ブラック・ブレット〜紅の斬撃〜   作:阿良良木歴

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蓮華の本性

「で、延珠と蓮太郎の手首のそれなんなの?」

 

ファミレスを後にした蓮華たちは、商店街を歩いていた。満腹になって上機嫌なしろを横目に見ながら蓮華は問いかけた。

 

「よくぞ聞いてくれたぞ蓮華!これは天誅ガールズが嵌めているブレスレットだ。仲間を欺いたり、嘘をついたりするとひびが入りわれてしまうのだ」

 

「ふぅん。『破鏡』みたいなもんか」

 

横から蓮太郎が口をはさむ。『破鏡』とは、中国だかどっかの故事だったかな、と蓮華は適当に考える。蓮太郎と延珠の漫才の様なやり取りを聞き流しながら、今日の夕飯の買い出しについて蓮華は思考していた。と、

 

「そいつを捕まえろ!!」

 

蓮華の思考を断ち切るような怒号が響いた。ハッとして前を向くと、薄汚れた服を身にまとった少女が食材や衣類を抱えこちらに走って来ていた。少女は横に広がって歩いていた蓮華たちの前で止まると、何かに気づいた様な表情を浮かべた。それに伴い、延珠が硬直した。表情も強張り、なんとか声をだそうと口を開けた時にはもう遅かった。少女を追いかけやってきたエプロンをつけた男二人組に少女は組み伏せられる。組み伏せられて初めて気づいたが、少女の瞳は赤く染まっていた。

 

(外周区の”呪われた子供たち"か)

 

「やっと捕まえたぞ、この赤目が!!」

 

「店の物盗みやがって!!」

 

「くっ!離せ!!」

 

必死に抵抗する少女を、まるで親の仇でも見るかのような形相で押さえつける二人組。が、街ゆく人はそれを当然だとでも言うように眺めている。蓮華の胸にドロドロとした感情が渦巻き始める。

 

「お、おい。そいつが何したんだよ」

 

黒い感情の制御で手一杯の蓮華の代わりに、蓮太郎が尋ねる。

 

「こいつ、店の物を盗んだ挙句、警備員を半殺しにしやがったんだ!」

 

「違う!私はちゃんとお金を払った!!」

 

「黙れ!どうせ誰かから奪ったり盗んだりした金だろ!!」

 

聞く耳持たずな男達に蓮華は怒りを増す。蓮華が一歩踏み出した時、誰かが呼んだのだろう、パトカーが一台止まった。

 

「それが例の赤目か」

 

「はい、そうです」

 

パトカーから出てきた男の1人が遠巻きに眺めていた一般人に聞く。そして、返事を聞き終わるかどうかのタイミングで少女に手錠をかける。そして少女を乱暴に立たせた。

 

「離せよ!あんたら私が何をしたかも知らないだろっ!!」

 

「うるさいぞ赤目。どうせ”呪われた子供たち(おまえたち)”のことだ、傷害やら盗みやらそんなとこだろ。おまえたちがやりそうなことはわかってんだよ!」

 

吐き捨てる様に言い放つと、警官二人組はパトカーに少女を押し込み、去っていった。パトカーが去ると群衆もバラバラに歩き出した。もっとも、口々に少女を罵倒する言葉を吐いていたが。

 

「……将藍、しろを頼む」

 

「ああ。まあ、ほどほどにしとけよ」

 

その言葉を無視し、蓮華は駆け出す。いつもの死んだ様な目から感情は消え去っていた。

 

 

* * *

 

 

――バァァン!!

 

外周区に程近いビルの廃墟に銃声が響く。壁際に立っていた少女がずるずると崩れ落ちた。警官二人はさも当然の様な表情で少女を見下ろす。逃げられないようにと考えたのだろう、少女の両足は無残にも撃ち抜かれていた。

 

「ちっ、まだ生きてやがるよ。これだからガストレアは」

 

「でもまあ、流石に脳を撃てば死ぬだろ」

 

そう言って警官の一人が少女の額に照準を合わせる。少女は痛みと涙で霞む視界の中で悟る。

 

(ああ、ここで死ぬんだ)

 

「死ね」

 

――ガァァァン!!

 

廃墟の静寂を切り裂き、再び銃声が轟く。が、

 

「がぁぁぁっぁ!?」

 

その銃声で絶叫を上げたのは警官の方だった。警官と少女の後方、柱の影の中から現れるように蓮華が姿を見せた。

 

「死ぬのはテメェだ、クソ野郎」

 

絶叫が響き渡る中、嫌悪感を隠そうともせず蓮華は呟き弾丸を放つ。のたうち回っていた警官は痛みが許容量を超えたのか、蹲ったまま呻くだけとなった。

 

「だ、誰だ貴様!!」

 

「これから死ぬ奴に名前を教える気はない」

 

「なっ!?」

 

驚愕の表情を浮かべ、動揺を隠しきれない警官を気にもせず蓮華は頭を乱雑にかく。

 

「つかよ、わざわざこんなとこまで連れてきて殺るとかめんどくせぇ事してんじゃねぇよ。おかげで無駄に疲れちまったじゃねぇか」

 

銃口を警官に向けたまま、蓮華は少女に歩み寄る。そのまま撃たれた銃創を見る。

 

「両足に2発ずつ。右脇腹に1発、左肩3発右手の甲に1発……か」

 

銃口を下げ、蓮華は労る様に少女の頭を撫でる。武骨ながらも優しい手つきに、少女は徐々に痛みを忘れていった。

 

「悪い。遅くなっちまって」

 

1人呟くように声を出し、蓮華は振り返る。その表情に感情はない。

 

「貴様!こんなことして許されるとでも思っているのか!!」

 

「思っちゃいねぇよ。けど、こんなところでアンタらが死んでんのにいつ気づくかな」

 

外周区の近く、もはや廃墟とかしたビルに近づく人間はまずいない。さらに、この辺は治安が悪く社会からドロップアウトした者の巣窟となっている。そんな場所で警官が死亡していたとしても、不思議は無い。

 

「じゃ、あばよ」

 

「ま、待てッ!?」

 

断末魔の叫びは誰にも届かない。




本当にすいません!

仕事が土曜出勤になったり、毎日夜中に帰宅とかで全く更新できませんでした。

今回みたいに、時間が空いたすきに更新するようにしますので
これからもよろしくお願いいたします

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