インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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君と花火と

side一夏

俺達が学園に戻ってからまもなく、

IS学園は夏休みに入った。

 

俺とシャルはその期間を利用して、

8月の半ば、お盆の前辺りまで訓練をして過ごした。

 

と言っても、殆んどが白式弐型とリヴァイヴ・プルトーネのデータ取りが主だったな。

 

俺達は模擬戦に模擬戦を重ねて、ようやく満足いくデータを残せた。

でもって、ようやく今日、自宅に帰ってきた。

 

さてと、取り敢えず、掃除でもしますかね?

冬休み以来、帰って来れなかったし、

かなり埃が溜まってる。

 

「さてと、シャル、掃除したいんだけど、手伝ってくれないか?」

「良いよ♪僕もこの家の人間になるんだから、手伝うのは当たり前だよ♪」

シャルは俺の申し出を快諾してくれた。

ってかさ、卒業した後、何処に住もうかね、俺ら?

この家に住むのも悪くは無いけど、この家は元々千冬姉が買ったから、

俺が居座り続けるのもどうかと思ってる。

 

いっそのこと、何処かに二人暮らし始めるのも悪くは無いな。

 

俺は掃除機をかけ、シャルは窓ガラスを拭く。

 

小一時間程で大体の事は終わり、俺達はソファーでくつろいでいた。

 

「お疲れ様、シャル、お陰でだいぶ早く終わったぜ。」

「一夏こそお疲れ様だよ、お茶淹れるね♪」

「おう。」

 

シャルはそう言って、キッチンに入っていった。

 

(さてと、これからどうしますかね?)

自宅に帰ってきたのはいいけど、特にすることも無いことに、

軽く驚きつつも思考を巡らせる。

 

そう言えば、今日か明日に篠ノ之神社で花火大会があるな、

よし、シャルを連れていってやるか。

 

机に置いてあった携帯を取り、日程を調べる。

よし、思った通り明日からだな。

 

なら今日は今から浴衣でも買いに行こうか?

そうだな、それがいい。

 

「お待たせ一夏、何見てるの?」

シャルがお盆に麦茶が入ったコップを載せて持って来てくれた。

 

「ありがとなシャル、実はな、明日近くの神社で夏祭りがあるんだ。」

「へぇ、どんな感じなの?僕日本のお祭りなんて行った事無いからね。」

そう言えばそうだったな、さてと、説明しますかね。

 

「色々出店とかあって、最後の方には花火が打ち上がるんだよ。」

「へぇ、楽しそうだね♪行ってみたいな♪」

「わかった、明日一緒に行こうな。」

「うん♪」

 

あ、そうだ、シャルの浴衣姿って見たことないよな?

よし、丁度良いな、

 

「なあシャル、浴衣って知ってるか?」

「え?確か着物みたいなやつだよね?聞いた事はあるよ。」

「まあ簡単に言うと、夏祭りの時に女の子が着る和服の一種だよ、

シャルが着てみたいなら、今から買いに行こうと思うんだけど?」

 

と言うのは建前で、俺がシャルの浴衣姿を見たいだけなんだけどな。

 

「一夏がそう言うなら、行こうかな?

あ、でも一夏に見立てて欲しいなぁ。」

「勿論だよ、昼御飯食べたら、近くの呉服屋に行ってみようぜ?」

 

sideout

 

sideシャルロット

お昼御飯を終えて、僕と一夏は近くの呉服屋って所に来た。

 

一夏の話によると、和服や浴衣を多く置いてる服屋さんらしい。

こう言うところってあんまり来たことが無いから新鮮で良いなぁ♪

 

「さてと、シャルに似合うのはあるかな?

まあ、シャルなら何着ても可愛いからな。」

「もう、一夏ってば、照れちゃうよ。」

「ワリィな、おっ、これなんてどうだ?」

 

そう言いながら、一夏はオレンジ色の布地に、

白い水玉模様と、白い波のようなラインが綺麗な浴衣を手にとって、僕に見せてくれる。

 

「わぁっ、可愛いね。」

一夏から浴衣を受け取り、身体に当てて見る。

 

「どうかな?」

「おおっ、スゲェ似合ってるよ。」

「ありがと♪これにするね♪」

ふふっ、一夏が似合ってるって言ってくれた、嬉しいなぁ♪

 

「ねえ、一夏は浴衣買わないの?」

「ん?そうだなぁ、シャルが折角浴衣なのに、

俺がTシャツとかじゃ台無しだな。よし、この際俺も買うか。」

「うん♪それじゃあ、僕が選んでも良いかな?」

「あぁ、勿論だ。」

 

