インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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因縁の邂逅

noside

夏休みが終わり、IS学園は二学期に入った。

 

だが、それは形の上だけで、これから始まる戦争に対する準備として、

専用機持ちと教師陣、そして布仏本音ら、整備科の一部生徒以外は、

全員祖国に還された。

 

かくして、IS学園は未曾有の事態に対応する、一つの要塞となった。

 

sideout

 

side一夏

現在、俺は他の専用機持ちと共に会議室にいた。

そこには日本軍代表として、海斗兄と深夏姉がいた。

 

作戦会議にしちゃお粗末だが、やることは決まっている。

 

「改めて説明する、我々はIS学園の警備を最優先し、敵の殲滅を目標とする。

なお、コアはすべて破壊しておけ、余計な火種が増えるからな。」

 

なるほどな、千冬姉はここだけが狙われると思っているみたいだ、

それは半分正しい、ここには世界一多くのコアがある。

亡國企業が相手なら尚更だ。

 

けど、もう半分は間違いだ、何故なら、あちらには復讐の悪鬼がいる。

ここだけを狙う確率は低い、寧ろ、世界を滅ぼすつもりでかかってくるだろう。

 

出来ることならここだけを狙って欲しいものだ、余計な被害が出なくていい。

けど、それが叶わぬ望みだとは言うまでもない。

 

「・・・、俺はその案に反対だ、相手は篠ノ之束じゃない、

篠ノ之箒と亡國企業だ、ここだけを攻めるとは考えられない。」

俺はその思いを告げるため、初めて千冬姉の案に対して反対した。

 

全員驚いた顔してるけど、俺が言わなきゃ伝わらねぇ。

 

「俺も織斑中尉に賛成だ、千冬、お前は相手を軽視し過ぎだ。」

「そうそう、束はスマートじゃない戦いは好まないけど、

他の連中はどうか分からないしね。」

 

海斗兄と深夏姉、そして今の箒の状態を知る二年の専用機持ち全員が賛成してくれた。

 

あ、因みに俺とシャルは夏休みの訓練中に、中尉に昇進したんだよな。

 

「待ってください、例えそうだとしても、戦力を分散させるのは危険過ぎます!

ここは絶対に狙われます、戦力が薄くなった所を叩かれればひとたまりもありません。」

楯無さんの言うことに、エリーぜ、アリスとフォルテ先輩、そして教員が賛成の意を表した。

 

この二つの意見、どちらも正しいし、間違いなど無い、

違うのはその過程だけだ。

 

俺が出した案は学園の守りを薄くする代わりに、世界中を守る。

楯無さんや千冬姉の案はあくまで学園を守り、敵と戦う。

 

たったこれだけの差でしかない。

 

けど、俺は行かなきゃならない、この戦争を止める為に。

 

俺が言葉を発しようとした、その時・・・。

 

「た、大変です織斑先生!!」

山田先生が血相を変えて会議室に飛び込んできた。

 

「落ち着け麻耶、深呼吸しろ。」

「は、はい!スーハー、スーハー・・・。」

 

海斗兄が山田先生を落ち着かせること数秒、

呼吸を整えた山田先生は、モニターに情報を表示した。

「せ、世界各国の主要都市に無人機が出現、破壊活動を行っているとの情報が入りました!!」

『ッ!?』

山田先生の発言に、全員が息を呑んだ。

 

嫌な予感が当たってしまった、だが、これで出撃できる。

俺はアイツを止めなきゃならない、その責任がある。

 

「深夏、一夏、シャルロット、行くぞ、<スカル・グレイブ>の任務だ!」

『了解!』

やるなぁ、海斗兄、軍人として命令したなら、

例え千冬姉でも俺達を留める事は出来ない。

 

「中佐!我々も行きます!」

俺達が出て行こうとしたとき、ラウラを筆頭に、

セシリア、鈴、簪、リク、エリーゼにアリスが着いていこうとしていた。

 

「お前らは千冬に指示を仰げ、部下じゃない限り、俺はお前らに命令できねぇからな。」

海斗兄はセシリア達にそう言い、会議室から去っていった。

俺とシャル、そして深夏姉はそれに従い、会議室を出る、

校舎から出て、それぞれの機体を展開する。

 

「小早川海斗、黒騎士、出るぞ!!」

「小早川深夏、セイクリッド、行くわよ!!」

海斗兄と深夏姉が機体を浮かし、俺達より先に飛んでいく。

 

「行こうぜシャル、明日の為に。」

「うん!」

シャルが力強く頷いてくれたのを認め、俺も無言で頷き返す。

 

俺は、シャルと添い遂げる、何があろうとも、必ず生き残ってみせる!

