Muv-Luv Unlimited Base Shielders   作:しゅーがく

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はじめまして、しゅーがくです。
今回より機械化歩兵の物語を書こうと思ってます。勿論、他の作品と平行して投稿させて頂くので、更新速度はかなり落ちます。

最初って肝心ですよねー。


prorogue 絶望からの小さな光

ジメジメとしていて、着ている服が肌に張り付き、不快に思えて仕方の無いが。それをも考えさせない様な極度の緊張を圭吾を襲っていた。

空調は動いているが、その冷却にも追いつかない程人が密集していて、それに自分の人生を大きく左右する事柄が決まってしまう場にいるからだ。

順番を終えた人は黒い色素が混ぜられて作られた袋に口を当てて嗚咽している人が殆どだ。きっとあぁなるのだろうとただ、順番を待っているだけだった。

列は5本あり、どの列にも最低20人は並んでいる。列を外れて袋を口に当ててる人は40人といったところだろう。聞いてはいたが、ここまでになるとは誰も思ってもみなかったのだろう。列に並んでいる人は、過度の緊張と得体の知れない恐怖に怯えている様にも見えた。

この部屋に130人近くの人間が集まっているのには、ちゃんとした理由があった。

BETAに抗う人類唯一の矛である戦術歩行戦闘機、戦術機の『適性検査』だ。第78訓練部隊全員が一斉に受けているのだ。この適性検査は、総合技術評価演習を見事合格した訓練兵だけが受けることの出来る検査だ。

元は150人はいた第78訓練部隊のこの部屋に来ていない約20人は総合技術評価演習を合格していない人だ。何がしかのミスや、判断の違い、指揮官の判断、従わない部下などという事が重なり、不合格になった人は受けれない仕組みだ。そういった者は次期の総合技術評価演習に参加し、合格しなければ後が無い。落ちた人間は、受かった人間が受けている戦術機適性検査を恨めしそうに見つめている様だった。

列はドンドン短くなり、ついに圭吾の番まで来た。

 

「おい鉄無、ポリ袋くらい持ってけよ。」

 

何処からかそんな野次が聞こえて来てはいたが、聞く耳を持たずに検査機械の座席に着席した。

座学で使う椅子よりも柔らかい素材で出来ているというのだが、今の状況では精々柔らかいと感じるのが精一杯という所まで追い詰められていた。座席に着席し、固定用ハーネスやベルトに繋がれ、座る際に渡された戦術機を操る衛士が付けるヘッドセットを装着した。

 

『適性検査を始める。』

 

ヘッドセットのスピーカーからだろうが、耳元から適性検査を調べる機械も外にある操作盤を操作している担当教官から、検査を始める合図を受けた。

表情で読み取れたのか、徐に操作盤を操作し、適性検査のカリキュラムを起動した。座席の前からは、大型コンピュータの排熱ファンが高速回転し始めて、それまで無音だった機械の中に風を切る音と自分の鼓動や息遣いだけが普段以上に聞いて取れた。ヘッドセットの網膜投射装置から赤い光線が目の表面に照射されると、目の前に一気に風景は一変した。

今まで、薄暗く周りは灰色をしていたが、一瞬にして明るい緑色の縁を

した吹き出しが出た。

 

『適性検査開始』

 

その文字が消えると、複雑にコクピットが四方八方に動き、自分の臓物を掻き回した。袋を持ち込んで正解だった。案の定、2分もすれば激しい吐き気や目眩、頭痛に襲われた。

検査は5分間行われる。その間に機械がその搭乗者は戦術機適性があるかを判断している。それまで、シュミレーター内で自分の身体に引き起こされた症状に耐える。それしか、この志願した兵士の夢である戦術機乗りになれるのだ。

 

(くそッ!こんな振り回されるなんて聞いちゃねぇぞ!)

 

圭吾はグルグル回っている様に感じるシュミレーター内で吐き気以外に考えれたのはこれだけだった。

嫌なものだと長く感じてしまうのか、たった5分が圭吾には30分位に思えた。

 

『適性検査終了』

 

ヘッドセットから聞こえてくる声はそう言っている様に聞こえた。

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適性検査の結果は後日、訓練兵兵舎の掲示板に張り出されるのが圭吾の在籍している訓練施設の定例だった。いつもは誰一人と居ない掲示板の前には何十人もの人だかりが出来ていて、とても観れるような状態では無かった。

視力には自信のあった圭吾は少し離れて高い所へ登り、観やすい位置から目を凝らして自分の名前を探した。

順に追ってけば見つかるものだが、それまでの時間は長く感じ、自分の氏である『鉄無』を探した。特徴的で消して人と被ることの無かったこの名字は安易に見つかるものだった。

 

(嘘っ......だろっ!?........戦術機に乗る為に頑張って来たんじゃ無いか!?それがこのザマかっ!!)

