一度Bad Endを見ることで選択肢が追加されます。
「違和感を感じる」を選択すると当ルート、「気のせいか」を選択するとBad Endルート。
あと2話程ですがお付き合い下さい。
推奨BGM:α Ewigkeit(dies irae)
77:神々の黄昏
【Side ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ】
「望みを言うがいい。
卿等の奮闘に見合う範囲であれば、叶えよう」
このまま彼女らを殺すことは容易い。
しかし、高ランク魔導師とは言え聖遺物も持たない普通の人間がここまでの戦果を上げたことは称賛に値するし、その褒美として大抵の事なら叶えてやっても良い。
実際、彼女達からすれば私は絶対に敵わない相手であった筈、そこに戦いを挑める気概がまず素晴らしい。
そして、それが単なる蛮勇でないことは結果が証明している。
自らに使える戦力を有効に使い、こちらの計画を不完全とは言え潰してみせた。
その上、自傷を発端としているとは言え私に痛みを味合わせ、奇策とは言えシュライバー達大隊長の内2人までも打倒したのだ。
見事だ、その一言に尽きる。
自分より強大な敵に立ち向かえるものはそうはいない。
その魂、私が認める英雄の資格が……。
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思考にノイズが走った。
「私の、私達の望みは……」
「……待て」
強者に挑める勇気こそ英雄の資格、私はそう考え資格を持つものを好み評価している。
ならば、この違和感は何だ?
────────────────────────#%&
英雄の資格に関しては昔からの考えと相違はない。
ならば、この違和感は……その考えを全うしていないということか?
────────────────────────#%&
誰かに不当な評価を下したか?
いや、そんな記憶は無い。
では、私自身が反することをしたか?
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ノイズが増えた。
私が英雄の資格に反している?
しかし、私より強者である者など既にこの世界におらん。
挑みたくてもその相手が……
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いや、居る。
確かにこの世界には居ないが、この世界に来る前に見付けていたではないか。
『私やカールの様な世界の内側の管理者ではなく、外なる神とでも呼ぶべき存在。
今の私よりも遥かに大きな力を有している、壊し得ぬ存在』
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『壊せぬものは見付けた。ならば次にすることは壊せるようになるまで自身を高めることだ。
まずは、此度の戦場で力を蓄えるとしよう』
何故、そんな風に考えた?
挑むに値する敵が眼前に居るのに、何故戦いを挑まなかった?
何故先送りにした?
臆しでもしたか……いや、そんな想いはなかった。
勝敗が問題なのではない、自身より強い敵など寧ろ望んでいたことの筈。
ならばこれは……
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鍵が回る音が何処かで聞こえた。
ノイズだらけになっていた思考が急速にクリアになっていく。
『外なる神』の介入を招く恐れがあるから流出は使わない?
まずは『ラグナロク』を終わらせることを目指す?
いずれ届くまで、力を蓄えることに専念する?
──否、断じて否。
私の
壊してしまうことを恐れて愛さないのが愚なれば、届かぬことを恐れて愛さないこともまた愚なり。
嗚呼、私は結局のところ彼女らの掌の上で操られていたのか。
思考誘導……おそらくは最初に転生させられた時点で既に彼女ら『外なる神』に逆らう行為を躊躇う様に埋め込まれていたもの。
「フフ、ハハハ、ハハハハハハハーーーーーーーーッ!!!!」
「「「「「──────っ!?」」」」」
突然笑い出した私に眼前の2人が……いや、いつの間にかシュライバー達と戦っていた機動六課の面々が玉座の間に集まり警戒している。
しかし、今更どうでもよい。
気付いた以上、最早こんな茶番に付き合う必要はない。
私は聖槍を横に構えると、詠唱を始める。
「な、まさか!?」
「突然何を!?」
「流出を使うつもりなの!?」
「そんな!?」
「みんな、止めて!
世界が滅びるわ!」
「──────っ!?」
「やめて! ラインハルトさん!」
「やめなさい!」
「だめ、間に合わない──!」」
声と共に、世界が切り替わった。
いつか見た果ての見えぬ白い空間──あの世界に転生する前に招かれた場所だ。
目の前には私を転生させたノースリーブドレスを纏った紫銀の髪の外なる神。
「いきなり流出を行うなど、何を考えているのですか?
