インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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届かぬ想い

side箒

何故だ・・・、

何故こうなるんだ・・・?

 

私の欲しがった物は、

まるで手のひらからこぼれ落ちる砂のように消えていく。

 

昔から、私は自由なんて物をもった事がない。

姉のせいで、住む場所を転々としなければいけなくなり、

幼馴染みの一夏とも、離れなければいけなくなった。

 

このIS学園で、やっと再会できたのに・・・、

一夏は私を見ていない・・・。

 

何故・・・、何故・・・?

私はこんなにも一夏を思っているのに・・・、

何故アイツは私を見ない・・・?

 

何故・・・、何故・・・?

 

sideout

 

 

side一夏

俺とシャルは連れだって、

大型ショッピングモール、レゾナンスに来ていた。

 

そう、デートだ!!

 

いやはや、今まで何度かシャルとは買い物とかに出掛けても、

当時の俺は、バカだったからな、

表面的に捉えて、ただ買い物に来たとしか、思ってなかったんだろう。

 

そんな、アホな事しかしてなかったのに、シャルは根気強く、俺を待っていてくれた。

だから、俺は彼女に感謝してもしきれない。

 

「そういや、聞いてなかったけど、何買いに来たんだ?」

「あ、うん、実はね、シャンプーが切れちゃってね、

何か新しいのが無いか見に来たかったんだ。」

 

なるほどな、やっぱりシャルも女の子だな。

男の俺より、そういうのが気になるんだな。

 

「そっか、それだけってのも面白く無いから、色々見て回ろうぜ。」

「うん、行こっ、一夏。」

「ああ、行こうぜ。」

 

俺はシャルと手を繋ぎ、散策を始めた。

 

sideout

 

 

noside

昼頃、

一夏とシャルロットは、レゾナンスのフードコートにいた。

 

あれから、雑貨店やら、アロマテラピー専門店やら、

色々見て回った二人は、

休憩も兼ねて、昼食を摂るために何処かいい店が無いか、探していた。

 

「シャルは何が食べたい?俺はシャルに合わせるよ。」

「いいよ、一夏が食べたいものにあわせるよ。」

「いやいや、遠慮するなよ、俺が合わせるよ。」

「いいよ、一夏こそ遠慮しないで、僕が合わせるから。」

「いやいや、俺が合わせるよ。」

「ううん、僕が合わせるから。」

「いや、俺が・・・。」

「僕が・・・。」

 

どこぞのバカップルがやるような事を、

自然に行う一夏とシャルロット。

 

彼らの周りを通る、一人身男子は・・・、

「爆発しろ、爆発しろ、爆発しろ。」

「モゲロ、モゲロ、モゲロ、モゲロ。」

とか何とか言って通りすぎていった。

 

そんな事とは露知らず、一夏とシャルロットはまだ譲合いを続けていた。

それを見た一般人の中には、ブラックコーヒーを買い込む人まで現れる程、

彼らの周りの空気は、甘ったるかった・・・。

 

その後、暫くの間譲合いを続け、結局、一夏が押し負けて、

オムライス専門店に入る事になった・・・。

 

sideout

 

sideシャルロット

「ふぅ・・・、よく歩いたね~。」

「そうだな、何時もの何倍も歩いた気がするぜ、」

 

あれから、要りものを買って、

寮に帰ってきた頃には、もう夕暮れ間近だった。

 

それにしても、一夏、ずっと僕の手を握ってくれてたなぁ・・・。

俺から離れるなって、言ってくれてるみたいで、

すっごく嬉しかった。

 

「シャル。」

ベッドに腰かけていたら、一夏に抱き締められる、

彼の温かさが、直に伝わってくる。

 

「一夏・・・。」

僕も彼に抱き付き、彼のすべてを感じる、

僕の一番愛しい人・・・、

彼が居てくれるだけで、僕は幸せになれる。

 

「ねぇ一夏・・・。」

「うん?どうした、シャル?」

「ありがとう・・・。」

 

僕は彼に感謝してもしきれない、だから、

できる事なら、一夏の助けになりたい、

彼が安心できる場所に、僕はなりたい。

 

