ロウきゅーぶ!!!~エリーゼ・ルタスの大冒険~   作:藤林 明

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なんだかものすごく長くなってしまったので半分に分ける事にしました。

ちなみに前編は主にポジションについての話しになりました。後編は多分今後の展開についての核心…にいけたら良いな~と思います。
…あと少しで追いつくぞよ!

それではどぞ!


第15話:問題解決?前編

~エリーゼside~

 

体育での激しい(?)戦いの後、帰りの会(ホームルーム)が終わって今は放課後になりました。

 

「…随分人が増えたなぁ…」

 

いつも通りコーチに来てくれた昴さんは、開口一番にそう呟いてましたが…気持ちは分かります。だって…

 

「「「「「「「「「「こんにちは!よろしくお願いします!!」」」」」」」」」」

 

いきなり『11人の小学生』に挨拶されてましたから…。私もその1人ですけど。

 

「こんにちは…です…昴さん」

 

「こ、こんにちは。…なぁエリーゼ、今日は何でこんなに大人数なんだ?」

 

最後に挨拶した私に昴さんがそう聞いてきました。

 

「…実は今日体育の授業がD組と合同だったので美星先生の提案でバスケをやったんです。…それで、その時D組にいた転校生の方々がバスケ部に入りたいと…」

 

「…なるほどな…ミホ姉のやつ…」

 

事情を話したら昴さんは何故かあっさりと納得してました。…なんででしょう?

 

「長谷川さん、いきなり人数を増やしてしまってすみません」

 

私が事情を話し終えた辺りで私以外の9人が昴さんの元へと集まり、部内でも生真面目な性格の紗季が昴さんへと謝りました。

 

「あぁいや、それは大丈夫。紗季が気にする事じゃないよ」

 

「…それならよかったです」

 

昴さんがそう言うと、紗季は安心した様な表情でそう言います。…昴さんの性格ならあまり気にしなくても大丈夫な気がするけど…紗季はローエンみたいに少し心配性なのかもしれません。もちろん本人には言わないですよ?

 

「…エリー、何か失礼な事を考えてそうな顔してるわね?」

 

「!?」

 

……紗季はやっぱり鋭い…です。

 