 

「織斑一夏、白式、行くぜ!」

「シャルロット・デュノア、プルトーネ、行きます!!」

 

決意を込め、俺達は虚空を目指し、飛翔した。

 

sideout

 

noside

<スカル・グレイブ>の面子は、まず日本に現れたゴーレムの討伐に向かった。

 

「はぁぁぁぁッ!!」

雪崩の刃が白く輝き、ゴーレムを切り裂く。

「はっ!」

虎徹がゴーレムを両断し、撃墜する。

「おおっ!!」

ソードオブヴァルキリー・ブラックが、向かってくる敵機を凪ぎ払う。

「たぁぁっ!」

ガンブレードの×字の斬撃が、敵を四つに切り分けた。

 

たった数分で、首都を襲っていた二十機のゴーレムは成す術なく散った。

 

「こんなもんか?つまんねぇな。」

「しょうがないわよ、私達に加えて一夏とシャルロットちゃんもいるんだし、

この程度相手にならないわ。」

海斗は心底つまらないと言った風に言い、深夏は彼を宥めるように言う。

 

「中佐、一応コアはすべて軍の回収班に任せますか?

ウルフ大尉が後少しで到着するそうです。」

「そうか、更識に回収班の護衛を任せよう。」

一夏の報告に海斗は頷き、遅れて参戦した簪に命令する。

 

「なんにせよ、防衛は完了かな?」

海斗の言葉に、一夏達は緊張を和らげる。

 

だが・・・。

『警告!!敵機接近!!』

それぞれの機体に、アラートが響く。

 

四人は身構え、敵を迎え撃つ体勢をとる。

ほどなく、二機のISが急速に近付いてきた。

 

「アイツらはッ!」

一夏は無意識に雪崩を握り締めていた。

 

「久し振りだなぁ、クソガキぃ!!」

二機の内、一機のパイロット、オータムが一夏に向けて言葉を発する。

「久し振りね、海斗、深夏。」

もう一機のパイロット、スコールは、海斗と深夏に向けて言葉を発していた。

 

「ああ久し振りだ、だが、堕ちたお前には会いたくなかったよ。」

「ほんとに、あの時の貴女は何処にいったのかしら?」

海斗と深夏はスコールに向け、皮肉気に言う。

 

「織斑一夏ぁ!!あん時の落とし前ぇ、つけて貰うぜ!!」

「はっ!上等だ、返り討ちにしてやるよ!!」

オータムに向かい、飛び出そうとした一夏を、海斗と深夏が道を塞ぐように立ちはだかる。

 

「一夏、シャルロット、ここは俺達がヤる、だからてめぇらは束ン所に行け。」

「海斗兄!けど!!」

「これは命令よ!行きなさい!!」

海斗の言葉に喰ってかかる一夏を、深夏は怒鳴り付け、

彼の前に立つ。

 

「行け、束を救えるのはお前たちしかいねぇんだよ。」

「私からもお願い、束を助けてあげて。」

「っ・・・!了解!!」

 

一夏は後ろ髪を引かれる思いで、シャルロットと共にその空域を離れた。

 

それを見送った後、海斗と深夏はスコールとオータムに向き直る。

「さてと、いつぞやの決着を、着けようぜ?」

「望む所よ、貴方達を殺さない限り、世界は獲れそうもないしね。」

 

海斗とスコールは殺気を発しながら互いを睨み付ける。

『いざ、勝負!!』

 

黒と金、青紫と鋼色の四機が激突した。

 

sideout

 

side一夏

海斗兄と深夏姉に言われ、俺とシャルは束さんの下へ向かっていた。

 

