ロウきゅーぶ!!!~エリーゼ・ルタスの大冒険~   作:藤林 明

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んー…長い割には話進まない…orz
サクサクいかないのがこの作品よなぁ…

今回は遂にあの方がオリジナルの2.5倍ほど怒ります。
……これで更生…は甘いかな?(笑)

という事で本編どぞ!


第25話 地獄の無限ループ ~無慈悲なる逆鱗~第2Q中・後半戦

~実況side~

 

スティールからの速攻にスティールからのダンクという小学生離れした試合展開にたまらずタイムアウトを取った硯谷サイドは困り果てていた。

 

「あ、あの先生……この後どうしたら……?」

 

「高さ・スティールの技術。この辺りはまず間違いなく相手の方が上だよね……うーん、となると、ドリブルより遠投をキャッチしてすぐシュートするしかない……かな?…どう思うお姉ちゃん??」

 

コーチである麻奈佳は頭を抱えながら考えられる手段を言ってみるも、内心では「それじゃあ素人男子の体育バスケじゃん…ないな」と思っていたりする。なので本当の顧問である姉・初恵に聞いてみる。――だが

 

「…………体育で男子の子たちがそんな事をしていましたが……まさかこんな形でやらせなければならない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)とは思いませんでしたね」

 

というとんでもない答えが返ってきた。

 

「ちょっ!?お、お姉ちゃんそんなんでいいの?!他にもっと……」

 

「そうね、確かに久美以上の長身選手がいれば他にもやり様はあったけどね……今の戦力じゃ、間違いなく瞬殺されます。……だから相手がシュートを入れるまでの時間を長くする事が今は最優先事項だと思って言ったまでよ」

 

「……確かに、自陣にパス渡したらその時点で相手がボールを奪って回してシュート。なんて繰り返さえたら点差が開きすぎて取り返せえなくなるか…」

 

姉の言葉に腕を組んで考えていると不意に

 

「……ごめんなさいコーチ……私たち、役立たずですよね……」

 

と、控えのキャプテンを務めるPGの未知子がそう自嘲気味に言ってきた。

 

「い、いや!皆は頑張ってるよ!!…ただ、相手があまりにも規格外なだけで…」

 

「そうです。彼女たちがおかしいだけであなたたちのプレーに問題はありません。…ですが、この後のプレーはさっき麻奈佳が言った通り遠投でできるだけ時間を使わせる様にゲームメイクをして下さい」

 

慌てる麻奈佳に対していつも通りの冷静な初恵の指示に「わかりました……」と力無く答えた未知子はそのままチームメイトの元へと戻っていった。

 

ビィーーーーーーーーッ!!

 

「……時間ね。皆、まだ諦めるには早いです。しっかり食らいついていきなさい」

 

「「「「はい!!」」」」

 

「…はい」

 

そうして、硯谷のタイムアウトは終わったのだった…………。

 

 

 

~~~~~~

 

 

「……なんや自分、えらい落ち込んでるけど大丈夫かいな?」

 

試合が再開し、硯谷のエンドラインから始まった攻撃は初恵の指示通りコート中央までの遠投に成功した硯谷の攻撃から再開されるも、電光石火で回り込んだミサによってコート中央で足止めされた未知子にそう質問をしたミサ。……しかし

 

「…………正直に言うとね…今すぐ泣き叫びたいわ」

 

「……そか」

 

諦めに近い声音で返事をする未知子にミサはそれしか声を掛けられなかった。……それが本音なのが目に見えて分かったから。……でも、だからこそ

 

「……うちらも友達があないな事されなければこんな残酷な事はせんつもりやった。…わいらも試合はしたいし。……けどな、あんたらのキャプテンに泣かされたあの子ら見たら本当に許せんのや。…せやから先に謝っとく」

 

そこで言葉を切り、言い切った。

 

「泣かせるような事してごめんなさい」

 

「!!」

 

試合中だというのに頭を下げるミサに驚く未知子。そんな未知子にミサは

 

「早よいけ。これっきりやから…あんたらが点獲るのは」

 

と頭をさげたままそう言い放つ。

 

「…ありがとう、…うちの先輩がごめんなさいっ!!!」

 

ミサの好意に未知子は謝罪を返すとそのまま抜き去りミドルシュートを放ち――――

 

パシュッ

 

綺麗なフォームで得点を入れた。

 

慧心 24-26 硯谷

 

 

