インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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実る想い

side一夏

現在、俺とシャルはIS学園付近を飛行中だ、

日本軍第七特務基地から、学園まではちょっとばかし距離がある。

 

海斗兄や深夏姉に送ってもらってもよかったけど、

事後処理を任せっきりにしちゃってるから、

そんな図々しい事は言えない。

 

でもって、なんかさっきから凄い勢いで警報が鳴ってんのはなんでだ?

 

・・・、あ、しまった、俺ら機体変えたんだった・・・。

不味いぞ、このままだと所属不明機として攻撃されかねん、

 

ちょいと焦っていると・・・、

『そこの所属不明機!所属と官姓名を答えなさい!』

やっべ、やっぱりこうなるよな。

って、この声はセシリアか?

 

「セシリアか?俺だ!織斑一夏だ!」

『その声は・・・、一夏さんですの!?』

「ああ、脅かしてすまない、今からそちらに向かう、いいか?」

『はい!』

 

よし、これでなんとか味方で潰しあう事はなくなったな。

 

俺はシャルを連れ、IS学園に辿り着いた。

 

sideout

 

noside

IS学園に戻った一夏とシャルロットは、二年の専用機持ち全員から手荒い歓迎を受けた。

全員、彼らを心から心配しており、一夏は彼女達に感激の念を抱いた。

 

千冬に報告しに行った後、一夏達は集まりの場をもった。

 

「ほんと、しぶといわね、アンタ、普通は死んでても可笑しくないわよ?」

「しぶとい言うな、台所の黒い彗星じゃないんだからよ。」

 

苦笑しながら言う鈴に、一夏は苦そうな顔をして言う。

彼の言葉に、その場にいた全員が黒光りのアイツを思い浮かべてしまい、少し震える。

 

―それは置いといて―

 

「でだ、俺を殺そうとしたのは箒だ、アイツは絶対防御を貫く武器を持ってる。」

一夏は少し苦い表情をし、その事実を全員に告げる。

簪以外の全員が、その表情を曇らせる。

 

彼女達にとって、箒は恋敵であったと同時に、

よき友人であったのだ。

そんな女が、人を殺そうとしたことに、やるせない想いを抱いている。

 

因みに、簪が一夏達のメンバーに入ったのは、

箒と入れ違う形になっていたので、彼女自身は箒との面識はあれど、

会話をしたことは一切無い。

 

「これからどうするの?」

簪が重い空気を破るようにこれからの事を聴く。

 

「戦争が始まる、それはもう避けられない、だけど、

俺は俺の成すべき事をする、それが俺の責任だと思う。」

「僕達は、戦うべき理由がある、力もある、

だから、止めなきゃ駄目なんだ。」

一夏とシャルロットは強い意志を込めて、一同に語りかける。

 

「その通りだな、私は一夏とシャルロットの意見に賛成だ、

一人のIS乗りとして、戦い続ける。」

「アタシも賛成、箒はアタシらが止めなきゃいけないしね。」

「友人として、そして元恋敵として、私達の責任でもありますからね。」

「皆を守りたいから、私も行く。」

 

ラウラの言葉を皮切りに、鈴、セシリア、簪も続く。

 

「皆・・・、すまない。」

 

一夏は五人に向けて頭を下げた。

 

sideout

 

side一夏

会合を終えて、俺は独り寮の廊下を歩いていた。

 

なんで独りかって?

理由はわからんが、シャルはセシリアに呼び止められていた事にある。

 

どうやらシャルに相談があるらしく、俺は空気を読んで独り先に部屋に戻る事にした。

多分、リクとの関係を発展させる為に、シャルにアドバイスを貰いに行ったのだろう。

 

ま、俺にはあんまり関係無いし、部屋で緑茶でも淹れてシャルを待ちますかね。

 

「一夏先輩~!」

・・・、撤回しよう、凄い勢いで参加しなきゃいけない気がしてきた。

 

振り返ると、リクが廊下の向こう側から走ってきた。

 

「リクか、どうした?」

「実は一夏先輩に相談したい事がありまして・・・、

少しお時間よろしいですか?」

「良いぜ、ここじゃなんだし、部屋に来いよ。」

 

俺は取り敢えずリクを部屋に招き、緑茶を出す。

 

「で?相談したい事ってなんだ?」

大方察しはつくがちゃんとリクの口からそれを聞きたい。

ほんと、こいつもヘタレだな、さっさと告白しちまえばいいのに、

 

なんだろう、お前が言うな的な声が聞こえてくるんだが?