 

自分の名前の横に合否が出る仕組みだが、『鉄無圭吾』の横には『不合格』の3文字が書かれていた。それは圭吾にとって都合が悪く、戦術機訓練を受ける資格の無いという判定結果がたった3文字で書かれていた。

 

「鉄無、こんな所で何してんだ?」

 

絶望に浸っている圭吾を元の世界に戻した声の質問に咄嗟に答えれなかったが、あまり間を開けずに答えた。

 

「適性検査の結果をここから見てたんだ。掲示板の前はあのザマだろ?」

 

圭吾は表情から落ちた事を読み取らせない様に、話し掛けてきた訓練兵に答えた。

 

「そこからなら見やすいのか。あの様子じゃあとても見れないからな。俺にも見させてくれよ。」

 

そう言われ、立っている足場から圭吾は降りた。表情では必死に読み取られない様にしているが何処かでボロが出るだろう。そう思っていた。

約半年。必死に悶え縛り付けられた生活に耐え、苦しくても頑張ってきたが、もうそれまでだった。

兵士としての適性は戦術機適性検査の前に半年の積み上げてきた実績で検討される。その適性でも良く無い結果だったなら最後、『歩兵』として任官する事になる。バリケードを築き、塹壕に身を潜め、敵に効くか分からない小銃を両手に『殺されていく』。そんな事が考えられた。よくて補給部隊だ。そんなこの後に考えられるあらゆる可能性を考えさせられた。

 

「畜生っ......落ちたのか......。はぁ、晴れて歩兵になっちまったよ。お前さんはどうだった。」

 

圭吾が足場を譲ってやった訓練兵は苦笑いしながら言った。彼の目元はうっすら濡れ始めていた。

 

「俺も......落ちたさ。何の為に兵士になったんだろうな。」

 

圭吾はハハハと言って拳を爪が食い込んで皮を突き破る位まで握った。

目の前の訓練兵も戦術機適性に落ちた。最後の最後で落ちたのだ。

ふと視線を移動させた圭吾の目には喜び涙している者や、唇を噛み悔しがる者まで様々写った。特に嬉し涙をしている者が目に入った。悔しがっている者は全体の4割位だろうか。

殆どは戦術機適性に受かると有名な圭吾の所属している訓練学校で今までに無い衛士排出率だ。例年は合格9割を誇っていた訓練学校でも、今年は出来が悪いようだった。

 

「そうだな。他の適性があればオペレーターや指揮官は出来るだろうけど......。そういえば、そういった類も合否と一緒に貼り出されるんだっけ?」

 

そう言って台に乗ったままの訓練兵は背伸びして合否の横に貼ってあるはずの転属先一覧を真剣な眼差しで見つめていた。

 

「見えたか?確かお前さんは、座学と技巧は優秀だったけか?そうなれば工兵だろうな。」

 

圭吾は台に乗ってる訓練兵の前に立って顔を見上げると、訓練兵は口を開けたまま時が止まったかの様に佇んでいた。

 

「いや、工兵なんだが......。歩兵じゃ無いんだ。『第221機械化歩兵中隊』だ。」

 

訓練兵は表情は変えなかったが、何か考えているようだった。

機械化歩兵という事は強化外骨格を装備してBETA小型種の掃討を主任務とする歩兵の事だ。個人では携帯出来ない大口径重機関銃を運用して、戦術機の取り零した小型種を片付ける。言わば、尻拭いの様なものだ。

 

「はぁ?機械化歩兵部隊なのか??またそりゃあパッとしない所に。残念だったな。」

 

一般歩兵の訓練の際に、作業用強化外骨格の運用訓練もやったし、座学では大破した戦術機から強行脱出を計る際に、コクピットに内臓されている強化外骨格を装着して脱出すると習ったが、それを用いて戦闘するというのは噂程度でしか聞いたことが無かった。圭吾はその時、機械化歩兵部隊と聞いて連想したのは、基地の整備や瓦礫の撤去などを行う部隊だと勘違いしていた。

 

「鉄無、残念だったな。お前も第221機械化歩兵中隊だ。」

 

