インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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堕ちる白

side鈴

アタシらは焦っていた。

と言うのも、突然の襲撃者に一夏とシャルロット、そしてセシリアが迎撃に出たけど、

模擬戦をした直後だったし、

三人がマトモに戦えてるかどうか、怪しい。

 

だから、残されたアタシとラウラと簪は、機体の状態を普段と同じに戻し、

一刻も速くあの三人に加勢するために、装備の換装を急いでいた。

 

「ラウラ、簪!行ける!?」

「今終わった!!」

「私も行ける!」

 

準備は完了、千冬さんの許可も貰ったし、

後腐れなく援軍に行けるわね!

 

そう思って飛び立とうとしたアタシらの視界に、

青い影が写った。

 

その機体は、アタシらの仲間の機体、セシリアのブルー・ティアーズだった。

よく見れば、人を抱えてるわね?

多分一夏が倒した敵なんでしょうけどね。

と言うか、一夏とシャルロットがいないわね?

 

「セシリア!一夏とシャルロットはどうしたの!?」

「鈴さん!!早く一夏さんとシャルロットさん達に加勢して下さい!

また襲撃が!!」

「嘘でしょ!?」

 

いくら一夏とシャルロットが強いと言っても、三連戦は厳しくなるのは必然だわ。

なら、アタシらのやることは1つ。

 

「分かったわ!簪、ラウラ!行くわよ!!」

「了解した!!」

「分かった!!」

 

ラウラと簪の声を聞き、アタシはダチを助ける為に、飛翔した。

 

sideout

 

side一夏

不味いぞ、さすがに三連戦は厳しい。

正直言って、後、零落白夜を使えるのは多く見積もっても二回が限度か。

 

「ハァアァァァッ!!」

って、そんな事考えてる暇じゃねえわな。

 

箒は日本刀らしきものを呼び出し、

俺に斬りかかって来る。

 

俺は雪片弐型を使い、その斬撃を受け止める。

だが・・・。

「ぐっ!?」

 

重い、海斗兄に勝るとも劣らない力だ、

恐らく、黒焔のパワーが恐ろしい程強いんだろう。

 

「はぁぁぁっ!!」

俺の背後からシャルが飛び出し、箒に斬りかかる。

 

「小賢しい!!」

だが、箒はもう一本、日本刀らしきものを呼び出し、

シャルの斬撃を受け止める。

 

「なっ・・・!?」

嘘だろ・・・!?

どうやったら両手で降られたブレードを片手で止められるんだよ!?

 

「どうした!?この程度か!?」

奴はそう叫びながら、俺達を弾き、俺に斬りかかって来る。

 

「ッ!!」

咄嗟に後退するが、右腕に掠ってしまう。

しかも、掠れたのが肌が露出していた部分だったからか、

軽く血が出ていた。

 

(なっ・・・!?絶対防御が発動しない!?

いや、絶対防御を貫くのか!?)

 

だとしたら、不味い事この上無い、

只でさえエネルギーが減ってるし、何より性能が違いすぎる。

 

それに、アイツはただの復讐鬼だ、俺とシャルが死ぬまで攻撃の手を緩めないだろう。

 

こうなれば、一か八かの攻撃だが、

零落白夜で怯んだところに、シャルの一斉射を叩き込めば、

なんとか退路は拓ける。

 

「シャル!!一か八かだ!!俺がアイツを斬ったら、

スペリオルに残ってる弾全部撃て!!」

「分かった!!」

 

シャルの声を聞き、俺はリボルバー・イグニッション・ブーストを発動させ、

一気に加速、箒との間合いを詰める。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

死角を突くように、移動したため、直ぐには反応されない。

この一瞬が、勝負!!

