インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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壊れゆく関係

side一夏

訓練が始まってから約2ヶ月が過ぎ、

俺とシャルは、正式に日本軍少尉に任命された、

 

所属は海斗兄と深夏姉の部隊、<スカル・グレイブ>だった。

多分中将が手を回してくれたのだろう。

 

まぁ深く考えても仕方ないか、俺は俺にできる事をする、

それだけで十分だ。

 

訓練も終了し、俺達はIS学園に戻ってきた。

丁度、新学期が始まる直前だったらしく、

色々慌ただしそうだった。

まぁ俺にはあんまり関係無いけどな・・・。

 

「やっとこさ帰ってこれたな・・・、

お疲れ様、シャル。」

「一夏こそ、お疲れ様だよ、

それにしても、キツかったね・・・。」

「まったくだ・・・。」

 

マジで死ぬかと思ったよ・・・、

海斗兄にしろ、深夏姉にしろ、ウルフさんにしろ、

滅茶苦茶な戦闘能力を持った恐ろしい人外だったよ・・・。

 

ほんと・・・、よく生き残れたよ・・・。

 

「さてと・・・、千冬姉への報告も終わってるしな・・・、

このあとどうする?」

「ん~・・・、ゆっくりゴロゴロしてみる?」

「賛成だ。」

 

結局、やることもないので、俺達は久し振りの休暇を楽しんだ・・・。

 

sideout

 

noside

新学年が始まり、一夏達は2年になった。

クラス分けはそれぞれ、

一組に、一夏、シャルロット

二組に、鈴、セシリア

三組に、ラウラ、簪

四組に箒という感じになった。

 

ちなみに、五反田蘭はなんとかIS学園に入学することができたそうである。

 

蘭は入学直後に、一夏がシャルロットと付き合っている事を、

鈴から教えられ、多大なショックを受けていた。

 

しかし、同じ傷みをわけあっていた者達の仲は深まったとか深まって無いとか・・・。

そう・・・、惚れていて、彼を諦めた者は・・・。

 

「何故・・・、何故、何故何故何故何故?」

まだそれを認めていないその女以外は・・・、

その手に日本刀を持ち、虚ろな目で、虚空を眺めていた。

彼女には一夏こそすべて、そんな彼が、自分を見ていない。

 

「何故だ・・・、何故私ではない・・・?」

一夏はシャルロットを選んだ、箒を選ばず、

他の女の下に走ったことになる。

 

それが許せない・・・。

だが・・・、それがどうした、奪えば良いではないか、

かつて千冬もそう言っていたではないか・・・。

「一夏・・・、一夏は私のモノだ・・・。」

彼女の心は、確実に壊れつつあった・・・。

 

sideout

 

side一夏

新学年が始まってから一週間が経った。

 

日本軍での訓練のお蔭か、模擬戦での勝率がかなり上がった。

シャルもかなり強くなって、本当に相手にし辛くなった。

 

「だけど、なんか調子良すぎて怖いっつうか・・・、

今までのあれは何だったんだろうな・・・?」

 

そう思いながら廊下を歩き、アリーナに向かう。

 

・・・、何だ?この違和感は・・・?

違和感というより、殺気を感じる?

 

なんだ・・・?

何故こんなところで・・・。

だが来るなら・・・、

 

「後ろからってな!!」

身を捻った直後に、冷たく光る刀身が通り過ぎる。

 

あっぶね!

これマジもんの刀じゃねぇか!!

そんなもん振り回すのはアイツしかいねぇ!!

 

「何しやがる!箒!!」

「一夏は私のモノだ・・・、私は一夏のぉぉぉ!!」

何言ってやがんだこいつは!?

 

まさかな・・・、まだ俺との事を引きずってんのかこいつは!?

 

けど、得物がある相手を相手にするのは、些か難しい。

素手じゃあ勝ち目は少ないな・・・。

 

さてと・・・、どうしたもんかね・・・。

 

sideout

 

sideシャルロット

「一夏・・・?」

アリーナの廊下を歩いていると、何か嫌な感じがした。

 

そしてなぜか、一夏に何か悪い事が起きているような気がした。

「・・・、何処にいるの?一夏・・・。」

僕は一夏の気配がする方へと走っていった。

 

少し広い場所に出ると・・・、

虚ろな目で刀を振る箒と、

彼女の刀を避ける一夏の姿があった・・・。

 

「一夏!?」

「シャル!?」

どうして!?なんで一夏が斬られそうになってるの!?