それを聞いた瞬間、圭吾は何とも言い難い感覚に囚われた。

圭吾は元々、戦術機に乗る為に軍に志願していた。それに、国土と家族を守りたかったという表向きではあるが、そういう願望も持っていた。一般歩兵はCPでオペレーターをするか、衛生兵の訓練を受けて医療班に入る、警備兵として基地の警備に勤める、整備兵として兵器を整備するなどといった事も出来たがそんなものは眼中には無かった。ただ一心に戦術機に乗りたかったのだ。それは男ならではの本能かも知れない。だが、その本能に従う事によって自分を満たして、他人を守ることが出来るといった様に、戦術機に乗ることは自分にとって一石二鳥なのだ。

それが、座学では殆ど聞かなかった機械化歩兵成るものに自分がなってしまうという事にモヤモヤとしてしまった。

 

「そうか、悪く言って悪かった。同じ部隊に配属されたんだ。俺は鉄無圭吾。宜しく。」

 

「名字は知ってたさ。下の名前は知らなかったがね。嵩音巽だ。宜しくな。」

 

嵩音巽と名乗った訓練兵はハハッと少し笑い、直ぐに真剣な表情に戻った。

 

「さて鉄無よ。機械化歩兵についての講義が座学で無かった理由が分かるかい?」

 

突然、巽は意味の分からない質問を圭吾にぶつけた。

圭吾はその質問の意味は分かったが、どう答えていいか分からなかった。考えられる可能性は2つあった。1つ、『必要無い』。2つ、『衛士になる前提条件であり、神八城士官学校は衛士排出率が帝国内で随一』だからだ。例年は卒業する士官の9割が衛士適性を合格し、戦術機乗りとなって戦場に赴く。それがこの神八城士官学校の『普通』であった。今年は出来が悪かったらしく、適性合格率も低い。

 

「必要無いからか?」

 

「そうなるな。だから本来受けるべき強化外骨格での訓練は殆ど省かれている。この士官学校では強化外骨格が戦闘に参加する事は噂にしかならない。教えられないからな。」

 

そう言って巽は台から降りた。

 

「でもその噂も消えるだろうな。あんな大々的に『機械化歩兵』だなんて表記を見たら何かの間違いだと勘違いした訓練兵が教官に聞きに行く。それで聞かれた教官は素直に戦闘用強化外骨格が配備された部隊だと答えるだろうな。」

 

彼の考えは最もだった。

訓練兵になりたての頃、新しく配られた教導本のあるページをナイフで切り捨てるという事をやらされたからだ。その項目は目次には『戦闘用強化外骨格装甲について』と書かれている。圭吾は慌てて持っていた教導本の目次を見た。

確かにそのページは切り取られていた。

 

「そういう事だ。これからは配属先も決まった事だし、あっちは戦闘用強化外骨格の運用も指導されてると考えてる筈だから『俺ら』は教官殿に頼んで何処ぞの格納庫で眠ってる強化外骨格を使って勉強だな。」

 

そう言って巽は歩いて行ってしまった。

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『えー、嵩音巽、鉄無圭吾。至急教官室へ出頭せよ。繰り返す嵩音巽、鉄無圭吾は教官室へ出頭せよ。」

 

掲示板を見て巽と会話をした後、ずっと圭吾は考え事に更けていた。

機械化装甲歩兵についてだ。

『小型種を中心に撃破する強化外骨格を装備した機械化歩兵の事。』

そう、教導本には衛士と戦術機以外での戦闘についてという項目の隅に書かれているその1文を何回も読み返していた。

 

(士官学校は普通、機械化歩兵部隊への配属も視野に入れた訓練をするが、ここはそれを省いて居たから戦術機系統の座学実技は他より充実している。そこが、ここの衛士排出率の高さか。)

 

一旦、考えに区切りが付いた処、教官室へ出頭する命令が下っていた事に気付き、小走りで教官室に向かった。

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「鉄無圭吾訓練兵、出頭しました。」

 

『入りなさい。』

 

教官室のその中から聞こえて来た声の通りに圭吾は部屋に恐る恐る入った。

 

「30秒位遅いぞ。」

 

横に立っていたのは、圭吾と同時に出頭命令が下った巽だった。既に服や息も整えて準備が終わっている様だった。

 

「2人とも、ご苦労だった。取り敢えず奥の面談室に。」

 

