Muv-Luv Unlimited Base Shielders 作:しゅーがく
今回で須倉詠佳の話は終わります。長かった.......
それでは!
「もう、私たちしか残ってません!やはり地下に!」
『それはダメだっ......入り口は殆どが硬化剤で固められている。』
『そうです!地下に行きましょう!!』
3機の機械化歩兵は超低空での飛行中、そんな事を議論していた。
『ステンツ1!ならどうするんですか!!』
『そう言われて......っ!!硬化剤タンクが基地の上に設置されている筈だ!!全機反転!!』
『『了解!!』』
「硬化剤なんてどうするんですか!!」
『前線が突破された場合、残っていた小隊で、基地の換気口を硬化剤で固めるという任務があるんだ!最終手段で、使いたくは無かったが、止むを得ん!』
それを聞いた須倉詠佳はウィンドウから硬化剤タンクの位置を割り出した。確かに換気口横に換気口を埋めるには十分な量の硬化剤が用意されていた。
「硬化剤が固まるまでその地点を死守するとして、その後は!!」
『元々地下の奴ら専用の脱出口があるが、そこから中に侵入し、中での戦闘に加勢する。』
小隊長の額に投影されている映像からでも判るくらいに汗を出していた。
『『了解。』』
敵の巻き上げる砂塵は前方30kmまで迫っていた。その砂塵は大きく、範囲が広い。
『換気口に取り付け!ステンツ3は換気口に硬化剤を注入しろ!私とステンツ4で周囲を警戒する!』
「ステンツ3了解!」 『ステンツ4了解!』
視線は換気口に向き、近くに設置されていた硬化剤のチューブを引き延ばすと、換気口に口を差し込み、硬化剤を流し込み始めた。
「硬化には20〜30分かかります!それまで近づけさせないでください!」
『無理なお願いするもんだなぁ。2機で何とかやってみる。幸い敵の戦闘集団は未だに30km圏内だ。精々20分が限界だ。』
「分かりました。付近の硬化剤タンクを全部使います!」
そう言って直ぐに視点は移動し、付近の硬化剤タンクを探しだした。
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デスクにいきなり砂嵐が出て、少し、機材の調子が悪いのかと、圭吾は機器をなぶったが、異常は無かった。どうやら、記録が上手く保存されていなかった様だ。
「地上でこんな事が起きてたんですね。時刻的には、配置に着いて何もすることが無く、ステータスをチェックしていた時くらいですか?」
「そうだな。その数分後にBETAが侵入したんだ。」
圭吾は皐の方に直り、質問をしたが、帰ってくる回答は素気無かった。
「映像が復活したぞ。」
俺はその表情に少し見とれていたが、皐の声にすぐさま反応に、画面に目を向けた。
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「ステンツ3よりCP!応答せよっ!ダメっ、通じない。」
『ステンツ1よりステンツ3。何をしている!無用意にCPと交信するでない!』
「それがおかしいんです。戦域データリンクは生きているのに、周辺情報が更新されないなんて.....。」
『ふむ、それは確かにおかしいな。ステンツ1よりCP!ステンツ1よりCP!.......通じないみたいだな。』
敵の小型種の掃討が終了したのか、周りには小型種の死骸を中心に、頭を使って大型種まで撃破していた。その大型種のほとんどは、脚部が欠損している。その状況から、この3機は脚部を擲弾で吹き飛ばし、行動力を奪ったのだ。
『CPはどうしちゃったんでしょうかね?そういえば、この周辺の緊急脱出口は確か、第27機械化歩兵中隊が近いです!』
『09Cより27C!貴官らの死守している緊急脱出口より侵入したい!許可願う!』
『こちら27Cっ!敵の小型種がウジャウジャ入ってるぞ!それに俺たちは今、その地区には居ない!4地区で敵と交戦中だっ!』
小隊長の顔から血の気が一瞬で無くなった。中隊の殆どが殺られた地点は、4地区の緊急脱出口が目と鼻の先にあるからだ。
『くっ......俺らがあそこを放棄していなければ!!?......っ!?くそっ!!!』
その瞬間、機内にアラームが爆音で流れ、何事かとおもったら、CPのあるHQが小型種に蹂躙されたという事実を知らせるアラームだった。
何処かの中隊が戦域データリンクにそう表示させたのだ。
『ステンツ3っ!硬化剤はもう固まっているんだろう!何故、/侵入されたんだ!!』
小隊長の罵声に驚き、周辺の換気口をズームして見た。