~~~~~~

 

それからは本当に一方的な展開だった。

そう。遠投をすずやエリーゼ、ヒカリや有紀が相手より先にキャッチし、すずが飯綱落としで超遠距離ダンクシュート(・・・・・・・)を決めるという作業を延々と繰り返し続けたからである。

 

「……これで良かったの?」 

 

「…………せや。ここで相手に情持ったら智花ちゃんたちに顔向けできひんからな…」

 

「っ!……それは……そう……だよね……」

 

あまりにも一方的になり、第2Qの途中から相手に対して同情的になりつつあるヒカリはミサに対して聞くも、ミサは仲間の気持ちを想い心を鬼にして残酷な言葉を返す。――ヒカリが「仲間」という言葉には何も返せない事を知っていてこう言ったのだから……

 

「(すまんなヒカリちゃん…けど、今は……)……すず!」

 

「はい――忍法・飯綱落とし!」

 

シュッ……ガシャン!!

 

慧心 124-26 硯谷

 

ビーーーーッ!!!

 

「第2Q終了!!ハーフタイムの後第3Qに入ります!!!」

 

そして、すずの飯綱落としが決まると同時に第2Q終了のブザーが鳴り響き、それぞれの選手が自陣のベンチへと帰って行った……。

 

~sideout~

 

 

~ジュードside@慧心ベンチハーフタイム~

 

目の前で起きた正に「蹂躙」とも呼べる光景に、慧心側のベンチは何も音を立てられずに茫然としていた。……勿論、僕もその一人で例には漏れず、昴と智花、ひなたの3人が隣に来るまでずっとコートに視線が釘づけだったので……

 

「――な、なぁジュード?」

 

「――――うわっ!!」

 

昴が声を掛けてきた時は物凄く驚いた。

 

「ひゃっ!」

 

「おー??」

 

「うわっと!」

 

そして驚いた僕に対して驚く3人に「ごめんごめん…」と謝った。

 

「あ、あのジュードさん、一体何が起きたのですか?」

 

謝る僕に対して智花はそれどころではないとでも言うように慌てた様な感じで質問してきた。

……まぁ、直に”アレ”を見たわけじゃないしねぇ……

 

「え、えっと…」

 

「もっかん……あたしらの見せ場、無いっぽいよ」

 

僕がなかなか答えられずにいると、後ろから真帆の声が聞こえてきた。……振り返りながらその顔を見ると苦笑いだったが、多分心境は複雑なんだろうな……

 

「真帆、気持ちは分かるけどそれじゃあ伝わらないわよ」

 

「そか……じゃあサキ、説明よろしく~」

 

「はいはい……それでは長谷川さん、真帆の代わりに簡単な説明をしますけど…トモならちょっと考えれば分かるわよ?」

 

ため息をひとつ吐いてからそう言う紗季は智花に向き直ってそう言ってるけど……どうして分かるのかな?

 

「私なら?」

 

「そ。あとひなもね?」

 

「おー??……もしかして、すず?」

 

「正解」

 

「えっ!?……じゃ、じゃあもしかして……」

 

「ええ、そのまさかよ……全く、規格外もいいところよ…すずの忍術は」

 

呆れ半分感心半分な紗季の呟きに思わず僕も同意したくなった。……流石にアレは凄い以外考えられないよなぁ…

 

「えっと……つまりこのとんでもない大差はすずちゃんが?」

 

話についてこれてなかった昴が苦笑気味にそう紗季に聞いている。…まぁ、半分冗談ってくらいには聞こえるよね。

 

「そうなんです……すずが相手のボールをタイムアウト明けに相手がシュートを決めた1本以外全部スティールしてシュート(・・・・・・・・・・・・・)してましたからね…第2Q中ずっと」

 