気のせいだよな?

 

「実はですね・・・、俺、セシリア先輩の事が好きなんですよ。」

はいビンゴ~、面倒臭いなほんと・・・。

 

「やっぱりな、そう来ると思ったぜ。」

「へっ・・・?」

俺の言葉に、リクは間抜けな声を洩らした。

 

「ハッキリ言ってお前分かりやすすぎだ、

会話の端々に何となくセシリアのイメージが見えたからな。」

「う・・・、わぁ~!!」

俺がからかい半分で言うと、リクは顔を真っ赤にして悶えていた。

 

男が悶えてもなんとも思わんな、

シャルが羞恥で悶えてたら?

勿論萌え死に確定だな!

 

―それは置いといて―

 

リクが復活するまで俺は緑茶を飲んで待つことにした。

それと同時に、こっそりメールでリクが俺達の部屋にいることを、

シャルに伝えておいた。

 

暫くして、リクが回復したため、続きを聴くことにした。

 

「で?セシリアのどこに惚れたんだよ?」

「俺は、セシリア先輩の優しさ、女性としての強さに惚れました、

噂では一夏先輩を巡って、

シャルロット先輩達と争っていたとも聞きました。」

・・・、やめて、俺の黒歴史を言わないで!!

気付かなくてあんなことになってたんだからな!!

 

「でも、そんなことはもういいんです、

確かに一夏先輩は、男の俺から見てもかなりいい男性ですから、

セシリア先輩やシャルロット先輩が惚れてもおかしくないです。」

「・・・。」

「俺は貴方とは違う魅力でセシリア先輩と付き合いたいんです!」

 

なるほどな、こいつの想いは本物だ、それぐらい俺にも分かる。

聴いているこっちとしても、応援したくなる、けどな・・・。

 

俺はリクの額にデコピンをかました。

「そんだけ想いが固まってんなら、さっさと告白しちまえ、

アイツもお前の事が好きに決まってんだろ。」

「っ!?ほ、本当ですか!?」

「嘘ついてどうする、俺は冗談は言っても嘘はつかない主義なんでな。」

 

何となくどこぞの金髪箒頭の刀剣コレクターを彷彿させる言い方だけど、

こう言っとけばこいつも奮い立って、告白する気になるだろう。

 

「・・・、よし!一夏先輩、どういう風に告白したらいいですかね!?」

ずいっと俺に詰めよってくるリクを取り敢えず落ち着かせる。

 

「自分の想いをストレートに伝えればいいんだよ、

カッコつけんじゃねえぞ?大概失敗するからな。」

 

俺がそう言ったとき、部屋の扉がノックされた。

 

sideout

 

sideナレーション

一夏がリクと会う少し前、その時のシャルロットとセシリアは・・・、

 

sideout

 

sideシャルロット

セシリアに呼び止められ、僕達は今食堂の喫茶スペースの一番端に座っていた。

ここなら周りの目を気にする事なく、セシリアの相談事を聴けるしね。

 

取り敢えずアイスティーを2つ注文して、それを飲みながら話をすることにした。

一夏には先に部屋に戻ってもらったけど、ちょっと失敗したかな?

多分セシリアは一夏にも相談に乗って欲しそうだったし。

 

「相談したい事って何かな?僕の力になれる事ならなんでも言ってね。」

「その・・・、私・・・、リクの事が、好きなんですの・・・。」

 

あ~、恋愛相談かぁ・・・、それなら僕と一夏が適任だよね、

何せこの学園唯一のカップルだしね。

 

「そっか、やっぱりね、鈴達ともそうじゃないかって話してたんだ。」

「~っ!?」

あ、顔を真っ赤にして悶えるセシリアって、可愛いなぁ、

でも暫く戻って来そうに無いね、

ホットケーキでも注文しようかな?

