インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

20 / 44
ゴーレム襲来

noside

IS学園には、生徒はおろか、一部の教師しか入る事が出来ない場所が幾つかある。

特に、地下にあるとある場所には、殆どの人間が立ち入ることは出来ない。

 

その部屋は、地下特別区画の、更に奥の方にあった。

 

内部には、かつて学園を襲撃したゴーレムタイプの残骸や、

さまざまな機器があった。

 

そして、中央には、殆どのパーツを剥がされた、紅椿があった。

その機体の至るところに、データ収集用のコードが繋がれ、

一見、生命維持装置を繋がれた重患者か、

もしくは、拘束器具に捕らえられた囚人にも見える。

 

いや、状況的に見れば、後者のほうが適切であろう。

主が起こした愚行により、かの機体は、このような有り様になってしまったのだ。

 

その紅椿を、鋭い眼で睨む女の姿があった。

それは、織斑千冬であった・・・。

 

学園内で殺人未遂を起こした、篠ノ之箒より剥奪し、

現在はデータ収集の名目の下、解体が行われている紅椿のこれからを、

思案するような表情にも見えるその目付きは、

何処にいるかも判らぬ友人に向けたらモノなのか、否か。

それがわかるのは、彼女以外にいないが・・・。

 

暫くして、彼女はおもむろに携帯端末をとりだし、

電話帳のなかにある名前の内の1つに、電話をかけた。

 

数度の呼び出し音の後・・・、

 

『はーい・・・、何よ千冬・・・、今何時だと思ってるのよ~・・・。』

どこか眠そうな女性の声が、千冬の耳に届いた。

「深夜2時・・・、といったところだな、寝ていたか?」

『ん~、海斗とセックスしてただけよ、終わって寝ようとしたところにコレよ。』

電話の相手、小早川深夏は、爆弾発言をさらっと話す。

 

「この痴女が、まあいい、用がある。」

『一夏が大好きすぎて他の男に興味を持てなくなって、

完全行き遅れのあんたには絶対に言われたくないわ~、

で、用って何よ?一夏関連の愚痴は聞かないわよ?』

「真面目な話だ、安心しろ。」

 

やれやれといった口調で話す深夏に、

千冬は真剣な口調で語り出す。

 

「篠ノ之束謹製の第四世代機を押収した、

私はこいつをどう処分すべきか悩んでいる、

そこで、私の幼馴染み、小早川深夏に、意見を聞きたい。」

『・・・、日本軍中佐としては、すぐにでも渡せ、と言いたいけど、

幼馴染みとしては、貴女の苦にならないようにしなさい、

それしか言えないわ。』

千冬の少し弱気な発言を、深夏は優しく諭す。

 

歳は同じだが、姉御肌な深夏は千冬にとっても、

最も信頼出来る人間の一人である。

 

「そうか、そうだな、すまんな。」

『気にしないで、ああ、それと、あんたにお願いしたい事があるのよ、

ちょいと頼まれてくれないかしら?』

「なんだ?私に出来ることなら力になるが?」

『有り難いわね、簡単な事よ♪』

 

深夏は一呼吸置き・・・、

 

『紅椿のデータ、とは言わないけど、展開装甲のデータを送ってくれないかしら?』

声色が一転して、冷たい声で千冬に言った・・・。

 

「・・・、何故だ?理由を聞かせろ。」

『大した意味じゃ無いわ、ただ、弟と義妹のためにね♪

この前の訓練の時に気付いたんだけど、

一夏とシャルロットちゃんの成長速度は異常よ、その内、

機体が反応速度に付いてこれなくなるわ。』

 

深夏の言う通り、一夏とシャルロットの成長速度は薄気味が悪い程速く、

その事に深夏はおろか、海斗も千冬も驚愕した。

 

現に、シャルロットは機体の反応速度に不満を抱いている、

一夏には、まだその兆候は見られないが、

いつそのような事が起こってもおかしくはない。

 

『そこで考えたのよ、機体が追い付けないなら、

二人の成長を受けきれる機体を造ればいいってね♪』

「まさかお前・・・!」

『そっ、私ならコアを造る事は出来なくても、オーバースキルの機体を造る事は出来る。

あの二人なら、それを正しく使ってくれるから、私はそれを造るわ。』

 