海斗兄と深夏姉は、オータムと、確かスコールと呼ばれた女との戦いに入っている。

あの二人が負けるとは思えないけど、やっぱり俺の兄貴と姉貴なんだ、

心配になるのは仕方無いと思っている。

でも、俺はあの戦いに手出し出来ない、あの四人には何かしらの因縁がある、

だから、関係の無い俺が入っても邪魔なだけだ。

 

ならば、俺に出来ることと言えば、一刻も早くこの戦争の元凶を潰す事だけだ。

 

だが、ここで一つの問題が浮かんできた。

それは・・・。

 

「束さんの居場所って何処だよ!!」

「いや、そう言われても、分からないものは分からないよ。」

まあその通りだな、やれやれ、世界中探してたら時間がいくらあっても足りねえし、

どうしたもんかな・・・?

 

俺達が途方に暮れていると・・・。

『所属不明機接近中!』

レーダーに反応があり、警告音が鳴り響く。

 

「なんだ!?」

反応がする方へ意識を向ける。

すると、地平線の果てから白い機体がこちらに向かってきていた。

 

「あれは・・・、白椿、くぅか!?」

『お久し振りです、一夏様。』

 

白式に通信が入り、ウィンドウにくぅの顔が表示される。

 

「お前、よく無事だったな、箒の奴に何かされてるかと思ってたぞ。」

「ご心配ありがとうございます、私も束様も無事です。」

「そうか、良かったぜ、ところで束さんは何処にいる?」

 

俺は束さんとくぅを助けたい。

そして、箒との因縁を終わらせる、それが俺のすべき事だから。

 

「束様は全ての始まりの地にいらっしゃいます、そこで箒様と共に貴方達を待っております。」

「全ての始まりの地・・・?まさか・・・!?」

 

いや、確かに始まりの地と言えばあそこしかない、

全ての始まりの地、ISの誕生した場所!

 

「わかった、行こうシャル!」

「うん!」

機体を駆り、そちらへ行こうとした、が・・・。

 

「ですが、行かせる訳にはいきません、私は束様をお守りする事が使命、

貴方達は仮にも束様に敵対しておられる、そのような方達を束様に近付ける訳にはいきません。」

「待てよくぅ、俺は束さんを討つ気は・・・!」

俺が言い切る前に、くぅは刀を展開し、斬りかかってくる。

 

「やめろくぅ!!」

「貴方は正しいしのですか!?教えてください!

私は束様に救われました!そのご恩に報いるため、

あの方と、あの方の大切な存在を守る!

けど、箒様はそれに値するかどうかも分からない!!

分からないけど!束様が大切におもっておられる!!」

 

ちっ!こいつも、結局は悩んでるのか!?

教えてやりたい、正しさだけが全てじゃない事を、

けど、俺はコイツを攻撃したくない、どうする!?

 

防戦一方になる俺に、銀色の刃が振り下ろされる、その直前、

目の前に朱い影が割り込み、刃を防いだ。

 

「何やってるんですか、一夏先輩、こんなとこで!!」

「リク!」

バスターソードを思いっきり振り、くぅを下がらせる。

 

「一夏さん、シャルロットさん、ここは私たちにお任せください!!」

「セシリア!」

セシリアの声を聞いたシャルが声をあげ、セシリアのそばに機体を寄せる。

 

「一夏さん、箒さんを止めてください、それが出来るのは貴方達しかいませんわ。」

「お願いします、このままじゃあ世界は確実に壊れる!!」

リクとセシリアは俺達にそう言って、くぅに向かっていった。

 

「くっ・・・!すまない!!」

 

俺はシャルの手を掴み、展開装甲・烈風を開き、

音速の五倍の速度でその場所を目指した。

 

全ての始まりの地、篠ノ之神社へ・・・。

 

sideout




はいどーもです!
クライマックスシリーズ第1話、
因縁の邂逅、いかがでしたか?
海斗、深夏とスコール、オータムの因縁とはいったいなんなのか、
それはまたの機会に語ることになるでしょう。

さてとここで次回予告
篠ノ之神社を目指す一夏とシャルロットを援護すべく、
学園の専用機持ち達が道を拓く。

次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
絆の力
お楽しみに!!

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