インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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絆の力

sideシャルロット

リクとセシリアに背中を押され、

僕と一夏は一路とある場所を目指していた。

 

何処に向かっているかは分からないけど、一夏はそれをわかってるみたい、

 

全ての始まりの地、そこで決着を着ける気なんだと思う。

「シャル、少し良いか?」

その途中、一夏が通信を入れてきた。

「どうしたの?」

聞かなくてもわかる、一夏は悩んでるんだ、

箒を救うべきか、それとも殺すべきか。

 

「俺がアイツの心に触れられなかったから、アイツは狂った。

だから、そのケジメをつけるために、アイツを救いたい。」

「そっか、なら、助けよう、二人で、箒をあんな風にしたのは、

僕にも責任がある、だから一夏だけにやらせる訳にはいかないからね。」

それが、一夏に愛されている僕の役目だから。

 

「すまない、シャル・・・。」

「謝らないで、一夏、そこはありがとうって言って欲しかったな。」

「そうか、ありがとなシャル。」

「うん。」

 

会話を終えた直後に、前方から無人機の大軍が攻めてきた。

 

「って、どんだけいるんだよコイツら!?」

「ん~、ざっと見積もって二十機以上はいるね。」

「いや、なんでそんなに冷静なんだよ!?」

なんかさ、驚き過ぎて逆に冷静になっちゃうんだよね、

って、そんなことはどうでもいいや。

 

一夏は雪崩を、僕はガンブレードをそれぞれ呼び出して無人機に斬りかかろうとした、

その時だった・・・。

 

横手からレーザーと実弾の嵐が無人機の大軍に襲いかかる。

これは・・・!

 

「エリーゼにアリス、それに楯無さん!?」

一夏がその方向に目をやり、驚いていた。

まぁそうだろうね、最後までIS学園の守りに徹する勢いだった三人が来るとは思っても見なかったよ。

 

「加勢するわ、貴女達は行きなさい!!」

楯無さんがランスで一体のゴーレムを串刺しにしながら叫んだ。

「私達がここで食い止めます!先輩達はこのまま進んで下さい!」

エリーゼは楯無さんをシールドビットで防御しつつ、

サダルスードのレーザーを乱射して無人機をズタズタにしていた。

「先輩達がしなければならない事のお手伝いです!」

アリスはレーザーライフルで一機を撃ち抜き、もう一機のゴーレムを相手どっていた。

 

「皆、ありがとう!!」

三人にお礼を言って、今だ渋る一夏を無理矢理引っ張ってその空域を離脱、

元々進んでいた方角へと機体を駆った。

 

「シャル!!」

「行くよ一夏、皆の想いを、無駄にはしない!」

「くっ・・・!すまない!!」

苦い表情をして、一夏は三人にそう言って、更に加速、逆に僕を引っ張って進む。

 

皆・・・、無事でいてね・・・!

sideout

 

noside

楯無、エリーゼ、アリスの三名による援護で、一夏とシャルロットは戦場を突破、

目的の地に向け、音速の三倍の速度で飛行を続けていた。

 

(大丈夫なのか・・・!?流石にあの数を三人で相手にするのは・・・!)

一夏は今だ迷っていた、残して来た七人の顔を思い浮かべ、

戻るべきか、戻らざるべきか・・・、

彼とて、やらねばならない事は見えている、だが、仲間を救いたいと願う気持ちもある、

故に、彼はジレンマに陥っていた。

 

(・・・、いや、皆、俺の仲間だ、簡単に負けねぇ。)

彼はかぶりを振り、更に機体を加速させる。

その迷いを振りきるが如く、白式弐型は翔ぶ。

リヴァイヴ・プルトーネを駆るシャルロットも、彼に追従し、

更に速度を上げる。

 

「シャル、もうすぐ篠ノ之神社だ!」

「えっ?」

「全ての始まりの地、それはISの誕生した場所に他ならない!

