インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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白の再誕

side一夏

「うっ・・・?」

何か温かい手触りを感じ、俺の意識は覚醒する。

 

「一夏・・・?」

優しい声が聞こえる・・・、

俺の一番愛しい女性の声が・・・。

 

「シャ・・・、ル・・・?」

彼女の名を呼びながら俺は声のする方へ意識を向けた。

そこには、俺の手を握っているシャルがいた。

 

「一夏っ・・・!」

俺の意識が覚醒したのを認めると、

シャルはその美しい瞳に涙を浮かべ、俺に抱きついてきた。

 

「よかった・・・、本当によかった・・・!」

「シャル・・・。」

俺はなんとか腕を動かし、彼女を抱き締める。

久し振りのこの感触が、本当に愛しく感じた。

 

って、そんな事を感じてる場合じゃねえ。

「シャル、怪我とかしてないか?」

俺の事は別に良い、けど、シャルが傷付くのだけは、

絶対に嫌だ。

 

「大丈夫、一夏が守ってくれたから掠り傷のひとつも無いよ。」

瞳に涙を浮かべながらも、微笑んでそう言ってくれるシャル。

 

「そうか・・・、よかった、俺はシャルを守れたのか・・・。」

安心したとたん、身体の力が抜けた。

 

「っ!?一夏、大丈夫!?」

そんな俺の素振りを見て、シャルは慌てて俺の身体を支えようとしてくれた。

「ははっ、大丈夫だ、ちょいと安心して力が抜けただけだよ。」

 

彼女の腕を制しながらも、俺は少し身体を起こす。

「なあシャル、俺はどれぐらい寝てたんだ?」

「ちょうど今日で1週間だよ、ちなみにここは日本軍第七特務基地だよ。」

「何?」

 

マジかよ、1週間も寝てたのか、ってかなんで基地にいるんだよ?

 

「この1週間に起きた事を、全部話すね。」

「ああ、頼む。」

 

sideout

 

sideシャルロット

一夏の回復を待つ1週間の間、この世界は大きく揺れ動こうとしていた。

 

まず、篠ノ之博士が、世界に対して宣戦布告した事、

これは多分、復讐の悪鬼となった箒が篠ノ之博士を脅したのだと、

僕達は推測している。

 

二つ目は、亡國企業が篠ノ之博士と協力関係を築いた事、

これは多分、この機に世界を獲ろうと、ついに表立った行動を始めたんだと思う。

 

この二つが今日までに起こった一番大きい事件だ。

 

他に挙げるとするなら、僕達が捕らえたサイレント・ゼフィルスのパイロット、

彼女が脳に埋め込まれていたナノマシンにより、死亡した事ぐらい。

 

「そうか・・・、シャル、白式の状況は?」

「ダメージレベルがDを越えてて、稼動不能だよ。

今新しい機体を用意してるところだよ。」

 

新しい機体、白式弐型・・・。

一夏の為に作られた、超高速戦闘用IS、

リヴァイヴ・プルトーネすら追い付けない加速性を有している、

現行するすべてのISを遥か彼方へ置き去りにする、最速の機体。

 

「新しい力・・・、か・・・。」

一夏はどこか遠くを見つめ、そう呟いていた。

 

暫くの間、沈黙が続く。

 

「よし、海斗兄達の所に行くか。」

「え?」

僕が聞き返すより早く、一夏はベッドから降りようとする。

 

「身体の方はもう大丈夫だ、それにこんな世界情勢でおちおち寝てらんねぇよ。」

そう言いつつ、彼はベッドの脇に置かれていた軍服に着替え始めた。

ちなみに、僕も軍服を着用している。

 

「それに、俺は行かなきゃならないんだ。」

「何処に?」

「シャルと一緒に、皆の所にな。」

 

違う、一夏は戦うつもりだ、自分の後始末をつける為に、

箒と戦うつもりなんだ。

そうと決めた一夏を僕は止められない、ううん、止めない、

僕は彼と共に歩んで行くと決めた、

一夏が戦うなら、僕も戦いに身を投じるだけだよ。

 

「うん、わかった、一緒に行こう。」

「ああ。」

 

sideout

 