その後、一夏は僕が選んだ紺色の布地の浴衣を買って、

僕達は手を繋いで一夏の家まで帰った。

 

sideout

 

side一夏

と言うわけでやって来ました、夏祭り。

 

俺はシャルと腕を組んで、出店を色々見て回っていた。

 

昨日買った浴衣を着込んだシャルは、いつもより可愛く見えた。

「うわぁ、すごいねぇ!」

シャルは目を輝かせてはしゃいでいた。

 

「まあな、この祭りは地元でもかなり有名なんだよ、

そうだ、色々あるし、何か食べるか?」

「うん♪あの綿あめって気になるなぁ、どんな食べ物なの?」

「ああ、あれは砂糖を引き伸ばして綿みたいにしたお菓子だよ、

あれにするか?」

俺はシャルを連れ、綿あめを売ってる店に行き、

綿あめを一つ購入する。

 

「ほれ、そのままかじると口の周りがベトベトになるから、

気を付けて食えよ?」

「うん。」

そう言ってシャルは綿あめをちぎって、口に入れる。

 

「ふわぁ、不思議な感触だね、美味しい♪」

ああ、なんて可愛いんだ、俺の恋人は!?

ちょっとした仕草が、俺の鼓動を早くする。

 

「一夏、はいあーん♪」

ふと、シャルが綿あめをちぎって俺の口元に近付ける。

無論、食べてくれって事だよな?

 

「んっ、甘いな、やっぱり。」

「ふふっ♪」

さてと、されっぱなしもなんだし、俺もやるか。

 

綿あめをちぎって、シャルに食べさせる。

先程から周囲の目がすごいが、気にしない。

これは勝ち組のみに赦された特権なのだから。

 

「ふふっ、ありがと一夏♪」

「どういたしまして。」

 

っと、そろそろかな?

 

「シャル、ちょっと着いてきてくれないか?」

「良いよ♪」

 

あの場所に連れていってやれるとは、去年の今頃は思いもしなかったな。

あの頃から、いや、それよりも前から、シャルは俺の事を想っていてくれたんだ。

 

彼女の想いに気付けなかった時を、俺は何倍にしてでも返そうと思う。

 

焼きそばを2つ買い、俺達はあの場所へ向かった。

 

sideout

 

sideシャルロット

祭りの喧騒から離れ、僕と一夏は雑木林を抜けた、

人気のない場所までやって来た。

これってあれかな!?

一夏ってば、外でシたいのかな!?

 

だって、こんな暗くて人気のない場所に来るのって、

そういう事が目的だよね!?

 

ううっ、一夏のえっち・・・、言ってくれれば僕は受け入れるのに・・・、

そ、それに少しは期待してるから・・・、って!?

僕はいったい何を考えてるの!?

 

「よし、到着っと。」

「ふえっ?」

気付けば、そこは町を一望できる、丘の上だった。

 

「ここは?」

「俺と千冬姉、それと篠ノ之姉妹しか知らない、花火スポットなんだ、

他の人を連れてきた事は無いから、シャルが初めてだよ。」

「そうなんだ、なんだか嬉しいな♪」

 

ふふっ、嬉しいなぁ、これが恋人特権なのかな?

一夏の初めてを、幾つも貰える、

こんなに嬉しい事は無いよ。

 

―ヒュルル~・・・ドドォーン!!―

 

爆音と共に、夜空に鮮やかな花火が打ち上げられた。

 

「うわぁ!凄いね!」

赤や緑、色んな色が大きな花を作り、辺りを照らす。

 

「スゲェな、一緒にシャルがいてくれるから、

いつもより綺麗に見えるよ。」

「一夏・・・。」

「これからも、毎年一緒に見ような。」

「うん♪ずっと一緒だよ♪」

 

それって、プロポーズだよね・・・、

嬉しい、嬉しいよ一夏。

 

「大好きだよ、一夏。」

「俺もだよ、シャル、愛してる。」

 

次々と打ち上げられる花火の灯りの下で、僕と一夏は唇を重ねた。

 

二人で過ごす初めての夏も、終わりに近付いていた。

 

sideout

 

side一夏

打ち上げ花火も終わり、

帰ろうとした時・・・。

 

「あら?一夏君とデュノアさんじゃないですか。」

かけられた声に振り向くと、そこには浴衣に身を包んだ虚さんと、

その隣には俺の悪友、弾がいた。

 

「虚さん、それに弾も、来てたんですか?」

「ええ、弾君に誘われてね、とても楽しかったわ。」

 

ほう、弾の奴、中々やるな。

まさかこんなところまで関係を進めるとは思わなかったぜ。

 

「一夏よ、隣の子って、お前の彼女か?」

「ああ、俺の恋人だ。」

「ふふっ、相変わらずラブラブですね。」

 

