インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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伝えたい想い

side海斗

俺は一夏をIS学園行きのモノレールに乗せるため、車を走らせていた。

俺の実家から最寄りのモノレールの駅までは、車で片道30分程掛かるため、

俺が送ってやらねぇと、あいつが帰れねぇからな、仕方無しだ。

 

「ところで一夏、何かを掴めたかしら?」

「もちろんだよ深夏姉、バッチリだよ。」

「うんうん、これから頑張りなさいよ~?

あんたは只でさえ注目されているんだから。」

「俺なんかに注目しても対して意味無いでしょうに、」

 

後部座席では一夏と深夏が世間話をしていた。

いや一夏、お前は全世界から注目されているぞ?

下手したら拉致られて、解剖とか確実にあり得るからな?

 

いや、IS学園にいる限りは大丈夫か、千冬がいるし、

あのブラコンに戦争挑んで、勝てる奴なんてほんの一握りだ。

 

噂では適性発覚直後に、一夏を拐おうとしたアホを、物理的、社会的に、

完全抹殺したらしい。

 

あん時はマジでビビった、いくら殺していないとしても、過剰防衛だと断言できる。

 

いや、ブラコンを常識で縛るのは無理なのかもしれない。

まぁ、あいつはそこんとこをちゃんと弁えてくれている事を切に願うしかないのが悲しい。

 

ブラコンといえば、深夏もそうだ、千冬とはタイプが違うがよ、

割と重症なのは違いない。

 

ちなみにタイプとしては、深夏が弟を甘やかして、でも締めるところは締めるブラコンだとしたら、

千冬は普段ツンツンしてるが、こっそりシャツの匂いとかを嗅ぎそうな(あくまで例えだ。)隠れブラコン。

 

一見して違うように見えるが、根本的な部分、つまりはめんどくさいって事には変わりはない。

 

俺は違うのかって?

どうだろうな、まぁ、一夏が俺を兄貴呼ばわりしてくれるのは純粋に嬉しいがな。

 

それは置いといて・・・、

そんなこんなしている内に、モノレールの駅に到着した。

 

「海斗兄、送ってくれてありがとう。」

「気にするな、あぁそうだ、これを持っていけ。」

そう言って俺は竹刀袋に入れた模造刀と、体術関連の書物を一夏に渡した。

 

「望みを叶えたいなら強くなれ、すべての理不尽をはね除ける程にな、

だが、志を見失うな、それを無くせば後は只、修羅に堕ちるだけだ。」

「わかったよ、俺は強くなる、その先にある光を掴む為に。」

それでいい、お前は俺達のようにはなるな、

道をはずれて、修羅になるな。

 

相手が誰かは知らんがソイツと結ばれて、幸せになってほしい。

 

「あぁ、ありがとう海斗兄、深夏姉!」

「頑張れよ一夏。」

「またね~♪」

俺と深夏にそう言った後、荷物を持って車を降りてモノレール駅の中に消えて行った。

 

それを確認した後、俺は静かに車を発進させる。

「よかったの、海斗?一夏に私達の事を伝え無くて?」

「いいんだよ、今はこれでいい、いつか、アイツから知る日が来るさ。

だから、今はこれでいいんだよ。」

 

アイツはこれから大なり小なり、世界を巻き込む渦の中にその身を投じる事になるだろう、

アイツの特異性、そして希少性を考えれば、

これから興る動乱は、かつてない程のものになるだろう。

「後は、アイツ次第だ・・・。」

 

一夏、お前はこの世界をどう生きる?

その答えを出せた暁には、杯を交わそうじゃないか・・・。

 

sideout

 

 

side一夏

俺は今、学園行きのモノレールに揺られていた。

 

外の景色は、傾き始めたら太陽が、海面を照らし、それはもう美しい光景だが、

 

今の俺は、別の事を考えていた、

「謝らねぇとな・・・、皆に・・・、」

そして、彼女に、俺が抱くこの想いを伝えたい。

 

もどかしい、気付いた途端にこれかよ・・・、

情けねぇ・・・、でも・・・。

「俺の事を許してくれるだろうか・・・?」

俺は彼女を、自分の大人気ない行動で傷付けてしまった・・・。

 

もしかしたら、許してもらえないかもしれない、それは同時に、

この気持ちの終わりも決まる。

そう考えると、少し恐いな・・・。

 

「でも・・・、ここで止まってても、何も始まらない、

ならば、玉砕覚悟でやってやろうじゃねぇか。」

 

sideout

 

sideシャルロット

「はぁ・・・。」

今日何度目になるかわからない溜め息を吐き出し、

僕は廊下を歩いていた・・・。

 

一夏とはもう何日もまともに話せていない。

辛い・・・、まるで苦行をさせられているような感じだよ・・・。

 

でも・・・、元はと言えば、僕達が一夏の都合を考えず、

自分勝手な事をしてしまったからだ・・・。

そう・・・、完全な自業自得、言い訳はできない・・・。

 

僕は・・・一夏に嫌われても、当然の事をした・・・。

もうこの想いが届く事は無いかもしれない・・・。

それでも・・・、

 

「うぅっ・・・、グスッ・・・。」

そう思うと胸が痛くなって、自然と涙が零れてくる・・・。

一夏・・・、貴方に・・・、会いたい・・・。

 

「シャル?シャルか?」

「!?」

この声・・・、それに・・・、僕をそう呼ぶのは・・・。

 

「・・・、一夏・・・?」

「っ!泣いてるのか・・・?」

振り替えるとそこには・・・、僕の想い人・・・、一夏が立っていた。

 

「あ、こ、これはね・・・。」

あぁ、なんで止まってくれないんだろう・・・?

