Muv-Luv Unlimited Base Shielders 作:しゅーがく
前回の投稿からそんなに時間は経ってないと思いますが、次話を投稿させていただきます。
こういった系統の小説やアニメ、漫画のよさをわかって貰える人に出会えたので最近楽しいですわ(笑)
てこでepisode 05です。
「せっ......戦車級がウジャウジャ居るっ!?」
圭吾は初めて見たBETAに圧倒されたが、直ぐに我に返った。
『48Cより13C...リーだ......敵の増援止まらず...........。』
『13Cより48Cっ!御宮だっ!!状況は!?』
皐が状況を確認した瞬間、13C以外の戦術データリンクが更新され、隔壁の向こうを染める赤が表示された。
隔壁の向こうでは、未だに機関銃の射撃音が鳴り響いているが、すでに4門ほどしか射撃しているようにしか聞こえなかった。
『増援の27C、65Cは全滅......我々も後3機しか残っていない.....ゲホッ.....。直ぐに8地区の出口から退避するんだ.....。4地区の片隅に投棄されていたプロパンボンベに引火させ、爆発させる......。時間位稼げる余裕はある...、早く行くんだ....っ!!......ゲホッゲホ......。』
データリンクには48C01表示の機械化歩兵装甲には警告アラーム、右腕部、左脚部欠損と、右側頭部強打の表示が出ていた。欠損という事は大量出血していて、応急処置ではどうも対処はできないので、そういう選択を取ったのだろう。他に生き残った機械化歩兵も跳躍ユニットが欠損や、左腕部粉砕などといった表示も出ていて、長くは持たない事が目で見て取れる程のものだった。
『48Cに感謝するっ!!全機反転っ!全力跳躍っ!!!』
その号令には皐の声に艶が無かった。
『おい!......チー!俺には弾が無い。あそこに置いたプロパンを撃ってくれ......。引火して爆発が起きる筈だ......ゲホッ。』
『すみません......残弾がゼロです。』
『なんてこった......。ゲホッ...ゲホッ...。テイは......。』
『こっちも無いです...。』
『くそっ!何で考えずにバカスカ撃っちまったんだっ!!......ひいぃぃぃ!!』
『どうしたっ!チー!!』
『闘士級に囲まれましたっ!近接短刀だけではっ......(ブチッ)』
『チー!応答しろ!チー!』
『中隊長、チーの機体、真っ二つになって、腸を戦車級がっ......。』
『くそっ!!』
『そういえば、確かこの辺に旧式のライフルがっ!』
『それなら......あそこだ。』
『これで楽にっ......ぎゃあぁぁぁ!!来るなっ(ダダダッ)!来るなっ(ダダダダダダダッ...カチンカチン)!来るなぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ(カチンカチンカチン)!!!!!!』
『テイ!ゲホッゲホッ......データリンク。...KIAか......。ははっ、囲まれちまったなぁ......くそっ......(グシャ)』
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着任して早々に出撃の為に出た敦煌基地がとても懐かしく思えたのはきっと、自分の基地だと思えたからだと圭吾は考えていた。
圭吾達の第13中隊以外、前線補給基地防衛任務の帰還部隊は居なかった。敦煌基地の門を潜った時、目の先5m位先に人だかりと整備兵で一角が壁のようになっていた。
見物人だと思われる人は散り散りに去っていき、残っていたのは普段よく見るシルエットの鉄の塊と、顔が青ざめた整備兵だけが残っていた。接近していくと徐々にその正体が分かっていった。
あちこち部位を破損した機械化歩兵装甲だった。
見るも無残に損傷していた機械化歩兵装甲は両腕の肘から下と、右跳躍ユニットがもぎ取られていた。その機械化歩兵装甲の大腿部には大量に血が流れ出した痕も残っていて、どれ程出血したかを伺える程の広さだった。
「こりゃ相当激しい戦闘を潜り抜けてきたモノだな。あちこち欠損してるよ。」
「そうだな。今日、出撃して行ったのは2個戦術機中隊と2個機械化歩兵中隊だが、今後ろを通っているのがその2個機械化歩兵中隊の内の1個中隊。第13機械化歩兵中隊だろうな。見たところ欠員は出ていない様だが、なぜこいつは1人でこんなボロボロで帰ってきたんだ?」
その他愛もない整備兵の会話が圭吾には少し疑問に思えるところがあった。
第13機械化歩兵中隊以外の3個機械化歩兵中隊は全部、所属が周辺の中国軍や国連軍からの派遣部隊だったのだ。
