Muv-Luv Unlimited Base Shielders   作:しゅーがく

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お久しぶりです。しゅーがくです。
何日ぶりの登場かは分かりませんが、こちらを先に投稿させて頂きます。まぁ、生存確認程度に思って貰えば結構です。


episode16 再編成

 

 

 

 

 

圭吾が原隊復帰したのは防衛戦の終結から約1ヶ月経った頃だった。

再編成は完了し、新しい基地司令も着任した。新たに基地が動き出していたのだ。

退院する数日前、圭吾がふと見ていたテレビはガッチガチのプロパガンダ放送では無く、ドキュメンタリーが放送されていた。

題は『敦煌防衛戦の奇跡』

圭吾達が奮戦し、戦死者を大量に出した戦闘のドキュメンタリーだ。内容はやはり基地司令の逮捕に関する内容は無く、俳優や女優が兵士の役を演じて部分部分の再現ドラマを流す。

迎撃作戦発令から援軍の到着まで事細かに再現されていた。

再現ドラマが全部終わった最後には迎撃作戦の戦死者と生還者の人数が表示された。それには世間に大きな衝撃を与えたという。

その放送からは、敦煌基地への手紙が相次いで送られてきていたが、等の基地の人間はそれどころではなかった。

再編成に明け暮れ、異動が出来る大陸派遣軍を検索したりしていた。

国内からの声は届かなかったのだ。

______________________________

 

「鉄無二等軍曹、原隊に復帰します。」

 

「うむ、確認した。」

 

圭吾は中隊長室に来ていた。

退院が認められ、四肢が正常なのを確認すると、皐の所へ向かい、原隊復帰報告をした。

圭吾が皐と会ったのは、PTSDの症状が無い事を直接確認していった時以来だった。それからは、遥音や佳奈、奈緒が来ていた。たまに一代と和弥が来るくらいだった。

 

「連絡がある。我が基地は再編成後に所属部隊による連携訓練が行われている。それ故に当直の隊の周期が早くなっているのに注意しろ。それと、第13機械化歩兵中隊及び臨時編成中隊は合併し、第13機械化歩兵中隊となった。D小隊に臨時編成中隊所属だった4人が配属となった。覚えておけ。」

 

「了解、失礼します。」

 

圭吾はそう言って原隊復帰の挨拶を終えると中隊長室を後にした。

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第13機械化歩兵中隊の機械化歩兵装甲が保管・整備されている格納庫は、最後に圭吾が見た時とはうって変わって、所狭しと機械化歩兵装甲が立ち並んでいた。どれも日本帝国正式採用の87式機械化歩兵装甲だ。

カラーリングと迷彩柄は殆ど同じで、肩部には其々の部隊の部隊章や部隊名が入っている。その中でも一際目立っていたのは、『13』の書かれてた機械化歩兵装甲だった。

基地防衛戦終盤、満身創痍でパイルバンカーのみで吶喊した部隊。そう言った話が、機械化歩兵装甲に対してもなんらかのオーラでも浴びせたのだろうか。血生臭さや泥汚い臭いがしないはずなのに、しているように感じる。惨状を這い蹲って生き残った部隊の宿命と言わんばかりの様子だった。

 

「鉄無二等軍曹、退院されたんですね。」

 

そう言って圭吾の前に立って敬礼をした整備兵は、専属の搭乗する人が長い間顔を見せないと寂しいと言い、それまでほんだいではなかった様に口調を変えた。

 

「二等軍曹の機体が帰還した機械化歩兵装甲で一番損傷が大きかったのは知ってますか?」

 

「そう見たいだね。怪我も俺のが一番重かったみたいだし。」

 

「ですので、機体の修理よりもそのものの交換を行いました。」

 

そう言うと整備兵は圭吾の機械化歩兵装甲の脚部をポンポンと叩いた。

 

「そうだったのか。ありがとう、伍長。」

 

「いえ!まぁ、こうして二等軍曹のお元気そうな姿を見させて頂けただけでも!戦術機に持たれながら帰還なさった時は心臓がはち切れるかと思ってたんですよ。」

 

整備兵は腕をブンブン振って感情を表現していた。防衛戦の前の姿とは相反する様なので、少し面を食らったが、素だとこうなんだろうと圭吾は思った。

 

「よく覚えていないけど、そうだったっぽいね。それより、D小隊付の整備班は大丈夫?」

 

「えぇ。ベテランの整備兵ばかりですから大丈夫ですよ。」

 

そう言うとD小隊付の整備兵だった整備兵たちは、新しくD小隊になった旧臨時編成中隊の4人の機械化歩兵装甲の整備をやっている最中だった。

黙々と整備を進める整備兵の顔には曇りが1つも無かった。

 