そう言ったのは、呼び出した声の張本人である圭吾達の専属教官をして頂いている教官だ。その他にも、整備専門の教官や教官を束ねる教官も居合わせている。どんな大事をしてしまったのだろうと圭吾は内心ビクビクしていた。

 

「腰を掛けなさい。少し話が長くなりそうだ。」

 

「ありがとうございます。」

 

教官はそう言って圭吾と巽の御礼の言葉を聞くと座り、それに続いて圭吾と巽も座った。

出頭命令が下った理由は、出頭したメンツで大体は検討が付いてた。

 

(きっと、機械化歩兵の特別訓練の事だろうな。)

 

圭吾はそう考えた。

教官と圭吾の間にある机の上には書類が乗っていた。その教官の机の上に乗っている書類はきっと、圭吾と巽に関する物だろうとは容易に想像が出来た。

 

「配属先はもう確認したと思うが、貴様らはまだ戦闘用強化外骨格の実習を受けて無いな?」

 

「はい。作業用外骨格のみ訓練は受けました。」

 

「では、今日から特別に実習を受けて貰う。帝国軍の使い古された87式機械化歩兵装甲が貸与されることになった。それは、この神八城士官学校に戦闘用強化外骨格が無いからだ。その機械化歩兵装甲で訓練をして貰う。今から1時間後に中央グラウンドに集合せよ。それに、それまでの間これを読んでおけ。」

 

そう言って教官の手から渡されたには机の上にあった書類だ。

書類のファイルを開いて見ると、中には87式機械化歩兵装甲のカタログと基本動作説明、配属先の第221機械化歩兵中隊の詳細な情報だった。圭吾と巽は礼を言って教官室を後にした。

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「なぁ、カタログと基本動作説明見たけど、関節思考制御とかは戦術機と変わらないんじゃないか?と言っても、主腕部はマニュアルな様だが。」

 

教官室を後にした圭吾と巽は渡された冊子と本を読んでいた。それ程量は無いが、基本動作説明に関してはかなり難しい事が書いてある。

 

「腕は直接繋がっているようだな。マニピュレータは完璧にマニュアル操作だな。それにロケットエンジンとジェットエンジンの複合推進器も2基腰部に搭載されているってことは、戦術機と同等の機動は出来るみたいだな。」

 

巽は持っていた赤いボールペンで基本動作説明の出力系の複合推進器を大きく丸で囲んだ。

 

「そりゃ、BETAと戦うのだからあって当然だろ?」

 

圭吾は第221機械化歩兵中隊の詳細を見ながら答えた。

圭吾は巽の話をある程度手を抜いて答えて、意識は殆どを詳細に向けていた。

 

「なぁ、鉄無。さっきから中隊の詳細バッカ見ていいのか?」

 

巽は基本動作説明を読み終えたのか、閉じる動作をしながら質問をした。

 

「大丈夫。総戦技演習までは一刻も早く戦術機に乗りたかったもんで、休日とか放課後に図書室で勉強してた。その時に戦術機が大破し、ハッチが歪んだという場合の脱出方法って所と勉強してた時に戦術機のコクピットが丸々強化外骨格になってる何て書いてあったから、そっちの方面も勉強してある。因みに、作業用外骨格とは出力系が1つ無いだけで操作はあまり変わらないぞ?その基本動作説明ってのも、本当に基本な動作は作業用外骨格の訓練でやってるから読む必要は無いから。」

 

そう言いながら相変わらず中隊の詳細からは目を離さなかった。

 

「それで良く1日の訓練が終わった後に何処かに行ってたのか。それにしても、本当に何故中隊の詳細ばっか読んでるんだ?」

 

巽は不思議そうに圭吾を見つめた後、基本動作説明を閉じて、中隊の詳細を見た。

書いてある事はあまり不思議に思う様な所は何処にも無いが、巽は圭吾が何をそんなに考えているのか分かる筈も無かった。

 

「基本動作説明もカタログも見たことあるし......って言いたいが、どうしても気になってさ。」

 

そう言って圭吾は巽が見ている中隊の詳細のある項に指を指した。

そこは所属と中隊に装備されてる装備品の欄だった。

巽は圭吾に指された所を読んだ。

 

「日本帝国陸軍中部方面軍第10師団第221機械化歩兵中隊......。うん。ここら辺の地域か。装備品.........89式強化外骨格装甲、12.7mm重機関銃、7.62mm機関銃、9mm拳銃、大型装甲車、大型トラック............LCAC-1級エアクッション型揚陸艦......揚陸艦!?。」

