ロウきゅーぶ!!!~エリーゼ・ルタスの大冒険~ 作:藤林 明
……にしても、改めて読み返すと転校生が皆チート過ぎて「こいつら本当に小学生か?」ってなりますね…自分で書いといてなんですが、女バスメンバーかわいそうかも。
という事で、前置き長くなりましたが、それではどぞ!
~美星side~
よ~美星だ。第1試合は智花のいるチームが一方的かと思ったが、すずやひなたの活躍でまさかの引き分けで終わったな!いや~見ててつい私も熱くなっちまって紗季に何回か指摘されちまったわ~。…ん?この場合どうするかって?もちろん両者敗退だな!…理由?もちろん時間とか短縮出来るし何よりどっちのチームからも承諾を得られたからだ。…決して面倒だからとかじゃないからな!そこ勘違いすんなよ!…にゃふふ。
そんな訳で次は第2試合な訳だが…こりゃまた凄い組み合わせだな~こりゃ。
なんせ
「ふふっ。授業とは言え手加減しないわよ愛莉」
「えへへっ。こっちも負けない様に頑張るね!紗季ちゃん」
紗季の居るAチームと愛莉のEチームの対戦だかんな~。しかも紗季のチームも愛莉のチームもバスケ経験者が誰もいないからどういう試合になるか全く想像がつかないときた!…にゃふふ~、これもまた楽しみな試合だな。流石私!
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「よ~しそれじゃあジャンプボールやるから代表一人はこっちにこ~い」
第1試合同様に各チームの代表1人をセンターサークル(そう呼ぶらしい)の中心に呼ぶ。…そして私は驚いた!何故なら
「ふふっ、負けないよ!香椎さん」
「私だって…もう逃げない!だって、センターだもん」
身長コンプレックスの愛莉がジャンプボールをしに来ていたからだ!…Aチームの北条は、まぁ分かる。あのチームでは1番の長身だからな。…けど、Eチームの代表は愛莉だった。八神という高身長の選手が一緒に居るのに、だ。
「(……こりゃあ6月に何かあったな?…まぁ多分あん時だろうけど)」
と、私は心の中である程度の当てはつける。
「…よし!そんじゃあ始めるぞ~…レディー、ゴー!!」
そして、開始の合図と共にボールをタップした。…さ~て、どうなるかなぁ~…にゃふふ。
~sideout~
~実況side~
ジャンプボールを制したのは身長差と体格差で愛莉の方だった。…しかし
「もーらいっ!…流石は愛莉ね。私の予想通り圧勝だったわ。これで計画通り…水上さん!」
「えっ、ええっ!」
ボールを手にしたのは紗季だった。…そう。これは紗季が仕掛けた巧妙な罠であり最初からこうなる様に仕向けられた作戦だったのだ!…そして
「はい!……えいっ」
シュッ!
予めゴール近くまで走っていた水上は、紗季からのパスを受けてそのままシュートした…が
「やっ!」
バスン!
水上の動きに合わせて着いて来ていたヒカリは、水上から放たれたボールをハエ叩きの要領ではたき落とした。
「ドンマイ愛莉ちゃん!試合は始まったばっかりだよ!」
ボールを叩き落としたヒカリは、センターサークル上で口元を押さえて青ざめていた愛莉に大声で声をかける。
「香椎さんお願いっ!」
ヒュッ!
そしてヒカリがブロックしたボールをD組の不二が拾い、そのまま愛莉へとパスを出した。…のだが
「甘いわ!」
バシッ!
