インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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降りかかる災い

side一夏

臨海学校二日目、

専用機持ちは全員がそれぞれ、本国から送られてきたテストパッケージの換装と、

テストを行っていた。

 

つっても、俺は装備換装なんて、白式が受け付けないし、

シャルはフランスから決別したため、IS系の装備やパッケージは届かない、

 

そんな訳で、俺とシャルは他の専用機持ちのアシストに回っている。

 

で、俺は現在、セシリアをサポートしている。

「セシリア、調子はどうだ?」

「ええ、本国から新たに届きました、ビット装備、

<ストライク・シューター>、悪くありませんわ。」

 

ブルー・ティアーズを展開したセシリアが、俺の質問に答える、

 

<ストライク・シューター>、

セシリアの話によると、新たにレーザービットを、

背部に両側三基ずつ装備した攻撃型兵装であり、

広域殲滅を目的とした戦法をとることが可能となった。

 

「そっか、他に手伝うことは無いか?」

「大丈夫ですわ、簪さんを手伝って差し上げてくださいな。」

「わかった、それじゃあな。」

 

さてと、簪はどこかね?

 

辺りを見回すと、俺が立っていた場所からほんの少しだけ離れた場所に、

打鉄弐式を展開していた。

 

白式を展開し、簪のところまで移動する。

歩く必要が無いからほんと楽だわ。

 

「簪、手伝うことは無いか?」

「ん~、大丈夫、今<烈火>の換装も終わったところ。」

「へぇ、流石だな。」

 

<烈火>

簪から聞いたが、打鉄弐式の最大の武装、<山嵐>を強化することが目的の兵装である。

四十八門もあった誘導型ミサイルが、合計百四十四門に増え、機動力が二十%低下する代わりに、

火力がえげつない事になっている。

あの恐ろしい<山嵐>が更に強力になるんだ、正直勘弁して欲しいぜ。

 

なんかちょっと羨ましいな、俺も新しい武装が欲しいぜ。

 

sideout

 

sideシャルロット

一夏がセシリアと簪のサポートをしてる間、僕は鈴とラウラのサポートを引き受けていた。

 

「ラウラ、新しい装備の調子はどうかな?」

「うむ、この新しい兵装、<ズィーレクト>、なかなかの代物だ。」

「へぇ。」

 

<ズィーレクト>、

ドイツ語で、宵闇という名を与えられた遠距離砲撃用のパッケージらしい。

なんでも十キロ離れた地点から相手を攻撃出来るほどの精密射撃が行えるらしい。

何て事をラウラが話してくれた。

 

「鈴の方は?」

「フフン、絶好調よ!新型パッケージ、<稲妻(シェンディアン)>、

悪くない出来だわ!」

 

<稲妻(シェンディアン)>、

鈴曰く、高機動近接戦闘向けに開発された新型パッケージ、

龍砲を外す代わりにスラスターを追加し、白式並みの機動性を手に入れたらしい、

また、新たに青龍偃月刀を装備し、格闘戦の能力を強化したらしい。

 

それにしても、皆凄いね。

ちょっとだけ、羨ましいと思っちゃうなぁ・・・。

 

sideout

 

side一夏

「よし、全員終わったな?」

『はい!』

それから、全員の換装が終わった頃、

織斑先生が俺とシャルを含む全員を集めた。

 

「これより、各自テスト稼動を行え、相手はそれぞれ自由で構わん。

装備の癖を掴め、いいな?」

『はい!』

 

そんな訳で、俺は鈴と簪を、

シャルはセシリアとラウラを相手にすることになった。

 

「いくぜ、鈴、簪、準備はいいか?」

「ええ、行くわよ!」

「<烈火>の威力、味あわせてあげる。」

 

それぞれ、機体を展開し、空中に浮遊する。

 

俺はスラスターを吹かし、一気に鈴の甲龍との間合いを詰める。

鈴は青龍偃月刀を振りかぶり、俺に斬りかかって来る。

雪片弐型よりも、向こうの得物の方がリーチがあるため、

少々、相手にし辛いんだよな・・・。

 

けどな・・・。

「先に間合いに入っちまえばいいんだよ!」

鈴の得物が振り下ろされる刹那、俺は瞬時加速<イグニッション・ブースト>を発動させ、

鈴の喉元にラリアットをかます。

 

