Muv-Luv Unlimited Base Shielders   作:しゅーがく

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どうも、しゅーがくです。
かなり久々の投稿となります。お盆に入った?といっていいのやら、それまではずっと忙しかったのでこっちをやっていられる暇がありませんでした(汗)。すみません。
ネタは結構思い浮かんではいるのですが、文章に変えるとなると少し時間もかかってしますし......。
とりあえず、完成したものを投稿させていただきます。


episode 3 敦煌基地

『第2小隊は前線を展開。トラックは全車停止し、第3、第4小隊が直援に。第1小隊は前線後方に展開。』

 

皐が中隊全体のチャンネルでそう言うと、すぐにそれぞれの小隊が持ち場に向かった。第2小隊は前衛に止まり、目の前に立ちすくむ機械化歩兵装甲を纏った民兵を睨んでいた。

 

「あれはどこの軍の機械化歩兵装甲だ?」

 

『あれは国連軍が採用している米国製機械化歩兵装甲です。私たちの使う87式機械化歩兵装甲より1世代古い型ですが、使い手によってはかなりの戦闘能力が引き出せるものです。』

 

小隊ウィンドウにて一代がそう言った。確かに見れば機械化歩兵装甲というのは判別できるが、日本製の機械化歩兵装甲でないというのはすぐに分かる程のものだった。

 

『第2小隊射撃始めっ!!』

 

耳元で皐がそう叫んだように聞こえた。その瞬間、圭吾はBETAに向けるべき右腕部の兵装、12.7mm重機関砲を人間の乗る民兵の機械化歩兵装甲に照準し、トリガーを引いていた。

重機関砲の射撃時の反動は凄まじく、生身の人間が右腕だけで撃とうと思えば肩から吹き飛ぶ程の威力だと思ってしまう程に大きかったが、システム制御で自分に伝わる反動は軽減され、せいぜい振動しているくらい位だなぁ、と思ってしまう程だった。

 

『敵歩兵部隊が第1小隊と接敵、交戦を開始。』

 

耳元で話したのは国連軍成都補給基地から敦煌基地に向かっている国連軍所属の戦術機小隊の戦闘指揮車の随伴として余っていた戦闘指揮車を一時的に貸与して貰い、仮設CPを作った用だった。データリンクが機体間だけで表示されている戦域は狭かったが、戦闘指揮車が入ることによって戦域が広がり、現在移動中の戦術機小隊が後方1200mに接近している事が分かった。

そしてデータリンクに写しだされたunknown表示の赤いアイコンが次々と消えていくのも目の前に表示され、自分が射撃している機械化歩兵装甲の位置も表示されていた。

 

『あいつ、被弾したはずなのに、出血してないっ!』

 

佳奈がそう叫ぶと、和弥は短距離跳躍をし、機械化歩兵の前に着地した。

 

『こいつには人が乗ってないっ!敵の本隊は側面だっ!一代っ!!』

 

『ブラボー1よりアルファ1、敵の本隊は側面ですっ!機械化歩兵装甲はダミーでした!』

 

一代はまだ再編成されたばかりでコールネームが決まってないので代用される一般的なコールネームを使い、皐を呼び出した。

 

『アルファ1了解。第2小隊はダミーの破壊後、側面に展開。』

 

『了解。アルファ1より小隊各機、ダミーを12.7mmでメインコンピューターを撃った後、第1小隊の右側面に展開します!』

 

一代がそう言った後、示し合わしていたのか各小隊が自分のポジションを移動し始めた。それに合わせて第2小隊も移動を開始した。移動目標は第1小隊の背面だ。

 

『ブラボー1よりブラボー各機、後方100m短距離跳躍です。』

 

一代の命令で一斉に機械化歩兵が飛び上がった。

______________________________

 

『接敵と同時に制圧射撃。戦闘車両には擲弾筒を使用せよ。』

 

圭吾たちの第2小隊が短距離跳躍が終わって、姿勢調整をしている時に通信が入った。第2小隊の後方200mにて交戦中の皐からの命令だった。

戦闘車両が出てくる最悪の事態に備えて擲弾の使用許可を下したのだろう。そう思われた。

 

「「「了解。」」」

 

