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無人機襲撃事件から一週間後、
五月に入り、一年生も学園に慣れ始めるころ・・・。
―ズドォォォォォンッ!!―
第三アリーナが揺れた。
勿論、比喩表現等ではない、マジな揺れであった。
[うわぁ・・・。]
これは観客席で、アリーナの揺れの元凶を見ていた者達、
全員が思った感想だろう。
その元凶とは・・・、
二年の専用機持ち全員による、デスマッチであった。
チームなど組まず、誰が誰を狙っても構わない、
まさに戦争に近い状況である。
衝撃砲により地面が抉られ、
レーザーが舞い上がった土を焼き、
ミサイルや銃弾が間断なく飛び交い、
時折それらが止められ、切り刻まれる。
混沌とはこの事を言うのだろうが、
当事者である六人はまったく気にも留めていなかった・・・。
「爆ろぉぉぉッ!!」
「散りなさい!!」
「消えて。」
「とまれぇッ!!」
「「切り刻まれて地獄に堕ちろォォォッ!!」」
上から鈴、セシリア、簪、ラウラ、一夏とシャルロットである。
何故六人がこれほど迄に鬼気迫る訓練をしているかと言うと、
先日の無人機襲撃事件が影響している。
関係のない一般生徒が被害にあったのだ、
彼らの専用機持ちとしての矜持が、
その事を許せず、また、自分達の無力さを許せなかったのだ。
故に、彼らは考えた、
互いに殺気を、それも殺意ともとれるモノをぶつけ合いながら訓練すれば、
いざ命の取り合いになった時の為にもなる。
つまり、今行われている攻撃のすべてが、
一撃必殺の気迫を込めて放たれている。
『堕ちろォォォッ!!』
全員が放った技が、一際大きくアリーナを揺らしたのであった・・・。
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side一夏
「痛ぅ・・・、やっぱりキツいぜ・・・。」
訓練が終わった後、俺は部屋でボヤいた。
流石に殺気をあてられ続けて、あんな苛烈な攻撃の中にいたんだ、
疲れない訳がない。
俺の疲労度はまだマシだが、それでもキツイことには変わりはない。
「・・・っ、ふぅ・・・。」
シャルもかなり辛そうにしてるな・・・、
ん?そう言えば明日から三連休何だよな?
なら訓練だけじゃなくて、何処かに出掛けるか?
そうだな、それがいい。
「なあシャル、明日どっか行かねぇか?」
「ふえっ?」
いきなり話し掛けられたからか、気の抜けた返事を返してくる。
「ふえっじゃねぇよ、聞いてたか?」
「え、あ、うん・・・、ゴメン・・・、聞いてなかった・・・。」
「まったく・・・、もう一回言うぞ?
連休だし、明日どっか行かねぇか?勿論、二人っきりでな。」
相当来てんなこりゃ・・・、
俺もシャルも・・・、あれ以来気が張りっぱなしだ・・・。
だからそれを和らげる為にも、外に遊びに出る事を提案したんだ。
「うん!行くっ!!絶対行くよ!!」
「よし、じゃあ今日はもう寝ようぜ?」
「うん♪」
それぞれシャワーを済ませた後、俺達は同じベッドに入り、
眠りについた・・・。
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sideシャルロット
翌朝、僕は一夏より先に起きた。
時間は午前7時、起きるにはちょうど良いくらいだ。
それにしても、一夏の寝顔って可愛いなぁ~♪
いつもはキリッとしてカッコいいけど、
無防備な寝顔も可愛いんだ~♪
あ、でもそろそろ起こさないと朝御飯摂り損ねちゃう。
「起きて、一夏♪」
「んっ?んん~・・・。」
あ・・・、まだ起きない・・・。
むぅ~、起きてくれないとつまらない・・・。
あっ、そうだ!いいこと思い付いちゃった♪
「起きてくれないと、キスするからね・・・?」
僕はゆっくりと一夏に顔を近付けて、
彼の唇に自分の唇を重ねる・・・、
その直前に、抱き締められて、一夏の方へと引っ張られた。
「んうぅっ!?」
唇を塞がれ、ろくに声も出ない。
何だか、僕って、一夏が寝てるときに何かしようとすると、
絶対に一夏にそれ以上の事をされるんだよね・・・。
多分、これからも、こういう事では一夏にはかなわないんだろうな~、
そんな気がするよ。
「やれやれ、やっぱりそう来るよな、シャルは。」
「もうっ、一夏のイジワル・・・。」
ほんと・・・、一夏には敵わないなぁ・・・。
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side一夏
はい、というわけで、俺とシャルはただいま遊園地に来ています。
え?なんで遊園地なのかって?
