インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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目覚める力

sideシャルロット

そこは何処かわからない荒野だった。

見渡す限り、何もなく、見えるのは沈みゆく夕陽位だ。

綺麗だなぁ・・・、・・・?

 

「って!!何処なの!?ここ!?」

あれ!?確か僕、一夏を助けるために戦闘に参加して、

機体が反応しきれなくて・・・。

 

「・・・、死んじゃったのかな、僕は・・・。」

 

ああ、結局、僕は一夏の足を引っ張っちゃったんだ・・・。

ゴメンね・・・、一夏・・・。

 

もっと一緒にいたかったよ・・・。

 

ゴメンね・・・。

 

「力を欲するか?」

「えっ?」

声のする方を向いて見ると、

ウェスタンカウボーイ風の衣装を着た男性が立っていた。

顔は帽子を深めに被ってるから、口元しか見えない。

 

それよりも、さっきの問いかけって・・・?

 

「お前は何のために力を欲する?」

ああ、そう言うことか・・・。

「大切な人を守るために、その人と生きるために。」

決まってる、僕は一夏を助けたい、一緒に生きて行きたい。

 

・・・、ううん、違う、それだけじゃない。

セシリア、鈴、ラウラ、楯無さん、簪、リク、エリーゼにアリス、

そして・・・、一夏と、

皆と明日を見たいから、僕は戦うんだ。

 

だから、僕は戦える力が欲しい!

皆と飛べる翼が、欲しい!

 

「そうか、なら、こんなとこにいる場合じゃねぇだろ?」

「うん!僕は行くよ。」

 

男性が差し出した手を掴んだ瞬間、目の前が急に光輝き、

余りの眩しさに僕は目を閉じた。

 

彼の手の感じは、どことなく一夏に似ていた気がする・・・。

 

sideout

 

 

side一夏

ああ・・・、あああ・・・、

俺はシャルが荷電粒子砲の奔流に呑まれるのを、

ただ見ている事しか出来なかった・・・。

 

「アァァァァッ!!!」

 

俺は、俺はッ!!

守れなかった・・・、一番大切な人を守れなかったッ!!

 

何が守るだ・・・!!

何が強くなるだ・・・!!

一番大切な人を守れないで・・・!!

 

俺はぁッ!?

ーーか・・・。

今の声は・・・。

「・・・、シャル・・・?」

 

いちか・・・。

 

聞こえる・・・、シャルの声が!

「シャル!!」

 

一夏!!

 

荷電粒子砲の奔流が、金色の輝きにより弾かれる。

その色は、夕陽のように、美しかった。

 

その光が晴れた時、そこに現れたのは、

形状の変わったリヴァイヴを纏ったシャルだった。

 

sideout

 

sideシャルロット

一夏の声を聞き、僕の意識は覚醒する。

ゴメンね、一夏・・・、心配させちゃって、

でも、もう大丈夫だよ、僕も、貴方と戦うよ!!

 

頭に情報が流れ込んで来る。

 

『セカンドシフト完了、システムオールグリーン、

新装備、<グレークラウド>、セットアップ、

ラファール・リヴァイヴ・スペリオル、起動。』

 

スペリオル、僕の機体の新しい名前、

これで、僕も戦えるんだ!!

 

「行くよ、スペリオル!!」

新しく追加された、白式とよく似たウィングスラスターを吹かし、

荷電粒子砲を撃ってきた黒い機体に接近し、

新装備、グレークラウド、別名ガンブレードを振るう。

 

ガンブレード、

その名前の通り、ライフルにもなれば、近接ブレードにも切り替え可能な銃剣、

 

この武器はまさに僕の得意技の高速切換<ラピッド・スイッチ>を、

集約したような装備だよ。

しかも二丁追加されてるから、また幅が広がるよ。

 

さっきまでとは比べ物にならない速度で接近したためか、

黒い機体は反応が遅れていた。

 

その隙を見逃さず、胴体にX字の斬撃を叩き込んだ。

 

斬撃をモロに受けた無人機は、スパーク音をあげ、

地面に倒れ伏した。

 

スゴい切れ味だね、コレ・・・。

雪片弐型に勝るとも劣らないよ。

 

機動性にしても、リヴァイヴとは段違いの速さだ、

反応速度もかなりいい。

 

これが、僕の機体の新しい力!

