Muv-Luv Unlimited Base Shielders   作:しゅーがく

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どうも、しゅーがくです。
前回からどれ位経ったかは覚えてませんが、今回は今日かいたものをそのまま投稿させていただきます。


episode 13 帰還

 

 

 

 

圭吾はベッドに寝ていた。

点滴に繋がれ、心電図に繋がれ、身体が重かった。腕も上がらず、右目を覆われていた。

 

「ぐっ......痛てぇ!?」

 

両足と左腕に激痛が走った。

首はかろうじて動いた。首を必死に立てて足を見た。

ギプスでグルグル巻きだ。

 

「あっ......起きたっ。良かった......。」

 

視界には入らなかったが、圭吾の右側で声がしたので振り返ると、そこには遥音がいた。遥音も頭に包帯を巻き、腕を首にかけた布で支えている。

 

「俺は......基地の手前に......、居たはずじゃっ......っ!?」

 

「私が説明するよ。」

 

遥音の背後から菜緒が現れた。菜緒も負傷しているみたいだ。松葉杖をついている。

 

「その様子だと、圭吾は対空機銃を用意させた記憶はあるんだね?」

 

そう言われて菜緒から説明されたのは、たった数十人の防衛戦の話だった。

_________________________________

 

『砂塵接近!射程に入ります!!』

 

圭吾は操縦桿に汗を握っていた。

極度の緊張状態、恐怖、興奮。

目はギラギラしている。

 

『埋蔵爆雷起爆!』

 

耳元に皐の声が響いたのと同時に、砂塵の前から真ん中にかけて砂塵の中に火が吹き上がった。

 

『機銃一斉射!銃身が焼けるまで撃ち続けろ!!』

 

そして周りに並べられた幾つもの機銃からいく何発もの弾丸が吐き出され、砂塵を紅く染めていく。

そして弾が尽きると補充しなければならない。補充する度、ロケット砲弾が飛び、ミサイルが飛び、前線が後退する。

血飛沫で紅い空は段々飛び近付いていた。

後ろで轟いていた戦車砲も静かになり、振り返ると車外に出て砲弾を補充している。

支援が期待できないと言われたのに、支援を呼びかける戦車兵も居るようだ。ずっとCPを呼び出し、砲撃支援を呼んでいる。来るはずも無い砲撃支援を呼んでいる。

再び単調に機銃掃射が始まり、血飛沫で紅く染まる。

それの繰り返しだ。

マップに表示される赤いアイコンはどんどん減り、同時に網膜上に映されている弾薬も減っていく。

擲弾は大型種が接近する度に、皐の指示で2人くらいが擲弾を2発ずつ発射する。

足に命中すればよし、殺せれば尚良しだ。

ジリジリと迫るBETAは血みどろになっても進んでくる。

気付けば弾薬も尽きている。効くかも分からない7.62mm機関銃も撃つ。

右頭上で振動し、爆音を鳴らしている。

 

『戦車隊、砲撃を再開する!』

 

後ろで轟々と戦車隊が火を噴き始めた。たった27両しか残っていない戦車隊だ。

 

『臨時中隊全機残弾ゼロ!』

 

聞きたくない単語が耳に入る。残弾ゼロ。気付けば圭吾以外の機械化歩兵も機関砲の弾入る撃ち尽くした様だった。

 

『残弾ゼロ!』

 

『同じく残弾ゼロ!』

 

『こっちもだ!』

 

どんどん入る残弾が無くなった報告を聞き流し、右頭上で回転しているだけの兵装、7.62mm機関銃も残弾が尽きた。

 

「残弾......ゼロ。」

 

機械化歩兵部隊は兵装を使い果たしてしまった。

前の機銃銃座では空の弾薬箱で山が出来、積み上がっていたはずの弾薬の山もほとんど無い。後ろの戦車隊も固定軸機関銃を撃っている。

舞い上がる砂塵は変わっていなかった。

 

『アトラス1より機械化歩兵各機。コレより希望者のみでBETAに突っ込む!機械化歩兵は近接戦闘に向かないが、パイルバンカーで少しでもBETAの数を削る!希望しない者は戦域から離脱しろ!』

 

網膜に映される皐は唇を噛み締めていた。

 

『臨時中隊 中隊長よりアトラス1......パイルバンカーは使ってみたかったんだ。お供させて頂く!』

 

『臨時中隊全機、死ぬ覚悟は出来ています!』

 

いち早く立ち上がったのは臨時中隊だった。満身創痍で破損もあるというのに、気付けば既に片腕にはパイルバンカーがあった。

 

『クロム1よりアトラス1。俺たちも付いて行こう。』

 

