Muv-Luv Unlimited Base Shielders   作:しゅーがく

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どうも、しゅーがくです。
前回の続きを書いていきます。

いよいよですよ。機械化歩兵で感じるBETAに対する恐怖の表現は。
上手く表現出来てるか不安ですがよろしくお願いします。


episode 8 第9機械化歩兵中隊

『しっかし、何故地下でなく地上なのだ?』

 

『補給基地の地下に5個機械化歩兵中隊も投入すると、身動きし辛くなるからだろう?』

 

スピーカーから流れだしたのは、当時の音声記録だった。画面には、須倉詠佳が見ている景色が映し出されている。周りには誰も住まなくなって空き家になって随分と時間の経った様に思わせるような風貌の建物がちらほらと。そして、同じ小隊と思われる機械化歩兵3機が映っていた。

 

『データリンクっ!くそっ!!!何処かの前線の部隊が壊滅しちまったから、防衛線に穴が空いたらしい!』

 

『という事は、BETAが雪崩込んでくるのかよっ!』

 

「あのっ......穴が空いたと言っても、一部分だけなのでしょう?そんな大規模な集団で来るとは思いませんが......。」

 

『はっ!これだから新兵は。ステンツ3、いいか?防衛線に穴が空いたということは、そこで処理される筈だったBETA共が全部こっちに押し寄せてくるんだぞ!?戦術機部隊が全滅するのにどれだけのBETAを殺せると思ってんだ!!』

 

『しかも、戦術機部隊の後方には必ず戦闘ヘリ部隊、機械化歩兵部隊、戦車部隊が常に目を光らせていたり、戦術機の直後で支援砲撃している事もあるんだ。今の防衛線に穴が空いたという知らせは、その戦闘ヘリ部隊の燃料弾薬が底を尽き、戦車部隊が砲弾を撃ちきったか撃破されるか、機械化歩兵部隊は全滅しているという事だ。もちろん、戦術機部隊も全滅だろう。』

 

「えぇ!?では、今から来るBETA群は......。」

 

『防衛線よりも遥かに物量に劣るこの前線補給基地を襲いに来る。ここの兵力の数倍もの兵力のあった防衛線を突破してな。』

 

「そんな......。防衛線に穴が空けられないように防ぐには少なくとも兵力は、戦術機1個大隊。戦闘ヘリ1個中隊。機械化歩兵1個大隊。戦車1個師団を投入するんですよね!?私たち死ぬじゃないですか!?」

 

『当たり前だっ!』

 

「そん......なっ......。どうやって機械化歩兵たった1個中隊で護るのですか!?無謀ですっ!」

 

『無謀なのは分かっている。』

 

「敦煌基地や周辺の国連軍基地に援軍を要請しましょう!!きっと増援が来てくれるっ!」

 

『ダメだ!』

 

「どうしてです!」

 

『周辺の基地の戦術機部隊や機械化歩兵部隊はきっと今回の攻勢で最低限の部隊を残してほとんどがこの戦闘に参加しているからだ!だから、増援は来ないっ......。』

 

デスクに移る当時網膜投影で映し出されている映像はとても揺れていた。きっと須倉詠佳が怒りか悲しみに震えているのだろう。

 

『スパイク1より各小隊へ。先ほど、移動震源を探知。防衛線を突破したBETA群と思われる。』

 

突如、震動波の計測情報が表示された。間違いなくその震動はBETAによって引き起こされるものだった。

 

『スパイク1より各小隊長へ。指定された地点での防衛任務に従事せよ!』

 

『『『了解!』』』

 

『議論している暇は無いんだ!早くステータスチェックをしろっ!』

 

須倉詠佳は返事もせずに、ステータスバーを確認した。

 

『いいかっ!BETA共が視界に入ったら射程圏内まで引きつけろ!射程圏内に入ったら全機で一斉掃射する!』

 

ずっと網膜投射によって表示されていた3人の顔の中で、一番年をとっているかのように思わせる風貌の男性が明らかに須倉詠佳に向けて言うように言った。

 

『クラッチ2エンゲージ!』

 

突然入ったBETAが姿を現した知らせを聞いて、ずっと投影されている3人の表情は強張った。クラッチ隊はステンツ隊の4時方向に展開している部隊だった。

 

