インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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シャルロットの悩み

noside

リクと一夏達が会ってから数日が経ち、

IS学園は平穏な時が流れていた。

 

「はあ・・・。」

いや、一人、内心穏やかではない者がいた。

 

その人物とは、織斑一夏の恋人、シャルロット・デュノアだった。

現在、彼女は食堂に隣接するカフェでアイスティーを飲みながら、

盛大な溜め息をついていた。

 

「どうしたのよ、シャルロット?」

そんな彼女に声をかけてきたのは、

彼女の友人、凰鈴音であった。

 

「あ、鈴・・・、ちょっと考え事してたんだ。」

笑い返すが、どこか影のある笑いだった。

その事が余計に気になって、鈴は話を聞くことにした。

 

「・・・、悩みがあるなら話なさいよ。

一夏関連以外なら相談にのるわ。」

「そこはなんでもって言って欲しかったなぁ・・・。」

いつもの調子の鈴に、シャルロットは苦笑しながらも、

先程よりマシになった笑みを返す。

 

「実はね・・・、リヴァイヴが僕の反応速度に付いてこれなくなってきたんだ・・・。」

「・・・、は?」

シャルロットの言葉に、鈴は訳が分からずに聞き返す。

 

「いやいやいや、待ちなさい、それは有り得ないでしょ!?」

鈴の言うとおり、普通ならば人間の反応速度にISが付いてこれないなどと言う事は有り得ない、

何故ならば、ISにはその他の兵器にはない、自己進化と言う概念がある。

だが・・・、

「確かに有り得ない筈なんだよ・・・、でもさ、この前一夏と戦った時・・・、」

「あー、そう言えば、なんか動きにくそうにしてたわね。」

 

二日前、シャルロットは一夏の白式と戦闘を行ったが、

途中、リヴァイヴが突如としてシャルロットの動きに付いていけなくなってしまったのだ。

その隙を攻撃され、シャルロットは敗北を喫している。

 

「そうなんだ・・・、それはまだ良いんだ、僕が悩んでるのはね、

一夏に迷惑をかけちゃう気がして・・・、ちょっと怖いんだ・・・。」

シャルロットが恐れていること、それは有事に自分が、

一夏の足手まといになり、彼が傷つく事だ。

 

「・・・。」

流石の鈴もこれには何も言えなかった。

確かに自分達はこれまで幾多の修羅場をくぐり抜け、

実力を伸ばしてきた。

 

だが、それは所詮、これまでの事でしかない。

これからの事は誰にも分からない、

故にシャルロットが危惧する事が、現実に起こりうるかもしれない。

 

(確かに・・・、このままじゃ、何か起きたら間違いなくシャルロットは危険に晒される、

一夏はそれを黙って見ているワケがない、

自分を盾にしてでもシャルロットを守るでしょうね・・・。)

そうなれば、最悪だ、一夏が傷付いた事に対する自責の念で、

シャルロットも精神的に何をしでかすか分からなくなる。

 

結局、今の鈴ではシャルロットの悩みを解決してやる事はできなかった。

 

sideout

 

noside

そのころ一夏は、第一アリーナにて、簪と模擬戦をしていた。

 

簪が駆る打鉄弐式は、主に遠距離支援用に開発された機体で、

ミサイルやレールガン、更には荷電粒子砲まで搭載された、

高火力型ISである。

だが、機動力は高く、ブルー・ティアーズ並みの機動力を誇る。

 

完成度は今だ、2年の専用機中、最下位に近いが、それでも高い戦闘力を誇っている。

 

そして、パイロットである更識簪は日本の代表候補生と言う事もあり、

操縦テクニックは勿論、武器の扱い、演算処理の能力等、総合値は学年屈指である。

 

だが・・・、彼女の相手、織斑一夏はその上を行っていた。

放たれる弾丸をすべて紙一重で回避し、一気に間合いを詰める。

 

「くっ!」

簪は一夏の斬撃をかわすが、その顔には余裕などまったくない。

 

一夏の総合値は学年の専用機持ちの中では下位だが、

一芸特化と言うべき能力が群を抜けて高い。

それは超高速戦闘における近接格闘能力は、学園トップを誇り、

二位以下をまったく寄せ付けない。

 

それはまさしく、天性と呼ぶに相応しい領域であった。

 

一夏自身もそれを理解しており、相手を自らの領域に強制的に引き込む事を得意としている。

 

そして、今まさに、簪はその領域に引き込まれていた。

 

いくら火器を撃っても当たらない、それどころか一夏は尋常ではないスピードで、

「何なの、この速さ!?」

簪は何とか間合いから離れようと機体を動かすが、

一夏はその先を読むかのごとく、先回りし、雪片による斬撃を加える。

 

「ハアァァァァッ!!」

一夏は一気に勝負を決めるつもりで、零落白夜を発動させ、

急接近、山嵐を撃とうとした簪の機体を切り刻んでいた。

 

零落白夜を決められては流石の打鉄弐式も耐えきれるものではない。

程なくシールドエネルギーは底をついた。

 

sideout

 

side一夏

「やっぱり強いね、一夏は。」

「まあな、けど簪もすげえもんだ、あんな大量の銃火器、

俺には扱いきれん。」

 

機体を解除した俺と簪は、今回の模擬戦の批評を行っていた。

やっぱり簪はかなり手強い、第三世代機ながらも実弾兵器を大量に搭載し、

なおかつそれを的確に撃たれてはこちらも対処を考えねばならない。

 