 

セシリアの復活を待つ間、カウンターにホットケーキを注文しに行く。

受け取って、席に戻った頃には、セシリアはなんとか戻って来ていた。

 

「それじゃあ続けるね、セシリアはリクのどこに惚れたの?」

ホットケーキをひと切れ咀嚼しながら、僕はセシリアに質問してみる。

この方法が、一番手っ取り早く本音を聴けるからね。

 

「私は、リクの優しさ、そして、暖かさに惹かれましたわ、

一夏さんに似ていますけど、どこか違う感じがしましたし、

なにより、彼の誠実さが一番ですわ。」

「そっか、確かにリクはいい男の子だよね、

それより、セシリアはどうしたいの?」

 

セシリアの想いは充分伝わった、後はセシリアの気持ちひとつで決まる。

 

「私は、リクにこの想いを伝えたいと思ってますわ、

でも、どうしたらいいのかわからなくて・・・。」

あ~、何となく分かるなぁ、僕は一夏から告白してもらったけど、

もし自分からってなると怖くて、躊躇っちゃうかもしれなかった。

 

ん~、これは困ったなぁ・・・、

あれ?メールが・・・、あ、一夏からだ、どうしたんだろ?

 

『リクが俺達の部屋にいるから、セシリアに上手く言い訳して連れてきてくれ。』

 

ナイスだよ一夏!

それにしても凄い偶然だね、何かの思し召しかな。

そうと決まれば、善は急げ!

「一夏に相談してみようよ、男の子が喜ぶ告白の仕方を教えてもらおうよ!」

「そうですわね!すぐ行きましょう!」

「あ、でもホットケーキ食べ終わるまで待ってね。」

 

sideout

 

sideリク

告白する気になり、頭の中で何通りかのパターンをシュミレートしていたとき、

一夏先輩の部屋の扉がノックされた。

 

「来たか。」

一夏先輩は満足そうに呟いた後、扉に向かう。

 

多分シャルロット先輩が帰って来たんだろう、

一夏先輩は愛妻家だからなぁ、

絶対奥さんを悲しませる事はしないだろう、

下手したら子供より奥さんを大事にしそうではあるけど。

 

「おかえりシャル、取り敢えず入れよ二人とも。」

やっぱりシャルロット先輩だったか・・・、ん?

二人とも・・・?もう一人は誰だ?

 

一夏先輩に続いて、シャルロット先輩が入ってきた。

けど、次に入ってきた人に俺は驚きで固まってしまった、

その人とは、俺の片想いの女性、セシリア先輩だった・・・。

 

sideout

 

sideセシリア

ど、どどどど、どういうことですの!?

どうして一夏さん達のお部屋にリクがいますの!?

 

お、おおおお落ち着きなさいセシリア!

一夏さんとシャルロットさんに理由を聞けば良いのです・・・っていない!?

 

振り返ると、開いた扉の向こう側からサムズアップしてるお二人がいらっしゃいました、

どうしてそんなに笑顔なんですの!?

 

ひとまず落ち着いて、状況を考える、

そう言えばシャルロットさん、携帯を見てらっしゃいましたわね・・・?

・・・、なるほど、そう言うことですの・・・、

リクが来たから私をここに呼んだと・・・、

ですが良く良く考えてみれば、これはチャンスですわ!

 

これは一夏さんとシャルロットさんがお膳立てしてくださった、

私の想いを、伝えるチャンスですわ!

 

私は固まっているリクの傍に歩み寄り、

彼と向き合うような形になる。

 

表情は至って冷静そのものでしょうけど、

内心かなり緊張しています。

あぁ、代表候補生としてのメンタルカリキュラムの効果は何処へ?

 

「セシリア先輩・・・、その・・・、俺は・・・。」

どれくらいの沈黙が続いたのでしょうか、唐突にリクが口を開いた。

 

(な、何を言うつもりなのでしょう?)