不二が出したパスを紗季がスティールしてしまった。
「そんな…」
「ドンマイドンマイ!切り替えていこう」
落ち込む不二にまたしてもヒカリが大声で励ます。…その一方で
「(ヒカリちゃん凄いな…私や周りの皆を励ましながらプレーしてるよ……本当なら私がやらないといけないのに…)」
愛莉は自分の無力さを痛感していた。無理も無い。いくら葵のおかげで少しは自信を持てる様になったと言っても、プレー等が激変する事なんてそうそう無いのだ。加えて長い間怖がっていた事に対して勇気を出して立ち向かい、その結果が利用されていた。…精神面の幼い少女にこの現実はあまりにも辛い結果だろう。…だが
「愛莉ちゃんディフェンスお願い!私一人じゃ止められそうに無いわ!!」
ヒカリの少し切羽詰まった大声がまた聞こえた。愛莉に対する明らかなSOSを込めている声音で。
「あっ!うんごめんね!今行くよ!(そうだ…こんな所でくじけてたらまた皆の足引っ張っちゃう…変わるんだ…ここから…私はっ!!)」
かつて弱かった少女は走り出す。…自ら過去を断ち切る為に。
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「あちゃー…やっぱり失敗だった、か…」
紗季はドリブルをしながらそうぼやいた。
「(愛莉が落ち込んで本来の力が発揮出来ない様に仕向けてその間に点を稼ぐつもりだったけど…ダメみたいね…しかも以前と比べて表情に自信が表れてるわ……ふふっ、チームメイトとしても友人としても嬉しい事だけどこうして敵対すると、ある意味トモよりも厄介よね……)」
ボールをキープしながら、今は敵対している心強くなったチームメイトの事を考える。
「さてと、どうやって攻めようかしら。(こっちは私というポイントガードが居るけど向こうには居ない…けどこっちは相手よりも背が低いからゴール下は相手の方が上…となると……)」
言葉に出しつつも紗季は現在の戦力状況を冷静な頭で整理していく。まずこちらはパスを出せてボールを運び、時にはシュートも打てる実質シューティングガードとポイントガードを兼任した「コンボガード」と呼ばれる自分と、自分と大して差の無い体格の女子4人に対して、相手にはセンターの愛莉に素人とはいえ長身のヒカリ、智花位の身長の子と瑞穂位の身長の子がいる。
「(センタークラスの身長が2人居る以上、ミドルシュートやポストプレーは除外ね……しかもこの試合は間違い無く2対0とかの低得点勝負(ロースコアゲーム)になる…なら、やることはひとつね!)…佐藤さん!」
バン!
考えをまとめた紗季は、左サイドに居た佐藤へとバウンドパスを出す。理由は空中パスは長身コンビの餌食になるから。…そして
「佐藤さん!」
ある位置まで移動した紗季が叫ぶ。…そう、その場所は紗季が最も得意とする『左斜め45°』…だが
「永塚さんお願い!…あっ!」
パスを出そうとした佐藤は驚いて声を上げる。…何故なら
「今よっ!……ふぅ、やっぱり見た目より難しいね」
佐藤がパスを出そうとした瞬間を狙っていたかの様にスティールを仕掛けられてボールを奪っていたからだ。そして、スティールを仕掛けた張本人のヒカリは奪ったボールを高い位置で持ちながら苦笑いでそう言っていた。…しかも
「愛莉ちゃん、こっちのゴール下での守りは任せるわね!私達4人は頑張ってゴール決めて来るから」
等と言い出した。そしてこの宣言を聞いた愛莉は
「えっ!?どうして?」
と、驚いて聞き返していた。…そしてその理由は更に驚く様な内容だった。
「やっぱり私達初心者じゃシュートしたりドリブルしたりパスしたり…つまり攻撃は出来るんだけどディフェンスはやっぱり経験者の愛莉ちゃんしかまともに出来ないの。…だから、私が攻めの起点、愛莉ちゃんが守りの起点って感じで攻守の役割を分けてみたんだけど…それじゃあじゃダメ、かな?」
頬を掻きつつ苦笑い気味にヒカリはそう説明した。そう、つまりヒカリの提案した作戦とは攻守の役割を分担する≪分業制≫なのだ。そして、それを聞いた愛莉は
「ううん、そんなことないよ!…うんわかった。私、点取られない様に頑張る。だからヒカリちゃん達も頑張ってね!」
と、ヒカリの作戦を快諾したのだった。
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愛莉とヒカリが作戦を話し合っている間、チームメイトとの打ち合わせも早々に切り上げた紗季は、残り時間と現在の状況を整理して待ち構えていた。
「(試合時間は残り5分か…さっきの攻撃で点を入れられなかったのは痛いけど、こっちも守り切れればまだチャンスはある……ここ1本重要ね)…さぁ来な…さ…い…?」
紗季は思わず自分の目を疑ってしまった。何故なら
「よーし!ここ1本決めるよ、皆!!」
そう。ボールを運んで来たのが愛莉ではなくヒカリだったから。そして何より1番の理由は――
