インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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裁きの再誕

side深夏

日本軍第七特務基地の研究所で、

私は白式弐型とリヴァイヴ・プルトーネの調整を行っていた。

 

この前手にいれたデータが思いもよらず質の高いものだったから、

仕事が更にはかどった。

 

お陰で、海斗と協力して造り初めてから三ヶ月で既に形になりつつある。

 

で、今駆動系統の調整が一段落したから、

コーヒーを炒れて休憩中。

 

う~ん、やっぱりこの苦味が美味しいのよね♪

一夏や海斗は緑茶や麦茶のほうが良いって言うけど、

やっぱり私はコーヒーが譲れないわね。

 

って、そんな事はどうでもいいわね。

 

現在、リヴァイヴ・プルトーネの完成はもう間近、

武装と微調整だけだからそんなに時間は掛からない。

 

白式弐型はプルトーネの影響を少し受けて、若干開発が遅れてるけど、

後一ヶ月以内にはロールアウト出来る。

 

要するに、開発も大詰め、

よっぽどの事が無い限り、これ以上遅れる事は無いわ。

 

さてと・・・、このコーヒーを飲み終えたら再開しましょうかね。

 

そう思ってコーヒーを口に含んだ・・・、その時だった。

 

「深夏!!」

血相を変えた海斗が、

研究所の扉を蹴破るようにして入ってきた。

 

「どうしたの?」

「一夏が意識不明の重体だ!!」

 

海斗の言葉に持っていたコーヒーカップを落としてしまったけど、

今はそんな事なんて気にしていられない。

 

「なっ・・・、なんで!?」

「わからん!泣きじゃくったシャルロットから連絡が来ただけだからな、

取り敢えず、お前はこれからあっちに飛んでやってくれ。」

 

それってあれよね?自分じゃ慰めてやれないから、

私が慰めてやれって事よね?

 

まあいいわ、私にとっても、そして海斗にとっても、

一夏とシャルロットちゃんは大事な弟と義妹、

様子が心配なのは本心だからね。

 

「分かったわ、それじゃあこっちをよろしくね?」

「任せろ、なんとか仕上げてみせる。」

「多分それはムリよ、一夏もシャルロットちゃんも、

更に進化してるから、新しい情報を仕入れてから、仕上げましょう。」

「なるほどな、それじゃあ俺は武装をなんとかしてみる。」

 

海斗の言葉に頷いた後、私は弟たちの下へと急いだ

 

sideout

 

sideシャルロット

どうしてこうなっちゃったんだろう・・・。

 

宿の一室に臨時の病室が設けられ、

一夏は布団の上に横たわり、眠り続けている。

 

僕はその傍らに座っていた。

 

織斑先生から聞いたんだけど、

白式には搭乗者生体再生機能が備わっていたらしく、

その証拠に胸の傷はもう塞がっていた。

 

だけど、白式が最後に見せたあの常識はずれの動きが、

彼の身体に絶大な負荷をかけたらしく、

暫くはこのままの状態が続いてしまうらしい。

 

白式は一連の戦闘で、ダメージレベルがDを突破、

コアは無事だったけど、修復不能に陥ってしまった。

 

僕のスペリオルは白式に比べれば、幾分軽いと言っても、

ダメージレベルがCを突破、修復には長い時間がかかってしまう。

 

このままの状態じゃあ、次に攻められた時、僕は一夏を守れない、

彼を喪ってしまう・・・。

 

でも、今の僕には戦う為の翼が無い・・・。

 

(どうすれば・・・、どうすれば良いの・・・?)

そう思った時、部屋の外が少し騒がしくなった。

 

「シャルロットちゃん!」

「お義姉ちゃん!?」

部屋に飛び込んで来たのは、血相を変えた深夏お義姉ちゃんだった。

 

「大丈夫だった!?怪我はない!?」

「僕は大丈夫ですけど・・・、一夏が・・・。」

 

深夏お義姉ちゃんは僕の隣に座り、一夏を見る。

 

「・・・、辛いだろうけど、何があったか教えてくれないかしら?」

「はい・・・。」

僕はすべてを話すことにした・・・。

 

sideout

 

side深夏

模擬戦をした直後に二連戦、しかも一機は復讐鬼、

よく耐えた・・・、というより、出来すぎな気がするわ。

 

データを見せてもらったけど、最後のあの動きは異常に良かった。

キレ、スピード、攻撃パターン、すべてをとっても、

上々の戦い方ね。

 

と言うより、もしまたあんな動きされたら、

機体が追い付かない・・・、

 

・・・ん?

