無いんだよねぇ。

「ううん、そんなに凄くは無いよ……まだまだ上手じゃないし。穂乃果ちゃん達に上げるのはまだまだ先……」

「穂乃果ちゃん?」

「あ、穂乃果ちゃんっていうのは私の友達」

その時、ことりちゃんの声が少し高くなったような気がしました。

「小さい頃からずっと一緒なの。それでいつも私の事を引っ張ってくれるの」

「へぇ~、幼馴染なんだぁ」

「うん!」

ことりちゃんの弾んだ声。ことりちゃんにとって穂乃果ちゃんは本当に大事な人みたい。

良いなぁ幼馴染。私にとって藍華ちゃんやアリスちゃんは大切な友達だけど。子供の頃からの友達は居ないんだよなぁ。

「……また会えるかな」

私の耳に唐突に聞こえた小声。その響きには暗い思いが宿っていました。

 


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