Muv-Luv Unlimited Base Shielders 作:しゅーがく
『コード991発生っ!コード991ぃぃ!!
』
『何処からだっ!』
『15C中隊長峯山っ!本隊北約1km地点から大型種中心のBETA群出現っ!ぐわぁぁぁぁ!!』
戦域マップから15Cのアイコンが次々と消えてゆく。遠くから地雷や砲弾頭が爆発したであろう爆発音が轟いている。15Cから送られてきた地点周辺は地雷の埋設が完了しているところで、運良くか悪くか、BETAが彼方此方の埋設した爆弾に引っかかり、爆発している様だった。
『アトラス1より各部隊。15C付近に展開している部隊は何処か!』
『第73戦車小隊ですっ!目視にて状況確認中......っ!?......コッ.....(メキッ)............。』
第73戦車小隊のアイコンも消えた。30両しか残っていなかった戦車が、3両減った。
『埋設中の爆発物は放棄!全機、全車両全速後退っ!』
近くに止まっていた戦車が一斉に動き出し、回頭する。13C以外の半中隊、約8機の機械化歩兵は何とか生き延びたりして残ったものの寄せ集めだった。
『α臨時中隊、α1よりアトラス1。貴中隊、残存戦車部隊を中心に展開する。』
撤退の最中、僚機や部隊を失った機械化歩兵が寄せ集められた臨時中隊、中隊と雖も8機編成だが、その部隊が戦車と13Cを囲むように展開した。理由は単純だった。
『アトラス1了解。基地手前に到着するまで欠けるなよ。』
臨時編成の部隊は連携訓練などを行ってない為に、BETAとの戦闘には付き物の近接密集戦が出来ないという欠点があった。
『α1了解。』
13Cと残存戦車部隊を中心に輪形陣が取られたが、中心部隊数の割に外縁部索敵のα臨時中隊は手が足りていない。索敵がザルになってしまうのは見え見えだった。
だが、皐はそれを許可した。圭吾には理由が分からなかった。
撤退の最中、基地と他の基地からなけなしの支援ロケットが飛来していた。総数60発。光線級は確認されていたが、予想よりも侵攻が早く、圭吾たちが撤退した理由のBETA群に着弾するまでに蒸発させられてしまった。
「光線級がもうっ!?」
圭吾は生きた心地では無い。壊滅した部隊、光線級、増援無し、現時点での状況は最悪だ。
だがそんな中、ある事を思い付いた。
BETA群前衛を壊滅せしめれば、光線級が丸裸になる。基地にあった使う機会など無いであっただろう、対空機銃が何十門も運び込まれているのを見ていたのだ。それで小型種は殲滅出来る。
「ジーク3よりアトラス1!」
『どうした。』
「敵侵攻集団に突撃級はどの位居ますか?此方で確認が出来ないのでお聞きしても宜しいでしょうか?」
『何故そのような事を聞く?まぁ、突撃級はBETA群前衛に6体確認しているが。』
「私にこの最悪な状況を受け好転させる策があります。」
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「......と、すれば時間を稼ぎ援軍を待ち、光線級を掃討出来ると考えます。」
『なる程、ハイリスクハイリターンだが、する術の無い以上、やってみる価値はあるだろう。アトラス1より、CP。』
皐は圭吾の立てた策、対空機銃を利用した遅滞戦術をCPに上申し始めた。
圭吾は現存する部隊が大型砲の砲弾や地雷、爆薬を持ち出し、基地には弾薬しか残っていないのと、基地に接近されてからかなりの時間が経ち、付近の基地から増援が間も無く来る可能性がある事、侵攻するBETA群の殆どが小型種である事、基地に運び込まれた使う機会がほとんど無い対空機銃を鑑みてこの策を考えた。
『CPよりアトラス1、どうした?』