 

これよ!

あの動きを再現出来れば、白式弐型とリヴァイヴ・プルトーネは、

更に進化するわ!!

 

なら、展開装甲は可変型よりも、新しく造ってブースターオンリーにしましょう!

 

「シャルロットちゃん、機体の様子は?」

「ダメージレベルがCを越えてて、稼動出来ません。」

 

機体が動かない、これはちょうどいい乗り換えの時期かもね、

よし、千冬に言えば連れていけるし、そろそろ実行しようかしらね。

 

「シャルロットちゃん、貴女と一夏に新しい力を用意してあるわ、

これから最終調整の段階なんだけど、手伝ってくれないかしら?」

「はい!」

 

流石は一夏が選んだ娘ね、想いの強さは誰よりも強いわね。

 

「それじゃあ、一夏も一緒に連れていくわよ、千冬?」

襖の外にいるであろう千冬にそう言って、私とシャルロットちゃんは、

一夏を連れて宿を出た。

 

sideout

 

side海斗

深夏と一緒に帰ってきたシャルロットから、

今回の戦闘のデータを見せてもらったが、

どう考えてもあの動きはおかしい。

 

あの動きはまるで、一夏が白式と一体化したような、そんな気がしてならなかった

 

だが、これはいい収穫になった、

このデータを使えば、弐型とプルトーネは更に進化する。

 

深夏もそれと睨んでシャルロットを連れて来たのだろう。

 

「一夏は?」

「今は病室で眠っているわ、医者の見立てでは後一週間はあのままですって。」

やれやれ、なんとかアイツが目覚める前に、

白式弐型は完成させねばな。

 

「それじゃあ、やるか?」

「ええ♪」

「はい!」

 

まずはコアを機体に馴染ませとかねえとな。

白式とスペリオルからコアを摘出し、

それぞれを弐型とプルトーネに馴染ませる。

 

と言っても、完全に馴染むまで約一週間は掛かるからな、

それまでは微調整と武装だな。

 

sideout

 

 

sideシャルロット

それから3日、僕は研究所で海斗お義兄ちゃんと深夏お義姉ちゃんとで、

白式弐型とリヴァイヴ・プルトーネを完成させる為に、

データ解析を手伝っていた。

 

二人の技術は高く、僕がいなくても大丈夫なんじゃないかと思うほどで、

中でも驚いたのが、第四世代技術の展開装甲を、

似て非なる物に作り替えてしまったことだ。

 

紅椿に採用されてた展開装甲は、攻防速一体型で、

燃費がとっても悪かったけど、

 

深夏お義姉ちゃんが新しく造った物は、

僕と一夏に合わせて、速度特化型になったみたい。

 

一夏が見せたあの常識はずれの動きを再現するために、

排熱機構を実装して、機体のオーバーヒート、

オーバーロードを防ぐみたい。

 

なんでも、一夏の身体に掛かった負荷の大半が、

機体内部の高温だったらしく、それを防ぐ意味合いもあるみたい。

 

この新機構は弐型とプルトーネに実装された。

 

それから更に二日後、プルトーネの試験稼動をする事になった。

 

「シャルロットちゃん、最適化と一次移行は終わってるから、

いきなりかっ飛ばしちゃつて♪」

「了解しました!」

 

リヴァイヴ・プルトーネ

再誕の裁きと言う名を与えられた、僕の新しく翼。

全体的にはリヴァイヴ・スペリオルと似通ってるけど、

流線的なフォルムが特徴的だった。

 

初期装備として、バスターライフル、<ガルム・トルネード>を装備している。

カートリッジ式で、機体エネルギーと関係無く撃てる。

威力はシールド・ピアースの1.5倍と、連射力をかなぐり捨てる代わりに、

シャレにならないくらいの高威力を得ている。

 

でも、正直使い勝手があまり良くないんだよね。

その他の装備はスペリオルから引き継いでるから、

ほとんど今まで通りの戦い方が出来る。

 

(ねえ・・・、プルトーネ、僕は一夏を守れるかな・・・?)