そりゃあ、いつもレゾナンスとかのショッピングモールとかだったら、
マンネリになるし、飽きるじゃん?
だから、今日は奮発しまして遊園地にしたのです。
まあ御託はこの際どうでもいいか、
今はシャルと楽しむ事を考えるか。
「さて、最初はどこから行く?」
「ん~、じゃああれから!」
シャルが指差した方を見てみると、
コーヒーカップがあった。
あれなら確かに恋人同士で乗るには良いしな、
「よっしゃ、じゃあ行くか!」
「うん♪」
俺とシャルは腕を組んでコーヒーカップの方へと歩いた。
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ここからは、一夏とシャルロットの声だけでお楽しみいただこう。
一夏、シャルロットinコーヒーカップ
「おっ、回り始めたな。」
「そうだね♪」
「折角だからシャルが回して見ろよ、
スピードが出て面白いぞ?」
「うん、やってみるよ♪」
「おおっ、良い感じに出てきたな。」
「ふふふっ、そぉれっ!」
「おおっ、だいぶ速くなって・・・、って!
ちょっと速すぎない!?スピード出しすぎじゃない!?」
「何言ってるの、一夏?まだまだこれからだよ?」
「そんないい笑顔で言わないでぇぇぇぇっ!!」
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side一夏
「はあっ・・・、はあっ・・・、マジ酔うかと思った・・・。
最後の方、根元から煙が出てたぞ・・・。」
その後、俺はフラフラになってコーヒーカップから降りた、
あ、シャルの手は借りてないぞ?
そこまでフラフラじゃない。
「あはははっ、一夏ってばだらしないなぁ~♪」
おっ、そんな事言いますか・・・、
なら・・・、シャルも同じようにしてやりますか。
「よし、次はあそこに行こうか。」
「ふえっ?」
俺が指差した方を向くと、シャルは途端に青ざめた。
何せ俺が指差したのは・・・。
《蝋人形の舘・悪魔の宴》
とまあ・・・、俗に言うお化け屋敷だ。
「確かあれって、噂では失神した人が何人も出て、
かなり人気になったっていうお化け屋敷だったなぁ?」
「そ、そうなんだ・・・。」
平静を保っているつもりだろうが、
シャルの額からえげつない程の冷や汗が噴き出していた。
「よし、面白そうだから逝くぞ!!」
「字が違うよ!?それに何さ、その凄く爽やかな笑顔はぁ!?」
気のせいだ、シャル。
「さて、どんな表情を見せてくれるのかなぁ?」
「それが本音なの!?ねえ待ってよ一夏ぁ~!!」
引き摺られているシャルが何か言ってるけど、
取り敢えず、行くか!
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「うぅっ・・・、暗いよぉ・・・。」
シャルロットは現在、脚をガクガク震わせながら、
暗いお化け屋敷の中を歩いていた。
「オーイ、シャル、速く来いよ~。」
「あっ!ま、待ってよ一夏!?」
シャルロットは慌てて一夏に駆け寄る。
「うぅっ、一夏のバカぁ。」
「ったく、怖がり過ぎだっての・・・。」
そう言いながら進もうとした二人の前に、
突如としてナニかが飛び出してきた。
それは顔の穴という穴からドロドロと蝋が流れ出している、蝋人形であった。
「うおぉぉぉっ!!?」
「きやあぁぁぁ!!?」
二人は悲鳴をあげ、シャルロットは一夏の腕にしがみつく。
「ちょっ!?シャル!!苦しいって!!」
服が引っ張られ、襟が喉を圧迫し、一夏は苦しそうにする。
「ううぅっ、やっぱり怖いよぅ・・・。」
きつく目を閉じ、一夏に引っ張られるまま歩くシャルロット。
(ちょっとやっちまったかな?どうする・・・?)
彼女の様子を見て、一夏は暫く考えた後・・・、
「シャル、絶対に俺から離れるなよ?
そしたら怖くないからさ・・・。」
彼女の頭を撫でながら、優しく耳元で囁く。
「う、うん!」
その言葉を聞き、シャルロットは恐怖にひきつっていた表情から、
嬉しそうな、満面の笑みへとその表情を変えた。
「えへへ♪」
「よし、さっさとこんな所出ようぜ?」
「うん♪」
笑いあった後、二人は出口に向かって歩き始めた。
いつの間にか、二人の周りには何故かピンクのオーラが展開されていた。
ちなみに、その状態の二人を脅かそうとしたお化けのスタッフは、
二人がまったく驚きもせず、というより、素通りに近い状況で通り過ぎられた為、
半分涙目であったことは言うまでもない。
sideout
side一夏
俺とシャルは連れだってお化け屋敷から出てきた。
というか、全然怖くなかったな。
驚いたのも最初のやつだけだったしなぁ・・・。
というより、シャルが可愛いすぎてお化け屋敷に入ってた事すら忘れてたぜ!
