インフィニット・ストラトス 光の彼方   作:ichika

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地獄の訓練

side一夏

2月25日、

「ギャアァァァッ!!」

「その程度か一夏!?まだまだだぞ!!」

「ムリ言わないでえぇぇぇぇ!!」

でだし早々に悲鳴で始まって申し訳無い。

けど、今マジでヤバイんだよ!

 

現在の状況をひとことで表すと、地獄です。

 

何故なら、海斗兄がマジモンの刀を振り回しながら俺を追い掛けて来る。

あの人強いだけじゃなくて、脚も短距離選手並みに速い。

追い付かれたら、マジで死ぬって!!

 

「さあさあシャルロットちゃん!!

逃げないと後ろの貞操が危ないわよ~!?」

「うわぁぁぁ!?」

 

別の場所では、シャルが深夏姉に追いかけ回されていた。

深夏姉も深夏姉で恐ろしく速い。

 

そう、俺達は訓練と称して、何故か死ぬこと覚悟で人外二人を相手に、

鬼ごっこを展開している。

 

ああ、なんでこんな事になってるんだっけ・・・?

 

sideout

 

side回想

遡ること、二時間前、

一夏とシャルロットは第七特務基地にやって来た。

『よく来たな、一夏、シャルロット。』

『早速で悪いけど訓練を始めさせてもらうわよ~?』

『えっ!?』

『まず、第一訓練、俺達から逃げ切れ、それだけだ。』

『ええっ!?』

『捕まったら・・・、ウフフ♪楽しいことになるわよ♪』

『ええええっ!?』

『それでは・・・、逝け!』

『字が違う!?』

 

sideout

 

side一夏

あぁ・・・、そんな事があったっけ・・・。

で、今俺は人外を相手に逃げ回っています。

「おら一夏!とっとと走れ!!」

「悪魔だぁァァァ!!」

死ぬ死ぬ!!マジで死ぬから~!!

 

「シャルロットちゃ~ん!!

お義姉ちゃんと遊びましょ~!!」

「ひいぃぃぃ!?手つきがいやらしいですよ~!?」

 

シャルがピンチだ!助けに行きたいんだけど、俺もピンチだ!

海斗兄を無視してシャルを助けても、深夏姉と海斗兄に挟み撃ちされるのがオチだ、

そうなれば真の地獄がやってくる、

 

なので選択肢は一つ、ニ、ゲ、ロ、この一言に尽きる。

 

あぁ、俺、この訓練終わったら、シャルにプロポーズするんだ・・・。」

「死亡フラグなんざ、自力でへし折れ!!」

「んな無茶な!?てか、なんで俺の考えたことわかるんだよ?」

「てめえ途中から言葉に出してたじゃねぇか!!」

「マジ!?」

 

いや、だからマジで、抜刀しないで?

それマジモンだからあぁぁぁ!!

 

sideout

 

side海斗

「よーし、今日の訓練は此処までだ、明日からもっとキツくなるからな、

覚悟しとけよ?」

あのあと、一夏とシャルロットはなんとか逃げ切り、地面に大の字になって倒れている。

『はい・・・。』

よし、喋れるだけでも、見込みありだな。

 

さっきまで行っていた訓練には、基礎体力を計る目的があった。

普通なら、一時間持たないが、この二人は三時間以上耐えた。

流石は俺達が鍛えた一夏と、代表候補生のシャルロットだな。

合格ラインをあっさり超えやがった。

いかにIS乗りとは云えど、基となる身体が出来てねぇと意味がない。

 

「想像以上だな・・・、よし、明日は組み手の訓練をさせるか。」

組み手ならば、手っ取り早く身体を鍛えられるからな、

筋トレよりも何よりも、やはり実際に戦ってみることが一番良い。

 

だが、ここで一つ問題がある、

アイツらの組み手の相手だ。

俺と深夏が相手になってもいいんだが、正直実力の差が開きすぎている、

加減も出来ないことは無いが、それでは意味がない。

 

「誰か丁度良い感じの奴はいねぇか・・・?」

溜め息をついた直後・・・、

 

「あ、イイヤツいるな、よし、中将に掛け合ってみるか。」

明日からが楽しみだぜ。

 

sideout

 

noside

翌日、

飛行場に呼び出された一夏とシャルロットは、

所定の時間より早めに来て準備体操をしていた。

 

昨日の事を考えれば、少しでも身体を暖めて置かなければ、

大怪我をしかねないからである。

 

