Muv-Luv Unlimited Base Shielders 作:しゅーがく
やっと14話です。長いですね〜。
予定だとまぁこのまま行けば30前後で終わる気がする......。
ということで。
圭吾の身体は思いの外回復が早く、1ヶ月で身体を自由に動かす許可まで降りた。
圭吾が目を覚ましたあの日、気絶する直前をベッドの中で思い出していた。
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乱戦の最中、後方で爆発音が轟き何が起きているかも確認出来ずに、がむしゃらにパイルバンカーを使ってBETAを殺していた。
関節部の磨耗も警報が出る直前、機体を吹き飛ばされ何度もぶつけた為に歪んだフレーム、腕を打撲したのか激痛が走っている。
「ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そんな風に叫んでいた気がしていた。
マップは赤くなり、味方がどこに居るのかもちゃんと見ないと分からないまでになっていた。
BETAの死骸や肉片はあちこちに転がっている。格闘戦中にも何度か戦車を見かけていた。潰される瞬間だったり、砲塔が吹き飛ばされていたり、車体だけで走行しているのもあった。
「死ね!死ね!死ね!!!お前らはここで死ぬんだよっ!!!!」
声にならない声で叫んでいる。圭吾の血中アドレナリン濃度もさぞや高くなっているだろう。
小隊での戦闘だが、周りをみたら僚機も小隊の姿すら見えない。こんな乱戦だったら仕方の無い事なのかもしれない。
圭吾はそこで少し動きを止めてしまった。
その瞬間機体に衝撃が走り、圭吾の血中アドレナリンも一瞬で消え失せるような事態。
目の前の戦車級が圭吾の機械化歩兵装甲の右腕を掴んだのだ。
「離せ、離せ!」
圭吾はパイルバンカーを振りかぶり、突き刺そうとするが、届かない。
動きを止められ、気付けば戦車級に囲まれ、足元には白い影、闘士級まで現れた。
「ひいいいぃぃぃ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!殺して、暴れて、しまって............ごめんなさ......い。」
目の前の戦車級が大きく口を開けた。捕食か殺害が目的かも分からない行動だが、瞬時に状況は呑める。殺されるのだ。喰われるのだ。
「嫌だ......まだ死になくない............
」
気付けば掴まれていた右腕ももぎ取られ、操作している圭吾の右腕が剥き出しになった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ........................。」
気付けば一心不乱に謝っていた。BETAに謝っているのか、これまで世話になった人に謝っているのか。
そして、脳裏にある事を思い出していた。
『__________戦車級や闘士級に殺される瞬間の兵士・衛士は、一心不乱に誰への謝罪か分からないが謝る事がある。そういった兵士・衛士は、精神が崩壊仕掛けている。何も言わなくなったら苦しまない様に撃つ事が善意であり、その場に直面した兵士・衛士の義務である。』
士官学校の座学の内容だ。教官がそう言った話をしたのだ。
「嫌だ......嫌だっ............うわぁぁぁぁ!!!」
最期の力を振り絞り、パイルバンカーを振りかぶった、さっきは当たらなかったが今回は当たるかもしれない、そんなチャンスに賭けたのだ。
その瞬間、頭上を何かが飛び去った。大きな影だ。
『バカ野郎っ!気を確かに持つんだ!!』
圭吾はぼんやりと映る網膜投影に強化装備を着た男が映った。
そしてその刹那、圭吾を掴んでいた戦車級の頭上から光が降り注ぎ、体液を撒き散らした。周りに溜まっていた戦車級や闘士級も次々と血飛沫を飛ばし、近くにいた圭吾の機械化歩兵装甲にピシャピシャと飛ばしていく。
『アトラス1より帝国軍所属機、所属を申せ。』
苦しそうな声で皐が入ってきた。
まだ生き残っている様だった。