 

noside

一夏はシャルロットに連れられ、海斗と深夏がいる研究室に来た。

 

「一夏!もう大丈夫なの!?」

彼の姿を認めた深夏は、驚きの声をあげていた。

 

「ようやくお目覚めか、長いこと寝てたな。」

海斗はニヒルな笑みを一夏に向けた。

 

「海斗兄、深夏姉、心配かけてごめん、もう大丈夫だ。」

一夏は兄、姉に頭を下げながらもしっかりとした足取りで機体に歩み寄る。

 

「これが・・・、俺の新しい機体・・・。」

「ええ、日本製第四世代IS、白式弐型よ。」

しみじみと呟く一夏に、深夏は答える。

 

「機体は完全だ、後は最適化と一次移行させるだけだ。」

海斗は機体状況を説明し、目だけで機体に乗るよう促す。

 

一夏もそれに気付き、ISスーツに着替え、背中を預けるようにして白式弐型に乗り込む。

 

「よし、それじゃあ始めるわよ。」

「おう。」

言うやいなや、深夏と海斗は凄まじい勢いでキーボードを叩いていく。

 

恐らく、何種類かある一夏のデータを、分けて白式弐型に読み込ませているのだろう。

 

「後十分も有れば一次移行まで完璧に終わるわ。」

深夏は一夏に説明しながらも、その指を動かし続けていた。

 

「一夏は機体の説明を見とけ、こいつは相当癖が強いからな。」

海斗はそう言いつつ、二枚のキーボードを叩いていく。

 

作業は順調に進んでいた。

だが・・・。

 

突如、けたたましい警報が鳴り響いた。

 

「ちっ、こんな時に敵か、深夏、俺が出て敵を止めとく、

機体の調整を頼んだ。」

「僕も行きます!!」

「わかったわ、二人とも頼んだわよ。」

 

海斗とシャルロットは研究室を飛び出していった。

 

sideout

 

side海斗

さてと、どこのどいつだ?

まあ考えなくても大体見当はつくがな。

 

「敵の数は十機です!」

「オーライ、シャルロット、お前は機体を乗り換えたばかりだ、

絶対に無茶すんじゃねえぞ?」

「はい!」

それに、ここで怪我でもされたら一夏に顔向け出来ねえしな。」

 

「小早川海斗、黒騎士、発進する!」

「シャルロット・デュノア、プルトーネ、行きます!!」

俺達は虚空へ飛び出し、眼前の敵を睨む。

お伽噺に出てきそうな黒くゴツイ体躯、確かこいつは・・・、

 

「ゴーレム・・・。」

ああ、そうそう、ゴーレムね、

報告書とか読むの苦手だからな、覚えられん。

 

「ま、どうせ倒すし、覚える意味もねえな。」

取り敢えず向かってきた一機を、バスターソードで三枚に下ろす。

 

脆いな、絶対防御があるのか疑いたくなる脆さだ。

まさか陽動か?

 

まあ良い、今は目の前の敵を叩き潰す事だけを考えるか。

 

シャルロットはガルム・トルネードで二体を一撃で沈めていた。

てかアイツもアイツで技巧派なのに、一撃必殺が好きなんだよな。

 

さてと、増援が来るなら、狙うのは間違いなく一夏だ。

ならば俺は、お膳立てしといてやるかね。

 

sideout

 

 

side一夏

敵襲、つまり俺を狙っての事だろうな。

まあその事について思うところはあれど、

戦争ならそれはそれで仕方ないと思う。

 

けどな、俺の周りの人を巻き込むのは、許せない。

俺は仲間の誰にも傷付いて欲しくない、

だから、大切な人達の驚異となるものがあるなら、俺は戦う。

 

「一次移行終了!いつでも行けるわよ!」

「ありがとう深夏姉!」

 

白式弐型、俺の新しい翼。

白式の二倍以上のスペックを持ち、速さに特化した機体。

化物じみた加速と、圧倒的な機動性を以て相手を切り裂く、

 

