ロウきゅーぶ!!!~エリーゼ・ルタスの大冒険~ 作:藤林 明
そのせいかただでさえシリアス路線な現状でさらに凄惨な展開に……
だがこれで光明が差す!…そう信じたいですね。
頑張れエリーゼ!!
という事で本編どぞ!(>_<)
追記
今回の話から海王さんのオリジナルキャラクターを出演させています。国籍違ったらごめんなさいですが汗
明記が遅れてすみませんm(_ _)m
~実況Side~
両チーム共に最後のインターバルを終えて最終Qのメンバーがコートへ戻ってくる。
その両チームのメンバーはこの通りだ。
硯谷
塚田久美
甲本みすず
矢作蘭
北野若菜
???
慧心
三沢真帆
永塚紗季
香椎愛莉
エリーゼ・ルタス
袴田ひなた
「あれ?あんな人最初からいたかな?」
「いいえ。少なくともあんな選手はこの試合には出ていないわ。……真帆?どうしたの?」
硯谷側に見知らぬ選手を見た愛莉と紗季が怪訝な表情で会話をしている中、真帆だけは何故か頭を捻っていた。
「ん?いや、あの銀髪のガイジンどっかでみたなーって思っててさー」
「……で、それが思い出せなくて考え込んでいる、と?」
「そー。そんなカンジー」
「…はぁ。まぁいいわ。試合始まったらちゃんと集中してよね?」
「ほーい」
幼馴染の紗季は真帆が通常運転に戻った事を確認すると紗季は向き直り
「さ!リードしてるとはいえ油断してる暇はないわ。…もちろん皆の今の心境を考えたら平常心で、とはいかないだろうけどそれでもしっかり集中して確実にいきましょう!」
「あいよ」
「うん」
「…はい」
「おー…おー?」
紗季の呼びかけに各々が返事をするも、最初の様な結びつきが感じられない返事に紗季は言い知れぬ不安が大きくなるのを感じるのだった。
――――一方、硯谷陣営はというと
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……参ったな……」
硯谷レギュラーの攻守、そして精神的支柱のエース未侑を外した代わりの人員に硯谷バスケ部メンバーがただただ困惑していた。
特にPGの甲本に至っては相手を含めたこのコートの雰囲気に対して困り果ててしまった。
「(先生の指示とはいえ、流石に未侑を外すとは思わなかったなー……しかもその代役が
「ワカリマシタ。サイショカラゼンリョクデイキマス!」
甲本の言葉に謎のプレイヤー――――真帆が銀髪と称した白髪に色白の肌が際立つ比較的小柄な体格の少女――――は自信に満ちた表情でそう答えた。そして少女は今のチームメイトに対して向き直り
「ロシアダイヒョウ”マリア・オニール”。コノシアイゼッタイショウリニミチビキマス!!ミナサンヨロシクオネガイシマス」
そう言い切った。
~~~~~
これより第4Q開始します。ピッ!
「みすず!」
「オッケー」
第4Qは硯谷の攻撃でスタートした。塚田からパスを受けて甲本はゆっくりドリブルをしながら相手陣地へと行く。そこへ現れたのは本来とは違う相手だった。
「あれ?私の相手はあの青い髪の子だと思ったけど……貴女もPGできるのね」
そう。甲本の前に出てきたのはクリーム色に近い長い金髪をポニーテールに纏めたエリーゼだった。
そのことに甲本は不敵に笑いながらエリーゼに声をかけた。――
そしてそんなシンプルな罠にハマったと気付かずにドリブルを続ける甲本へエリーゼは答える。
「……私は紗季と同じことはできません。…でも」
「?…っ!?」
「そんな私でも…囮には…なれるんです…!」
エリーゼが答えるのとほぼ同時に背後から紗季がバックチップを成功させる。
…しかし
「しまっ!?」
「ユダンハシヲマネキマス。キヲツケテクダサイ」
バックチップでスティールに成功したと思いきや、そのボールを疾風の如き速さで掻っ攫う白髪の少女マリアは駆け抜けると同時に甲本へそう注意をする。
「い…いかせません!」
「アマイ…デス!!」
スティールと同時にペネトレイトに成功したマリアを愛莉がブロックに向かうがその前――フリースローライン付近――でドリブルを止めボールを掴んで跳躍の体勢に入りそのまま飛ぶ。
そしてそのタイミングは紙一重で愛莉がブロックできるタイミングでもあった。しかし
「うそっ!!?」
愛莉は幻視した。
彼女の背中から生える一対の羽を。
そう錯覚させるような空中移動を。
そして
ガゴン!!