『スパイク1より各小隊長!クラッチ隊の方だけにしかBETAは現れていないか!?』

 

『ステンツ1、そうです。』

 

『フラグス1、そうです。』

 

『では、5分経ってもBETAが各方面に現れなければ、クラッチ隊を援護する!』

 

『『『了解!』』』

______________________________

 

デスクに表示されている動画があまり動かず、須倉詠佳の肉声をも入らなくなった時、圭吾は横でデスクをじっと眺めている皐を見た。皐の表情はデスクに網膜投影されていた映像と中隊内での音声の再生を始めてから一切変わっていなかった。

 

「御宮大尉。」

 

「なんだ。」

 

圭吾は不意に皐の呼んだ。圭吾の方に振り向いた皐の表情は依然として変わらなかった。

 

「須倉二等軍曹の網膜投射映像をここまで見て、私は何故第9中隊が地上配置だったかが検討も付きません。」

 

圭吾は変わらない皐の顔を見て言った。

 

「敦煌基地出撃前には敦煌基地から派遣される機械化歩兵部隊は我ら第13機械化歩兵中隊だと聞かされていたが、いざ、補給基地に着くと、オペレーターから『第9機械化歩兵中隊はご一緒では無いのですか?』と訊かれてから、第9機械化歩兵中隊が補給基地防衛に派遣されていた事が発覚したのだ。」

 

そう言うと、皐はまたデスクの方に見返してしまった。

圭吾はそんな皐にまた質問をするのも気が引け、圭吾もデスクの方に視線を戻した。

_____________________________

 

『スパイク1よりステンツ1。貴官らはクラッチ隊の背後に今から移動しろ。クラッチ隊が撃ち漏らしたBETAを虱潰しに撃て。』

 

『ステンツ1了解。ステンツ隊、続け!』

 

ステンツ1の掛け声と共に、周りで警戒待機していた機械化歩兵が一斉に飛び上った。それに続くかの様に須倉詠佳の視線もふわっと浮き上がり、短距離跳躍でクラッチ隊の背後まで接近して行った。

 

「小隊長。クラッチ隊の援護はしなくていいんですか?」

 

『中隊長が援護をしなくていいと判断して、撃ち漏らしているBETAの処理を俺らに任せたんだ。援護しに行きたきゃ行けばいいが、上官命令不服従で営倉入りだぞ?任官早々に自分の経歴に泥なんて塗りたくもないだろう。悪いことは言わん。やめておけ。』

 

小隊長は厳しくも思える口調で須倉詠佳にそう言った。

 

「うっ......。分かりました。」

 

須倉詠佳は腑に落ちていない様子で返事を返した。

それからすぐの出来事だった。

 

『クラッチ2よりスパイク1!遥か遠方にBETA群が更に接近!』

 

その知らせを聞き、須倉詠佳は戦域データリンクと震動センサーを起動し、情報を集めた。

震動センサーのメーターは振り切っていて見分けが付かず、周辺に展開している部隊は第9機械化歩兵中隊以外には前線にてBETAと乱戦しているであろう戦術機3個中隊が戦闘をしている様だが、一向に戦域データリンクの更新が来ていなかった。前線には敦煌基地より派遣された戦術機2個小隊に加え、周辺の国連軍基地より派遣された部隊や統一中華戦線の基地より派遣された部隊、米陸軍部隊までもが参加している様だった。

多国籍の為、連携が取れない様な気もしたが、それよりも須倉詠佳は自分の身を案じたのだろう突拍子もない発言をした。

 

「ステンツ3よりスパイク1へ。中隊長!ここを放棄して地下に入るのを進言します!」

 

それは中隊内の空気を凍り付ける程の発言だった。

 

『何故そう考える。』

 

「屋外での戦闘は想定された訓練は行いましたが、こういった遮蔽物が皆無の荒野で3次元機動を行っても全滅してしまうと考えたからです。」

 

須倉は息を切らしながら言った。

 

『認めん。我々に課せられた任務は屋外での戦闘だ。屋内には1匹たりとも通さん!』

 

『スパイク1!クラッチ隊が......。』

 

突然の声に驚き、全員が戦域データリンクを見た。戦域マップ上には既にクラッチ隊を表示するアイコンはすべて消え、代わりにBETAが後方待機していたステンツ隊の元へ迫っていた。

 

「うそっ......。」

 