圭吾はウィンドウを閉じて、目の前に広がる景色に目を凝らしていた。敵が何処から現れるか分からないからだ。

その瞬間、戦域マップの自機の前に赤いドットが大量に出現した。敵の反応だ。

 

『ブラボー1エンゲージ!制圧射撃開始っ!』

 

その言葉を待っていたかの様に全員が12.7mm重機関砲のトリガーを引いていた。姿を現した民兵に次々と人間に撃てば飛散する程の威力のある弾頭が次々と軽装の民兵に命中していった。肩に当たり、肩を吹き飛ばされ、失血し、絶命する者。頭に当たり、頭部を失くし絶命する者。運良く急所を外れたが、痛みにもがき苦しむ者。それが眼下で5秒間だけ起きた。とても見るに負えない悲惨な状況が一代の射撃開始命令20秒後に起こった。

 

『ブラボー1よりアルファ1。右側面掃討完了しました。』

 

一代は何食わぬ顔で皐に報告をしていた。そんな状況見た筈なのに、平気そうでいる一代や和弥の事が圭吾は不思議で堪らなかった。

 

『アルファ1了解。現区域に敵影無し、元の配置に戻る。』

 

『了解。ブラボー1より小隊各機。ポジションに戻ります。』

 

そう一代が言うとそれぞれ主脚にて元のポジションまで戻って行った。

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『民兵の掃討完了。敦煌に向けて再度前進する。』

 

中隊長である皐の命令でトラックにエンジンの点火音が響いた。

先程の民兵との交戦で民兵40人を射殺した。どの民兵も漢民族系の顔をしていることから、中国人だということが分かっていた。今まで他の補給部隊などを襲っていた民兵集団だという事は分かっていて、リーダーの顔写真もあり、腹部に被弾し内臓物が出ている死体の中にそのリーダーも確認された。

 

「佐鳶少尉、質問宜しいでしょうか。」

 

『どうぞ。』

 

「何故この地域の民兵は軍の物資を強奪する様になったのでしょうか?」

 

圭吾はただ単純な疑問を聞いた。前線が近いとなると生活必需品の値段が高騰するのはよくある話だ。飢餓に苦しみ、難民となり政府に支援を求めても僅かな食料と水の配給があるだけだ。そういった状況にそれぞれの地域に住んでいる民兵が集結し、正規軍や国連軍所属の補給部隊から奪い、民間人に配給しているのだろう。圭吾の仮説はこうだった。

だが、真実は圭吾には分からない。任官して間も無いので、日本帝国以外のそういった体制は理解出来ていないのだ。

 

『中国政府からの緊急支援物資投下が1年程前から停止しているんです。そのため、中国各地は武装し、民兵となり、その民兵はそれぞれの地域の人間を養う為に補給物資を強奪している事が分かっています。』

 

圭吾の仮説は正しかった。やはり民兵が民間人の為にやっている事だった。だが、幾ら民間人の為とはいえ、正規軍から強奪するなどそれぞれの軍から討伐命令が下るのも仕方の無い事だ。

 

「そうでしたか。ありがとうございます。」

 

『いいえ。』

 

圭吾は一代の返事を聞いてからウィンドウを全て閉じ、周囲警戒に集中した。

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民兵との遭遇以来、何の勢力とも遭う事無く、圭吾達は敦煌基地に到着した。大陸派遣軍設置して急ごしらえの基地でまだ完成はしていないが、外周には鉄筋コンクリートで固められた高さ12m程の壁が作られていた。その壁の上には等間隔に観測所と対戦車砲、機関銃陣地が用意されていて、そちらの方はもう完成していた。基地の施設は司令部等は地下に作る様だが、格納庫や集積場は全て地上に作った様だった。

 

「ここが敦煌基地か。」

 

圭吾は格納庫前にある滑走路の横の積み下ろしコンテナを置くスペースに着地した時、そう言った。

日本とは違う暑さが照りつけられていた。

 

『これより格納庫群格納庫11番に入り、着替え、司令官に挨拶に伺う。』

 

「「「了解!」」」

 

皐はヘッドセット越しでも大きな声で言った。

 

『機械化歩兵は2列縦隊にて向かう。トラックが誘導せよ。』

 

『了解。03号車、先頭にて誘導します。』

 

トラックの3台目の通信手がそう言った。

 