あんな街中で戦う必要も無いがな。」

 

シャルロットは一夏の言葉に驚く、だが、確かにISが生まれた土地と言われれば、

日本の、篠ノ之神社に他ならない。

 

シャルロットがそう理解した、その時・・・、

「ちっ!また無人機か!」

十機程のゴーレムが前方がら接近、内一機が彼らに向けレーザーを撃とうとした、

だが、横手から飛んできたレールガンの砲弾に弾き飛ばされる。

 

「ラウラ!鈴!」

一夏が驚きと、感激の念を込めた声を上げ、友と合流した。

 

「行け、一夏、シャルロット!」

「ここはアタシらが止めてみせるわ、あんた達は箒をお願い!!」

 

無人機を迎撃しながらも、ラウラと鈴は声を上げ、二人を行かせようとする。

「私達はアイツをわかってやれなかった、同じ時を過ごしてきた仲間だったのに・・・!」

「だから!押し付けるみたいで悪いけど、アイツを、アイツの心を救ってあげて!!」

彼女達は、篠ノ之箒の友人として、彼女を止められなかった事を悔やんでいた、

故に、救いたいと願う、その気持ちを一夏とシャルロットに託し、

自分達は彼らに道を拓く役割を買って出た。

 

「わかった、お前らの気持ちも、全部アイツに届けてみせる、

だから、死ぬんじゃねえぞ!!」

「鈴、ラウラ、ありがとう!!」

一夏は決然とした意思を込め、シャルロットは感謝の念を込め、二人に言い置き、

最大加速でその場を離れた。

 

全ての始まりの地で、全ての因縁を終わらせる為に・・・。

 

sideout

 

noside

一夏達が篠ノ之神社を目前としていた頃、一つの決着がつこうとしていた。

 

「はぁぁぁっ!!」

「アァァァッ!!」

 

リクとセシリアは悩みに囚われるくぅを相手に苦戦していた。

 

篠ノ之束謹製の白椿の力は凄まじく、リクとセシリアは防戦一方になる。

 

「くっ!!強いな、一夏先輩並だねコリャ。」

バスターソードの側面で、振り下ろされる刃を防ぎ、

左手に緊急用コンバットナイフを呼び出し、突き立てようとする。

 

だが、くぅは僅かに身体を反らして、ナイフの突きを回避する、

リクはその隙を突き、バスターソードを横凪ぎし、くぅを弾き飛ばす。

 

「そこですわ!!」

体制を崩したくぅを、スターライトで狙撃し、

ダメージを与える。

 

「キャアッ!!」

悲鳴を上げながら墜落するくぅを、リクが受け止める。

 

「な、何故・・・?」

「一夏先輩に聞いたよ、お前は篠ノ之博士の為に戦ってるんだってな、

けど、この戦争は篠ノ之博士の望んだ事なのか?」

訳が分からないといった表情のくぅに、リクは逆に質問を返した。

 

「いいえ、この戦争は全て篠之ノ之箒と、亡國企業の手により引き起こされました、

決して、束様のご意志ではありません。」

「やはり、そうでしたのね。」

くぅの口から語られる真実に、セシリアは静かに頷く。

想像通りの展開に、呆れているのだろう。

 

「だいたい分かった、で?お前はこれからどうするんだ?」

「えっ・・・?」

「俺達の予想ではな、篠ノ之箒は、一夏先輩を殺す為なら、

篠ノ之博士を犠牲にすることもあり得る、さて、お前はどうするんだ?」

 

リクは意地の悪い笑みを浮かべ、くぅに問う。

「わ、私は、束様をお守りする事が・・・!」

「誰が使命云々を言えっつった?お前の本当の気持ちを教えろよ?」

「貴女の望むその想いで、篠ノ之博士を救う事が できますわ、

だから、使命や義務ではなく、貴女の素直な気持ちを聞かせてくださいな。」

 

相変わらず使命のみを語ろうとするくぅに、

リクとセシリアは自分の気持ちを語れと、優しく言う。

 

「私は・・・、一人の人間として、束様を救いたい!