あの時、僕は一夏に守ってもらっただけで、

彼を助けてあげられなかった。

 

でも、今度は僕が彼を守ってみせる、

それが守ってもらった僕がすべき事だから!

 

「シャルロット・デュノア、リヴァイヴ・プルトーネ、行きます!!」

カタパルトから飛び出し、一気に加速して空を飛ぶ。

 

「って、すごっ・・・!」

計器を見てみれば、速度はスペリオルの2倍、

機動性は1.8倍って・・・。バケモノクラスだよね・・・?

 

『シャルロットちゃん、機体の調子はどうかしら?』

「あ、はい、問題ありません、むしろいい感じです。」

『そっ、なら、ガルム・トルネードを試してみて?』

「はい!」

 

ガルム・トルネードを呼び出し、射出されたターゲットに向けてトリガーをひく、

銃口からオレンジ色のレーザーが飛び出し、ターゲットを狙い違わず撃ち抜いた。

 

けど、そのエネルギーの奔流はそれだけでは止まらず、

地面に向けて撃ったようなものだったから、

着弾点が思いっきり爆た。

 

「すごっ・・・!?と言うより、どんだけ高威力なの!?」

なんだろう・・・、シールド・ピアースが霞んで見える。

 

『次は展開装甲を開いて、超高速飛行をやってみて?』

「はい!」

っと、呆けてる場合じゃ無いよね、

取り敢えず、燃費を見る積もりで全開にしてみようかな?

 

意識をそっちに割くと、全身にある展開装甲が開いて、

金色の粒子が噴出される。

 

「いくよ、プルトーネ!!」

一気に加速して飛翔する。

その速度は、白式のイグニッション・ブースト時以上のものだった。

 

「すごい・・・!これが、僕の新しい力!」

僕は守れるんだ!

愛しい彼を、大切な人を!

 

後は、一夏が目覚めてくれれば・・・、

 

僕は今だ眠り続けている恋人を想った・・・。

 

 

sideout

 

 

side一夏

夢を見ているような感覚だった・・・、

いつぞやの砂浜に、俺はひとり佇んでいた。

 

波音が耳に心地よく、吹き付ける風も爽やかだった。

 

ってか、俺はいったいどうなったんだ?

確か奴に胸を刺されて、光に包まれた後の記憶が無い・・・。

 

「貴方は私と同調し、限界以上の動きで黒焔を退けました。」

声のする方へ振り向くと、白騎士が流木に腰かけていた。

 

「よう、その節は助かったよ、改めて礼を言うよ。」

俺は白騎士の下まで歩み寄り、彼女の隣に腰掛ける。

 

「ですが、私の身体は力を使い果たしました、

今は貴方の兄が、新しい身体を作っている途中です。」

「そうか・・・。」

 

白式は俺のわがままのせいで、傷付き、

一時とは言え空を翔べなくなった。

 

俺は・・・、自分の相棒すら救ってやれないのか・・・?

自責の念が俺を苛む。

 

「私は貴方と空を翔ることが出来て、幸せでしたよ?

それに、貴方には守るべきヒトがいるでしょう?」

 

守るべき・・・、ヒト・・・。

そうだ、俺にはまだ守りたいヒトがいる!

 

俺にはまだ、やりたいこともいっぱいある!

 

「白式、俺にもう一度、力をくれ!」

「はい、何処までも、貴方と共に。」

 

差し出された白騎士の手を掴んだら瞬間、

俺はまた光に包まれた。

 

sideout

 




はいどーもです!

ようやくリヴァイヴ・プルトーネを出す事が出来ました。
そろそろオリ機体の説明集を出そうかな?

さて次回予告
一夏の回復を待つ間にも、白式弐型の建造は続いていた。
だが、そこに襲撃の手がのびる。

次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
白の再誕
おたのしみに!

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