暫くの間、沈黙が続き、重苦しい雰囲気が辺りを漂う。

 

「このブラコンが。」

『お互い様よ。それに、シスコンも、でしょ♪』

「違いない。」

軽く言い合う二人は、さも愉快と言った風に笑う。

 

「分かった、また送っておこう、見返りは・・・、そうだな、

今度呑みに行く時は全額奢れ。」

『はいはい、分かったわよ、それじゃあ、よろしくね♪』

 

そして、電話は切れた・・・。

 

sideout

 

 

side一夏

さて・・・、シャルの悩みが晴れぬまま、数日が過ぎ、

四月もそろそろ終わりといった日に、

俺はリクと模擬戦をすることになった。

 

「よし、始めんぞ、リク?」

「はい、お願いします!」

 

俺は白式を展開し、リクもテンペスタⅡを展開する。

 

テンペスタⅡは白式と同じく近接格闘に特化した機体である。

白式を騎士と例えるなら、テンペスタⅡは剣士と言うべきか。

無駄なモノをすべて省いたようなスマートな出で立ち、

スラスターは固定されているが、大出力を望める大がかりなモノだ。

 

細かな手の内はわからないが、相手は素人、小手調べから始めるか。

 

「行くぜ!」

「はい!」

白と朱の機体が交錯する。

 

sideout

 

noside

「ハアァァッ!!」

「クッ!?」

一夏の繰り出す斬撃を、リクは呼び出していたバスターソードの側面で受ける。

 

テンペスタⅡの武装はバスターソード<ナイトシーカー>、

及び、緊急用のコンバットナイフのみであり、

白式と同じくイロモノ扱いされる機体である。

 

特性を見れば似通っている二機だが、

戦い方に大きな違いがある。

 

バスターソードは取り回しが難しい分、一撃の威力が高い。

逆に刀は威力が低い分、速度による連続攻撃で戦う。

 

どちらも一長一短な分、使い手の技量が出やすい。

 

「悪くないな、だが、まだまだたぜ!!」

一夏は刀身を滑らせ、それと同時に回し蹴りをリクの肩口に叩き込んだ。

 

「クッ!?うわぁぁっ!!」

リクは衝撃に耐えきれず、吹っ飛ばされる。

 

その隙を攻撃せず、一夏はリクが体勢を立て直すのを待つ。

 

「ハハハッ、やっぱりスゴいですね、一夏先輩は。」

「まあな、年季が違うしな。」

「年季って・・・、年寄り臭いですよ。」

 

軽く言い合いながら、再び二機は交錯する。

 

「ハアァァッ!!」

「ぜえぇぇぇいッ!!」

交錯と離脱を繰り返しながら、二機は高速戦闘を繰り広げる。

 

だが、突如として、上空から大量のゴーレムが襲いかかってきた。

 

sideout

 

side一夏

「ったく!!またかよ!!」

いったい何度目になるのか、

またあいつらかよ。

 

「な、何なんですか!?」

チッ!そういやぁ、リク達はコイツらの事を知らねぇんだ!!

だから対処法も知らない、不味いな・・・。

 

「無人機だ、どうやら、俺達が目的では無さそうだな。」

「な、なんで判るんですか!?」

「コイツらが来るのは三回目だからだ。」

 

にしても・・・、まだ素人同然のリクをなんとか守ってやんなきゃな・・・。

 

というか、他の専用機持ちは大丈夫なのか?

 

sideout

 

 

sideシャルロット

一夏とリクの訓練を見に来ていた僕は、

上空から大量の無人機が来るのを見た。

 

「一夏ッ!!」

どうしよう!?このアリーナにいるのは僕と・・・、

簪の反応がすぐ近くにある、なら・・・。

 

『シャル!聞こえてるか!?

コイツらの狙いは俺達じゃない!!

別の何かを探している、他の専用機持ちに警戒を呼び掛けてくれ!!』

「分かった!一夏はどうするの!?」

『俺がここで食い止める!』

「そんな!?」

駄目だよ!!そんな六機を相手に一人、もしくはリクと二人でなんて!!