『03号車の尻についてけ。』

 

「「「了解。」」」

 

そうして、圭吾らは2列縦隊で並び、主脚を動かした。

_______________________________

 

11番格納庫に入り、指定の場所で機械化歩兵装甲を待機状態にした後、圭吾はトラックから荷下ろしされた自分の荷物を探していた。

トラックの荷台から降ろされていた荷物は半分が中隊の人間の私物で、もう半分が敦煌基地に補給されていない部品や整備機器の物だ。新設で遠方だと補給も遅れるので仕方ないのだ。

 

「圭吾君、行くよ!」

 

トラックから自分の私物を見つけてよけているところに遥音が現れ、強引に圭吾を引っ張った。

圭吾は何も言わずにただ、遥音にされるがまま着いて行った。

________________________________

 

「只今より中隊ブリーフィングを始める。」

 

遥音に連れられてきたのは真新しい壁の新しい機材、新しい机と椅子の会議室だ。どれも日本にある物と変わらず少し心を落ち着かせていたが、会議室のホワイトボードの横に立っている皐が口を開いた途端、気を引き締めた。

 

「先ず、この基地の説明を...。佐鳶少尉。」

 

「はい。」

 

皐の横に立っていた一代が脇に抱えていたファイル開き、説明を始めた。

 

「本日より日本帝国陸軍摂津基地第221機械化歩兵中隊は、日本帝国大陸派遣軍敦煌基地第13機械化歩兵中隊に転換する。その件に関して当基地CPオペレーターの高槻伍長より詳しい説明をして貰う。高槻。」

 

「はい。ご紹介預かりました高槻璃子伍長です。敦煌基地第13機械化歩兵中隊には当基地司令部より発令される第1、2、3、4、5種戦闘配置が発令された時のみ、機械化歩兵装甲を着用し、侵入が予想されるダクトや通路、司令部周辺での迎撃体制が義務付けられています。基本的には機械化歩兵装甲を纏った状態での屋外の戦闘は想定されておりませんが、当基地物資集積場や滑走路、正門周辺での警戒任務などが課せられる場合もあります。当基地には現地民より募った義勇兵や、場合によっては国連軍部隊、統一中華戦線部隊、米陸軍部隊なども出入りすると考えられますので、その際の案内や警戒、監視などの任務も御座います。以上が第13機械化歩兵中隊での主任務です。第13機械化歩兵中隊の格納庫は、現在前摂津基地第221機械化歩兵中隊付き整備兵が駐留し整備を行っている11番格納庫とします。以上です。」

 

璃子は持っていたファイルを閉じると、後ろに下がってドアの近くまで下がって行った。

圭吾は璃子の言っていた事を大概は理解出来たが、この基地に頻繁に他の国の軍が出入りするという所に疑問を感じていた。

 

「ありがとう、大概伍長。それに急で悪いが、敦煌基地西200kmに設置されている前線補給基地の北西1000km地点を移動する中隊規模のBETAが静止衛星より確認された。前線補給基地には戦術機部隊と砲兵部隊、歩兵部隊が駐留しているが、基地司令部を守る機械化歩兵部隊は駐留しておらず、このまま機械化部隊が居ない状態で戦闘に突入してしまうと陥落してしまう恐れがある為、敦煌基地司令部より援軍として敦煌基地から戦術機部隊2個小隊と機械化歩兵部隊2個中隊に前線補給基地死守の命が下った。

我々第13機械化歩兵中隊も前線補給基地司令部周辺地下通路の防衛を任された。」

 

その瞬間、新しい基地に配属されたという浮かれた雰囲気に包まれていたブリーフィング室が一気に恐怖で包まれてしまった。

圭吾たち第13機械化歩兵中隊に任された地下通路防衛は、狭い地下通路で途絶えることの無い小型種との戦闘を行い、司令部に近づけさせないという任務だ。聞こえはいいが、戦闘後の地下通路は惨状といっても生ぬるい程になっているといわれている。

そんな任務を基地に着いたばかりの第13機械化歩兵中隊に命令したのには何か意図があると考えると同時に、圭吾は只ならぬ悪い予感がした。




いやぁ、どんどん鬱内容にしていきくつもりですので、そういう手のものが苦手という方は閲覧をご遠慮ください。

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