「グフッ!?」

突然の事に対処できず、鈴はそのまま後ろに吹っ飛ぶ。

 

俺はそのまま追撃しようとしたが、横手から飛んできたミサイル群を咄嗟に回避する。

「って!それ、<烈火>の弾頭ミサイルじゃねえか!?」

質量が高いため、喰らったらひとたまりもない。

 

「このっ!!」

俺が意識を簪に向けた一瞬の隙に、鈴は体勢を立て直し、

青龍偃月刀を横凪ぎしてくるが、

俺は白式の脚部スラスターを目一杯吹かし、後方宙返りの要領で斬撃を回避する。

 

かなりスレスレだったけど、何とか避けれたな。

 

鈴の背後を取り、背中に蹴りをかまし、簪の方へ飛ばす。

「!?」

突然の事に、簪は攻撃の手を一瞬止める。

確かに今撃ったらフレンドファイアがオチだしな。

 

俺は白式のスラスターを全開にし、簪との間合いを一気に詰める。

吹き飛ばされてきた鈴に気をとられていた簪は、猛スピードで接近してくる俺に反応出来ず、

俺は擦れ違いざまに零落白夜を発動させた雪片弐型の斬撃を与えた。

 

スラスター部分を狙ったので、これ以上の飛行は出来ないだろう。

 

「ふう・・・、やっぱ使いなれてない武器を使う奴はどこかしらに隙が出来るな。」

まあ、コイツらはそれがほんの一瞬しかねえから、

かなり気ぃ使わなきゃならんがな。

 

さて、シャルの方はどうかなっと・・・。

 

シャル達がいる方へ意識を向けようとした、まさにその時だった。

 

突如、白式が警告を発した。

『警告!所属不明機接近中!』

あぁ!?なんでこんな時に来るかね!?

 

最悪だ、鈴と簪は俺が落としちまったし、さっき確認したけど、

ラウラもシャルにやられてる。

 

セシリアはなんとか行けそうだな。

 

六機の内、戦えるのは三機。

ラウラと簪は援護なら出来るだろうが、鈴は恐らく参加することすら出来んだろう。

 

「シャル、セシリア!戦えるか!?」

「僕は大丈夫だよ!」

「私も戦えますわ!!」

 

シャルとセシリアが応じた直後、所属不明機の姿が表示された。

「アイツは・・・、サイレント・ゼフィルスか!?」

 

sideout

 

 

sideシャルロット

サイレント・ゼフィルス・・・、

確か、ブルー・ティアーズ系の二番機で、

亡國企業に強奪された機体だったね・・・。

 

どう考えても、僕達を攻撃するつもりだろうね。

あの機体の操縦者の力量は、身に染みて判ってる。

 

正直、あまり相手にしたくない相手ではあるね。

でも、今はそんな事言ってる場合じゃない、

もし僕達が負ければ、他の皆が危険に晒される、

それだけは絶対にさせない!

 

「よし、行くぜ!!」

「うん!」

「はい!」

 

一夏に続いてスラスターを吹かし、飛翔する。

 

僕達を射程に捉えたのか、サイレント・ゼフィルスからレーザーが飛んでくる。

 

なかなかの精密射撃、でも、避けれない訳じゃないね。

 

僕と一夏はその射撃を僅かに身体を反らずだけで回避する。

セシリアは割りと大袈裟に避けてた。

 

「シャル、セシリア!アイツのビットだけを狙ってくれ!!」

それってつまり、突っ込むから援護しろって事だよね?

 

「わかった、でも無茶しないでね!!」

「了解した!!」

 

一夏はそう答えた後、一気に加速してサイレント・ゼフィルスに迫った。

 

sideout

 

 

side一夏

俺が距離を詰めようとすると、奴は牽制のつもりなのか、

ライフルによる狙撃をしてくる。

 

「その程度の射撃が当たるかよ!!」

 

紙一重でレーザーを回避し、俺は更に奴との距離を詰める。

 

バイザーのせいで顔の半分が隠れているが、サイレント・ゼフィルスの操縦者が、

一瞬驚いたように感じた。

 

「驚いてる暇なんてねえぞ!!」

間合いに接近し、雪片弐型と雪羅で十字に斬撃を繰り出す。

 