 

烈迫した気合いと共に、一気に雪片弐型を振り抜こうとした。

 

だが・・・。

 

俺の渾身の一撃は、目標を捉えること無く、

弾き返された。

 

しかも、同時に吹っ飛ばされ、体制を崩す。

 

「な、なんだ・・・、あれは・・・?」

体制を崩しながら見た光景に、俺は目を疑った。

 

奴を、黒い炎が包んでいた。

 

sideout

 

noside

黒焔、

篠ノ之束が開発したISで、

どの世代にも分類されない機体だ。

 

一見、紅椿のように見えるが、

そのスペックは紅椿のそれを遥かに凌ぐ。

 

黒焔がどの世代にも分類されない所以、

それはその能力にある。

 

単一仕様、<煉獄>

機体に尋常ならざる程の高熱を持たせ、

搭乗者の意思により、発火、爆発させる事が出来る。

更に物理的な実体を持たせ、斬撃や銃弾を弾くことも出来る。

 

だが、その炎は本来、機体と同じく紅い色をしていたが、

復讐の悪鬼になった篠ノ之箒の負の感情により、

その炎は妬みの黒い炎に変貌してしまった。

 

余談だが、開発者である篠ノ之束は、

『妬みにまみれた、最も醜いIS』、と語っている。

 

「黒焔・・・、私から一夏を奪った、あの女を、殺すぞ!!」

 

低く、唸るような声で呟くと、箒はシャルロット目掛け、

急速に接近、得物を振るう。

 

「くっ!」

シャルロットはガンブレード二本を交差させ、

なんとか刃を凌ぐが、炎が襲い掛かる。

 

「シャルっ!!」

一夏は助けに向かうべく黒焔に接近するが、

黒い炎が邪魔でなかなか思うように近付けない。

 

一夏がそうしている間にも、箒は怒涛の勢いでシャルロットを攻め立てる。

 

そして、五回目の激突の際、ついにガンブレードが二本とも折れた。

それと同時に、シャルロットも大きく体制を崩す。

 

「これで・・・、死ねぇぇぇ!!」

嬉々とした叫びと共に、箒は刃を突き立てるべく、突進する。

 

もう駄目かと思い、シャルロットは目をきつく閉じる。

その時・・・。

 

「シャルゥゥゥゥッ!!」

叫びと共に、白い影が彼女の目の前に躍り出る。

それは、一夏の白式であった。

 

直後、彼の右胸にその凶刃が突き刺さった。

 

「ぐあァァァァァッ!!」

一夏の絶叫が、その空域に響き渡った。

 

「い、一夏ぁぁぁっ!!」

 

sideout

 

 

side一夏

ガハッ・・・!!

ヤベェ・・・。

 

身体の右側が焼かれるように痛い・・・。

多分、突き刺さった刃自体が相当な高熱になってるからだろうが・・・、

こいつはドジったな・・・。

 

でも、なんとかシャルを守れたか・・・、

なら、この痛みも無駄じゃねえな・・・。

 

けどな・・・。

今ここで、俺が堕ちたら・・・、誰がシャルを守るんだよ・・・。

 

嫌だ・・・、シャルだけは・・・、何があっても傷付けやしねぇ!!

 

命ある限り、俺は戦う!

明日を見るために!

 

だから、こんなところで、終わってたまるか!!

 

「ガハッ・・・!!白式ぃ!!」

だから叫ぶ!

 

「俺に・・・、力を貸せぇ!!」

 

その瞬間、俺の意識は光に包まれた。

 

その光の中で、俺は頷く白騎士を見たような気がした。

sideout

 

noside

叫び声を上げた一夏は、箒の腕を弾き、

自らの胸に刺さっていた刀を引き抜きつつ、

炎もろとも黒焔を蹴り飛ばした。

 

「なんだと!?」

 

箒は驚愕の目を白式に向けた。

 

そこには装甲の隙間から血のように赤い光が漏れだす白式の姿があった。

 

白式は身を屈めたかと思えば、

先程までとは桁違いの速度で黒焔との間合いを詰める。

 

「何!?」

すかさず後退し、距離を取ろうとするが、

白式はそれより圧倒的に速い。

 

加速そのままに、白式は黒焔の胴体に蹴りを叩き込んだ。

 

