ロウきゅーぶ!!!~エリーゼ・ルタスの大冒険~ 作:藤林 明
最後がすごくグダグダになってしまったが勘弁す><
それではどぞ!!
〜紗季side〜
午後の練習が終わって今は試合前のミーティング。長谷川さんを中心に今日の作戦について話し合いをしていた。
「それですばるん、今日の試合はどんな作戦でいくの?」
真帆がいつものように待ちきれないと言わんばかりに長谷川さんに詰め寄っている。…まぁいつも通りの展開なんだけど。
「そうだな…今日は最近加入した5人を中心にしたスタメンで行こうと思うんだけど…それでもいいかな?」
「ってことはうちらがメインっちゅうことやな!」
「えー!なんでなんで?!」
やる気十分なミサと異を唱える真帆。…まぁ真帆の気持ちも分からなくはないけど
「真帆、ひょっとしたら昴さんはエリー達の実戦データが欲しいんじゃないかな?だから試合数をこなしている私たちじゃなくてエリーやヒカリ達を先に出すんだよ。
「智花の言うとおりかな。本番に向けての練習試合だから試運転も兼ねて今日はそうしたいんだけど…ダメかな?」
トモの言う通り、確かに最近入った転校生組は、長谷川さんの前での試合経験自体が無いから長谷川さんも知っておきたいと考えるわよね。…さて、そういうことなら
「そういうことでしたら私たちはそれで構いません。…そういうことだから真帆も今回は我慢しなさいよね」
「うむむ……確かにミサミサ達の試合をすばるんは見たことないからな…仕方ない!ここはてんこーせー組みに譲るぜ」
「ありがとう真帆。さて、肝心な作戦の方だけど…今回はミサのポイントガードとしての実力も見たいからコート内での細かい指示や判断は任せるよ。…けど、さっきも言ったように転校生組の実力を見たいからパスやプレーが偏らないようにゲームメイクすること。…できそう?」
うーん…長谷川さんの指示を聞いている限り、実質作戦自体はフリーってことか……
「そらもちろん問題あらへんよ。…ただまぁ、そういうことなら今回はこうしますわ。ボール権がこっちに来たら
「……それで皆の実力見せれるの?」
有紀の指摘は正しいわ。だってもし速攻が得意だったとしたら実力が出せないということになるからちゃんとしたデータが取れないことになる。
「もちろん大丈夫や。練習見た限りうちら5人の中で
「そう…ならそれでいい」
なるほど…ってミサはそこまで観察してこの提案をしたってこと!?……や、やるわね…私ももっと頑張らないと…!
「…決まったかな?よし!それじゃあいっておいで!」
「おし、ほんならいきましょか!」
「「「「おー!!」」」」
……この試合、おもしろくなりそうね
~Sideout~
~昴side~
今回の硯谷低学年戦のスターティングメンバーは
PG(ポイントガード)、宮城美佐子
C(センター)、八神ヒカリ
SF(スモールフォワード)、藤林すず
PF(パワーフォワード)、藤井有紀
SG(シューティングガード)、エリーゼ・ルタス
という転校生だけで構成した。…もちろんいつもの5人も途中から出す予定だけど、今回は試合を見たことがないメンバーのデータを収集したいからというのが狙いだからね。
「それじゃあ皆、いつも通り楽しんでいこう!!」
「けいしーんっ!ファイッ!!」
「「「「「「「「「「オーーッ!!」」」」」」」」」
~sideout~
~実況side~
「それでは慧心学園対硯谷女学園の練習試合を始めます。礼!」
「「「「「「「「「「お願いします!!」」」」」」」」」」
整列を終えた10人の選手が各ポジションへと移動し、センターサークル内には両チームのセンターが向き合った。
「よ…よろしくお願いしますっ!」
「うん、こちらこそよろしく♪」
両チームの選手が挨拶を終えたのを確認した審判役の野火止先生は試合開始を告げる電子音と同時にボールを真上にあげる。
「やっ!」
「もらいっ!」
ジャンプボールを制したヒカリはボールをミサの方へはたき、それをミサは難なくキャッチした。
「それじゃ、まずは一本気楽にいこかー」
「…ミサは気抜きすぎ」
「…相変わらずうちにはキッツイなぁ有紀は」
などと軽口を言いながらも難なくフリースローエリアまで到達したミサは少し思案してから
「……最初は……ここや!…ヒカリ!!」
「はいっ!」
ゴールポスト周辺にいるヒカリへとパスを出した。
「行かせません!」
「お、すごい気迫だね!…でもっ!」
「えっ!?」
ヒカリはセンターをやっている5年生と思われる女の子にかけていた力を抜き、彼女の体勢が崩れるのを見てからスピンムーヴでかわしてレイアップを決めた。
慧心 2 - 0 硯谷
~~~~~~~~~~~~~~
「ナイッシュやでヒカリ」
「ありがと、ミサもナイスパスだったよ!」
お互いの健闘を讃えてハイタッチを交わした二人は油断なくディフェンスに戻る。…が