「礼を言うのは俺の方だよ、シャル、

こんなどうしようもねぇバカを、好いていてくれて、

ありがとう・・・、シャル。」

「うん。」

 

僕を抱き締めてくれる彼の腕に力がこもる。

強く、強く、離さないとでも言うように。

 

僕も彼にもっと抱き付く、離れたくない、

ずっと一夏のそばで生きて行きたい。

 

「シャル、目、閉じて。」

「うん。」

 

言われた通りに、目を閉じる。

 

その瞬間、僕の唇に、彼の唇が重ねられる。

それだけでは終わらずに、口の中に彼の舌が入ってくる。

 

「んっ・・・、ふあっ・・・、あぁっ・・・。」

ダメだ・・・、気持ちよくて、ヘンな声が出ちゃうよ・・・。

 

「ふあっ・・・、いちかぁ・・・。」

唇を離した時の僕の顔は、

ひどく蕩けたものだっただろう、

だって一夏の表情が、いつもより意地悪なものだったから・・・。

 

「はははっ、シャル、スゴくエッチな顔してんぜ?」

「誰のせいだと思ってるんだよぉ・・・、一夏のえっち・・・。」

 

お互いに、からかうように言い合うけど、

内心はとっても幸せだよ・・・。

 

 

ありがとう・・・、一夏。

 

sideout

 

side一夏

夕食を終えたあと、俺は一人で屋上に来ていた。

朝と同じく、刀を振るためだ。

集中したいから、シャルには断りをいれて、部屋で待ってもらっている。

 

刀を腰に据えて、抜刀と納刀を繰り返す。

 

ほどよく体が温まったところで、

目を閉じて、意識を集中させる。

 

想像しろ・・・、闇に射し込む、一筋の光を・・・、

それが、闇を切る俺の一太刀!

 

「ふっ!!」

 

・・・、ダメだ、まだ甘い、もっと速く、もっと鋭く!

 

「はあっ!!」

 

もっと・・・!

 

「せぇい!!」

 

もっと速く!!

 

それを何度繰り返した頃だろうか・・・、

身体に限界が訪れた。

「っ・・・!くっ・・・、はぁっ・・・、はあっ・・・、

情けないっ・・・!こんぐらいで息が切れるなんて・・・!」

 

ダメだこりゃ、脳が酸素を欲して、頭痛をおこしてる・・・。

これ以上無理に動けばマジでヤバイ。

取り敢えず、壁にもたれて、呼吸を整える。

あー、夜風が気持ちいな・・・。

 

「お疲れ様、一夏。」

「え?」

 

呼ばれた声に顔をあげると、

そこにはシャルがいた。

 

彼女は、優しい笑みを浮かべながら、俺にタオルと、

ドリンクボトルを手渡してくれた。

 

「大丈夫?随分疲れてるように見えるけど・・・?」

「あ、あぁ、大丈夫だよ。

それよりどうして?」

 

部屋で待っているはずのシャルが、

どうして屋上にいるのか、俺は気になった。

 

「何となく・・・、かな?

一人でがんばり過ぎないで、僕にも手伝わせて欲しいんだ。」

「シャル・・・。」

 

はははっ、ありがてぇな・・・。

まったく・・・、本当に俺はどうしようもねぇバカだよ・・・。

 

一人で無茶して、それで壁にぶち当たって、

それで悩んでんだからよ・・・。

 

情けねぇ、情けねぇけどよ、俺は俺でしかねえんだ。

まったく・・・、敵わねぇよ、シャルには。

 

「ありがとな、シャル。」

「どういたしまして。」

 

さてと・・・、これ以上無理しても意味ねぇからな、

今日のところは、これで帰りますかね・・・。

 

「今日はこれぐらいにして、帰るか。」

「うん、帰ろう。」

 

sideout

 

 

side箒

何故・・・、何故・・・、何故なんだ・・・?

 

私は屋上に通じる扉の陰に隠れて、

二人の様子を見ていた。

 

一夏に、今回の件で問い質すためもあったが、

一重に、私は一夏とシャルロットの仲を認めたくなかった。

 

認めてしまえば、私のこの想いは、一体、何処へ行ってしまうのだろうか・・・?

消えるのか・・・?

 

そんな事は合ってはならない!!

一夏は私の幼馴染みなんだ!