戦う、一夏と一緒に生きて行きたいから!!

 

「シャルッ!!大丈夫なのか・・・!?」

「一夏!うん、大丈夫だよ、心配かけてゴメンね・・・。」

「いいんだよ・・・、それよりも、今はアイツを倒そうぜ。」

「うん!」

 

僕と一夏は無人機の周りを、高速で飛び回り、

相手を撹乱する。

 

「「二人の恋路を邪魔する者は・・・!!」」

一夏が先に斬りかかり、無人機の右腕を切り落とす。

僕は反対側から斬りかかり、左腕を切り落とす。

 

「俺に!」

「僕に!」

そしてほぼ同時に両足を切断し、一夏は無人機の胴体に雪片弐型を突き立て、

瞬間加速<イグニッション・ブースト>を使って急上昇して、

雪片を引き抜いた後、叩き落とす。

 

「「切り刻まれて地獄に堕ちろォォォッ!!」」

 

一夏は上空から、僕は下からガンブレードで無人機を切り刻む。

 

無人機は粉々に砕け散った・・・。

 

sideout

 

side一夏

ふぅ・・・、なんとか勝てたな・・・。

にしても、シャルが無事で本当に良かった。

「簪、リク、無事か?」

「問題ない。」

「大丈夫です!」

 

よかった、特に被害はないみたい・・・、

待てよ、アイツらは俺達が目的では無かった、

何かを探しているような素振りを見せていたし、

 

「まさかな、だが、可能性としては十分にあり得るか・・・!?」

一応確認しておくか。

 

「セシリア、そっちに無人機は来てないか?」

『はい、来ましたが何とか退けましたわ、

ですがエリーゼとアリスが少し怪我を!』

「わかった、すぐに医務室に連れていってやってくれ。」

『わかりましたわ!』

 

不味いな・・・、怪我人が出ちまってる・・・。

 

セシリアと通信を終えた直後、楯無さんから通信が入る。

 

『一夏君聞こえてる!?』

「聞こえてます、どうしたんですか!?」

『すぐに特別房まで来てちょうだい!』

「わかりました、すぐに行きます!!」

 

特別房に入れられている人間と言えばアイツしかいない。

 

わかってきたぜ、やっこさん達の狙いが・・・。

 

sideout

 

 

side楯無

一夏君に連絡し終え、改めてそれを見る。

 

眼前には、バラバラに刻まれた無人機だったモノの破片と、

壁を破壊された特別房の一室があった。

 

無人機は私がバラバラにしたんだけど、

目の前の壁を破壊したのは突如として侵入してきた別の何かだったわ。

 

紅椿によく似たフォルムだったけど、細部が違ったし、

何より、紅椿は織斑先生が何処かに秘匿しているはず・・・。

 

じゃあ、あの機体は・・・?

 

詮索を続けようとした時・・・。

 

「楯無さん、やっぱりここに来たんですか!?」

一夏君がシャルロットちゃん、簪ちゃん、それにリク君を連れて、

廊下の向こうから走って来た。

 

「ええ、無人機の親玉の目的は・・・。」

「篠ノ之箒の拉致、いや、奪還というべきですかね?」

「そうね、それで間違ってないわ。」

 

恐らく、いや、99,9%そうだろうけど、

この事の下手人は篠ノ之束で間違いない。

 

コアを作れるのは彼女しかいないし、

何より、世界中どの国でも開発されてない無人機を作れるのも、

間違いなく彼女だけだわ。

 

「いったい・・・、何が起こると言うんだ・・・。」

「そうね・・・。」

 

これから先、世界中が荒れるわね・・・。

 

sideout

 

noside

その後、談話室には、専用機持ちの殆どが集められた。

いないのは負傷したエリーゼとアリス、

そして彼女達と共に戦っていたセシリアだ。

 

一夏達は被害状況を調べた結果、

逃げ遅れた生徒が重傷を負っていた事を知った。

 

「ふざけんなよ・・・、無関係の人間まで巻き込みやがって!!」

一夏は壁を殴り、怒鳴る。

 

「何でこんなことに・・・!」

シャルロットはその美しい顔に怒りの色を見せる。

 

他の面子もありありと怒りの色を浮かべている。

 

怒りが向く先にいるのは、篠ノ之束と箒である。

 