「ドンマイ!次はこっちが攻めるよ!!みk「そうはさせません」えっ!?」
相手がボールをコートに入れた瞬間を狙って動いたすずがスティールを成功させたせいで二人は敵陣から一番遠い位置になってしまった。
「ミサさん、どうしますか?」
いつもの無表情でボールを抱えたままミサに問いかけるすず。それに対してため息を吐きながら
「……すずの好きにしぃやー!!」
と大声で叫んだ。…そしてその後後悔した。何故なら――――
「わかりました。ーー忍法、飯綱落とし!」
「え!?」
「嘘…でしょ…」
ズガーン
「「「「「「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」」」」」」
ボールをスティールしたその位置から飯綱落としを使いそのままダンクを決め、…そしてそれを見た女バスメンバー以外のこの場にいる全員が呆然と、対戦相手の少女たちに至っては絶望の表情を浮かべて半泣き状態で崩れ落ちていたからだったりする。
「(あちゃー……こらミスったわ…)」
「ぐすっ…ヒック…」
「怖いよぉ…」
「…………」
「こ、こんなことって…」
「よしよし、泣かないの…もう少し頑張ろう?……グスン」
「(…まさかこんなにカオスな事になるとは思わなかったなぁ……うちら、知らんうちに感覚麻痺してもうたんかなぁ……)」
「…ミサさん、どうしてあの方達はあんなに取り乱しているのですか?」
「……(しかも本人は自覚ゼロかぁ…)……はぁ……」
「?」
そして、とてつもなくカオスな現状を作り出した張本人であるすずはミサの溜息の意味が分からずただ首を傾げるだけなのだった――――。
慧心 4 - 0 硯谷
~~~~~~~~~~~~~~
「…えー、それでは試合を再開します。硯谷エンドから始めますので選手はポジションに就いてください」
時計を止めてから硯谷の選手を宥めること10分。混沌とした空気から試合を再開させようと審判役の野火止先生がコートの選手へと声を掛ける。硯谷の選手たちはまだ多少ダメージは残っているもののなんとか精神状態を安定させコートへと戻るが最初よりも明らかに暗い。
「……まぁ、その、なんだ。さっきはウチの部員がすまんかったなぁ」
「…気にしてない。と言えばウソになるけど、全国にはこれくらいのレベルの相手もいるでしょうし彼女たちにはいい経験になったわ。だからそっちは気にしなくていいから」
「……おおきにな」
ミサが硯谷の6年生選手に声を掛け謝るも、苦笑しながらとはいえ気にするなと手を振られ頭を下げた。
――――――――
「先輩、お願いします!」
「おっけ!それじゃあ気を取り直して取りに行くよー!!」
硯谷の最年少選手の少女がミサと話していた6年生の選手へとパスをして試合を再開するも、やはり5年生や4年生の選手は先程のこともあり動きが消極的になる。そして――
「――あっ!」
フリースローラインでボールを貰った5年生の選手から有紀がスティールを決めてターンオーバーとなる。――しかし
「……ミサ」
「ん?どうしたんや有紀?」
「…………どうしていいかわからないから戻す」
「……ん。わかった」
明らかに怯えている硯谷の選手を見た有紀は速攻をする気になれずミサへとボールを返した。
「……さて、真面目にどないしよか…」
「…ひっ!」
「……………………」
ただ独り言を呟いただけで5年生と思われるポイントガードの子が涙目で悲鳴を上げるのを聞いて本気で困る慧心学園の選手。
「ミサー!」
するとベンチからジュードの声が聞こえ、指示が飛んできた。
「タイムアウト取るから一度ボール外に出してー」
「…了解や」
声が聞こえるやすぐに近場のサイドラインにボールを放り投げるミサ。
ピィィィッ!
「アウトオブバウンズ硯谷ボール!!タイムアウト!慧心学園!!」
審判である野火止先生の声とともに両チームの選手がベンチへと移動した―――――――――。
~sideout~
〜ジュードside〜
すずのシュートによって起きた一連の騒動によって硯谷の選手は完全に戦意を喪失してしまった。そんな相手を見ていられなくなったのか、昴がタイムアウトを申請しに行くという事で僕がミサへと指示を出すとあっという間にタイムアウトの声と笛が体育館に響いた。
「…すまんなぁコーチ、まさかここまで影響があるなんて思わなかったわ」
「いや、今回の事は完全に俺の落ち度だったよ。すまない皆」
困り顔で謝ってくるミサへ昴は苦笑気味ではあるが気にしなくていいと伝えた。…まぁ確かにこんなに影響が出るなんて正直僕も思わなかったから仕方ないと思う。
「……昴さん…この後の試合はどうしますか?」
エリーゼは皆を代表して昴に質問するも答えあぐねていた。――そして逡巡した後
「……少し早いけど、すずちゃんとひなたちゃん。ヒカリと愛莉を交替して相手の様子を――」
パアン!