 

「シャル!!刀をくれ!!大至急!!」

「!!」

 

一夏が叫びながら僕にそう言う。

確かに一夏は素手でもかなり強いけど、

流石に刀を振り回す相手には分が悪い。

 

なら、今の僕に出来るのは、一秒でも早く、彼に得物を渡す事!

「うん!待ってて、直ぐに戻るから!!」

「シャルロットォォォ!!」

箒が僕を見つけ、斬りかかって来ようとしたけど、

それより速く、一夏がその脇腹に蹴りを叩き込んでいた。

 

「行けっ!!なんとか持ちこたえてみせるから!!」

「一夏ッ!!」

後ろ髪を引かれるような思いで、僕はその場から去り、

寮の自室へと走った。

 

急がないと・・・、一夏が・・・!

 

sideout

 

side一夏

シャルに行かせたはいいが、それでもマズイ状況なのは変わらない。

 

ISを使えば良いのだろうが、奴は生身だ。

生身相手では、ISではオーバーキルだ。

しかも部分展開では、生身の部分に絶対防御が発動しない。

 

まったく、なーにが最強の兵器だこんちくしょうめ、

確かに強力だが、細かい処に融通が効かない。

あー、生身での訓練を受けててほんと良かった。

 

なんとか刀を捌き、致命傷だけは避ける。

既に襲われてからどれぐらい経ったのだろうか?

 

気が付けば、細かなかすり傷やら、小さい切り傷などで、

白い制服が所々血で赤く染まっている。

 

そろそろヤバイな、体力的にはまだ大丈夫だが、

場所が少し狭くなってきた。

 

「追い詰めたぞ・・・、一夏は私のモノだ・・・、

シャルロットなんぞに渡すものか・・・。」

だったらどうして俺を殺そうとするかね、まったく訳が解らん。

 

だが、そんなことをボヤいたとて、状況が好転する訳がない、

だけど、このまま殺られるのは勘弁だね、

まだシャルに俺達の子を産んで貰ってねぇんだ!!

それに・・・、

孫の結婚式を見るまで死ねるか!!

 

そう意気込んだ時・・・、

「一夏ッ!!」

シャルの声と共に鞘に納まった日本刀が投げられる。

それは狙い違わず、俺の手元にきた。

俺は躊躇うことなくそれを掴み、腰に据える。

 

何時もの模造刀じゃあ、到底打ち合い等できない、

シャルはそれを理解した上で、

この間、海斗兄に貰った特別な刀を、俺に渡してくれた。

 

「シャルロットォォォ!!」

シャルを確認した箒は、俺から意識を外し、シャルに斬りかかろうとする。

 

「させるかぁぁぁぁぁッ!!」

俺は神速を使い、一気に箒との間合いを詰め、

左足を前に出し、一気に抜刀、箒の脇腹に刀を叩き込んだ。

 

ノーマークな脇腹に決まったんだ、

気絶位はしているだろう。

 

ちなみに、今回俺が使った刀は、逆刃刀、

かつて人切り抜刀齋と恐れられた伝説の剣豪が、

人を斬ったことに対する罪の意識で、晩年持ち歩いたと伝わる、

その刀の再現品だ。

 

レプリカとは言え、強度は一級だ。

 

箒はそのまま横へ吹っ飛び、壁に激突して動かなくなった。

 

「はあっ・・・、なんとか終わった・・・。」

取り敢えず警戒を解きながらも、逆刃刀を鞘に納め、

箒の刀を奪い、ヤツから遠ざける。

 

不意討ちでもされたらたまんねぇしな・・・。

 

「シャル、刀、ありがとな、

シャルのおかげで生き延びたよ。」

俺は空いている左手でシャルの頭を撫でる。

ほんとは抱き締めたいんだけど、血がついてしまうから却下。

 

「一夏・・・、こんなに血が・・・!」

「大丈夫だ、全部傷は浅い、直ぐに治るさ。」

 

あぁ、こんなときまで、俺の事を心配してくれてるんだな、この娘は・・・。

俺はなんて幸せなんだろうな・・・。

 

どうやら騒ぎを聞き付けた教師が来たみたいだな、

慌ただしいハイヒールの足音が聞こえてきた。

 

やれやれ・・・、説明しますかね・・・。

 

sideout

 

noside

その後、一夏はやって来た教師に事情を説明、

自らの行為が正当防衛であることを明らかにした。

 

箒は本来なら殺人未遂で連行される筈だったが、

千冬の口添えで紅椿を没収された上で、

特別房での無期限謹慎処分が言い渡された。

 