「…どういう事?愛莉が『自陣のゴール下から動いてない』なんて…!(…愛莉はインサイドの要で唯一の経験者の筈よ。それなのに、どうして?)」
チームで唯一のバスケ経験者にしてインサイドの要である筈の愛莉が自陣から動かず攻めて来る気配が無い事。紗季にとってこれ程予想外な展開も無いので、驚くのも無理は無い。そして
「……どういうつもりよ?」
目の前まで迫って来たヒカリに対して、紗季は無意識のうちに質問をしていたのだった。
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「さてと、確か……」
自分の目前にいる紗季が驚いて固まってる間に、ヒカリは攻撃手段を考える為にその場で停滞していた。
「(愛莉ちゃんにはああ言ったけど、実際どうやって攻めようかなぁ……このままシュートしても確率はそこまで高くないし、ドリブルで経験者の紗季ちゃんを抜くのはハッキリ言って論外だし……うーn)「…どういうつもりよ…?」…え?」
思考が上手くまとまらず悩んでいると、目の前の紗季が睨みつける様な表情でそう聞いてきた。
「え?じゃないわよ。どういうつもり?八神さん私の事ナメてるの!?」
「え?いや、別にナメてるとかそんなつもりは全然無いよ?むしろどうしようか悩んでるくらいだし…」
ヒカリの間の抜けた返事に紗季は明確な怒りを込めてそう怒鳴りつけていた。それに対してヒカリは、苦笑気味にだがつい言わなくてもいいようなことまで言ってしまった。そして――
「シラを切るつもりならそれでも良いわ!だったら力の違いを解らせてあげる!!」
「…っ!…と、危なかった~」
そう叫ぶと紗季はヒカリのボールを奪う為にスティールを仕掛ける。が、取られる直前にボールを身体で守り、更にはそのボールを『自身の頭より上』の位置へと持っていく。
「っ!!…やるわね。でもそこからどうするつもり?」
自らの届かない場所までボールを上げられた紗季は苦し紛れにそう言うが…
「えっと……江口さん!!」
ピュッ
「はい!…っ!」
そのままの高さから両手投げのパスでゴール下に居た江口へとパスを出す。
「えっとあとは――っ!」
「っ!行かせ…ないっ!」
ヒカリはパスが通ったのを確認してすぐにフリースローラインへと走る。行く途中に紗季の妨害もあったが、無事にたどり着き…
「江口さん頂戴!」
「オッケー!お願い八神さんっ!!」
ピュッ
「…よし!」
江口からパスを受け再び高い位置でボールをキープするヒカリ。…ここまでは作戦通り。後は
「やーーっ!」
シュッ!……パスッ!
自らシュートを決めるだけ。…だが、正直彼女にそこまでの自信は無かっただろう。…だが、運は彼女に味方し結果的にシュートは音も無くリングへと吸い込まれて行ったのだった。
Aチーム 0ー2 Eチーム
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…そして、そこからの展開は一方的に近かった。ディフェンスにおいては愛莉が軸となってロングシュート以外は全て防いでしまい、得点は紗季による0角度からのシュート2本のみで抑えてしまった。…そして何より一方的となってしまった要因は
「江口さん!」
ピュッ!
「はいはいっと!…金村さん!」
シュッ!
「はいっ!…お願いします八神さんっ!」
フワッ
「はいっ!…不二さんお願いっ!!」
ピュッ!
「っ!はいっ!」
シュッ!…ガコン、パスッ
「ナイッシュー不二さん!!」
「ありがとう。八神さんもナイスパスだったよ♪」
パンッ
「八神さん…どんだけ器用なのよ……まさかこんな短期間に『ポイントガード』の役割を覚えて実践ちゃうなんて…」
そう、これなのだ。彼女八神ヒカリはこの僅か5分という短い時間で、持ち前の器用さを活かしてポイントガードの役割であるパス回しの起点や周囲の状況を瞬時に判断してアシストをするといった事を『紗季の動きを見て覚えてしまった』のだ。その上身長差もかなりあるので元々の不利さも合わさってさらに状況が悪化してしまった。…そして、結果的に攻守に圧倒してしまったことで最終スコアは
Aチーム 6-18 Eチーム
となり、Eチームの圧勝で幕を閉じたのである。…合掌。
~sideout~
後書きスキット:心の中では
試合後半にて
真帆「うひゃー…あのてんこーせースゲーなー!」
真帆「とは言え、ありゃサキはそーとーショックだろーなぁー。アレはサキのせんばいとっきょだし」
真帆「帰って来たらバカにしてやろっかなー…………………………」
真帆「………(まぁ…ちょーーっとだけ心配だから、ここはチームリーダーとして試合終わったら声掛けて励ましてやろっかな……全く、世話の掛かる仲間だな)」
終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m
…スキットがネタ薄感MAXですが御容赦下さいませ(T_T)