 

~~~~~~♪

 

 

 

 

 

それから全員で改めて自己紹介をした私達は、昴さんの提案で5対5の試合形式での練習をしました。(みずほは体育で疲れ果ててしまったらしくて昴さんと観戦してましたけど…)チーム分けは転校生と在学生で分けて行ったのですが…結果はなんと私達の負けでした!しかもこっちの方が経験者の数が多いのに、です!……もちろん負けた理由は――

 

「チームワーク、やな!」

 

そう、チームワークが…って

 

「…ミサ、私の心の中読まないで…」

 

「いやいや…自分、口からだだもれやで?」

 

「えっ…!?」

 

……どうやらあまりの驚きに思わず口に出してしまっていた様です。…恥ずかしい…。

 

「あはは…まぁエリーゼは始めてからそんなに経ってないから仕方ないかな」

 

……どうやら昴さんにも聞かれてたみたいです。……あぅぅ。

 

「まぁ私達は長谷川さんに指導して頂き始めた頃からずっとパス練習してたからね。流石に急造のエリー達にそういう所で負ける訳にはいかないわ」

 

そう自信満々に話すのは紗季。…でも

 

「こj「個人技ならこっちの方が上や…って言いたいんやろ?それやったら間違い無くパス回しが重要になるで」…どうして、ですか?」

 

私の声に上乗せして答えたミサに対して疑問に思ったことを聞いてみます。

 

「そらもちろんマークがあるよりフリーで動ける方が尚更個人技が活きてくるからやな!だからこそ私と永塚さんのやってるポイントガードのポジションはチームの司令塔って呼ばれとるんや」

 

「…じゃあ、どうして体育の授業で2人は負けちゃったんですか?」

 

「ぐふっ!…そ…それはやなぁ…」

 

「ポイントガードがどんなに優れていてもそのパスを受け取る側のプレイヤーが初心者だと実力を発揮し切れないからだよ。元々ポイントガードっていうポジションの人は単独で得点を取りに行くのは苦手な人も多いし、体格だって他のポジションの人より劣ってることの方が一般的だしね」

 

膝から崩れ落ちたミサと紗季に代わって昴さんがそう答えてくれました。…なるほど。それなら納得です。

 

「それとな、私は自分より遥かに背の高い選手が苦手なんよ。だから藤井さんにはフルボッコにされもうたって訳や」

 

ダメージから回復したミサはそう説明してくれました。…なるほど。相性、ですね。

 

「私の試合は八神さんが私と同じポイントガードの役割をこなしてたから、身長差とかも含めて防ぎ切れなかったのよ。…でもまさか、あんなにすぐ出来ちゃうなんて思わなかったから流石に堪えたわね…」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

紗季も理由を説明し、ヒカリが試合を思い出して紗季に謝って「気にしないで良いって言ったでしょ?」と言われているのを見ながらまとめてみます。…つまりは

 

「どっちが欠けても機能しない…という事ですか?」

 

「そうだね。バスケは5人でやる競技だから1対5じゃ勝てないんだよ。…納得出来た?」

 

「…はい。なんとなくですが、わかりました」

 

「そっか。ならよかった」

 

私の答えに笑顔で答えた昴さんは、最後に私の頭を撫でてくれました。…昴さんのなでなで(命名:ひな)はとっても気持ち良い…けど…

 

「おおぅ、エリーがすばるんに頭撫でて貰ってる!」

 

「これはトモもうかうかしてられないわね!」

 

「ふぇぇっ!?どうしてそうなるの!?」

 

「…エリーちゃん、羨ましいなぁ」

 

「おー、エリー、うらやましいですなぁー」

 

「…はぅぅ」

 

…この視線だけは、どうしても恥ずかしい…です。他の5人も何か言いたそうにしつつ生暖かい目で見てきて、いつもより恥ずかしい…きゅうぅぅ…。

 

こうして私の思考回路はショートしました。

 

~sideout~

 

 

 

 

 

 

~昴side~

 

 

人数が倍になって初めての部活も、途中でちょっとした問題があったが無事終わって、今は自宅でちょうど宿題を片付け終えた所だ。

 

~~~~~~♪

 

「…ん?電話か…誰からだろ?」

 

ベッドに放置した携帯電話を取り、相手を確認すると

 

「…智花?どうしたんだろ?」

 

なんと智花からだった。…彼女からの電話なんて男バスとの試合前に愛莉の事で相談があると言って来た時以来だな。

 

「もしもし智花?」

 

『夜分遅くにすみません。…あの、今大丈夫ですか?』

 

「ああ、構わないよ。どうした?」

 

『あ、はい。実はさっきまで最後に話してた公式戦について話し合いをしていたのですが』

 

「ああ、確か公式戦前に2、3試合は練習試合をしたいなって話したやつか…。それがどうかした?」

 

そう。今日来た6人を合わせるとちょうど11人が揃うので女バス最大の問題である『10人以上いないと公式戦に出場出来ない』という最重要課題が解決したのでその辺りの事情を踏まえて話し合いをしたのだが、その時に出た意見が

 

《練習試合をしたい》

 

という内容だった。そこで俺やミホ姉が相手を探してみるという事でその場の話しは終わったのだが、どうやら智花達はさらに皆で色々と話し合ったみたいだ。

 

『えっと、昴さんと話していた時はポジションとか役割については何も話せなかったので、勝手だと思いましたが私達で少しまとめてしまったんですけど…』

 

なるほど。確かにそこまで話せなかったよな…

 

「あぁ、なるほどね。…もちろん、別に勝手にだなんて思ってないよ。むしろ相談する手間が省けたからむしろありがとう、かな?…それで、どんな感じになったの?」

 

智花の声は最後の方が沈んでいたから少なからず罪悪感を感じてしまっているのだろうという事がわかったのでいつも通りしっかりフォローしておく。いつものことだが、そんなに気にしなくても良いのにな……。

 

『あ、はい!…えっと、まずはヒカリにはセンターとポイントガードを兼任してもらおうと思うんですけど……』

 