私の事を見るべきなんだ!!

 

だから、私は二人の仲を裂こうと思い、気を見計らい、

乱入しようとした・・・。

 

だが・・・、今のあいつらには、そんなタイミングすら見出だせなかった。

まるで、心が通じ合っているような、そんな特別な雰囲気がした・・・。

 

何故なんだ、一夏、

何故そんな顔をする・・・。

私も見たことが無いような・・・、そんな表情を・・・。

 

違う。

 

その笑みを向けるべき相手は、シャルロットではない、私なんだ!!

 

なのに、何故お前は、私を見ない!?

 

耐えられなくなった私は、

その場から逃げ出していた。

 

認めない、

一夏は私の、私の・・・。

 

sideout

 

 

side一夏

「ふぅ・・・、流石に疲れてんな・・・。」

あれから、シャルと一緒に部屋に戻って来て、

俺はシャワーを浴びていた。

 

運動後のベタついたこの身体に、

少し熱めのシャワーは心地よい。

 

しかし、シャルには感謝しっぱなしだな。

 

さりげなく、それでいて確実に、

俺の中にある焦りをすべて取り除いてくれている。

 

なんて言うか、いつも感じてたズレのようなものも、

今は嘘のように消えて、世界がクリアに見える。

 

それより、俺はなんで焦ってたんだろうな?

 

守ると言いながらも、弱い自分に?

流されてばかりで、自分の在り方を忘れかけていた自分に?

 

他にも、探せばキリがねぇ程、その要因が挙げられる。

 

けど、今こうして考えてみると、

しょうもない事で、どうして焦ってたんだろうな?

 

弱かろうが、流されようが、

結局は俺なんだ、

 

だから、すべて受け入れて、その上で振り切れば、

自ずと見えてくるものだってあるはずなんだ。

 

「そう考えたら、アホ臭いことで悩んでたんだな、俺は・・・。」

やってらんねぇぜ、

こんな事如きで立ち止まりやがって、

女々しいったらありゃしねぇぜ。

 

「さてと・・・、吹っ切らせてもらうぜ。」

そう、今までの悩みを、今までの焦りを、

そして今まで俺を、吹っ切らせてもらうぜ。

 

俺が突っ走ったとて、周りに何かが起きる訳じゃねぇ。

なら、俺は、俺のためになる事を、やらせてもらうだけだ。

 

決意を新たに、シャワールームから出ると、

すでにシャルは布団にくるまり寝息をたてていた。

その無防備な彼女の寝顔は、いつもより幼く見えて、

俺は胸が高鳴った。

 

「ズルいぜシャル、なんでこんなに可愛いんだよ・・・、」

俺は布団に入り、彼女を抱き締める。

 

彼女の身体は暖かく、そして柔らかかった。

正直、俺の男の部分は、もう臨界に達しようとしている、

けど、無理やりは絶対にしたくない。

だけど・・・、このままではいつか・・・、

 

「お前の事を、襲っちまうって・・・。」

「いいよ・・・。」

 

え?

 

ギョッとして、シャルを見て見ると、彼女はしっかりと起きていた。

いやはや、騙された。

 

「一夏になら・・・、僕の身体を、心を、すべてを捧げたい。

だから・・・、我慢しなくて・・・、いいよ?」

なんて健気なんだ、俺の恋人は・・・。

 

ってか、そんな事言われたら我慢できねぇって。

「いいのか?はじめてだから・・・、加減なんて出来ねぇぞ?」

「いいよ、僕を・・・、女にして?」

そう言われた瞬間、俺の中の何かが切れた。

 

「シャル!!」

「んっ!」

俺は彼女の唇に、噛みつくように自分の唇を重ねた。

 

彼女の息が、匂いが、熱が俺の理性を溶かしてゆく。

もう・・・、止まれない・・・。

 

「いち・・・かぁ・・・。」

「シャル。」

 

この夜、俺達は一つになった・・・。

 

sideout

 

 




はい、どうもです。
やっちゃいましたね。
今回も何モゲロくるか楽しみです。

次回予告
吹っ切れた一夏は
徐々に本来の力を見せる

次回インフィニット・ストラトス光の彼方
振り切る白
お楽しみに!

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