水の都とことり   作:雹衣

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あらすじの通り「ラブライブ!」と「ARIA」のクロスです。急にやりたくなったのでやりました。
そこまで長期でやろうとは思っていません。
感想やご指摘があればよろしくお願いします。


第1話

「はぁ……」

学校から帰る道の途中、私は思わずため息を1つついてしまいました。

最近頭の中に思い浮かぶのは、家に届いた縁が縞々の滅多に見ないお手紙。そこに書かれていた内容は私への留学のお誘い……。

嬉しくない訳ではありませんでした。私の将来の夢は服のデザイナー。留学はそれを確実に後押ししてくれると思います……でも今の私には音の木坂学院、「μ's」……やりたいことが沢山有る。

「はぁ……どうしよう」

私はお空で煌々と輝くお月様に思わず愚痴を零してしまいました。

 

 

 

 

「ニャー」

私がとぼとぼと歩いている途中で何処からか猫の鳴き声が聞こえてきました。その声に反応して私は思わず周りを見渡してしまいます。そして古い家の塀の所に堂々と座る黒い猫さんを見つけることができました。

「あー、可愛い!」

私は思わず声を上げてしまいました。しかし、猫さんはそんな事聞こえなかったとばかりにまったく動かず、私をジーッと見つめています。野良猫なのかな?それにしては私が近寄って逃げるどころか警戒する素振を全く見せません。

「もしかしたら飼い猫かな?家から逃げてきちゃったの?」

猫さんに話しかけてみたけど、反応はありません。

「そろそろ行かなきゃ。じゃあね、黒猫さん」

私は手を振りながら猫さんから離れて歩き出す。時々、振り向いて確認した猫さんは鳴き声を上げず、私の事をジッと見送っていました。

 

 

 

 

 

私の通う音の木坂学院は、廃校の危機に瀕しています。それをどうにかするために結成されたスクールアイドルグループが「μ's」。「μ's」の目的はスクールアイドルにとって夢の舞台である「ラブライブ!」への出場。それによって音の木坂学院の知名度を上げ、入学希望者数を増やし、それによって廃校を止める……なんというかとっても凄い目的。

私はその「μ's」のメンバーで南ことりって言います。チャームポイントは少し垂れ気味の目に母親譲りちょっと特徴的なくせ毛。運動は余り得意では無いけど、みんなの衣装を作っています。

今の「μ's」は順風満帆。絶好調といった感じ。人気を徐々に伸ばし、スクールアイドルの人気ランキングの上位にも名前が上がるほどになってきた。

でもそんな私のもとにやってきたのは1枚の手紙。そこには海外で衣服の勉強をしてみないかというお誘い。

先にも書いたように私は将来デザイナーになりたい。でも音の木坂を廃校にはしたくない。今の私はそんな思いに板挟みにされて困っていました。

「ただいま~」

私の声に返ってくる声はありません。お母さん、今日遅くなるって言ってたっけ……。

そんなことを思いながら、私は「μ's」の練習の汗を流すためにお風呂に入って、その後、簡単な夕食を食べて、自分の部屋に入ります。そしてそのままベッドにダイブ。学校の課題はあったけど手を付ける気にはなれません。

「はぁ……」

本当にどうしたらいいんだろう……。

そんなことを思っているうちに私の瞼がどんどん重くなっていき、いつの間にか眠ってしまいました。

「ニャー」

その時、どこかで猫の鳴き声が聞こえた気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

気づいた時には私の周りの景色は大きく変わっていました。

アルパカやねこさんの可愛いぬいぐるみやふかふかのベッドが消え、私はいつの間にか暗い道にポツンと立っていました。

前後左右を見渡して見るけど、目に見える限り私の知っている場所ではなさそう……というか秋葉原、いや日本ですら無いかも……。

「え、えぇー!」

今起きていることを把握したために驚きが後からやってきました。つまり私はいつの間にか自分の部屋から外国にまで来てしまったのです。一体何をすればこんなことが起きるのでしょうか?

「す、スピリチュアルだね……」

思わず「μ's」の仲間である希ちゃんの口癖を思わず使ってしまいました。希ちゃんのタロット占いも凄いけどこれはその何倍もびっくり。

「ど、どうしたらいいんだろう……」

こういう時ってどうしたらいいんだろ?私は外なのを気にせず地面に座り込み頭の中で考えを巡らせます。

音の木坂に時々警察の人が「もし犯罪に巻き込まれたら」みたいな感じで講義をしてくれたりしたけど、今の状況で役に立ちそうな事は言ってなかった。そういえば1年の時、警察の話を聞いていたら幼馴染の穂乃果ちゃんがうとうとして私の膝に倒れこんじゃって、海未ちゃんが「何してるんですか!」って怒ってたっけ。懐かしいなぁ……。

「っ!いけないいけない」

意識が現実逃避しようとしてしまったので思わず首をぶるんぶるんと横に振る。集中集中……今は家に戻る方法を考えないと。

「……とりあえずどの辺りか調べてみようかな」

考えた末に出た結論がこれでした。ここが本当に外国なのか、もしかしたら日本で、秋葉原で、私が働いているメイド喫茶の近くだったりするかもしれない。なんて頭の中で無理やり自分を励まし歩き出す。

暗い道だと思っていた場所はどうやら家と家の間。路地裏みたいな場所だったようです。そしてレンガで出来たヨーロッパのような道を抜けたとき、私はここがやはり日本ではないと痛感せざる負えませんでした。

私が通路を抜けた先にあったのは大きな川、そして私の道の近くには木の棒のようなものが何本を川から立っていて、ロープで木でできた船を固定しています。そして川は細い枝のように街のあちこちに張り巡らされているのが、夜の暗い中でも確認できました。

そしてこういう風景に私は少し見覚えが有りました。

前に服のアイディアを探しているときに真姫ちゃん、花陽ちゃんと一緒に見た、ヨーロッパの風景写真。そこで水の都と紹介されていた不思議な街……そうここは。

「ヴェネツィア……」

私が地名を口にした時、まるで肯定するかの如く風が一吹き、私の頬を撫でました。

 


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