硬化剤を流し込んで固まっている筈の換気口の側面に大穴が開いていた。
「側面に穴を開けられた様です!」
『27Cよりステンツ隊!4地区の緊急脱出口の爆破を頼んでいいか!』
血相変えた表情で第27機械化歩兵中隊の中隊長がオープン通信でステンツ隊の面々に頼みこんできた。
『ステンツ1より27C。如何されたんです!?』
『BETAの流入数が多すぎるんだ!すでに、4地区の集積所内に侵入されちまった!第13機械化歩兵中隊も援軍に来ると言っていたが、一時8地区に戻っていたから到着が遅れている!』
『了解しました!ですが、手持ちに爆発物はもう......。』
『緊急脱出口付近に警備の連中らが置き土産に大量のC4を置いて逝ったそうだ。それを使うといい!』
そう言って戦域マップにC4のコンテナ位置が表情された。その位置は今から移動すれば1分もかからない位置だ。
『ステンツ1了解!爆破したら他の緊急脱出口から入ります!それまで何とか......。』
『ステンツ4よりステンツ1。早くやりましょう!27Cのアイコンがもう半分です!』
そう言われ須倉詠佳は戦域マップのデータリンクから味方のステータスを見た。27Cは16機中KIAが9機だ。付近には48Cが11機、65Cが7機が後退している。13Cは全機健在で、どうやら4地区に向かっている様だった。
前線で陣を張っているのは、27Cだ。だが、その数十m先はBETAの赤いアイコンで帯になっている。
その帯から吐出した赤い大きな点は陣を張っていた27Cの2機を飲み込んだ。
『くっ......全周囲警戒!ステンツ4!大学で建築専攻だったよな!?出来るだけ緊急脱出口を崩せ!』
『りょっ、了解っ!』
『ステンツ3は脱出口の上から正面警戒!接近を許すなっ!』
「了解!」
そう言われ、緊急脱出口の上から辺り一帯を見張った。
「2波は来るのかしら。」
『ステンツ3、私語は謹め。』
「了解。......っ!?6時方向より震源探知っ!地下からですっ!」
『ステンツ1よりステンツ4っ!中の様子は!?』
『(バキッ......バキッ......)痛ってぇぇぇ!痛てぇ!!クソっ......痛てぇよ!!......うわあああぁぁぁぁぁ!!(ガコンッ......)』
その瞬間、ステンツ4のアイコンが消えた。
『くっ、ステンツ4KIA。ステンツ3、ステンツ4がこれまでに仕掛けたC4を起爆する。離れろ!』
そう言われ、うんとも答えず、緊急脱出口を離れた。すぐ直後に爆発物し、それの様子を見た小隊長はもう言葉を失っていた。
「ステンツ1どうしたんですか?......えっ..............。」
爆発物が足りてなかったのか、かなりの時間を使って設置したはずなのに、あまり崩れていなかった。
『クッソォぉぉぉ!!!ステンツ1より27C!応答して下さい!』
『ザザザザザザッ___________。』
通信を入れた瞬間、27Cのアイコンも全て消失した。気付けば、4地区の機械化歩兵部隊は48Cの4機ほどしか残っていない。そしてBETAのアイコンの数は若干減っている様にも思えたが、全然だった。
『なればっ.......ステンツ4、私の機体に残っているC4を有りっ丈くっ付けろ。』
「なに......言ってるんですか?」
『私の機体にC4を装着しろと言っている!』
「どういう意味ですか!」
『C4の爆発にこの機体の推進剤に誘爆させる。そうすれば、緊急脱出口も塞がるだろう。』
「そんな......小隊長はいいんですか?!?」
『いいさ。どうせ長くは持たん。』
そう言われ、須倉詠佳は慌てて戦域データリンクからステンツ1のステータスチェックをかけた。だが、機体には破片が突き刺さっている程度で動作には何ら問題ない様に思えたが、違っていた。パイロットデータでは脈が落ちてきている。出血の疑いがあった。それも長時間放置していた様だった。
「今すぐ止血をっ!」
『やめろっ!強化装備に穴がいていて、細菌も侵入した様だ。それにBETAの体液も付着した。もう時期、身体に異変をきたすだろう。』
そう言って小隊長は遠い目をした。
「わ.....分かりました。」
須倉詠佳の視線は急に反対を向き、C4の入ったコンテナに向かった。
コンテナにはまだ大量のC4が入っており、一気に爆発したら周辺の物や建物は木っ端微塵に出来る程の量だ。
『跳躍ユニットと推進剤タンクを中心に頼む。』
そう言われ、須倉詠佳はC4を黙々と機体にくっつけていった。
その間にも、敵は現れたが、ステンツ1の12.7mm機関砲がそれを悉く接近を許さなかった。