介入が間に合ったから良かったものの、発動していたら『ラグナロク』が台無しになっていたところです」
表情は変わらぬが、どうやらお怒りらしい。
私は彼女に微笑み掛けながら、自身の状態を確認する。
聖槍はある、『城』への繋がりも感じられる、元の世界のレギオンも、あの世界で喰らった魂も全て十全。
突然の介入で小細工を仕掛ける暇は無かった様だ──ならば是非もない。
「なに、本気で流出させるつもりはない。
あれを起こして見せれば、卿に会えると思ったに過ぎんよ」
「私に……ですか?」
首を傾げている外なる神にゆっくりと近付きながら私は答える。
「ああ、そうだ」
「『ラグナロク』に何か不備でもありましたか?」
どうやら、彼女は未だ私の意図に気付いていない様だ。
折角の機会だ、常々思っていたことを指摘させて貰うとしよう。
「ああ、重大な不備だ──
──
「!?」
私はその言葉と共に、聖槍を顕現させると最初から全力で彼女に叩き付けた。
力の余波が空間を吹き飛ばし、純白だった世界は砕け散った。
そこは宇宙空間にも似た世界だったが、星の代わりに鏡の様なものが無数に浮かんでおり様々な光景を映し出している。
おそらく、あの鏡の1つ1つが1個の世界であり、私が先程まで居た世界も何度も繰り返した世界も、そして最初に生きていた世界もこの無数の鏡の中の1つでしかないのだろう。
少女の方は驚いていたが咄嗟に障壁を張って無傷でやり過ごしていた。
その様子に私は思わず嬉しくなる。
仮にも世界1つを破壊出来るだけの攻撃を受けて無傷か、相手にとって不足はない。
「まさか、私の施した精神誘導を解いたのですか?」
「矢張り小細工をしていたか。
随分と私を弄ってくれたものだ」
「想定以上の力を与えることになってしまいましたから、当然の保険です」
つまりは彼女は私を危険視したということだ。
現状で、彼我の戦力差はどの程度であろうか。
私は興味を惹かれてダメ元で彼女を凝視してみる。
しかし、残念ながら名もレベルも見ることは出来なかった。
「無駄ですよ。
そもそも、レベル制と言うのはあの世界専用に私達が敷いたルールです。
外に当たるここでは意味を持ちません」
私の行動を察したのか、彼女が窘める様に告げる。
興味はあったのだが、仕方ない。
それに、それならそれで戦術の選択肢が増えるというものだ。
「それにしても本当に規格外な人ですね。
そもそも、『ラグナロク』に最初から神の資格を持って参加することだけでもまず非常識だというのに、挙句の果てに途中放棄して私達に挑みかかってくるとは」
「その割には、特典を選ぶ時には却下しなかったではないか」
「一応はルールに則していましたからね。
元々『ラグナロク』は内部管理の人員増強、つまりは貴方の様な存在を育てることが目的です。
勝敗が最初から決まってしまいゲームとしては興醒めですが、目的は果たせるので良しとしたのですよ」
成程、彼女らの目的にも合致していたから認めたか。
しかし、ゲームとも言ったな?
「ゲームなのか人員増強なのか、どちらなのかね?」
「趣味と実益を兼ねたイベント、といったところですよ。
自らの送り込んだ手駒をぶつけ合わせる遊戯であると共に、ゲームの勝者は自らの配下を増やす事が出来る。
そういうイベントです」
配下、か。
つまり、『ラグナロク』の勝者は世界の内部から管理を行う『内なる神』の座に付くと共に、自分を転生させた『外なる神』の眷属となるということか。
「つまり、私を部下とすることが目的だったわけか」
「現在進行形で飼い犬に手を咬まれていますけど……もういいです。
勝利間違い無しと思っていたゲームを捨てることになりますが、貴方にはここで消えて貰います。
次の開催の時にはもう少し従順な駒を選ぶようにしますよ」
「そうするといい…………次があればの話だがな」
私は聖槍を振るい構え、詠唱を始めた。
「
さあ、我がエインフェリア達よ…………戦いの時だ。
「
(後書き)
「03:準備転生」以来、約70話を跨いだ伏線回収。
「今に見ていろ」などと言う様な台詞を言って逃げる獣殿は獣殿らしいでしょうか?
私はそうは思いません。
彼にとって愛は破壊であり破壊は愛、勝敗など二の次で全力を以って相手と触れ合えることが何よりも大事です。
準備転生前から転生者の魂越しに植え付けられた精神誘導が、準備転生後に外なる神に再開した瞬間に発現しました。
しかし、弱者が強者に立ち向かう様に獣度は自らの信念を思い起こし、精神誘導を振り払いました。
<対転生者および対管理局での過剰な準備>
⇒「外なる神」への戦いを避ける思考誘導が「戦いには準備が必要」の方向に作用した結果。
他の転生者と管理局にとってはとんだとばっちり。
<マイルド獣殿>
⇒半分はシュールさを出したかった私の趣味、もう半分は獣殿の思考が変わっていることを紛らわすミスリード。