待機していた格納庫には機械化歩兵装甲用のハンガーが80機分あったが、全部が埋まっていたのだ。だが、基地内での戦闘任務には4個機械化歩兵中隊が配置されていた。そして、ハンガーから降ろされた時、格納庫内のハンガーには64機あった。
1個機械化歩兵中隊が何処かへ行っているのだ。
「あっちでは4個機械化歩兵中隊が基地の司令部に通じる地下通路を防衛していたと聞いているが、あの補給基地には5個機械化歩兵中隊が派遣されているんだとさ。」
「おかしな話だよなぁ。だって司令部の目と鼻の先を守っていたのは、あの第13機械化歩兵中隊とその他中国軍と国連軍で構成された3軍合同防衛戦だったんだろ?ウチの基地から出た『第9機械化歩兵中隊』は何してたんだろうな?」
「あぁ、隊長以外新兵で構成されたひよっ子中隊だろ?」
整備兵の会話は派遣されていた自分らでさえ知り得ない情報だった。2個機械化歩兵中隊が派遣されていたとは聞いていたが、地下通路防衛に加わっていたとばかり思っていた。
「何だっけか。戦術機乗りの排出の多い神八城士官学校出身は摂津基地の第221機械化歩兵中隊から移動でここの第13機械化歩兵中隊になったってのは知ってる。有名だろ?摂津基地第221機械化歩兵中隊って。だけどさ、第9機械化歩兵中隊ってあちこちの神八城士官学校より少しだけ戦術機乗りの排出が少ないところの戦術機適正に落ちた連中だろ?そんなエリート士官学校出身の奴ら13人も勿体無くないか?」
「なぜかは知らんが、尾張にはエリート士官学校が多いよな。神八代の下の士官学校って何処だっけか?俺の記憶では星ノ谷士官学校とか、旭原士官学校とか?」
圭吾には聞き覚えのある士官学校の名前が出てきた。そして、『星ノ谷士官学校』の名前を聞いた時、遥音が足を止めた。
まるで時の止まったかのように止まっている遥音に圭吾と皐が駆け寄った。
「遥姉っ!」
「鉄無二等軍曹。」
『嘘だっ............教官は新兵は最低1年は戦場に出ないって仰ってた......。あの髪を束ねているリボンは......嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ......。アイツが死ぬ訳無い......。いつも陰に隠れてたアイツが......。』
遥音がそう言っているのを宥めながら圭吾は戦域データリンクを開いて欠損している機械化歩兵装甲とデータリンクをした。
『9C-14 敦煌基地 第9機械化歩兵中隊A小隊 ステンツ3 須倉詠佳三等軍曹』
本当に第9機械化歩兵中隊だった事に圭吾は驚き、そして止まっていた遥音が動き出したのを見た。
少し足取りは帯つかないが、取り乱している時よりは正常に見えた。
『アイツはずっと陰にいた。今日は仲間を裏切って逃げてきたんだ。そうに違いない......。』
歩きながらも遥音はそんな事ばかり言っていた。
圭吾は遥音から発せられる言葉から『須倉詠佳』という人物の情報を整理した。陰気、弱気......、それ位しか無いが、『今日は仲間を裏切って逃げてきた』という事は、訓練兵時代には他にも何がしかを頻繁にしていた事が分かる。圭吾に分かったことはここまでだった。
「遥姉、大丈夫?取り乱してたけど。」
圭吾は考え事を止めると格納庫に向かう機械化歩兵中隊の最後尾に居た遙音の横を並走し始めた。
『大丈夫。初めて知ってる人間が死んでる状況に直面してね、少し取り乱しちゃった。』
そう言いながらも辛そうな表情を隠しきれていない遥音はヨタヨタと格納庫に向かっていた。
『鉄無二等軍曹。』
遥音の向こう側を歩いていた皐が遥音に話しかけた。
『あのかなり欠損している機械化歩兵は貴様と同じ士官学校出身なのか?』
『はい、須倉詠佳二等軍曹です。』
『そうか。ヘットギアが歪んでいて外せなかったらしく、先ほど身元確認の為に戦域データリンクにて確認しようと試みたらしいが機械化歩兵装甲の内臓電池が切れたらしく身元が確認出来なかったらしいんだ。まぁ、知っている者で良かった。大概の戦死者は国へ一生帰れないからな。』
そう言って並んで歩いている圭吾と遥音を追い越して皐は先頭に行ってしまった。
皐の言った言葉は、機械化歩兵装甲の状況だったが、そうそう切れる事のない内臓電池が切れたという事はかなりの長時間を移動していたか、激しい戦闘をしていた事になる。それだけの時間、背中から見える機械化歩兵装甲は戦闘をしていた。遥音の言っていた『アイツ』は、須倉詠佳は、普段の彼女からは感じられない様な戦闘を行ったか、普段通りに隠れて逃げ回っていたのか......。その答えは欠損している機械化歩兵装甲が物語っていた。
冒頭の事を聞かれそうなのであらかじめ説明しますが、あのシーンは隔壁の向こう側での48Cの会話です。二波攻撃の時です。
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