当然ですよ虚さん、俺がシャルとラブラブじゃない訳がないですよ。

 

「ところで、二人は付き合ってるんですか?」

そう聞いてみると、二人は嬉しそうな表情をして、顔を見合わせていた。

「おう!もうお前を羨ましいなんて思わないぜ!」

「そうかい、おめでとう!」

「そっちもな!」

弾と拳を突き合わせ、互いを讃える。

 

「っと、俺達はこれで失礼するよ、また今度な。」

「おう、じゃあな!」

俺とシャルは二人に礼をして、腕を組んで夜道を歩く、

ふと、シャルが立ち止まった。

「ねえ一夏。」

「どうした?」

 

立ち止まり、彼女の方を向くと、彼女は俺の顔に自分の顔を近づけ、

唇を重ねてくれる。

 

暖かいその愛しい感触が、堪らなく嬉しかった。

 

しばらく口づけを交わした後、どちらからともなく唇を離す。

 

「ふふっ、今日はありがとう一夏、楽しかったよ♪」

「そうか、楽しんでくれて良かったよ。」

シャルに喜んでもらう為に、俺は花火に誘ったんだ。

喜んでもらえてよかった。

 

「さ、もう遅いし、帰ろうぜ?」

「うん♪」

 

笑顔で俺の手を握ろうとするシャルを、

俺はお姫様抱っこする。

 

「ひゃっ!?い、一夏!?」

焦ってるシャルもやっぱり可愛いな。

「良いだろ?こうするのも悪くないしな。」

「もう、一夏ってば・・・。」

 

少し照れて、けどそれより嬉しそうにしていた。

 

俺は、こういう時を求めていたのかもな、

愛する女性とこうして過ごす時を、愛しい時を守る力が欲しかったのかもしれない。

 

俺はシャルと添い遂げたい、これから起こるであろう動乱も、

彼女となら乗り越えられる。

そんな気がする。

 

そんな事を思いつつ、シャルの方を向くと・・・、

なんと若干浴衣がはだけて、後ちょっとで危ない所が見えそうになっていた。

眼福なので、言おうかどうか悩んだが、シャルのあられもない姿を、

他のヤローに見せたくないので、取り敢えず言うことにした。

 

「シャル、浴衣はだけてる。」

「ふええっ!?」

俺の言葉に慌てて、浴衣を直そうとしているが、

腕の上で暴れられると、支えるのがかなりキツい、

 

「おわっ!シャル、暴れるなよ!!」

「見ないでよ~!!」

「うわっ!!」

いくらシャルが軽いとはいっても、流石に堪えきれずに尻餅をついてしまった。

 

形としてはシャルが俺の上に覆い被さるような感じになってしまった。

「だ、大丈夫?」

落ち着きを取り戻したシャルが、心配そうな表情で聞いてくる。

って、顔が近いぞ、その気になればいつでも唇を奪える距離だ。

 

「なんとか大丈夫だ、シャルは軽いし、むしろ上に乗っかってるだけでも、

シャルの身体って柔らかいから気持ちいいしな。」

「も、もう・・・、一夏のえっち・・。」

「ワリィワリィ、お詫びにキスして・・・、んっ!?」

俺が言い切るより早く、シャルが俺の口を己の唇で塞いでいた。

 

しかも舌を絡めた深いやつだし・・・。

 

「エヘヘ♪一夏っ♪」

唇を離した後のその笑顔は反則だと思うんだがな、

まあ、可愛いからいいんだけどね。

 

「シャル、どうしてそんなに可愛いんだよ、今からサカッちまうぞ?」

「良いよ♪めちゃくちゃに愛して欲しいな♪」

「なら、早く家帰るぞ、こんなところじゃ、

誰に見られてるかわかったもんじゃない。」

「うん♪」

 

俺はシャルを背負い、自宅へと走った。

 

sideout

 

noside

暗い、暗い闇の中に、その者達はいた。

 

「いよいよね、これで世界を取れるわ。」

「ああ、腕が鳴るぜ!」

金髪の女と黒髪の女が楽しそうに呟く。

 

「漸くだ、漸く殺せる・・・、アハッ、アハハハハハッ!!」

その空間に、三者三様の笑い声が響く。

 

(助けて・・・、いっくん、ちーちゃん、かいくん、みなっちゃん・・・。)

 

sideout

 




はいどーもです!
もうすぐクリスマスですね~、
短編でも書こうかな?

まあそれは置いといて、次回予告
遂に始まったIS大戦、炎に包まれる世界、
一夏達はそれぞれの想いを胸に出撃する。

次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
因縁の邂逅

お楽しみに!!

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