『こちら成都基地所属、B中隊 中隊長 葉木中尉。貴官らの増援だ。』
そう葉木は言うと、大声で指示を出した。
『中隊諸君!戦闘地域のBETAを殲滅せよっ!!』
『『『了解っ!!』』』
頭上を陽炎、F-15Jが飛んでいく。援軍は絶望的と言われていたのにも関わらず、援軍が来た。
日本帝国の戦術機はF-4J 撃震が中心だが、1部隊にはアメリカから買ったライセンス生産機、F-15Jが装備されている。そのF-15Jを装備している部隊の援軍だった。
『大丈夫か?えぇ...と......。』
「敦煌基地......ゲホッ......第13機械化歩兵中隊......鉄無...です。」
圭吾は全身に痛みが走り、呼吸もし辛かった。
『そうか。鉄無、跳躍ユニットは動くか?』
「動きますが......推進剤が。」
『なら運搬して貰う。今後続が到着した。』
そう言われ空を見ると見慣れた戦術機、撃震が来ていた。
『第13機械化歩兵中隊のコイツを敦煌まで運んでくれ。推進剤が心持たないそうだ。』
『分かった。』
薄れ行く意識の中、BETAの屍体の山に撃震が着地した。接地の際にグシャというような肉の潰れた音がしたが、意識はそこにはなかった。
機械化歩兵が浮き上がるのを感じると、圭吾は意識が遠のいた。
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圭吾は頭の中で目の前のBETAが口を開いた映像がフラッシュバックするのに悩んでいた。
圭吾の機械化歩兵装甲の右腕を掴んでいた戦車級BETA、口の周りに明らかに鮮血が流れ、歯のようなところには肉片がこびり付いていた。そしてその歯茎の横には............ヒトの頭のようなモノ。
「っ!?っはぁ!!!」
動いてはいいと言われているが、まだ中隊への復帰も機械化歩兵装甲の装着の許可も降りていない。足はまだギプスで固定されていた。
「くそッ......。」
鮮血を浴びた生々しいBETAが脳裏に焼きついて離れない。
圭吾どうこのフラッシュバックを乗り切るかと目を覚ましてから2日間考えていた。
圭吾はこれが原因でPTSDになるのも嫌だったし、情けなかった。そんな時、ベッドの横の椅子に誰かが腰かけた。まだ眼は覆われているので視野は狭い。丁度見えないのだ。
「鉄無。」
圭吾は声で誰だか瞬時に判断することが出来た。皐だ。
「どうされました?御宮大尉。」
「いや、なに。部下の心配をするのは当然だ。」
そう言って服の擦れる音がした。
「鉄無。士官学校で死に際にBETAに謝罪する衛士の話は聞いた事あるだか?」
「えぇ。あの話は印象的でした。」
やはりな、時圭吾は思った。部隊長ならば援軍に来た衛士から当時の圭吾の様子を聞いていてもおかしくはないのだ。
「援軍に来た衛士のこちらに送る報告書が今朝届いた。その中に貴官が取り乱し、BETAに掴まれてているのを目撃したと。その時貴官は『その話』に該当する行動があったとの事だ。」
やはりか、と圭吾は思った。
「ふむ......緊張状態にはなったようだがそこまでだな。普通ならば、見てられないものになるのだが、貴官は最後にパイルバンカーを振りかぶったそうだな。」
「確かに......。」
「ならば良い。貴官にPTSD発症を認めん。」
そう言って開いていたのか、紙を折ったような音がした。
「そうですか。」
「あぁ、私としても嬉しい。敵を小型種を主とする機械化歩兵が戦車級がトリガーでPTSDが発症するなら除隊だったんだ。」
そう言ってふっと笑ったのかそのまま皐は立ち上がった。皐の笑った顔が見れなかったのは圭吾としても残念だったが、視界の端に映る皐はとても安心しているように見えた。
いやー14話まで長かったですよ(笑)
知ってる方もいらっしゃるかも知れませんが、ここハーメルンで私は作品の連載を3つ持ってます。
『Muv-Luv Alternative Preliminary Ideal』とか『雪空の下の笑顔。』とか。持ちすぎですかねぇ。
ご意見ご感想お待ちしてます。