「んしょっ......ありったけのC4です。」
『操作権を俺に......。』
「......やっぱり嫌です!私を1人にしないで下さい!ここからどうやって戻ればいいんですかか!どう基地の人に顔向けするんですか!」
『全滅よりも、1人生還の方がいいだろう......。それにこの傷、もう間に合いそうにない......。早く操作権を......。」
「嫌です!!!一緒に帰りましょう!!」
『ダメだ!それと、この場から離れろっ!......』
目の前にC4操作権譲渡の表情が現れた。
『離脱だ!!』
「嫌ッ......いやぁぁぁぁぁ!!」
『何としても.......。』
目の前の機械化歩兵が爆煙に包まれて直ぐ、緊急脱出口は崩壊した。
「何で......何でですか......。(ピーピー)」
アラームが鳴り響き、機体に破片が突き刺さったという警告音が鳴り響き、それと同時にBETA接近のコード:991の表示が現れた。
「戦域データリンクっ!13Cはっ!?」
13Cは現地点の真反対に居た。合流しようにも、彼方のデータリンクはまだ同期出来ていないはず。
「09Cより13C!応答を!」
『(ザザザザッ)』
「通じない.....。ここを離れよう。」
そう言って動き出した瞬間、赤い影に襲われた。
「戦車級っ!?くっ......」
弾丸は命中していくが、ジリジリと接近されていく。
「持たないっ!フォックス1!!」
聞く相手もいないが、擲弾注意の呼びかけをした。
「今なら!(ガンッ!)」
警告が鳴り響き、腕に激痛が走った。すぐに激痛は止んだが、機体状況は最悪だった。取り憑かれた戦車級に左腕部がもぎ取られていた。
「くっ!うわっ!!(ガンッ)」
次はバランスを崩して壁に衝突したら、右跳躍ユニットが吹き飛んでしまった。
「バランス修正!」
左に進行方向がズレて、壁に激突しそうになっていたが、ユニットの出力を抑えて、バランスを取れば飛べなくも無い。そう習うのだ。須倉詠佳はそれを実践していた。
「よしっ!......つぅぅぅ....。」
視線の先には、大きな破片が大腿部に刺さっており、出血し始めていた。腕の痛みは無いのか、止血が行われているのだろう。
「自動帰還モード......あった。故障してる......。」
あれこれと、普段使わない機能を使って帰ろうと必死になっている様だった。機能を探すのに必死になっていた須倉詠佳は目の前の小型種の塊に気付かず、そこに突っ込んでいった。
「警報?......きゃっ!!」
小型種の群れに突っ込んだが、間一髪のところで脱したが、警戒を怠ったのだろう。右腕部に戦車級が噛り付いていた。
「クソっ!このっ!このっ!!」
齧り付かれた右腕部の固定兵装の12.7mm機関砲の射撃命令を出すが、『残弾0』の表示が出ていた。
「止血帯!7.62mm!痛いっ.....。」
戦車級の取り付いた右腕目掛けて肩の7.62mm機関銃を撃ち出した。戦車級が離れるのを確認して、止血剤の投与と止血帯を使用した。
「痛いけど、仕方ない......。生体複製の技術で何とか......。」
そう言って、緊急脱出口から飛び出し、低空を飛行し、基地に着いたのと同時に、バイタルが反応を示さなくなり、着地と同時に動きを止めた。
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映像が止まってからというもの、圭吾は言葉を失っていた。目の前にぶら下がっている機械化歩兵のメモリに記憶されていたものは、基地の外での出来事は余りにも残酷だが、いつも繰り返されているものだった。
「何故......第9機械化歩兵中隊は、地上配備だったのでしょうか.......。何故、戦車やもっと沢山の部隊が用意されていなかったのでしょうか......。何故、それでも彼らは戦ったのでしょうか......。」
圭吾は溢れる感情を出来るだけ短絡的に皐に伝えようとした。それは、伝わったのかも分からないまま、置かれた状況に引き戻された。
『全館へ、第1種即応体制発令。繰り返す。第1種即応体制発令。各部隊の指揮官はブリーフィング室に集合せよ。』
それは基地にBETAが迫っていることを知らせるものだった。
前回も言いましたが、削除を検討しております。ですが、数少ない読者様から続けて欲しいという声が多数上がりましたので、最終話まで続ける事にしました。
題名である『Base Shielders』の通りに行くかは分かりません。
これからもよろしくお願いします。
ご意見ご感想お待ちしてます。