『デルタ1よりアトラス1。仲間を見捨てる様なマネ、しませんよ。』

 

網膜に増えていく機械化歩兵たちの表情は覚悟が現れていた。

ふと圭吾がジーク1の自分以外のメンバーの表情を見ると、覚悟が決まった様だった。一代が圭吾の顔を見て、『鉄無......』と言われ、圭吾は重々しく首を縦に振った。

 

『ジーク1よりアトラス1。格闘戦は私たちの十八番ですよ?ついて行かない訳、無いです。』

 

『お前たち......。』

 

皐がすっと目を閉じて号令をかける直前、声が割り込んだ。

 

『戦車隊を忘れてもらっちゃ困りますねぇ。俺らが居れば......要撃級が27体は倒せる。』

 

圭吾は瞬間に察知した。戦車隊は全車自爆する気だという事に。

ふと機銃銃座に目をやると、警備兵達が居ない。何処へ行ったのかと見ると、丘の中腹にある大きな崖の下から這い上がろうとする斥候小型種を突撃銃やロケット砲で撃っている。機銃の横に積み上げていた弾薬の山は無くなったらしい。

 

『第3警備中隊よりアトラス1!小銃とロケット砲の弾はたんまりあるんだ。ここは通しやしないよ!』

 

音声だけ入る警備兵の声の向こうには小銃の銃撃音が絶え間なく響き、それの中にBETAの呻き声が混じっていた。

 

 

 

 

『残存部隊よりCP!我々は最期まで戦うっ!弾が尽きようと、脚がもぎ取られようと、最後の一兵まで引きはしないっ!』

 

 

 

『突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!』

 

 

 

 

荒々しく声を上げ、短い期間だったが、それまでに見たことの無い程に声を上げて皐は号令を出した。

戦車隊は崖を通り抜ける為、2両が道確保の為に自爆。残りは半分は大型種まで接近出来たが、自爆に成功したのは5両。その5両の中に、圭吾が爆弾を積み込んだ理由を聞いた243号車の姿もあった。

ここからの記憶は圭吾の中では曖昧だった。跳躍ユニットを駆使し、飛び回り、パイルバンカーでBETAを砕いていた記憶しかない。こんな重症を負ったところだけ抜けていた。

_________________________________

 

「あの絶望的な状況で私たちは基地を守る事が出来た。」

 

菜緒は俯いている。

ふと思いつき周りを見渡すと、自分が機械に繋がれているところまでしか見れてなかったが、周りにも圭吾と同じように処置されている人が何人もいた。

 

「戦車隊は全車未帰還、第3警備中隊も最期は爆薬抱えてBETAの蠢く崖に飛び込んだ。機械化歩兵中隊だってっ!?......パイルバンカー片手に突撃したから...........臨時中隊は3/4が戦車級に食われた。私達の中隊だって、デルタ小隊が全滅だよ......。」

 

圭吾は頭に衝撃が走った。デルタ、菜緒は確かにそう言った。

圭吾がデルタと聞かされて真っ先に出た顔は巽だった。

 

「はははっ!嘘だろっ!!デルタだって?......嵩音は?アイツもか!?」

 

「うん......私を庇ってね。一瞬だった。突撃級が来てると注意されても遅かった。振り返ったらもう目の前で、嵩音くんが私の機体に体当たりして、身代わりに......。」

 

口を開いて説明したのは遥音だった。

膝の上で拳を震わせてそう言ったのだ。

 

「くっ!?そう言えば、第3警備中隊も全滅だっけ?......。」

 

「うん......、乱戦中に一瞬だけ崖を見たんだ。そしたらたんまりと爆薬抱えた勉くんが笑顔で崖から落ちてくの......。」

 

圭吾は当てる宛てもない怒りを必死に抑えた。力む身体は塞がれた傷を開き、出血が始まる。視界がボヤけて、また気を失った。

気を失う最中、遥音と菜緒の背後に立つ皐が見えた。皐も身体はボロボロで、当てようのない怒りを必死に抑えているような表情だった。

 

 

 

 

敦煌基地防衛戦は少ない戦術機部隊と航空支援で戦い抜いたが、最終的には機械化歩兵部隊によって基地は守られ、多くの将兵が死んでいった。

 

生存:

第13機械化歩兵中隊 3/4、臨時中隊(伊那2等軍曹 縁2等軍曹)。

 

未帰還:

敦煌基地所属全戦術機部隊、機械化歩兵部隊約9割、戦車師団全隊、戦闘ヘリ部隊全隊、警備部隊。

 

 

 

 

 




次回の投稿も近日にしたいですねぇ。
どうなるか分かりませんが。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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