吹っ飛ばされるがなんとか持ち直し、

追撃とばかりに突っ込んでくる白式に向け、刃を突き立てようとする。

 

直後、その刃は白式を貫いた・・・。

だが・・・。

 

「なっ・・・!?」

しかし、手応えがまったく無く、白式の姿は霞のように消える。

 

「残像・・・だと!?」

 

そう理解した刹那、背後に強烈な衝撃が襲い掛かる。

 

なんとか背後を見ると、いつの間にか白式が次の動作に移るべく動いていた。

 

先程の理屈は至って単純、

突きを紙一重で回避し、ハイパーセンサーすら捉えきれない速度で背後に回り込み、

がら空きの背中に正拳を叩き込む、

 

普通なら有り得ない現象が、黒焔に襲い掛かる。

 

正拳を叩き込んだ勢いで、回し蹴りを脇腹に叩き込み、

そのまま雪片弐型の斬撃を浴びせる。

 

「ガァァァァッ!!」

箒は唸りながらも反撃しようとするが、

白式は斬撃と拳撃を立て続けに叩き込んでいく。

 

なんだこれは・・・?

奴は相当な深傷を負っているはずだ・・・。

なのに・・・!?

 

箒は吹っ飛ばされながらも自問し、

分が悪いことを悟った。

 

体制を立て直し、追撃してくる白式を阻むように炎の壁を形成、

 

白式はその壁の前で一瞬停止した。

その隙に黒焔は離脱していった・・・。

 

sideout

 

sideシャルロット

僕を庇って胸を刺された一夏が、

何かを叫んだ直後から恐ろしい程の動きで箒の黒焔を攻め立ててていた。

その力は圧倒的の一言に尽きた。

 

けど、装甲の隙間から見える血のように赤い光と同時に、

その力に耐えきれなくなったとばかりに、

時折装甲がひしゃげて飛び散っていた。

 

その様子は・・・、まるで自分を捨てて戦っているよにも、

自分の身体に相当な負荷をかけているようにも見えた。

 

やめて・・・!

それ以上は・・・!

 

一夏が・・・、一夏が耐えられない!!

 

白式に吹き飛ばされた黒焔が、炎の壁を形成した直後に撤退していった。

 

それを見送る白式の姿は、ボロボロでもう戦えないだろう。

 

箒が撤退していったのを認めて、戦意を消したのか、

白式は頭から落下し始めた。

 

「一夏ぁっ!!」

イグニッション・ブーストを発動させてなんとか一夏を受け止めた。

 

胸の出血はなんとか止まってるけど、

何かしらの処置を施さないと・・・!!

 

「急いで戻らないと・・・!でも、エネルギーがもう無い・・・!」

どうする・・・!?

このままじゃ一夏の命が危ない・・・!!

 

焦りが募りかけたその時だった・・・。

 

「一夏っ!!シャルロットっ!!無事かしら!?」

「鈴!!」

 

良かった・・・。

 

「僕は大丈夫!でも一夏が!!」

「そんな!?」

 

僕達の所まで来て、一夏の様子に気付いた鈴が声を上げる。

多分、一夏が負けるなんて思ってもみなかったんだと思う。

 

「こうしちゃいられないわ!!簪!一夏を直ぐに運んで!!」

「分かった!!」

 

簪は一夏を抱えて直ぐに岸に向かって飛んで行った。

 

それに安堵した瞬間に・・・、目眩がして世界が遠退いていくのを感じる。

鈴とラウラが呼んでる・・・。

 

それに答える間もなく、僕の意識は闇に呑まれた。

 

sideout




はいどーもです!
風邪を引いて3日程寝込んでぜんぜん執筆出来ませんでした・・・。
お待たせしてすみません・・・。


さて次回予告、
戦いの後、白式に残ったダメージは深刻だった・・・。
それを知った深夏は、一夏とシャルロットの為に新たな機体を用意した。

次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
裁きの再誕

お楽しみに!!

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