「でも、私にはあんな高速戦闘中に近接格闘は無理、

あれが出来るのは一夏だけ。」

そうかなぁ・・・、俺はまだ物足りないんだよな~、

なんかもっと速く、もっと違う戦い方がある筈なんだよ。

 

「ま、なんにしても、まだまだって事だよ、お互いな。」

「そうね、それじゃあ私は先にあがる、見たいアニメがあるから。」

「ん、お疲れさん。」

 

そう言えば簪ってアニメ好きだっけ、あ、貸してもらったやつまだ観てねぇや。

でも観る暇ねえな・・・。

 

「ん?確かあれ布教用って言ってたな・・・。」

まさか現実で観賞用、保存用、布教用を見るとは思わなかった・・・。

簪の部屋におじゃました時に大量に置いてあったから、本当に驚いた。

セシリアとは違うけど、流石はリアルお嬢様だな・・・。

 

「っと・・・、そろそろ帰らねぇと・・・。」

俺はそう言いつつ、アリーナから出る。

 

「シャル・・・、最近どうしたんだろうな・・・?」

最近、シャルの表情に若干ながら翳りが見えるようになっていた。

 

多分、原因の1つにリヴァイヴの問題があるんだと思う。

今まで、シャルはポテンシャルを引き出した上での戦いで、

俺達第三世代機持ちと渡り合っていた。

 

俺は元々、白式の性能を引き出せていなかっただけで、

今はそのポテンシャルを引き出せているにすぎない。

 

つまり、シャルの進化に機体が付いていけなくなってしまったのだ、

俺も正直、これには驚いた。

 

「流石だな・・・、でも・・・、俺はシャルに何をしてやればいいんだ・・・?」

俺は何をしてやればいい?

どうすればいいんだ・・・?

 

俺が守る・・・?

いや、それはシャルが望まない、彼女は自分のために俺が傷付くのを恐れている。

 

ならば、気休めでも言うか・・・?

 

だめだ、そんな効果の無いことをしても無駄だ。

 

「どうすればいいんだ・・・、どうすれば・・・?」

「あの・・・、織斑一夏先輩ですか?」

 

迷い、悩む俺に、誰かが声を掛けてきた。

先輩って呼ぶからには、多分一年生だろう。

 

振り向くと、赤みがかかったショートヘアーの茶髪をした少女と、

青と見紛うほど深い、ミドルヘアーの黒髪の少女がいた。

 

「そうだけど、君達は?」

見覚えがまったくなかったので、取り敢えず聞き返してみた。

 

「あ、失礼しました、私の名前はエリーゼ・シュタイン、

カナダの代表候補生です、お会いできて光栄です。」

赤髪の少女が自己紹介をした。

うん、なんとなく、鈴を若干大人しくしたような雰囲気の子だな。

 

「私はアリス・クラスト、オーストラリアの代表候補生です、

よろしくお願いします。」

黒髪の子はアリスね、なんか簪を少しだけ明るくしたイメージだな・・・。

 

「初めましてだな、エリーゼにアリス、織斑一夏だ、一夏って呼んでくれな。」

「はい!よろしくお願いします、一夏先輩!」

「私の事もアリスと呼んでください。」

 

ん~、二人とも女尊男卑に染まってないな・・・。

見てて清々しいな。

 

「今日はどうしたんだ?俺に何か用か?」

「いえ、今日はご挨拶に参っただけです、

エリーゼが着いてきてくれると言っていたものですから。」

 

・・・、なんだろう、リクにしろ、この子達にしろ、

今年の一年生って皆マジメねぇ・・・。

俺ら先輩に挨拶しになんて行ってねぇもん。

 

「なあ二人とも、もしもさ、自分の大切な人がさ、何かに悩んでいて、

それを自分は助けになることができない時・・・、

二人ならどうする?」

 

なぜか、質問のように二人に聞いていた。

何故だろう、よく分からないが・・・、

 

「・・・、そう・・・、ですね。

私なら、何も言わずに、信じる事しかできないと思います。」

エリーゼがそう答えてくれる。

「自分もエリーゼと同じ意見です、でも、

ただ信じているだけじゃなくて、何か出来ることを見付けます。」

アリスも答えてくれた、

 

むずかしいな・・・、やっぱり、ただ信じる事しか今の俺には出来ないのか・・・。

 

「そうか、変な事を聞いて、悪かったな。」

「いえ、私達はこれで失礼します。」

「おう、またな。」

 

二人は俺に一礼した後、踵を返し、去っていった。

さてと、俺も帰りますかね。

 

sideout

 

side???

「ふんふん、箒ちゃん閉じ込められちゃったんだ~。」

暗い、暗い空間で、何者かが呟いていた。

 

「いっくんに何かしたみたいだけど、

それだけで閉じ込められるのはおかしいなぁ。」

 

その者は、何かを決めたかのごとく、動き出す。

 

「待っててね~、私が助けてあげるからね♪」

その者がそういった後、背後で何かが、多数蠢いていた・・・。

 

sideout




はい!どーも!
オリキャラ出しました、そしてイチャイチャがありません。

次はオリキャラ紹介をします。
本編更新はちょっと後になります。

さて次回予告
悩みが晴れぬ一夏とシャルロット、
そんな彼らを嘲笑うようにせまる魔の手があった。

次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
ゴーレム襲来

お楽しみに!

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