なるほど、確かに良いかもしれない。彼女は練習中に誰が見ても分かるくらいのスピードでバスケの基本的な技術・動きを習得していっていた。正直、成長速度はあの真帆よりも早いんじゃないかとも思った程だ。…なにしろ智花や紗季から聞いた話では、5分という試合時間でポイントガードの基本を完全でないとは言え紗季のプレーの見よう見まねで体現してしまった程なのだ。…実際に俺から見てもヒカリの動きはとても初心者のポイントガードとは思えないレベルの完成度だった。

…だからこそ、そんな彼女なら難易度の高い複数ポジションの兼任も可能だとと思ったのだろうな。…俺も正直な所、彼女は身長が高いことからセンターとして愛莉との併用が出来るなと思ったが、ポイントガードとしての才能もある彼女をひとつのポジションに固定するのはもったいないと思っていたのでこの案は個人的にもチーム戦略としてもありがたいというのが本音だ。

 

「うん、そうだね。ヒカリさんがそれでも大丈夫なら俺としては賛成かな」

 

『あ、はい!ヒカリも私でよければって言ってましたので大丈夫かと』

 

「了解。じゃあ次からは愛莉と一緒にセンターの基礎から始めていこう」

 

『そうですね。じゃあヒカリには私から話しておきます。…あと相談したいのはすずと紗季とミサのポジションについてですね』

 

「なるほど…ん?あれ?紗季のポジションって、何かあったのか?」

 

すずさんのポジションは分かる。…正直俺もどうしようか悩んでたし、きっと女バスメンバーも気になったのだろう。…が、紗季については思い当たる節が無いし見当もつかない。

 

『あ、いえ!別に不満があるとかじゃなくて、その……紗季も複合ポジションをやりたいと言ってまして……』

 

…あぁ、そういう事か

 

「そうなんだ。それで、紗季は何処と何処を兼任したいって?」

 

まぁ正直紗季なら常識の範囲で言うだろうが…真帆が絡んで無い事を祈りたい。

 

『えっと……どうやら紗季はシューティングガードとポイントガードを兼任するコンボガードをやりたいみたいで……』

 

よかった。どうやら真帆は関係無さそうだな。…でも

 

「そうか…それなら今のポジションとも離れてないから全然大丈夫そうだけど…なんでそんなことを?」

 

突然言い出した理由が気になるな。

 

『…実は紗季、体育の授業でヒカリに負けてからライバル意識持っちゃって…それで、ヒカリが複数なら私は複合に挑戦したい!…と』

 

あははは…なるほど。紗季らしい発言だなぁ。

 

「なるほどね。…じゃあせっかくだし、シューティングガードとポイントガードの両方の練習をしていくか」

 

『わかりました。紗季にもそう伝えておきますね』

 

「あぁ、頼むよ」

 

理由が対抗心だとわかったのでそのままゴーサインを出す。…正直な所、紗季は近いうちにポイントガードへコンバートさせる予定だったから自然とコンボガードに近いプレイヤーにはなれたけどな。

 

『はい!…それでミサなんですけど…』

 

「…あれ?彼女はポイントガードの経験者なんじゃ…」

 

そう。彼女――宮城美佐子はそれなりに有名人だったりするんだ。

理由は彼女の兄貴にある。なんせそいつは俺と同じ歳でポジションも同じポイントガード。…まぁ、あっちは全中MVPでこっちは県中MVPだから実績は全然違うんだが。

…それは置いといて。そんな訳で彼女もまたポイントガードとしての能力や素質はかなりのものなので1番確定し易いと思っていたんだが…

 

『それが…「実は前々からシューティングガードやりたいなってずっと思ってたんや。せやけど私が行くチーム皆してポイントガード出来る奴がおらんかったんやわ。だから成り行きとは言えずっとやっとったけど…正直このチームはぎょうさんポイントガード適性あるやつおるし、ポイントガードだけそんな沢山要らんやろ?だからやらせてもらえへんやろか?」…って』

 

「…そうか…そういうことか…なるほど納得」

 

確かにありえるな。兄妹もとい兄弟プレイヤーにあるパターンのひとつに兄又は姉が、自分のポジションならちゃんと教えてあげられるという親心みたいなものを当人の意思を無視して押し付けてしまうというものがあるが、間違い無くそれだろう。

確かに体格や性格が似ている部分が多いなら理に適ってるが……本人の意思を蔑ろにしてまでやるのはおかしいだろう。だからこそ選択肢はひとつだな!