 

どうすればいいの!?

今の僕の機体じゃあ足手纏いになりかねない、

でも・・・、一夏を喪いたくない!!

 

「簪!!聞こえる!?」

『聞こえてる!今から突入するから、シャルロットも!!』

「うん!!」

 

簪となら、なんとかなるかもしれない、

僕も戦えるんだ、大切な人を、守りたい!!

 

考えるより先に、僕はリヴァイヴを展開し、

混戦の中へと入った。

 

sideout

 

side一夏

敵機から放たれる荷電粒子砲を回避し、

零落白夜を纏わせた斬撃を一機に叩き込み、

沈黙させる。

 

コレで後五機、ちょいとキツいな・・・。

なんとか耐えなきゃな・・・。

 

「一夏ッ!!」

「シャルか!?」

なんで出てくる!?

今のシャルの機体じゃあ、

いつ機体が反応出来ない事が起きるかわからない、

そこを狙われたら、無事では済まない。

 

それはつまり、シャルを失ってしまうかもしれない、

イヤだ、俺は失いたくない、シャルを失いたくない!!

 

「シャル!下がれ!!今の機体じゃあ!!」

「解ってる!!でも、僕だって一夏を失いたくないんだ!!」

「ッ!!」

くっ・・・、結局は同じこと考えてんのかよ。

だが、いくら俺でもリクを庇いながら、シャルを援護しきれない。

 

「私もいる、援護なら引き受けるから!」

「簪か、済まない!」

コレで戦える!

そうだ、俺には仲間がいる、背中を預けられる仲間が!!

 

「シャル、簪!リクを庇いながら戦う、

だが、決して無茶をするなよ!!」

「わかってる、一夏、絶対に無茶しないでね。」

「勿論だ!」

 

sideout

 

 

noside

数で押されつつあった一夏は、シャルロットと簪の援護により、

徐々にゴーレム達を翻弄していた。

 

「三機目ぇ!!」

一撃必殺の攻撃力をもつ零落白夜を使い、

一夏はゴーレムを次々斬り倒す。

 

半数が既に一夏の手により破壊されていたが、

一夏達の表情に余裕はない。

 

その要因として、素人同然のリクと機体に苦しむシャルロットのフォローをしているからである。

 

「一夏、後ろッ!!」

「おうッ!!」

シャルロットの警告に一夏はすぐさま反応し、

身体を反らし、後ろから来たゴーレムの殴打を避ける。

 

殴打が避けられた事により、ゴーレムは体勢を崩す。

そこにシャルロットが銃弾の嵐を、

簪が<山嵐>によるミサイルの雨を降らす。

 

体勢を崩していたそのゴーレムは、為す術なくミサイルに装甲を抉られ、

内側を銃弾により貫かれる。

 

「今だよ、一夏!」

「おうッ!!いけるか?リクッ!?」

「はい!」

一夏は下段から、リクは上段から己の得物を振るった。

 

上下両方からの斬撃をもろに喰らい、ゴーレムは爆発光をあげ、散る。

 

「ふう・・・。」

残り少なくなり、シャルロットが一瞬気を抜いた、その時だった。

 

残る二機のゴーレムの内、一機が荷電粒子砲をシャルロットに向け、

発射しようとしていた。

 

「ッ!?」

反応が一瞬遅れたが、回避出来ない距離じゃない!!

そう思い、シャルロットはすぐさま離脱しようとする、が、

 

ガクンッ!

 

急に機体の動きが鈍くなった。

 

「しまった!!」

 

機体の反応速度が、ついにシャルロットの反応速度に付いてこれなくなった。

 

「シャル!!」

一夏が気付くが、間に合う距離ではない。

 

簪もリクも、フォロー出来る距離にいない。

 

無慈悲な光が、シャルロットを呑み込む。

 

「シャルーーッ!!」

一夏の悲痛な叫びがアリーナに響いた。

 

sideout

 

 

 




ちょっと遅くなりましたがなんとかあげれました。
てかイチャイチャ書けねぇ。

さて次回予告
窮地に陥った一夏達、
その時、シャルロットの力が目覚める。

次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
目覚める力

お楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。