篠ノ之箒を、私は信用できません!!お願いします!

私を束様の下まで連れていって下さい!」

 

長い空白の後、くぅは身を切るような声で二人に頼んだ。

 

「その言葉を待っていた、俺達を篠ノ之博士のところまで案内してくれ。」

「はい!!」

 

sideout

 

side一夏

鈴、ラウラの援護もあり、俺とシャルは遂に因縁の土地に辿り着いた。

幼き日に、俺はここでアイツと剣の腕を競い合った。

それは確かな事だ、だけどそれはもう思い出でしかない。

 

今の俺には、思い出よりも、何よりも大切な女性がいる。

だから、過去に囚われるアイツを、俺はここで救う。

 

地上に降り立ち、エネルギーを節約する為に一旦弐型を解除する。

息を吐き、前を向くと束さんと、血走った目をしている箒がいた。

 

「くくっ、ようやく来たか、一夏ぁぁぁ!!」

ちっ、もう理性があるかどうかも怪しいな、あれは怨念で動いてるぜ。

まったく、責任の一端が俺にあるだけ、なんかめんどくせぇな。

 

「死んでもらうぞ・・・!」

「待て、その前に俺の話を聞け、戦うのはそれからだ。」

今にも斬りかかろうとしている箒を留め、俺は瞑目する。

 

「お前が狂った原因が、俺の気持ちがお前に向かなかった事だとはもう知ってる、

だが、知っている上であえて言おう、俺はお前とは付き合えない、

そして、待たせてしまってすまなかった。」

俺はアイツに向け、頭を下げる、約一年越しの謝罪だ、

相手をキッパリと振るのも優しさだ、そう思っている。

 

だが・・・。

 

「違う・・・!違う!一夏の隣にいるべきなのは、私なんだ!!」

箒は叫び声を上げ、かぶりを振っていた。

「何故だ、何故私では無いのだ!?」

「俺はシャルの優しさに惚れた、セシリアでも鈴でもラウラでも、

そして、お前でもない、シャルロット・デュノアに惚れたんだ!」

それだけは譲れない、この想いを消せば、俺は俺で無くなる。

 

「貴様がいるからか・・・!」

箒はシャルを睨み、低く唸るような声で呟く。

まずい・・・!

「貴様がいるから、私はぁぁぁぁッ!!」

黒焔を展開し、シャルに斬りかかってくる。

俺は弐型を展開し、雪崩を呼び出し、刀を受け止める。

 

「もういい!!貴様もシャルロットも、殺してやる!!」

「っ!!ふっざけんじゃねぇ!!」

その言葉に、俺は感情が爆発するのを感じた。

一気に刀を押し返し、箒との距離を取る。

 

「・・・、わかった、俺が友として、お前を倒す。」

「やってみろ!!」

俺は雪崩を鞘に納め、一旦息を吐く。

 

「シャル、束さんを見張っててくれ、流石に箒の味方はしそうにないが、

行動が読めない分、不安なんだ。」

「わかった、気を付けてね。」

「ああ、勿論だ!」

 

シャルにそう告げ、俺は抜刀術の構えを取る。

箒は日本刀を二本呼び出し、構える。

 

「織斑一夏、白式弐型・・・。」

「篠ノ之箒、黒焔・・・。」

 

周囲に緊張が走る、張り詰めた空気を破る瞬間は、一瞬。

 

暫くにらみ合いが続いたその刹那、一羽の鳥が羽ばたいた。

 

「推して参る!!」

「死ねぇぇぇ!!」

 

瞬間加速<イグニッション・ブースト>を発動させ、

一気に激突した。

 

白と紅の因縁が、交わる最後の刻の始まりだ・・・。

 

sideout

 




はいどーもです!
最終章第二話です!
もう後数話で完結します!

さてここで次回予告
全ての想いをぶつけ合いながら戦う一夏と箒、
勝つのは愛か、憎しみか・・・。

インフィニット・ストラトス 光の彼方
決着の刻

お楽しみに!!

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