「そんなまさか……もしそれが本当だとしたらすずちゃんのスタミナがまずいんじゃ……」

 

「嘘やないんよコーチ」

 

昴が紗季の話に動揺していると、コートから引き揚げてきた美佐子がそう言った。

 

「すずにこのQ中は全部スティールとシュートしてもろたわ。……勿論、コーチの指示を無視したんは申し訳ないと思っとる。…けど、どうしても許せへんかったんや。あの女のやり方がな」

 

「ミサ……別に俺はそれを責めたりはしないよ。勿論指示を無視するのは良くないけど、それが仲間の為ならラフプレイとか以外なら仕方ないよ」

 

ミサの何かを押し殺したような呟きに昴は不問の意を示すように言ってあげる。…ま、確かに仲間が泣かされたの見てなんとも思わない人間はそういないとは思うし、今回ばかりは仕方ないかなぁって僕も思う。

 

「コーチ……おおきにな」

 

「いいって。…さて、それじゃあ第3Qなんだけど……すずちゃんは…」

 

と言って皆が一斉にすずの方へと視線を向けると……

 

「…………」

 

「……長谷川さん…」

 

ベンチの後ろで横たわるすずと、それを介抱する愛莉からの首を横に振るジェスチャーがすべてを物語っていた。

――――すずのスタミナは限界だと。

 

「……わかった。愛莉はそのままの姿勢で聞いてくれ。他の皆もいいかな?」

 

愛莉の方を向いて一度頷いた昴は皆に向き直ると話を続けた。

 

「ミニバスの規定で登録選手は第3Qまでに一度全選手が1Q以上プレーしないといけないから瑞穂は予定通りに出てもらう」

 

「はい、私の準備はOKですわ」

 

「了解、ゲームメイクは任せるから自由にやってみて」

 

「畏まりましたわ」

 

合宿に来てからあまりしゃべっていなかった瑞穂(本人に聞いたら実はあがり症(自称)らしくて緊張しているらしい)が意気込んで答える。…試合スイッチが入ると大丈夫みたいだね。良かった。

 

「あとの4人はそれぞれ真帆、ヒカリ、エリーゼ、ひなたちゃんでいくけど、状況に応じて交代していくから出てない人でも何時でもいける様に準備しておいてね」

 

「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」

 

「……すみません、少し、よろしいですか?」

 

「ん?」

 

皆が返事をした直後、突然すずから声が掛けられた。……勿論一人で立てないすずに愛莉が手を貸した状態ではある……って!?

 

「動いて大丈夫なの!?」

 

「はい、怪我を負った訳ではないので…動くだけなら。…それよりひとつだけお願いがあるのですが……」

 

少しだけ苦しそうにしながらもいつものポーカーフェイスでそう言ってきたすずは、ビックリするような提案を僕にしてきたのだった……

 

~@sideout~

 

 

~麻奈佳side@硯谷ベンチハーフタイム~

 

衝撃的だった。

絶望的だった。

そして……信じられなかった。

 

「……やはり、だめでしたか……」

 

もはや諦めに近い呟きが、隣にいるお姉ちゃんから聞こえた。……無理もない、よね。

 

「ハァ……ハァッ……ッ……すみ……ません……役立たず…で…」

 

「……タイムアウトの時にも言いましたが、あなたたちには何にも責任はありません。……責任があるとするならば何一つ手を打てなかった我々コーチ陣に全てあります。……辛い思いさせたわね。ごめんなさい」

 

「っ!!?」

 

息も絶え絶え謝罪する未知子にお姉ちゃんは全面否定をした後、子供たちに頭を下げ謝った。

…もちろん

 

「……うん、お姉ちゃんの言う通り。悪いのは相手の実力を読み違えたあたし達コーチが悪いんだから、未知子は気にしないで休んでて?」

 

「……はい。……本当に…すみませんでした…っ!」

 

そう言うと、未知子はその場で声を殺して泣き始めた。……きっと、悔しいんだろうな。

 

「――で、コーチ。この後どうするんですか?」

 

あたしが未知子の背中をさすっていると、不意に後ろからあからさまに不機嫌な声が聞こえた。

――そう。未侑だ。

 