「ねえ一夏、僕お腹空いちゃったよ、
そろそろいい時間だし、お昼にしよ?」
もうそんな時間か、確かに腹減ったな。
「ああ、そうだな、シャルは何食べたい?」
「ん~、パスタかなぁ?」
「よっしゃ、じゃあ行こうか?」
「うん♪」
俺はシャルの手をとり、レストランに向かって歩き出した。
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sideシャルロット
昼食を摂り終えた後、
僕達は色んなアトラクションに乗った。
ジェットコースターに、メリーゴーランド、それからゴーカートも。
アトラクションの楽しさよりも、一夏の楽しんでいる顔を見ることで、
頭の中が一杯だった。
気が付けば日は傾き、そろそろ帰らなければいけない時間になってきた。
最後に観覧車に乗って帰ることにしたんだ。
「おおっ、いい眺めだな、見えてるか、シャル?」
「うん、見えてるよ、まさしく絶景って感じだね♪」
綺麗だなぁ・・・、来て良かったよ。
ここ最近、ずっと息が詰まるような感じだったから、
いい息抜きになったよ。
「シャル、ちょっと目を閉じてくれないか?」
「え?うん、いいよ?」
なんだろ?
疑問に思いつつも、言われた通りに目を閉じる。
暫く待ってみると・・・。
―チャリッ―
「え?」
何か金属が擦れるような音がしたから、目を開けてみると・・・。
僕の手首に、小さな銀色のロザリオが付いたブレスレットがつけられていた。
「一夏・・・?」
「シャル、この前誕生日が近いって言ってたろ?」
あ、確かに教えたけど・・・。
「え?まさか覚えててくれたの・・・?」
「忘れる訳ねえよ、シャルの誕生日だぜ?
それに・・・、初めて祝ってあげられるしな・・・。」
一夏は少し息をはいた後・・・。
「ハッピーバースデー、シャル。」
そう言って僕のおでこにキスをしてくれた。
「あ、ありがとう一夏!
今までで一番嬉しい誕生日だよ!」
「そうか!喜んでくれて嬉しいぜ、シャル。」
そう言って一夏は僕の唇にキスをしてくれた。
嬉しいな・・・、僕は彼にこんなにも愛されている。
こんな・・・、去年の今頃よりも、
ずっと、ずっと嬉しいよ・・・。
「一夏、大好きです・・・、僕とずっと一緒にいてください・・・。」
「俺も・・・、シャルの事が大好きだ、こちらこそ、ずっと一緒にいてください。」
僕達は、お互いの気持ちを伝えあった後、もう一度唇を重ねた。
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side一夏
「えへへ♪えへへへっ♪」
遊園地から帰って来てからも、シャルは上機嫌だった。
そんな値が張るような物じゃないのに、
そんなに喜んでくれると、プレゼントした甲斐があるぜ。
「シャル、そろそろ帰ってこい。」
俺はトリップしていたシャルを後ろから抱き締める。
ほんと、柔らかくて、華奢な身体だよな・・・、シャルって。
ちょっとしたことで、壊れてしまいそうな儚さが、
俺が抱き締めている、最愛の彼女にはある。
「一夏・・・、ありがとう。」
「礼を言うのは俺の方だよ、ありがとう、シャル。」
「うん♪」
俺とシャルは笑い合い、互いを抱き締める。
シャル、ありがとう。
俺に愛を与えてくれて、俺に強さを教えてくれて、
俺を好きになってくれて、ありがとう・・・。
「シャル、愛してるぜ。」
「僕も愛してるよ、一夏。」
俺はシャルをベッドに押し倒し、少し強引に唇を重ねる。
「ふふふっ、一夏ってば、強引なんだから。」
「嫌か?」
「ううん、一夏になら、ちょっとぐらい乱暴にされてもいいよ?」
「なら、今日は少し激しく、いかせてもらうぞ?」
あーもう我慢できねえ、シャルを抱きたい。
「うん、シて?」
耳元で誘うように囁かれ、我慢の限界が来た。
その夜、俺とシャルは、今までで一番激しい夜を過ごした・・・。
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はい、どーもです!
またしても更新が少し遅れてしまいました。
なんか久しぶりにイチャイチャが書けた気がする。
さて次回予告
日常が流れるIS学園、
そんな中、学年別トーナメントが開催される。
次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
学年別トーナメント開催
お楽しみに!