須倉詠佳は丁度前方が見える少し盛り上がった処に居たが、これまで網膜上に映し出される中隊長の顔や戦域データリンクにばかり目が行っていたが、その瞬間は前方に見えるBETAの大群が目に入った。そこには機械化歩兵は存在しない。先ほどまで飛び回っていた4機の機械化歩兵は居なった。

 

『クラッチ1から4までKIA。くっ......もっと早く気付いてやれば......。ステンツ隊フラグス隊は前面に横一文字で展開、迫るBETAに一斉掃射だ!スパイク隊は多目的擲弾をありったけ発射した後、横一文字の隊列に加わり掃射する!急げ!!!』

 

中隊長の指示で全機が動き出し、あっという間に横一文字に並んだ。

 

『スパイク1、フォックス1!!』 『スパイク2、フォックス1!!』 『スパイク3、フォックス1!!』 『スパイク4、フォックス1!!』

 

須倉詠佳の頭上を擲弾がくるくると回転しながら弧を描き、BETAの大群の中に吸い込まれて行き、爆発した。

肉片が飛び散り、紅い体液が大量に舞い上がり、何もない荒野に赤い絨毯を引いた。

 

『一斉射撃っ!!』

 

中隊長の号令でそれぞれが武装の弾薬を惜しみなくBETAに叩きつけた。だが、BETAの大群には大型種も紛れており、有効なのは小型種だけだった。運よく多目的擲弾が足元で爆発した大型種は移動出来ずにもぞもぞと動いているだけだったが、そんな個体は両手で数えられる程しかいなかった。

 

『やはり機械化歩兵の装備では大型種に太刀打ちできんか......。後退しながら小型種に重点を置き射撃を続行!!フラグス隊から後退せよ!!』

 

『『『『了解!』』』』

 

中隊長の指示で後退が始まった。

 

『べっ......BETAがっ......まだ迫ってくる!!』

 

『やはり補給基地の屋内に退避すべきですっ!!』

 

彼方此方からそのような声が上がった。やはり中隊内でも今回の屋外での戦闘に不安を抱いていたのだろう。今回、目の前でクラッチ隊が全滅したのを見て、遂に中隊全員が補給基地までの撤退を進言しだした。

 

『フラグス1より各機へ、長距離跳躍だっ!!』

 

そう言って須倉詠佳の後方で飛び上った4つのアイコンは突然消え失せた。

 

『ステンツ2より各機へっ!光線級だっ!!匍匐飛行!!』

 

そう言って順番が回ってきて、光線級の出現を知らせたステンツ2は2秒後にアイコンが消えた。

 

『戦術行動は高度50mまで押さえろ!ステンツ1!、行けっ!!!』

 

中隊長は右腕部の12.7mm機関砲の弾薬を使い切ってしまったのか、あまり有効だとは思えない右肩後部の7.62mm機関銃を撃ちつつそう叫んだ。小型種はその弾に被弾すると怯んだ様に見せるが、直ぐに侵攻を再開していて、キリが無かった。

 

『ステンツ1、りょ......了解っ......。ステンツ隊各機、50m以上高度を上げるな!!』

 

そう言って言われるがままに須倉詠はステンツ1の後を追いかける様に飛び上った。

数分後、ステンツ隊が飛びあがって1分後位に飛び上ったスパイク隊のアイコンが消えた。

 




お疲れさまです。年末に差し掛かって、書く時間が結構確保できそうなので、更新を早めようと考えてます。それ通りに更新できればいいんですが......。

ご意見ご感想お待ちしてます。


ー追記ー

2014/12/19
本作品の消去を検討しております。理由に関してですが、やはり、マブラヴ作品にてメインとなるのは戦術機であって、本作は機械化歩兵だというところが大きいです。その他にも、資料が少ないなどと言った理由も多数上がっており、現状、続編を書くには、同じ分量(テキストドキュメントサイズ8KB~9KB)では投稿に2ヶ月を要する可能性が十分に見えております。現在最新のepisode 8の時点で既に1話書くのに1ヶ月2ヶ月かかってしまう目途が立っております。
是非続けてほしいという声が多数寄せられたならば、続ける所存ではありますが、1か月2ヶ月というスパンを覚悟させていただきます。
ご意見ご質問等を受け付けさせていただきます。

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