「落ち着けお前ら、今は退けた事を噛みしめておけ。」

千冬が全員を落ち着けるように言う。

 

「死人が出なかっただけ幸いだったが、

流石にこれ以上は私としても赦せんよ。」

 

千冬は場をしめるように話し、退室する。

 

「ああ言ってるけど、かなり怒ってるな、

生徒が親友に傷付けられたんだ。」

一夏は千冬の内心を看破し、どこかやるせなく呟く。

 

なお、紅椿も強奪されそうになっていたが、

千冬が指揮した教師陣により、

事なきをえている。

 

余談だが、その時千冬は暮桜を用い、応戦していたらしい。

 

「何にせよ、これから先、世界規模で動乱が興る、

俺達は、それに捲き込まれつつある、

いや、もう既に捲き込まれてるか・・・。」

その言葉は重く、そして、どこか鋭かった。

 

その後、一夏達は各々自分がすべき事のために、

部屋から去って行った。

 

sideout

 

noside

とある場所にて・・・。

 

「やあやあ箒ちゃん!無事で何よりだよ~!」

「姉さん・・・。」

「うんうん!大変だったねぇ~!でももう大丈夫だよ~!」

「・・・、どうでもいい・・・。」

「へっ?」

 

ポツリと呟いた箒の言葉に、束は一瞬呆ける。

 

「もうどうでもいい、一夏も、この世界も!!

ははははははははっ!!

すべて壊れてしまえばいいんだ!!

ははははははははっ!!」

「箒ちゃん・・・。」

 

狂ったように笑う箒を見て、束は生まれて初めて恐怖した。

そして、自分が取り返しのつかないものを解き放ってしまったと悟った。

 

その空間に、延々と箒の狂った笑い声が響いた・・・。

 

sideout

 

sideシャルロット

事後報告を終えた僕達は疲れた身体を引き摺って寮の部屋まで帰ってきた。

 

部屋に戻るまでの間、一夏はむずかしい顔をしていて、

一言も言葉を発しなかった。

 

やっぱり怒ってるのかな・・・?

そりゃあそうだよね・・・、あの時、

セカンドシフトしてなかったら、

僕は多分死んでいたかも知れないんだから・・・。

 

「一夏・・・。」

「んっ?どうしたんだ?」

 

反応を返してくれたけど、どこか陰が見える、

 

「ゴメンね・・・、一夏・・・、心配かけちゃって・・・。」

「・・・、シャル。」

僕は何を言われても仕方ない事をしたんだ、だから・・・。

 

「バカヤロウ。」

そう言いながらも、一夏は僕を抱き締めてくれる。

 

「怖かった、シャルが・・・、俺の前からいなくなるんじゃねえかって・・・、

すげぇ怖かった・・・。」

「ごめん、ごめんなさい・・・、一夏・・・。」

彼の気持ちが、本当に嬉しかった。

僕は彼に愛されている。

それが本当に嬉しい。

 

「生きていてくれて、ありがとう、シャル。」

「うん・・・、大好きだよ、一夏・・・。」

「俺も好きだよ、シャル。」

 

彼の唇が僕の唇に重ねられる、

何だか一夏にキスしてもらうのがひさしぶりのような気がする。

 

何でだろう?

毎朝おはようのキスしてるし、毎晩おやすみのキスもしてる、

・・・、あ、一夏からキスしてもらうのがひさしぶりなんだ。

 

「ん~っ・・・、いちかぁ・・・。」

それよりも、なんで一夏ってこんなにキスが上手なの?

これだけでとろけそうなぐらい気持ちいいんだ・・・。

一夏・・・、絶対にテクニシャンだよぅ・・・。

 

「ははっ、すげえ可愛い表情<かお>してるな、シャル?」

「一夏がえっちなキスするからだよぅ・・・。」

「そうだな。」

「もうっ、一夏のイジワル。」

 

そうは言っても、本当に嬉しいんだよ。

 

「ゴメン、シャル、我慢できない。」

「僕もだよ、一夏、して?」

 

僕達は、熱く、濃い夜を過ごした・・・。

 

sideout

 

 




どーもでーす。

ホントにイチャイチャが少なくなってる。
あー書きたい!
イチャイチャ書きたい!

さてと次回予告
久方ぶりの日常に、
一夏とシャルロットは何をなす?
次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
恋人の為に

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