交替と方針を伝えていると硯谷ベンチから頬を叩く乾いた音が響いてきた。
「情けないわねあなた達。それでも硯谷の選手なの?」
パアン!
声が聞こえる度に聞こえる乾いた音
「たかだかあの程度のシュートで泣き出すなんて」
パアン!
「恥ずかしいと思わないの?」
パアン!
「…しかもあなた、未侑と同じ6年生よね?どうしてもっとしっかりしないの?…先輩としての自覚、ある?」
「ご、ごめんみ――」
パアン!!
「そんな無様なことするからあなたはレギュラーになれないのよ…わかった?」
「……………………」
そして、自分の事を未侑と言った少女は試合に出ていた選手全員に強烈なビンタをし、その場から去っていった。
「……なんか感じ悪いわねあいつ」
「自分のチームメイトを、しかも後輩まで叩くなんて……酷過ぎる!!」
紗季の言葉に同意しつつ少女が去った方を睨みつけるヒカリは最早怒り心頭といった表情だ。
「…皆、今のやり取りを見て思うところがあるかもしれないけど、今は目の前の試合に集中しよう」
「そうだよ、昴さんの言う通り、まずは試合に勝って、それから
「……と、智花ちゃん?言葉のニュアンスがなんかオカシイよ?」
昴にも思うところがあるようだがそれを押し殺して皆に集中を促すものの、普段落ち着いていて抑止力になるハズの智花が何やら不穏な物言いをしたのでレイアを含めた女性陣は少々表情が引きつっているものの
「…んじゃ、キャプテンもそう言うてるし、とりあえず勝ってこよか。みんないくで!」
「「「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」」」
皆の結束力は心なしか最初――試合が始まる前――より強くなっている気がするので、何か起きるまでは静観することにした。
~sideout~
~昴side~
タイムアウトが終わり試合は硯谷ボールから再開されたが、タイムアウト前と大して変化のない硯谷は自滅。こちらはミサを中心に試合展開をコントロールしながらデータ収集のみを目的とした何とも言えない機械的な試合となった。――――そして
ビーーーーー
「試合終了。30-6で慧心学園の勝ち、礼!」
「「「「「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」」」」」
最終スコア(と言っても前後半6分ずつの2Qのみだが)30-6という大差で勝利したが、こちらの皆は非常に不服そうだった。
「勝ったから合宿を続行できるのは嬉しいけど……」
「まぁ、完全に硯谷の自爆やったからなぁ……」
「……でも、勝ちは勝ち。とりあえずは安心。そうでしょコーチ?」
「あぁ、これで1軍とも試合ができるし合宿も最終日までこなせるんだ……もちろん内容には皆思うところがあるだろうけど、相手よりまずは自分たちの課題をみつけて練習しなくちゃな!」
複雑な心境で神妙に話す紗季とミサに有紀は当初の対戦理由を言ってたので俺も乗っからせてもらうことにした。
…年上としてはどうかと思うが。
「……はい、次はあの小さい人もチームを倒したい…です」
「そうだねエリー、あの子に皆でやるバスケの強さをみせつけよう!」
エリーゼの意気込みに、珍しく熱くなっている智花が同意して場を盛り上げる。
「おー、次も勝って、お兄ちゃんに褒めてもらおう」
「えへへっ。ひなちゃんがんばろうね♪」
「おーし!あのちびリボンにあたしたちの力みせてやろうぜ!!」
「うん!」
こうして、硯谷合宿参加初日の日程は終了した。……もちろんその後の夕食や風呂時、就寝前にいろいろあったのだがそれはまた別の話だ。
~sideout~
後書きスキッド:試合を観て…
試合終了後・ローエン視点
ローエン「ほっほっほっ……良いご学友を持ったようですねぇエリーゼさんは」
ローエン「しかし、うちの生徒にあんなやんちゃな子がいたとは…やはり日頃の授業だけでは分からないものですな…しかし、エリーゼさん達なら彼女を立派に変えてくれる。…そんな気がしますね」
事務長「先生!こちらにいらしたんですか…探しましたよ!」
ローエン「おやおやどうしたのですか?」
事務長「あぁそれが例の海外チームも代表が、選手の一人が先行してこちらに向かってしまったそうで、着いたら保護しておいてほしいとの連絡が……」
ローエン「そうですか…では、その件を野火止先生に報告しておいてください。あと一人分の宿泊施設の利用申請の準備をお願いします」
事務長「わ、わかりました。それでは」
事務長out
ローエン「……さて、私も行きますか。久しぶりにジュードさん達とお話したいですし」
おわり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m