『この最悪な状況を好転させるべく、対空機銃を全て基地前方1km地点の高地に輸送してくれ。それと、戦術機部隊の援軍の見込みを聞きたい。』
『対空機銃には操作する人間が必要だが......。』
『こちら第3警備中隊、その操作の任引き受けよう。』
『司令に許可申請する......許可が下りた。今すぐに運び出す。それと戦術機部隊の援軍の見込みは立っていない。』
そう言われ、通信が切られてしまった。
『アトラス1よりジーク3、これで良かったのか?』
「はい、対空機銃に近付けさせる前に大型種の数はなるべく減らしましょう。」
圭吾と皐のしていた会話はオープン回線だったので、部隊の生き残り全員が聞いていた。
『アトラス4よりジーク3、圭吾君がこんな作戦を立てるはおろか、自分から提案するなんて私は面食らっているよ。』
「任官早々に戦死なんて嫌だし、俺は生きていたいから。」
そう言って圭吾は通信を切った。
早速対空機銃の輸送が始まったのか、基地から続々とアイコンが流れ出てくるが、このアイコンは輸送トラックなのだろうと圭吾に勘づかせた。ヘリは気付いたら上空を飛んでいない。そもそも戦闘ヘリだから兵器の輸送だなんで機能は付いていないのだ。だが、輸送ヘリがない理由が分からなかった。
固定座の対空機銃はヘリで持ち上げて運搬するのが早い。だが、そうやって運ばれない理由が分からなかった。だが、答えは直ぐに分かった。
輸送トラックが出きると、輸送ヘリが現れ、トラックを抜かし、高地に着いたかと思うとすぐに飛び立った。そのヘリがついた地点に新しいアイコンが表示された。第3警備中隊だ。操作する警備中隊を早くに送り届け、その地点を確保する。そういう根端なのだろうと安易に想像できた。
『第3警備中隊 佐野です。射撃タイミングを合わせます。』
そう言って高地に立って肩にライフルを担いでいる兵士は言った。
『アトラス1了解。対空機銃が到着次第作業を迅速に済ませてくれ。』
圭吾は衝撃に襲われた。肩にライフルを担いでいる兵士の顔に見覚えがあった。
「お前っ......佐野って佐野 勉か?!」
『あっ、ああ。そうだけど?......ってその声、鉄無か!?』
圭吾の近所に住んでいた圭吾の数少ない友人だった。士官学校には同時期に入ったが、勉は神八城みたいな士官学校では無く、もっと普通の士官学校に入っていった為、数年会ってなかった。
「そうだよ!久しぶりだな。」
『あぁ。だが、会ったのが戦場とかもっと別が良かったよ。』
そう言ってふぅと一息吐いて、勉は口を開いた。
『対空機銃を使っての小型種殲滅......任せろよ!大型種を頼んだわ!』
そう言って笑って通信を切られた。
「生身でBETAと殺り合うんだ。死ぬなよ、勉。」
直後に圭吾は全周囲警戒に戻ったが、対空機銃が間もなく到着し、BETAが接近するまでに全ての準備を終わらせる事が出来た。
圭吾たちの前方に砂塵が舞い上がり、視覚的にBETAの接近を知らせた。BETA発生アラームは鳴りっぱなしだったので、いい加減に切っている。圭吾の立つ機械化歩兵装甲の背後には、灰色塗装だった筈の同じ中隊の機械化歩兵装甲は紅くなり、その他の満身創痍な機械化歩兵装甲も紅くなっていた。戦車は爆発反応装甲が半分起爆したのか、砲塔の形が変な戦車などがエンジンを点火したまま止まっている。対空機銃も仰角を0°に合わせて準備を終えた様だった。弾薬箱の山に土のうの壁、対戦車ロケット砲、携行ミサイル発射機、弾頭などが並べられている。
正面の砂塵から現れるであろうBETAの物量には抗う事が出来るとは思えない程だったが、圭吾は既に覚悟は決めていた。
コレは圭吾が敦煌基地に到着して3日目だった。
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