 

これまでに見たことの無いリアクションで揚陸艦という単語に驚いていた。それまでに輸送機とかあっただろうに、と圭吾は思った。

陸軍に揚陸艦が配備されていると言うことは、簡単に考えればそういうことなのだろうと安易に想像がつく物だ。揚陸艦は名の通り兵士や戦車を揚陸する為の艦船だ。そんな物が陸軍所属部隊に配備されている理由は考えるまでも無かった。

 

「揚陸艦が装備されているって事は......。」

 

「東進を始めたBETAへの対策だろうな。揚陸艦を装備させる事によって、もし中国まで戦線が後退して、海岸線まで追い詰められた時の増援だろうな。そんな使い方をされるんだろう。それ以外なら、海岸部に位置するハイヴ攻略作戦の門の破壊任務か、先行強行偵察部隊かだな。」

 

圭吾は少し取り乱している巽を横目に、相変わらず中隊の詳細を読んでいたが、さっきまで見ていた項とは違う所に目が行っていた。

人員構成だ。

中隊と言う位の規模の部隊だ。それなりには人数がいる。その名簿を見ていたのだ。

 

(何で同じ部隊に姉ちゃんが......!?)

 

圭吾と1つ違いの姉が同じ時期に配属される事になっていたのだ。書類にもそう記されている。

圭吾の姉である遥音は圭吾よりも1期早く神八城士官学校と同じ地域にある日本帝国陸軍星ノ谷士官学校に在籍していた。何でも、去年の冬にあった総戦技演習で脱落して、夏の圭吾が受けた演習を受けていた様だった。そして『戦術機適性』が無かったようだ。姉弟揃って適性が無いとなると、家の恥な気がして圭吾は嫌な気分になった。

幸いにも巽は圭吾が何を見て、何を思ったのかがわからなかったようだ。それよりも、LCACについて答えを出したのにまだ考えている様だ。

 

「嵩音、そろそろ行かないと教官に叱られるんじゃないか?」

 

「え?もうそんな時間なのか?」

 

圭吾は腕時計を巽に見せた。

針は教官室を出てから50分経っている所を指している。中央グラウンドまでは歩いてそうかからないが、教官はそれよりも前に来て準備をしている。時間よりも遅れては迷惑だろうと考え、圭吾たちは駆け足で中央グラウンドに向かった。

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制服のままグラウンドに出て来て、何時もの訓練の際、集合している場所で圭吾と巽は教官が来るのを待っていた。

 

「時間になったけど、教官遅いな......。なぁ、鉄無。............!?」

 

巽が時間になっても来ない事に圭吾に漏らした瞬間、巽は自分の後方より接近するエンジン音に驚いた。

圭吾も巽も音に気付いたらすぐに後ろを向いたが、接近するエンジン音はまだ遠くて見え辛いが、それが何のエンジン音なのかはすぐに理理解出来た。

 

「......複合推進器、戦術機か機械化歩兵が近付いてるな。」

 

圭吾は巽の顔を見ながらハッキリとそう言った。その音の原点はみるみる圭吾と巽に近付き、目の前でランディングして着地した。

目の前に降り立ったのは戦術機の様に18mもある巨体ではなく、3m程だろうか、強化外骨格を纏った強化外骨格装甲兵が佇んでいた。

 

「お前達が強化外骨格装甲の訓練を受けるという訓練兵か?」

 

その3mの鉄の塊は何かを通した様な声で喋った。声は低くとても凛々しく聞こえた。

 

「そうです。鉄無圭吾訓練兵です。」

 

「嵩音巽訓練兵です。」

 

圭吾と巽は並んで強化外骨格装甲を纏った教官らしき兵士に敬礼した。

そうすると機械化歩兵も可動範囲の狭そうに見える手腕を上げて敬礼をした。

 

「本日より貴様らのお守りをする三磐だ。任官までの2ヶ月、みっちり扱いてそれぞれ防衛する基地の盾となって死んで貰おう。死にたくなくば覚悟して腕を磨け。」

 

「はっ!」

 

圭吾と巽は敬礼をして、其の後に三磐教官から渡された強化外骨格装甲用強化装備を受け取りに倉庫に向かった。




今作初投稿なので、いきなりは質問とかに返答できるか分かんないです。

戦術機乗り以外の話もいいかなーなんて思ったりしたんですけどね~(笑)
殆どの設定がオリジナルになるので、また違った雰囲気にはなると思います。

ご感想お待ちしております。

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