 

「…わかった。それなら彼女の好きな様にさせてあげようか。…うちは「楽しく勝つ」がモットーだしな」

 

『昴さん……はい!私達は「皆で楽しく勝つ」です』

 

「そうだな」

 

智花も俺の答えに嬉しそうに返す。

 

『それでもうひとりの経験者の有紀なんですが、有紀がずっとやってきたパワーフォワードでと言っていたのでその場で特に異議も無かったのでそのまま決定しちゃいました』

 

「うん、本人の希望ってことなら俺からも特に意見は無いし、それで良いんじゃないかな?…有紀は遠くからのシュートが全体的に苦手そうだけどゴール下での動き…特にリバウンドに対してはしっかり対応できてるから、シュートが得意な真帆との併用が出来れば頼もしい限りだよ」

 

『そうですね。真帆はシュートが得意だけどリバウンドはあまり得意ではないので良いペアだと思います。…最後にエリーとすず、あと瑞穂についてなのですが……』

 

今まで饒舌だった智花が急に歯切れ悪く切り出してくる。…まぁ、おおよそ検討は付くが、おそらく

 

「…話し合いでは決まらなかった?」

 

『はい…』

 

「だろうな…正直俺もまだどうするか決めかねてるし…」

 

そう。2人に関しては正直俺もどうやって成長させるか悩んでいる。…理由は2人共別々で、すずは初見の今回では見定められなかったという理由。エリーゼは体格こそ華奢なのだが、パスやシュートを始めとした基本的な技術やポジション別にある動作等を全体的に器用にこなしてしまうため、下手するとオールラウンドな選手になってしまうという理由からだ。…その結果、2人のポジションの固定が出来ないという事態に陥ってしまった様だ。…俺と同じで。

……けど

 

「…ただまぁ一応、瑞穂についてはポイントガードの練習を、とは思ってるけど……すずとエリーゼのポジションはまだなぁ…」

 

『そうですよね…』

 

「ごめんな、力になれなくて」

 

『あっ!いえ、私達が勝手に話してただけなので昴さんは気にしないで下さい!』

 

「そっか…」

 

『はい!あ、それと――――』

 

そして、しばらくエリーゼとすずのポジションについてや明日以降の個人・チーム練習について話し合い、智花の寝る時間となったのでお開きとなった。

…これは余談だが、電話を切ってからこんな長電話するならこっちからかけ直してやればよかったと後悔したのは内緒の話である。

 

 

~sideout~




後書きスキット:ガールズトーク!~恋話編~


帰りのスクールバス内での一コマ


ミサ「それにしてもあれやな」

真帆「んあ?どったのみさみさ?」

ミサ「みさみさて……まぁええわ。いやな、こんだけ美人な女の子多いのに、何で彼氏いる奴ひとりもおらんのかなぁ~ってな」

紗季「あぁ、そういう事ね」ニヤニヤ

智花「っ!?」ゾクッ…

ヒカリ「?…どうしたの智花ちゃん?顔色悪いよ?」

智花「(ドキッ!)ふぇっ!?べ、別に平気だよ??」

みずほ「なるほど……ふふっ♪」

ミサ「……あ~…そかーそういう事かー」

紗季「へぇ、2人共流石ね。今ので分かるなんて♪」キラーン

みずほ「いえいえ。…ふふふっ」

ミサ「せやなぁ…クククッ」

智花「ふ、二人共怖いよ~ぅ」(泣)

愛莉「あ…あの、すずちゃんは好きな人っている?」

すず「私にはそういう殿方は居ません。忍者ですから」凜!

愛莉「そ、そうなんだ……(忍者なの関係あるのかな…?)」

ひなた「おー、ゆきはいるの~?」

有紀「居るよー彼氏」

ひなたと有紀以外の8人「えええーーーーっ!?」

終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m

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