「第3Qは勿論あなた達正レギュラーの5人でいきます。これ以上点を取られる訳にはいかないですからね。……何か不服でも?」

 

お姉ちゃんはいつも以上に冷たい声音で未侑に答える。……そりゃこんな言われ方したら頭にもくるか。

 

「いえ、別に不服はありません。……ただこんな消化試合のような点差で未侑たちが出る意味あるのかなぁとは思いましたけど?」

 

「っ!!」

 

そう言って未侑は声を殺して泣いている第2Qのメンバーの方を見た。

……見下したような目線で。

それを見てあたしの中で何かがキレた。

 

「未侑!!!いい加減にしなよ!!それでもあんたは硯谷の選手か!?」

 

「っ!」

 

「点差が開けばいつも試合投げ出して!そんな子が試合出てたら士気が下がるってまだ気づかないの!?」

 

「で、でもコーチ…」

 

「うるさい!!言い訳なんか聞きたくない!!」

 

あたしの剣幕に冷や汗を流しながら未侑は引くが、今のあたしにはお構いなしだ。

 

「今日の試合だってね、あんたが昨日やり過ぎたりしなければこの子たちもこんな悲惨な状況にならなかったし、なによりね……」

 

そう言ってあたしは未侑の胸倉を掴む。

 

「あんたが第1Q最初から本気出してさえいれば良かったのに、手は抜くわ最後にあんなマネして慧心さんの選手泣かせるわ……あの強い子たち怒らせてこんな状況作ったのは全部あんただろ!?なのに試合が大差だからって温存~みたいな言い方して自分一人だけ逃げようとか卑怯なんだよ!!!恥を知れ恥を!!!分かったか!!!!」

 

「は…はい…すみませんでした……」

 

「……麻奈佳、その位にしときなさい。…ここで漏らされたら試合が止まってしまうわ」

 

「!……ごめん、お姉ちゃん」

 

私の剣幕を見て流石にヤバいと感じたのか、お姉ちゃんがとめてくれた。…流石に言い過ぎたかな?

……でもあたしは許せなかった。この行いを。

 

「……とにかく、第3Qの最初は第1Qと同じでいきます。点差は確かに絶望的ですが、次のQやこれ以降にあの非常識な技は絶対にきません。とにかく点を獲る事に集中してください」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

「では時間まで待機」

 

そう言ってお姉ちゃんはチームの輪から少し離れた。あたしもそれについて行くと

 

「…あの子はもう出て来ないと思う?」

 

と、不意にそんな事を聞かれた。…確かにあれだけの動きを延々とやっていた以上スタミナ切れはあり得ない話ではない……けど

 

「……多分、第4Qには出てくると思う。だから次が勝負だと思うかな?…けど」

 

正直、いくら怒っていてもあんな暴走はしないと思う。絶対にスタミナ切れで試合続行ができなくなるのは見えている。――なら、何故それを承知でやってきたか。それは間違いなくスタミナ切れの心配が無いからだとしか言えない。でも相手に知られたら?と考えれば必然的に……

 

「もしこっちがそれに気づいたら間違いなく第3Q終盤には出てくるから、いかに気づかないフリをするかが勝負だね……」

 

「……ええ、とにかく。1点でも多く返さないといけません。……最悪、秘密兵器(・・・・)の投入も」

 

そう言ってお姉ちゃんはベンチより遠くにいる……観客席から見ている少女の方へと視線を向けた。

 

 

~@sideout~




後書きスキッド:不穏な会話

エリーゼ「あの…瑞穂…ちょっといいですか?」

瑞穂「はい、どうしました?」

エリーゼ「……私、あの人が許せない…から…試合始まった最初のボール…ください」

瑞穂「ええ…わかりました。思う存分潰してください♪」

エリーゼ「うん、ありがとう瑞穂…」

瑞穂「いえいえ、私もあの女には心底頭に来てましたから…ふふふ♪」

紗季「(……この二人は怒らせないように気をつけよ……何されるか想像もつかないわ)」

終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m

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