綺麗な軌道でのダンクシュートを決めていった……。
慧心 132-94 硯谷
・・・・・・
香椎愛莉は驚いていた。
7月に入部したエリーゼをはじめとした転校生を相手に充実した練習の毎日を送っていたが、その際に離れたところから跳躍してダンクする”レーンアップ”というシュートの対処法を葵から教わっていた。実際、すずの協力もあり愛莉はわずか3回の練習日でレーンアップをはじめとした
そんなある意味紫色の様なチートスキルを持つ愛莉が今のシュートを見てこう思わされた。
――このダンクは止められない
と。
そう考えた自分に対して、そしてそれをやってのけた少女に対しての両方で愛莉はただひたすら驚いたのだ。
「……この試合。エリーちゃんとすずちゃん次第って長谷川さん言ってたけど、本当にそうなるかもしれない」
「愛莉?」
「……ごめんね紗季ちゃんなんでもないよ。次オフェンス頑張るね!」
独り言のつもりで呟いた言葉を聞かれた愛莉はそう言って走っていった。
・・・・・・
「(愛莉の言葉聞こえちゃったけど、正直私もそう思う。けど……)今は自分の仕事に専念しなきゃよね」
紗季は愛莉の独り言が聞こえ、第3Q終了直後のインターバルでの作戦会議の内容を反芻し、愛莉の心情を察するも今はプレー中という事で気持ちを切り替える。それでも
「(あんな綺麗なダンク決められて動揺するなって方が無理あるわよね)」
状況の劣悪さに慧心正PGはため息を零さずにはいられなかった……。
~~~
ダンクの動揺でターンオーバーを二つ許しスコアが
慧心 132-98 硯谷
となった所でエリーゼが紗季に対して近寄ってきた。
「どうしたのエリー?」
「……ボール…ください」
「え?」
「そろそろパスしてください……誰もパスしてくれない…から」
・・・
エリーゼは我慢していた。
第3Qで一度パスを受けて以降、ずっと攻撃では蚊帳の外にされていたが、それでもいつかは回って来ると信じ待ち続けた。だが
……結局今の今まで一度もパスが回ってくることはなかった。
確かにSGというポジションはオフェンス時長距離からのシュートを役割とするのでスクリーン等のコンビプレーでのメインもしくはインサイドからのパスを受けそのままシュート、といった具合に限られたプレーしか無い為滅多にボールが来ないなんてことも珍しくはない。しかし、『滅多』にであって『一切』ではない。なにかしらの理由でボールは必ず回って来る。……今回のエリーゼはその
ヒカリの暴走、未侑のゾーン開放、すずの無双…そして、紗季の
この状況で今まで耐え忍んだエリーゼを褒めたい。普通の小学生なら真帆のようにもっと早くに爆発してもおかしくない事態なのだから。
・・・
「ま、待ってエリー。今状況を整理してるから…「わかりましたもういいです」…ってちょエリー!?」
紗季の言葉を聞いたエリーゼは紗季の言葉を切り捨て走って行った。
「……っ!?(まずい!!今のやり取りで完全に雰囲気が…ど、どうしたら…)…真帆っ!…!?」
紗季は内心でかなり焦った。このやり取りを見た真帆・愛莉・ひなたの三者三様の表情をみて完全に心が離れてしまったと直感したからだ。
そして直感した悪夢は起きた。そう。紗季が真帆へ送ったパス。それをあろうことか味方のエリーゼにカットされてしまったのだ。
「…おいエリー、今のパス、あたしに対してのだったよな?」
「……」
「おい待てよ!」
パスカットをしたエリーゼに一言言おうとした真帆を
「……ナンダカヨクワカリマセンガテカゲンハシマセンヨ!!」
「…望む所…です…!」
相手コートに行くエリーゼの前にマリアが立ちはだかる。
沈黙に包まれるコート。…そして
「えいっ…!」
「!」
エリーゼがロールターンを仕掛け抜き去りにかかる。だが
「ムダデス!」
マリアも負けじと食い止める。ロールの先へ回り込み逆にスティールを仕掛けるもそれをエリーゼがバックステップしながらボールを抱え込む。そして
「やっ!」
「!?」
着地と同時にそのまま膝のバネを使い跳躍してシュートを放つ。…その時間。わずか1秒。
ガシュッ
低弾道ながら、相手の虚を突いていた為誰にも反応されずにシュートを決めたエリーゼは
「私だって…慧心の…選手…です!」
振り返りコートにいる全ての選手にそう宣言した。
慧心 134ー98 硯谷
続く
後書きスキッド:ドーピング疑惑
第4Q開始直前の慧心ベンチ
エリーゼ「すず」
すず「はい」
エリーゼ「…これを…(食べて……MPを回復してください…)」
エリーゼ は すず に オレンジグミ を あげた
すず「っ!!…ありがとうございます…これで」
エリーゼ「勝ちましょう…あの人たちに…!」
すず「はい…!」
終わり
御愛読ありがとうございましたm(_ _)m