あぁ、一夏さんを巡って争っていた時の、私の自信はいったいなんだったのでしょう?

今はただ一人の弱い女ですわね。

「俺は・・・、貴女が好きです!」

 

・・・、えっ・・・?リク、今なんと仰いました・・・?

好き・・・?私の事が・・・、好き?

 

「貴女は初めて会った時から、俺の事を気にかけてくれた、

訓練の時だって、ずっと気遣ってくれた、俺は貴女のそんな優しさに惹かれました!」

「私も、リクの事をお慕い申していますわ!

貴方の気遣いに、優しさに、そして心の強さに、私は惹かれましたわ。」

 

嬉しかった、リクも私と同じ気持ちだった事が、

 

「貴方と色んな事をしたい、色んな景色を見たい、

貴方と一緒に歩んでいきたいのです!」

 

柄でもなく、私は声をあげて、自分の想いを吐き出していました。

 

ふと、私の身体を、リクが抱き締めて来ました。

 

「ありがとうございます、セシリア先輩、大好きです。」

両想いだとわかって、改めてそう言ってもらうと、

つい、嬉しくて涙が出てきました。

 

「お慕い申していますわ、リク。」

 

sideout

 

side鈴

『・・・。』

いきなり沈黙から始まって申し訳無いけど、

この状況をどう言ったらいいかわからない。

周りを見れば、ラウラも、簪もげんなりしてるわね。

 

「セシリアさん、あーん。」

「んっ、美味しいですわね♪」

「良かったです。」

 

食堂の一角が、ピンクのオーラに塗り潰されてる、

いや、そうとしか表現できないのよ。

 

と言うより、なんなのよ、セシリアとリクのイチャつきは!?

甘ったるいわ!甘すぎて砂糖吐きそうよ!!

 

この二人が付き合いだしてから、もう2日たつけど、

日に日にイチャつきの度合いが高まってるのよね・・・。

 

ほんと、あの二人にしろ、一夏とシャルロットにしろ、

どうしてリア充ってあんなに鬱陶しいのかしら?

当て付けなのね?これは半ば負け組と化してるアタシに対する当て付けなのね!?

 

「リクも、食べてくださいな、はい、あーん♪」

「んっ、美味しいですね!」

「ふふっ♪」

 

ギャー!何よあれ~っ!?

ムカつくけどちょっと羨ましいじゃないのよ!!

 

しかも振り返ると、また地獄なのよね。

 

「はい一夏、あーんして?」

「おう、んっ、旨いな!」

「ふふっ♪良かった♪」

「ははっ、シャルも、あーん。」

「うん♪んっ、美味しいねぇ♪」

 

一夏とシャルロットも同じようなことしてるし、

これなんて拷問?ブラックコーヒー必須よ?

 

なんの因果か、アタシとラウラと簪は、

この二組のバカップルに挟まれる席に座ってしまったのよ。

 

ほんと、なんなのかしら?

勘弁してほしいわ。

 

因みに、噂で聞いただけだけど、

この二組のイチャつきを見た教師たちが、

自分達の行き遅れと、相手がいないことに凄く焦ってたらしい。

 

なんだか笑えないのよね、アタシも同じような道を辿りそうで・・・、

はぁ・・・、なんでISって女にしか使えないのよ、

お陰で出会いが激減よ!

 

ほんと、悲しいことこの上ないわ・・・。

 

でも、他人の幸せを妬むほど、アタシは狭量じゃないのよ、

むしろ、いつか絶対いい男見つけてやるんだから!

 

・・・、でも目下の悩みは、この甘ったるい空間をどう切り抜けるかよね、

はぁ・・・、胸焼けがしてきたわ・・・。

 

sideout




はいどーもです!

セシリアもくっつきました。
甘さ倍増、否、二乗ですね!

さてここで次回予告
夏休みに入るIS学園、
一夏とシャルロットは共に過ごす初めての夏を向かえる。

次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
君と花火と

お楽しみに!

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