暫くして・・・、

「待たせたな、一夏、シャルロット。」

海斗と深夏、それともう一人、

身長170㎝代後半の、真っ白い髪の毛をした、浅黒い肌をもつ男性がいた。

 

「海斗兄、そちらの方は?」

「紹介する、日本軍外人部隊所属、ウルフ・エニアクル大尉だ。」

 

一夏の質問に、海斗はウルフと呼んだ男性を指しながら言う。

 

「はじめましてだな、ウルフ・エニアクル大尉だ。

小早川中佐達にはいつも世話んなってる、おまえたちの訓練の相手をすることになった。」

「織斑一夏です、ウルフ大尉、よろしくお願いします。」

「シャルロット・デュノアです、よろしくお願いします。」

 

ウルフの自己紹介に、一夏とシャルロットは敬礼を返した。

 

「お前が織斑一夏か・・・、なかなか出来そうな奴じゃねぇか。」

「バカ野郎、こいつはそんなモンじゃねぇぞウルフ、ただのバカ野郎だ。」

「酷くね!?」

「事実でしょ?」

「深夏姉まで!?」

兄、姉の辛辣な評価に一夏はorzの状態になる。

 

「あ、あはは・・・、大丈夫?」

「グスッ・・・、シャル~・・・。」

乾いた笑いをするシャルロットに、一夏は泣きつく。

 

「ハイハイ、イチャイチャタイムは訓練終わってからにして頂戴。」

深夏が二人を取り敢えずはがす。

 

「さてと、まずは一夏からだな、構えてみろ。」

「はい。」

ウルフに言われ、一夏は左足を僅かに後ろに下げ、

右腕を前に余裕を持ってつき出す。

 

「悪くねぇ構えだな、だが、この動きに反応出来るか?」

ウルフは一気に間合いを詰め、一夏の右腕を掴もうとする、

一夏は即座に反応し、右腕を引き、逆に空いている左腕でウルフの腕を掴もうとする。

 

「甘いッ!!」

ウルフは身を沈め、脚で一夏の脚を払う。

予想もしていなかった攻撃に、一夏は成す術なく背中から倒れる。

 

「悪くねぇ対処だったが、その程度じゃ俺には効かん。」

「ぐっ・・・、スゲェ・・・!」

一夏は僅かに呻きながらも、ウルフの鮮やかな技に思わず声をあげた。

 

「スゲェか、けどな一夏、俺なんてまだまだだぜ?

お前の兄貴と姉貴は人外なんだからよ?」

「まぁ・・・、確かに・・・。」

ウルフの言葉に、一夏は苦笑を浮かべる。

 

「よし、次はシャルロットだな、来い!」

「はい!」

 

訓練はまだ続く・・・。

 

sideout

 

sideナレーション

さて、一夏とシャルロットが、海斗、深夏、そしてウルフと訓練をはじめて、

一ヶ月半が過ぎました。

 

ある時は組み手、ある時は刀による近接格闘、

またある時は銃の訓練を行った。

 

元々、そこそこ出来上がっていた一夏と、

代表候補生としての訓練を受けていたシャルロットは、

三人が驚く程の速度でその実力を伸ばしていった。

 

中でも、特に驚くべきは、一夏の剣にあります。

 

それでは、その場面をお見せいたしましょう。

 

sideout

 

side一夏

訓練が始まってから、一ヶ月が過ぎた、

かなり密度の濃い訓練だったからか、

自分でも伸びているのが分かる。

 

でも、もっと、もっと上に行きたい。

ハッキリ言って今の俺でも、海斗兄に届くかどうかわからない。

 

だから、俺は海斗兄に、模造刀による、一騎討ちを申し込んだ。

場所はいつもの飛行場、

夕暮れが近いため、辺り一面オレンジ色に染まっている。

 

「本当に良いのか?いくら伸びてきているとは言え、

まだお前では俺には届かんぞ?」

「分かってる、それでも、俺は海斗兄を驚かせてやるよ。」

「よく言うぜ、だが、その意気だ。」

 

俺は抜刀術の構えをとり、海斗兄は正眼に刀を構える。

三ヶ月前に刀を交えた時と同じ、ピリピリとした空気が辺りを支配する。

 

久しぶりだな・・・、俺が此処までだ緊張するのってさ・・・。

元々緊張しないタイプなんだけどさ・・・、

それでも、遥かに格上な相手と対し、俺は程よく緊張していた。

 

「では・・・、行くぞ!!」

 

海斗兄が俺に向けて突進してくる、もとより、あの人の真骨頂は、

相手より速く斬るコトだからな。

力だけをみると、俺が海斗兄に勝てる要素は無い、

けどな、足りねぇモンは、補えば良い!!