それが直撃する直前に、バックブーストで後退するが、

顔を覆っていたバイザーの半分を破壊した。

 

「貴様・・・!!」

マドカは、千冬姉に似たその顔で、俺を睨み付けてきた。

つーか、なんで千冬姉に似てんだよ、気色悪いんだよ。

 

「一年前の俺のままだと思って油断したテメェなんぞに、

俺が負けるかよ。」

 

つっても、かなり捨て身の攻撃だった事に変わりは無いんだがな・・・。

 

「黙れ!!」

マドカは怒鳴りながら、ビットを六機飛ばしてくる。

 

ビットはそれぞれ独立運動を行いながら、

俺を囲うように展開される。

 

奴がその気になればすぐに俺を撃てる状況だが、

別に避ける必要もない。

 

何故なら、俺には最高の恋人と、頼もしい仲間がいるからな。

 

俺の周囲に展開されたビットは、俺の後方から飛んできたレーザーと弾丸により、

全て撃墜された。

 

「何っ・・・!?」

「テメェは俺達を甘く見すぎてんだよ!!」

俺はリボルバー・イグニッション・ブーストを発動させ、

サイレント・ゼフィルスに急接近し、零落白夜を発動させた斬撃を叩き込むべく振るう。

奴は逃げようとするが、シャルとセシリアの狙撃がそれを阻む

 

本体に直撃することは無かったが、

ライフルと、残っていたアンブレラビットの全てを破壊した。

 

これで奴の攻撃手段は殆ど奪った。

 

「ここまでだ!!投降しろ!!」

無益な殺生はしたくない、

例え敵だとしても、生きている人間をあまり傷付けたくない。

 

「投降だと?ふざけるな!貴様だけは私が殺す!!」

マドカはインターセプターに似たナイフを呼び出し、俺に斬りかかって来る。

 

「織斑一夏!!貴様を殺せば私は、誰でもない、私という存在になれる!!」

「あぁ!?何が言いたい!?」

雪片と雪羅を戻し、俺は徒手でナイフによる攻撃を捌く。

 

「私は創られた存在だ!貴様のようなオリジナルではないからな!」

「だから、俺を殺せば俺のようになれるってか!?ふざけんじゃねえぞ!!」

攻撃を捌きながらも、貫手で急所に近い場所を狙って攻撃する。

 

「俺には俺の、これまで生きてきた人生がある!!

それはお前もそうだ!これが、お前が俺でない、最大の証だ!!」

 

貫手で肩口を突いた後、顎にアッパーを叩き込み、

後方宙返りからの踵落としをその顔面に叩き込んだ。

 

ちなみに俺が使う格闘術は、ISを纏っている相手に衝撃を直接伝える、

『鎧通し』という技を使っている。

それを顎や、顔面に叩き込んだんだ、気絶位して当然だ。

 

気を失い、海へと落下するマドカを、セシリアが受け止めた。

 

「セシリア、ソイツを千冬姉に引き渡すぞ。」

「はい。」

「さて戻るか。」

 

そう言って機体を反転させようとした、まさにその時だった。

 

『警告!アンノウン接近中!』

何っ!?またかよ!?

もうエネルギーにも余裕なんてねえぞ!?

しかも捕虜を連れてるから、セシリアは戦えない。

 

頼りになるのは、シャルだけだな。

 

「セシリア!彼女を連れて速く離脱して!

ここは僕と一夏でなんとか凌ぐから!」

「わ、解りましたわ!」

 

セシリアはスラスターを吹かし、この空域を離脱した。

 

その直後、オープンチャンネルで通信が入った。

『見つけたぞ、一夏ァァァァァッ!!』

うそ・・・だろ!?

 

「その声は、箒か!?」

遠くから、深紅の機体が急速に接近してくる。

 

最悪だ、このエネルギーが無い時に限って、

相手は怨念に取り憑かれた復讐鬼。

 

「この黒焔<くろほむら>で、貴様らを焼き殺してくれよう!!」

 

sideout




はいどうもです!

最近無駄に忙しくてなかなか執筆時間が取れないです(泣)

まあそれはいいや。

さて次回予告
嫉妬という怨念に取り憑かれた箒の魔の手が、
二人に襲い掛かる。

次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
墜ちる白

お楽しみに!!

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