Muv-Luv Unlimited Base Shielders   作:しゅーがく

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どうもお久しぶりです。しゅーがくです。

こちらの参上はかなり期間が空きましたね.......すみません。あちこちで言ってますが、短編上げてからペースが落ちに落ちてます。
まぁ、今日気が向いて書いたので投稿させていただきただきます。


episode 15 追悼

 

 

圭吾が動ける様になったのは、皐が訪れてから2日後の事だった。かなり頑丈に固定しているし、回復速度も何がしかの薬品で向上している。そして出される飯が、合成であるが肉、肉、肉、どこまでいっても肉だった。これはつまりタンパク質を摂ってエネルギーを養えという事だったのだろうかと圭吾は考えていた。

だが、今圭吾が在籍する敦煌基地はこれまでのBETA大戦でそう無い、BETA侵攻を総力戦で撃退するという偉業を成し遂げたが、その代償は大きかった。

所属する戦術機甲部隊3個中隊全滅、機械化歩兵部隊7個中隊生存約1個中隊、戦闘ヘリ部隊2個中隊全滅、機甲部隊1個師団全滅、警備歩兵部隊3個中隊全滅、備蓄砲弾残弾10%、支援兵装稼働2割......。最早基地として機能してない様なものだった。警備歩兵部隊が本来する仕事を、生き残って尚且つ、負傷してない機械化歩兵部隊の数人が門前に立つのだ。

どうやら6人程らしい。

もう基地機能は風前の灯火だった。基地にいる人間も本来は戦闘を主とする人間ばかりでは無いので、戦闘も出来無い様だ。第13機械化歩兵中隊付きの整備兵は警備の手伝いなんかもしてくれてる様だが、あまり手伝えてない様だった。

 

「早く治さなきゃなぁ。」

 

圭吾はそう思っていた。

少しでも今残っている人間の足しになればと考えての事だった。

だが、それでもいい事があった。

他の基地から支援火器と部隊が回ってきたのだ。砲兵部隊2個中隊、機械化歩兵部隊3個中隊、戦術機甲部隊1個中隊。決して多くない戦力だが、無いよりマシだった。

到着した部隊の人間はこの敦煌基地にどれだけ人が居ないのだろうと、大層驚いていた。戦闘員の殆どが戦死し、残った12名しか居ない。他は非戦闘員だ。

生存した部隊の長である皐の処にそれぞれの部隊の長が聴きに行っていた様だったが、皐は全て『記録がある。それで確認してくれ。』そう言った様だった。

言われるがままにその記録を読んだ長たちは、背筋を震わせたそうだ。

今回の迎撃作戦、戦闘参加人数904名、生還12名。パレオロゴス作戦を知る長達はその数字を見て『ヴォールク連隊』を思い出した。1個連隊でハイヴに突入し、常にデータを持ち帰ってくる戦術機以外、全滅したという。ハイヴに突入した連隊には、戦術機を持たない機甲部隊や歩兵も入っていったと言われている。それが、今回敦煌基地での迎撃作戦がそうであったのだ。基地が無事なら、BETAが基地に入られなかったのは理解出来るが、それなのに警備歩兵部隊が全滅した理由が分からないからだ。それは自然と基地外の戦闘に参加していたとこを裏付けていた。

長たちの読んだ記録には、生還した機械化歩兵の損傷状況や、搭乗する兵士の状態なんかも書かれていた。

生還した部隊の長である御宮 皐は、残弾無し、パイルバンカー耐久値レッドゾーン。基地帰還時は機体のグレーが赤褐色と血色になるほどBETAの体液を浴びていた。

他の機体も装備を失ったり、損傷が酷かった。1番損傷の酷かったのは、鉄無 圭吾二等軍曹の機体。

彼方此方、凹み、フレームに亀裂が入り、御宮機同様赤褐色と血色になっていた。

長たちはこの生還した部隊、『第13機械化歩兵中隊』を『基地の為、装備無くして吶喊した基地の盾』、そう比喩した。

_________________________________

 

圭吾が復帰したのは、身体が動くようになって2週間後だった。

その頃には補充部隊が続々と到着し、賑わいを見せている。

生還した第13機械化歩兵中隊12機とその他4機はそのまま中隊を組む事になったが、よく分からない噂が流れている様だった。

 

『生還した機械化歩兵部隊は狂人集団だ。』

 

『弾薬が尽き、兵装が無くてもBETAに吶喊する狂人たちだ。』

 