「そうみたいだね。ベテラン揃いなのかな?」

 

「そうですよ。何やら知りませんが、作業用機械化歩兵装甲を戦闘用に改造しているという噂もありますがね。」

 

そう言われて圭吾は格納庫の片隅にあるオレンジと白のカラーリングをした作業用機械化歩兵装甲を見た。一見はそんな改造がされているとは到底思えない様な普通の機械化歩兵装甲が鎮座していた。

 

「......まさかな。」

 

「ですよね。では、私はまだ仕事があるので失礼します。」

 

そう言って伍長は敬礼をして整備兵の中に紛れていった。

______________________________

 

圭吾は特に任務が無かった為、自分の部屋に戻っていた。

荷物を置きに格納庫行く前に寄ってはいたが、2週間も戻っていない訳で埃が少し溜まっていた。

部屋にある情報端末、基地のサーバーにアクセスして情報を閲覧できるものに手をかけた。突然気になった事があったのだ。

それは圭吾に完結に説明された先の防衛戦の情報だ。自分の配置で起きた事はある程度思い出してはいたが、他の隊では何が起こっていて、何故追悼式には第13機械化歩兵中隊と臨時編成中隊しか居なかったのかという謎だ。敦煌基地には基地内待機だった駐屯砲兵部隊も居るはずなのに、その追悼式には居なかったという言い方で聞いたからだ。

圭吾は端末の電源を入れて、データサーバーにアクセスした。

最近の更新と戦闘ログの見れるファイルを開き、ダウンロードする。

時期にダウンロードは終わり、圭吾はファイルのテキストデータを開いた。

参加戦闘記録には古い順で『前線補給基地防衛戦』、『敦煌基地防衛戦』と入っていた。圭吾は敦煌基地防衛戦のファイルを開いた。

中には膨大な戦闘報告書と被害、戦死者、喪失兵器数が書かれていた。

圭吾は砲兵部隊の詳細の書かれた部分だけを検索をかけて見た。

 

『当基地砲兵部隊約1個大隊は迎撃開始30分前にて、前衛後方にて陣を展開。砲戦準備。

戦闘開始と同時に前衛へ砲撃支援開始。

20分後、前衛戦術機部隊の後退に合わせて順次後退開始。

40分後、戦術機部隊全滅によって孤立。最大戦速にて戦線離脱を開始。

58分後、BETA先頭集団と会敵。隊を2分。

176分後、全滅。

 

基地内待機砲兵部隊2個大隊は迎撃開始360分後に前衛へ支援砲撃開始。

20分後、弾薬搬送の為支援中断。

30分後、支援再開。

56分後、砲身冷却の為陣地交代。

200分後、再開。」

450分後、第13機械化歩兵中隊及び残存戦力を投入した戦闘に支援と弾薬搬送の為に基地外に前進。

500分後、全滅。

 

残存していた砲兵部隊は全て第13機械化歩兵中隊及び残存戦力の支援の為に出撃。未帰還。』

 

全滅していた。

だが、圭吾の記憶には最期の防衛戦に砲撃支援は無かったのだ。そことの辻褄が合わないのだ。

ページを変えると、部隊移動針路の書かれた地図が表示された。その地図に圭吾は目を見張った。

基地外に出た砲兵部隊は針路が少しずれており、ロストしたのはBETA戦闘集団の脇腹辺りだった。時刻は圭吾達が奮闘していた時間と酷似している。戦場でBETAの横っ腹に当たってしまったのだ。

支援に向かっていた自走砲は65門。単純計算で195人が向かっていたのだ。普通ならば、戦車の護衛も付くのだが、出払っていて自走砲だけで戦場を進んでいたのだ。

 

「195人戦死していただなんて......。そういえば、この前の追悼式の参列名簿は?」

 

圭吾は遥音から聞いていた参列部隊を思い出していた。戦術機部隊、機甲部隊、機械化歩兵部隊、警備部隊......。

 

「砲兵部隊が無かった......。」

 

本来ならば名が載る筈だったところに195人が載らなかった。

圭吾は初めてここで本当の戦死した人数を知った。

敦煌基地防衛戦での戦死者は1000人を超えていたのだ。

だが、それでは分からなくなる部分があった。それは、砲兵部隊の配置移動だ。

圭吾が退院してから、移動する最中、自走砲が何両も訓練を行う様を見ていたのだ。そうなれば、戦死者としてカウントされていなかった筈の195人は何処へ消え、配置移動で砲兵部隊を補充したのか......。

圭吾には、この事がタダの手違いにしてはおかしいところがあり過ぎるとしか思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2週間コツコツと書いてはいたのですがね。案外終わらないものですよ。

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