 

「おおおぉぉぉッ!!」

海斗兄の刀が降り下ろされる直前、俺は一瞬で左足で踏み込み、

それと同時に抜刀する。

 

抜刀術は本来、右足を軸に行うが、俺が考え出した技はそれを覆す、

だが、左足を前に出す分、抜刀の速度が速くなる。

言うなれば神速の域、それを越える速度だ。

 

「うおぉッ!?」

海斗兄は珍しく声をあげ、咄嗟に刀で俺の刀を防ぐ。

 

「はあぁぁぁぁッ!!」

「ぐうぅぅっ!!」

数瞬の拮抗の後、俺の刀は海斗兄に弾かれる、

 

「取ったぜ!!」

海斗兄は再び刀を振りかぶり、俺の脳天に叩き込もうとする。

 

だが・・・。

 

その瞬間に、俺と海斗兄の間の空気に異変が起きた。

 

さっきの抜刀の神速を越える速さと、威力により弾かれた空気が、

時間差を生じて辺りの物体ごと元に戻ろうとする。

 

つまり、海斗兄はそれに巻き込まれ、体勢を崩す。

俺は右足を軸に一回転し、もう一度左足で踏み込み、それと同時に刀を振る。

 

これが・・・、俺の編み出した最強の抜刀術ッ!!

 

「あぁたぁれェェェ!!」

叫びながら振られた刀は、ねらい違わず海斗兄の脇腹に直撃する、

「ぐうぅぅぅっ!!」

海斗兄は呻きなが吹っ飛ぶ、筈だった・・・。

 

「ぅぅぅうおおおぉぉっ!!」

いつの間にか、俺の脇腹に海斗兄の刀が入っていた。

「ガアアァッ!!」

マジか・・・、体勢を崩した状態でいつもと同じ威力の振り抜きかよ・・・。

 

文字通り一撃必殺の業をそれぞれ喰らった俺と海斗兄は、吹っ飛ぶことなく、

その場に倒れた。

 

痛ェ・・・、でも・・・、本気の海斗兄に、俺は迫れたのか・・・?

 

「やるじゃねぇか・・・、イッテェ・・・、

こんなに痛ェのは深夏や千冬とやったとき以来だぜ・・・。」

はは・・・、そんなに・・・。

けど、嬉しいよ・・・。

 

「大丈夫?一夏?」

いつの間にか来ていたシャルが、俺を膝枕してくれた。

ああ、シャルの太ももって・・・、スッゲェ気持ちいいなぁ・・・。

 

「大丈夫よね、海斗?」

「大丈夫そうに見えるか・・・?」

海斗兄は深夏姉に無理矢理起こされていた。

 

なんか愛され方に差があるな・・・。

まぁ・・・、俺にはシャルがいてくれてるから良いんだけどね。

 

「ほう、海斗中佐と引き分けるとは、大したモノだ。」

え・・・、今の声はまさか・・・。

 

「中将・・・!?」

俺は慌てて起き上がろうとした、

さすがに寝転んだままは失礼だからな。

 

「かまわんさ、それに良いものを見せてもらった、流石は一夏君だ。」

「ありがとうございます。」

 

ヤベェ・・・、スゲェ嬉しい。

誰かに認められるって・・・、こんなにも嬉しいんだな。

 

「よし、六人で食事にでも行こうではないか、

深夏、ウルフを呼んで来なさい。」

「分かりました、父さん。」

いきなりのオヤジモード発動!?

深夏姉もちゃっかり父さんって呼んでるし・・・。

 

「海斗、さっさと立て、俺と呑み競べができるのはお前だけだ、

一夏、シャルロットも行くぞ!」

「やれやれ、オヤジはほんとむちゃくちゃなお人だ。」

『はい!』

 

海斗兄はぼやきながらも、立ち上がる。

俺は立ち上がってシャルの腕をとり、立たせる。

 

「父さん、ウルフ呼んで来たわよ♪」

「おやっさん、飯奢ってくれんのか!?

着いてくぜ~!」

 

どうやらウルフさんも来たらしい、

なんか本当に家族みたいだな、

 

なんか・・・、温かいな・・・。

 

sideout

 

 




なんか前よりぐだったかなぁ・・・。

なんか最近話を進めるより、閑話のネタがどんどん浮かんでくるなぁ・・・。

さてといつも通り次回予告
訓練を終え、帰還した一夏とシャルロットに
奴の凶刃が迫る

次回インフィニット・ストラトス 光の彼方
壊れゆく関係

お楽しみに!!

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