そう言われている様だった。

迎撃作戦は公開されない事になっていたが、何処かから口頭で広まってしまった様だった。

そのせいか、圭吾自身、復帰した時に到着した機械化歩兵部隊の隊員と顔を合わせると挨拶していたが、避けられている様に感じていた。

圭吾が格納庫に行くと、圭吾の部隊でのコールネームであるジーク3、つまり肩番号『B-3』は新しい機械化歩兵に変わっていた。

圭吾は近くに居た自分の中隊付きの整備兵を捕まえると、理由を聞いた。

 

「自分の87式がなぜ新しく?」

 

「それはですね、帰還された時には修理不可能な状態でしたので、輸送しました。」

 

そう言って圭吾に挨拶すると整備兵は走って戻っていった。

内心、どれ程の損傷だったのか圭吾は気になったが、格納庫を離れる事にした。整備兵の整備の邪魔になっても仕方ないからだ。

_______________

 

自室に戻った圭吾は、本来ならばやらなければいけない、報告書の作成をせずにいた。

負傷の療養中に、皐から報告書の作成はしなくてよいという連絡があったからだ。本来なれば、しなければいけない仕事だが、戦闘後の状況が状況なので、報告書を書いて提出しなければいけないと言わず、あれだけ鮮明に記録が残っているのならば、提出しなくてもよいという事だったのだ。それは、戦闘中、意図的にレコーダーが作動していた。会話内容や戦況、周りで起きた事象なんかも事細やかに記録されていたからだ。

圭吾としても、退院直後に報告書を纏めて提出するなんて仕事はしんたくなかったので、ありがたく思っていた。

 

「暇だ。」

 

報告書を纏める必要の無い圭吾は自室で暇を持て余していた。基地の書庫なんかに行けばもしかしたら、何かあるかもしれないが、圭吾のいる兵舎から直線でも2km、通路を通っていけば30分以上離れているところにある書庫に態々出向きたくなかったのだ。

 

「圭吾君、入っても?」

 

そんな暇を持て余してた圭吾の部屋に遥音が訪れてきた。この敦煌基地に転属になって初めての事だった。

 

「いいよ。」

 

「お邪魔します。」

 

そう言って入ってきた遥音は何処か不安そうな表情をしていた。

 

「圭吾君、怪我大丈夫?」

 

「あぁ、心配無いよ。完全とは言わ無いけどね。」

 

そう言って圭吾は怪我した部位を動かして見せた。

 

「本当だ。」

 

そう遥音が返事すると、圭吾はどこかに座る様に言って、圭吾も椅子に腰を下ろした。

 

「圭吾君って朝は何してたの?」

 

「あぁ、うん。病室の方を片付けて、こっちに戻ってきただけだよ。どうしたの?」

 

そう圭吾が答えるとバツの悪そうな顔をして遥音は俯いてしまった。

 

「連絡は受けてないんだね、やっぱり。」

 

確かに圭吾にはそう聞こえた。

 

「何か言った?」

 

「ううん、何でもないよ。」

 

そう答えるも、圭吾には遥音の表情の奥に曇りがあるのを見落とさなかった。

 

「本当に、どうしたの?」

 

圭吾がそう言うと、遥音は何かを考えて、膝の上で握り拳を握った。

 

「朝早くにね、追悼式があったの。」

 

遥音は確かにそう言った。

圭吾にとっての追悼式、言葉そのものの意味は理解出来ているが、誰の為に何の為の追悼式なのだと、考えてしまった。

 

「は?追悼式???」

 

「うん。この前の防衛戦で散っていった人たちへのもの。」

 

本来ならば、やらないものだが、何故やったのか圭吾には理解できなかった。軍規というか、現場ではそう言った事をするのは無駄だと散々教えられてきたのに、最前線の基地。しかも、防衛戦に参加した基地が行うなんて考えられなかったのだ。理由は分からないし、それを曲げてまで行ったのも理解出来なかった。

 

「何で、やったんだ?本来ならば、やらないものじゃないのか?」

 

「何でも、今回の防衛戦は日本帝国軍史上最低兵力での戦闘でありながら、撃破BETA数は防衛戦に参加した部隊が本来ならば何倍といるのに、たった900人弱で迎撃したからだって言ってた。」

 

圭吾には遥音の口ぶりからその追悼式に遥音も参加したのは読み取れたが、本当にそれだけの理由で行ったのかが未だに理解できなかった。

 

「それは俺も知っているよ。」

 

「うん、それは私も分かっている。だけどね、本当の理由はさっ。」

 

遥音はそこで言葉を詰まらせた。何がそれを詰まらせたのかは分からなかったが、明らかに様子がおかしい。

遥音は妙にガタガタと震えているし、呼吸も乱れている。

異常だった。

 

 

 