日本刀型近接ブレード<雪崩>、

雪片弐型のデータを基に設計された新たな刀、

零落白夜の能力を限り無く完全に近い形で再現した、

<白夜光(しろやこう)>というクリアホワイトの刃が特徴的だ。

これのお陰で零落白夜を使わずとも、相手のエネルギーを根こそぎ奪えるので、

白式弐型本体のエネルギー節約にもなる。

 

しかも鞘に収まっており、俺の抜刀術をISでも再現できるのはありがたい。

 

(行こうぜ白式、俺達が行くべき、光の彼方へな。)

弐型を待機形態にし、深夏姉と共に研究室を飛び出す。

 

この研究室は格納庫に直結しているため、

すぐにでも屋外に飛び出せる。

 

「織斑一夏、白式、行くぜ!」

「小早川深夏、セイクリッド、行くわよ!」

白式を展開し、俺は戦闘の渦中へと飛び込んだ。

 

sideout

 

noside

一夏と深夏が参加した事により、戦局は一気に傾いた。

 

既に半数が海斗とシャルロットの手により破壊、

もしくは行動不能に追い込まれていた。

 

「オオオッ!!」

一夏は雄叫びをあげ、一機のゴーレムに向かって急速接近、

抜刀術の要領で雪崩を一気に振り抜いた。

 

走る刃は白く煌めき、ゴーレムを切り裂いた。

あまりに美しい太刀筋に、ゴーレムは火花をあげることなく、

倒れ伏した。

 

「なんつう切れ味だよ。」

海斗は雪崩の切れ味に驚き、苦笑していた。

 

一夏は勢いそのままに、展開装甲・烈風を開き、

超高速で一機のゴーレムの背後を取り、逆風に切り裂いた。

 

「流石ね、もう使いこなしてるわね。」

深夏は一夏の操縦技術に、感心していた。

 

一夏の背後から別の一機が殴りかかってきたが、

彼は背部ウィングスラスターより、光の翼を放出、

振り向く事なくゴーレムをズタズタに切り裂いた。

 

「あれが・・・、光の翼・・・。」

シャルロットはその威力に呆然と呟いた。

 

「これが、白式弐型の力だ!!」

一夏は残る二機に急接近し、雪崩の斬撃を叩き込む。

 

あまりのスピード、そしてあまりの切れ味に、

ゴーレム達は成す術なく切り刻まれ、地面へと落下していった・・・。

 

sideout

 

 

side一夏

なんなんだ、この速さは・・・!?

あの時と同じ、いや、それ以上だ・・・。

 

エネルギーの減りも、白式に比べてかなり少ない。

光の翼を使った時だけ少し消費量が増えただけで、

他は特に減った印象を受けない。

 

多分一回の戦闘辺りの持続戦力も伸びてるだろうな。

まったく・・・、とんでもないモノを造るな、深夏姉は・・・。

 

「一夏!」

「シャル!」

俺の元にシャルが飛んできた。

 

「大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ、問題ない。」

 

さてと、襲撃もなんとか退けた、後は大元を叩くだけだ。

 

それはわかってる、けど・・・、

(束さんとくぅだけは、助けてやりたい・・・。)

あの二人は箒に無理矢理従わされているに過ぎない、

彼女達が俺を殺すつもりなら、もっと何かしらの事が起こる。

 

だけど、束さんは俺を殺そうとはしなかった。

むしろ、くぅを使って俺に警戒を促してくれた。

 

亡國企業は信じられないが、あの二人は信じたい、救いたい。

 

「IS学園に帰ろうぜ、シャル?」

「うん♪」

 

俺の提案に!シャルは笑顔で答えてくれた。

 

「それじゃあ、海斗兄、深夏姉、

俺達はIS学園に戻るよ。」

「お世話になりました。」

俺とシャルは、兄、姉達の方を向き、礼を言う。

 

「おう、行ってこい。」

「千冬によろしく言っといてね♪」

 

海斗兄と深夏姉の声をうけ、俺達はIS学園に向けて飛翔した。

 

sideout




はいどーもです!
寒くなってきましたね~。
皆様、体調にお気をつけください。

ではここで次回予告、
一夏とシャルロットが戻り、いつもの雰囲気を取り戻したIS学園、
そこでひとつの決着がつこうとしていた。

次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
実る想い
お楽しみに!


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