僕に泣く権利なんて無いのに・・・。

 

「済まない、シャル!!」

「え!?ちょっ、一夏!?」

どうして?なんで一夏が頭を下げるの・・・?

悪いのは僕の方なのに・・・。

 

「つまんねぇ意地張って、俺はお前を傷つけちまった、

だから、今その事で泣いてたんだろ・・・?」

「・・・、うん・・・。」

「俺が悪かった!許してくれ、シャル!」

「僕の方こそごめんなさい!一夏の事を考えてあげられなかった・・・、

貴方は悪くない、悪いのは僕の方だよ、許してください!」

 

お互いにそう言ったまま、黙ってしまい、しばらくの間、沈黙が続く。

 

「なあシャル、俺、君に言いたい事があるんだ、聞いてくれるか?」

「えっ・・・?」

なんだろう・・・?

 

「俺は・・・、お前が・・・、シャルが好きだ!!」

「!!」

その瞬間、僕の時は止まった。

 

sideout

 

 

side一夏

「俺は・・・、お前が・・・、シャルが好きだ!!」

「!!」

俺は、好きな女の子を前に、俺の本当の気持ちを伝える。

 

「いつも笑顔で、俺の事を支えてくれた、料理も上手で、

家庭的なところも、怒るとすごく恐いところも、全部含めてお前が好きだ!!」

ははっ、柄でもねぇな、今まで感じた事がねぇ位緊張しちまってる。

でも、この気持ちを伝え切らない限り、俺は前に進めない。

 

「あの話を打ち明けられた時から・・・、俺はお前を守りたいと思った!

でも、そうじゃない、守りたいだけじゃなくて、一緒に居て欲しいって気付けた!

「・・・。」

「だから・・・、お前さえよければ・・・、俺と付き合ってくれ、シャルロット!!」

 

言った・・・、悔いはない、俺は自分の気持ちの全てを打ち明けた、

これでフラれたら・・・、弾に慰めて貰うか。

 

「一夏!!」

シャルが俺に抱きついて来る、シャルの匂い、温もりが伝わってくる。

 

「僕も一夏が好き、大好きだよっ!!女ってばれたのに庇ってくれた、

優しくしてくれた、ここにいろって言ってくれて、僕は本当に嬉しかった!

だから僕は、君の事が好きになったんだ・・・。」

「シャル・・・。」

「僕ね・・・、他の子に一夏が盗られるって思って、嫉妬して・・・、

あんな事しちゃったんだ・・・。

今ね、仲直りできただけでも嬉しいのに、こんな・・・、好きって言ってくれて・・・、

嬉しすぎて・・・、恐いよ・・・。」

 

俺の胸で泣くシャルを、俺は抱き締める。

シャルの身体は、ちょっとしたことで壊れてしまいそうな、華奢な身体だった・・・。

 

「シャル・・・、俺と付き合ってくれるか・・・?」

「はいっ!!」

俺の問い掛けに、泣き濡れた笑顔でそう返してくれた。

 

「ありがとう、シャル・・・、大好きだ・・・。」

「一夏・・・。」

 

俺は目を閉じるシャルの顔に、自分の顔を近づけ、そして・・・。

 

俺達は、恋人同士となった・・・。

 

 

sideout

 

 

noside

一夏はその後、シャルロットを連れて、姉である千冬のところへ、報告に来ていた。

「千冬姉、俺、シャルと付き合う事にしたんだ・・・。」

「ほう?」

 

一夏の口からそのような言葉が出てくるとは思っていなかったのか、

少し驚いたような表情を浮かべた。

 

「付き合うのは構わんが・・・、一応理由を聞こうじゃないか?」

 

千冬の問いに、一夏は今日起こった事を話した。

 

海斗に道を示してもらったこと、深夏に励ましてもらったこと、

そして、自分自身の気持ちに気付いた事を・・・、

 

「そうか・・・、それで、お前たちはこれからどうするのだ?」

一夏の話を聞き終えた千冬は、静かにそう尋ねたら。

 

「デュノア、いや、シャルロット、お前はこの学園を卒業した後、

フランスに連れ戻されるぞ?」

「っ!!」

千冬の言葉にシャルロットは肩を震わす。

 

「お前は下手をすれば投獄、最悪、極刑だ。」

 

千冬の言葉は重く、そして無慈悲だった・・・。

「僕は・・・。」

シャルロットは答えが出ず、下を向く、

そんな彼女の様子を見て、何かを決心したらしい一夏が口を開いた。

 

「千冬姉、俺はシャルにずっとそばに居て欲しい。

だから・・・、シャルさえよければこの学園を卒業した後に、

俺はシャルと結婚しようと思う!!」

「一夏・・・!」

 

一夏の突然の宣言に、シャルロットは驚く。

 

「まだ学生の身分でこんな事を言うのはおかしいかもしれない、

でも、俺はシャルと一緒に居たいから!」

千冬はその言葉を聞き、しばらくの間、何かを考えていた。

 

「やれやれ、どうやら、思った以上らしいな・・・。

わかった、卒業したら直ぐに籍をいれるがいい。」

「!ありがとう千冬姉!!」

「あ、ありがとうございます!」

千冬の言葉に、二人は笑顔で頭を下げた。

 

「そうだ、シャルロット、これからはプライベートでは、

私の事を千冬さんか、千冬義姉さんのどちらかで呼べ、いいな?」

「は、はい!!」

「ああ、それと、避妊はしっかりな?」

 

その言葉で二人は茹で蛸のように真っ赤になってしまった。

 

sideout

 

 




はいどうも、
一夏モゲロと思った人、感想へどうぞ(笑)

次回予告
ついに結ばれた一夏とシャルロット
二人の新たな生活が始まる

次回インフィニット・ストラトス光の彼方
結ばれた想い

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