この処置にはテロリストや他の国の工作員に拉致され、

束に対する人質とされない為だ。

 

被害を被った一夏の傷はすべて浅く、

命に別状はなかった。

その報告を聞いたシャルロットは彼の胸の内で大泣きした。

 

一夏はそんな彼女を優しく抱き止め、頭を撫でていた。

 

sideout

 

side一夏

箒の阿呆に襲われてから2日が過ぎ、

傷も消えかけていた。

 

やれやれ・・・、どうしてこんなことになったのか・・・、

人に刺される筋合いなんてねぇんだよ、まったく・・・。

 

今のところ、俺には特にお咎め無しの方向らしいが、

校舎内部で逆刃刀とはいえ、マジモンの刀を振るったんだ、

何か言われてもおかしくない。

 

まぁ、どうしようもない事で悩むより、

今の自分を磨けってね。

 

「さてと・・・、訓練でもしますかな?」

ボヤきつつも第一アリーナに入ると、そこには先客がいた。

 

「一夏じゃない、ケガ大丈夫だった?」

「おう鈴、勿論大丈夫だったぜ、むしろ元気が有り余ってる。」

 

俺の幼馴染みにして、ライバルである鈴だった。

鈴はアイツと違い、俺の事を諦めてくれているらしく、

今までの友人関係を維持してくれている。

 

悪いとは思いつつも、それを有り難いと思ってしまっている。

 

「ところで一夏、アンタが検査受けてる間、

シャルロットを宥めるの凄く大変だったのよ?」

「え?そうなのか?」

「そうよ、落ち着きなくそわそわしてて、ずっと泣いてたんだから。」

 

え?何それ、スッゲェ見てみたかったんですけど。

シャルはどんな表情も可愛いからな、

 

「そうか、すまなかったな。」

「いいわよ、アンタこそ、シャルロットに心配かけるんじゃ無いわよ?」

「わかってるって、ところで鈴、

久々に模擬戦やんねぇか?」

「いいわね、付き合ったげる。」

 

鈴は俺の申し出を受けて、甲龍を展開する。

俺も白式を展開し、戦闘体勢を整える。

 

「いざ、尋常に・・・。」

「勝負っ!!」

 

ブーストを使い、互いの得物を用い、近接格闘を行う。

 

甲龍は白式に比べてパワーが強く、つばぜり合いが長引けば、

勝利を得ることは難しい。

 

ならば、俺が取るべき戦法はただひとつ、

スピードで攪乱して、一気に攻める!

 

スラスターを全開に吹かし、圧倒的な加速を以て狙いを絞らせない。

 

「クッ!?ちょこまかと!!」

マジか、青竜刀ぶん投げて、それと同時に龍砲を撃って来やがる。

 

これでは龍砲を避けたら確実に青竜刀に当たるな、

けど・・・。

 

「いっくぜぇぇぇえ!!」

叫びながら俺の十八番、

連続瞬間加速<リボルバー・イグニッション・ブースト>を、

発動させ龍砲と青竜刀による二段技を避ける。

 

「んなぁっ!?避けたですってぇ!?」

「ハアァァァァッ!!」

驚愕する鈴に一気に近付き、擦れ違いざまに零落白夜を纏った斬撃を喰らわす。

 

「うっそぉぉぉっ!?」

トップスピードを遥かに越えた速度で接近されれば、

いかに反射神経の高い鈴でも対応出来ない。

 

為す術なく、甲龍のシールドエネルギーは0になった・・・。

 

「くあぁぁぁ~ッ!!なんでそんなに速いのよ!?」

「理不尽な、白式の最高があれなんだ、文句言うなよ。」

「それでも言いたくなるのよ!!」

なんじゃそりゃ、まぁ、今まで勝ててた相手に負けたんだ、

悔しく無いわけが無いだろう。

 

「じゃあ俺は先に上がるわ。」

「わかったわ、せいぜいシャルロットとイチャイチャしてなさい。」

言われなくても、毎日してますって。

 

まぁ、今日もシャル分が足りないから、

帰ってハグしますかね・・・。

 

sideout

 




はいどーもでーす。
さて・・・、反響がどうなるやら、

なんか今回もイチャイチャ成分が少ないな・・・。
なんかネタでも書くかな・・・。

さて次回予告
普段と変わらぬ日常を送る一夏とシャルロットと仲間たち、
そんな学園にある男がやって来た。

次回インフィニット・ストラトス光の彼方
二番目の男
お楽しみに!

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