「無能な指揮官の元で動いた、本来死ななくても良かった兵士を弔うっていう理由があったの。」

 

 

 

圭吾は一瞬息が詰まった。

無能な指揮官に兵士が殺されたという言葉が理解できなかった。圭吾にとって指揮官という単語から連想される人物は、御宮 皐だ。圭吾から見ても、当時の全体の指揮は素晴らしく、そんな騒ぎになるような行為は全くしていないのだ。

だとすると、誰が無能な指揮官だったのかと圭吾は考えだした。指揮官という単語から連想される人物。

 

「基地司令か?」

 

圭吾にはその答えだけが残った。

 

「そう。あの、兵力が1/3にまで損耗して後退した時、私たちを蜂起させようとオープン回線で演説のような事を言ってたあの基地司令。」

 

遥音は一呼吸して息を整えた。

 

「あの演説の後、CPでCP将校とかと戦況表示画面を見ていたそうなの。それは、圭吾君が対空機銃を小型種殲滅に使おうって提案した時も近くで聞いていたらしいの。だからすぐに許可が下りたし、輸送も迅速に進んだ。だけどさ、」

 

圭吾には見るからに目の前の遥音の目から光が消えていくのが見えた。声も段々と冷たくなっていった。

 

「私たちの弾が無くなって、戦車も自爆して、警備部隊のみんなも谷に爆弾抱えて堕ちていって、みんなでパイルバンカー頼りに最期の突撃の声を聞いた時にさ。」

 

 

 

「あの無能基地司令は、帰ってきた輸送ヘリの操縦士脅して、逃げたんだ。私たちがBETAや味方の血で赤くなって、仲間の死も悲しんでいられない様な絶望の戦場で戦っている時に。」

 

 

 

一瞬、圭吾には遥音の言った言葉が理解できなかった。

基地司令が逃亡しただと、そんな言葉が圭吾の脳裏を駆け巡る。

 

「しかもさ。BETAは結局、援軍に来た戦術機部隊に殲滅されたでしょ?あの部隊、本当だったら、BETAが侵攻してくる3日前に到着していたはずだったんだって。なんでも、基地司令はここに配属になってから事務処理とか書類処理を怠ってて適当に処理していた書類の中に戦術機部隊の配属に関する書類があったの。それを新入りの事務処理官かなんかに押し付けて『3日延期って書いておけよ。』って言って遊んでいたらしいの。」

 

圭吾は頭の中で何も考えられなくなっていた。

 

「それで遅れたのは戦術機部隊4個中隊。しかも、最新装備のF−15J 陽炎っていう第2世代戦術機。それがあれば、防衛戦でこんな被害を出さずに勝てたんだってさ。」

 

「それで書類処理を怠って自分で招いた基地のBETAによる蹂躙を恐れて逃げ出した。BETAに喰われるのが相当怖かったみたい。ふふっ。」

 

遥音は声は笑っているが、表情は冷たい。圭吾がこれまでに見た事もなかった表情だった。

 

「だから無能で敵前逃亡した基地司令よって殺された兵士たちの追悼式。会場の準備は私たちでやったの。非戦闘員の分の席と補充兵の席の用意は手伝いに来てくれた、この前補充できた部隊の人にお願いしてね。私たちは『防衛戦に参加していた部隊の人数分の席』を用意したの。式の最中は寂しかった。周りに誰もいないんだもの。900脚以上の席の中にいるのはたった圭吾君と負傷して回復してない3人以外の8人だけ。」

 

遥音は異常なほど話の内容とは不相応の表情をしていた。口角が釣りあがっているのだ。

 

「すぐに逮捕された基地司令も追悼式に来ていたよ。誰も座っていない900弱の席が見えるところに。うふふふっ、あはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!」

 

圭吾は今の状況が危険だと本能的に察知した。圭吾の膝は笑い、手は震え、顔の筋肉は強張っている。目の前で異常をきたしている遥音を見て怯えているように感じた。

 

「許さない、絶対に。許すものかっ。」

 

そう言うと遥音はその場で気を失ってしまった。

圭吾はそれを見るが、すぐには動けない。目の前で起きた事を整理しきれないのだ。

豹変した遥音を理解できず、恐ろしく思っているのだ。

 

「どうしちゃったんだよ、遥音っ。」

 

圭吾の口から出たのは、基地司令を非難する様な言葉ではなく、豹変した遥音を思っての言葉だけだった。

 




今回、遥音が少し豹変しました......させました。
まぁ、読者様にどう映るかは私的にはどう映ってもいい様にはしますがね。

ご意見ご感想お待ちしてます。

ー追記ー
数字がおかしいところがあったので変更させていただきました。

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