艦隊これくしょんー啓開の鏑矢ー   作:オーバードライヴ/ドクタークレフ

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愛用のMacが壊れて予備でキープしてたウィンドウズに戻ってみたらすごく使いづらい……!

がんばって使っていこうっと……

さて、戦闘回! 夜戦だよっ!
水雷戦隊の本領発揮だよー!

それでは抜錨!
(応援部隊のナンバリング変更しました590→550です)
2014/09/29追記
誤字修正や言い回しを変更しています。


第5話_雷雨・邂逅

 

 短時間で終わると思われた雷雨は大分長引いていた。

 

《波浪による破損に気をつけて》

「はいなのです!」

 

 外洋は波が高く電の身長を裕に超えるほどのうねりがあった。横波を受ける形にならないように慎重に海面を読みながら航海を続ける。接敵ポイントまではまだいくらかあるはずだが、どうなるか分からない。

 

「司令官さんは大丈夫ですか?」

《大丈夫って?》

「船酔いする方も多いと聞くので……」

《あー……これくらいなら大丈夫。視界と体の感覚が違うから少し違和感はあるけど。……進路補正、方位2-1-0へ回頭。CTCの情報を信じるなら真っ正面距離35000に敵艦隊だ》

「方位2-1-0」

 

 言われた方向に体を向ける。距離がある上に夜間でこの波浪だ、まだまだ敵は見えない。向こうもこちらをまともに捕捉できないだろう。

 

《索敵を厳に。交戦域に突入するぞ》

「了解です」

 

 作戦参加艦への暗号スクリプトが一斉送信される。電の網膜には[DE 551stTSq-DD-AK04/ Contact]と直接投影された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 右舷後方にちらりと何かが光った気がした。

 

「……?」

 

 夜では見えるものも見えなくする。波のうねりもまた然り。気のせいかもしれないが、もしかしたら敵かもしれない。

 

「……」

 

 先頭を行く戦艦は涼しい顔で航行を続けていた。気がついたのは“彼女”1人なのかもしれない。彼女の中で疑念が膨らんでいく。

 

 もしそれが見間違えではなかったら。

 もしそれが潜水艦の潜望鏡だったら。

 もしそれが甲標的だったら。

 もしそれが敵戦艦の距離測定儀だったとしたら。

 

 薄ら寒いものを感じる。それらにどれだけの仲間が沈められて来ただろう。見間違いだったとしたら、自分は隊列を乱したとして処分されるだろう。しかしながら、ここで見逃したとしたら艦隊の真横からいきなり雷撃でドカンという可能性もある。その雷撃の先が空母や戦艦だったとしたら……この作戦の根幹を破壊されることになる。

 

「……!」

 

 電探持ちの巡洋艦がノイズを捉えた。あまりにも小型で海面の反射波の可能性もある。位置は方位0-3-0右舷後方4海里。

 

「……。」

 

 艦隊旗艦の空母がこちらを見た。行けと言う事だろう。

 

「……」

 

 部下を率いて隊列を離れる。見間違いであることを願いつつ、雷巡チ級は進路を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《気付かれた! 電、進路2-5-5に即時回頭! 両舷原速黒15! 横波になる、転覆には気をつけろ!》

「はいっ!」

《敵艦隊の頭を押さえつつ敵艦隊の機動力を奪う。沈める必要はないが、できる限り敵艦隊の足を落す。最大船足で砲撃及び雷撃を行い一撃離脱で海域を抜ける。質問はあるかい?》

「大丈夫なのです!」

 

 横殴りの雨を受けつつ転進、電は武装の展開を始める。向こうの方が早いとはいえ、丁字有利に持ち込めるはずだ。リスキーではあるものの1対多数の戦いになるなら先頭艦のみを相手にできる丁字戦しかほぼ勝ち目は無い。

 

《高角砲の安全装置解除、初弾装填!》

「高角砲、初弾装填します!」

 

 装備は10センチ高角砲を主砲に据え、酸素魚雷を発射管に詰め込んだスタンダードな駆逐艦装備。爆雷とソナーは固定装備で積んであるが、夜戦でこの戦況では使うまい。

 

「敵艦見ゆ!……軽巡ないし雷巡2!駆逐艦4!」

 

 左舷前方に白光灯火がいくつか波と合間に見える。微かに見える緑色舷灯。この位置なら敵の頭を押さえられる。

 

「左舷砲雷撃戦用意!」

《一撃加えたら離脱だ、いいな?》

「分かっているのです!」

 

 司令官とのリンク率が少し上がる。視界に敵艦までの距離などが見える艦影と重なるように表示された。電の視覚情報をウェーク島の戦略コンピュータが解析、司令官を通して電にフィードバックされているのだ。

 

[551st TSq ENGAGE]

 

 目指すは短期決戦。主機の出力を上げて波の頂点に乗る。

 電の主砲が爆炎と共に砲弾を打ち出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《着弾! 遠・至近》

 

 電の報告を聞きつつ航暉司令官席にあるキーボードを叩く。

 

「砲撃目標を敵先頭雷巡で維持、撃ち続けろ! 魚雷発射管1番から3番、発射用意!」

 

 音声通信で指示を出すと同時に魚雷への誘導データを転送する。戦場を写したスクリーンのマップには電の位置と視覚情報から割り出した敵艦隊の位置が表示され、戦術コンピュータが割り出した最善の魚雷発射位置がオーバーレイされる。

 

「この条件で漸減しろとか、CTCも無茶を言ってくれる……!」

 

 戦術コンピュータの指示はこうだ。

 

[DD-AK04による単機接触により敵艦隊の状況を把握、もし敵に捕捉された場合は敵の斥候隊が動くと予測されるため、斥候隊を引きつけつつマーカスからの応援部隊と合流、敵艦隊を漸減せよ]

 

 海域マップの上を応援部隊であろう[550th TSq]―――第550水雷戦隊の艦隊シンボルが滑っていく。戦闘海域まで後13分。末尾ゼロ番ということは臨時部隊のはずだが、戦力になるか……。

 

《敵弾頭着弾、近・遠挟叉!捕捉されましたっ!》

「向こうも電探持ちがいるな……。機関最大、最速で飛び抜ける!」

《了解なのです!》

 

 モニタリングデータとしてスクリーンに表示されている出力計の数字が跳ね上がる。速度誤差を修正。

 

「雷撃戦用意、3・2・1……撃てっ!」

一斉射(サルヴォー)、なのです!》

 

 直後に魚雷が水面を割って飛び込んだ。この波の中を進む酸素魚雷を見つけるのはほぼ不可能だろう。ルートさえ外さなければ確実に当たるはずだ。

 

「深追いはいいから適当に弾をばらまきつつ進路を3-0-5へ、一度戦域を離脱せよ」

 

 魚雷の撃ちっ放し(シュート&フォゲット)できる強みを活かして、距離を取る方向へ進路を変える様に指示を出す。同時に応援部隊とのランデブーポイントを探さなければならない。CTCの予測だとあと15分ほどで合流できるはずだが、電の電探にはまだ映らない。というよりノイズが多すぎてまともに映らないのだ。

 

「電探の意味があまりないな、これは……」

《仕方ないのです。この天気だと反射波が多すぎますから……》

 

 撃ち出した魚雷が遠くで水柱を立てる。波のうねりが邪魔でちゃんと当たったのか鋭敏な信管が誤作動したのかはわからない。あたっている事を願うだけだ。

 

 

 航暉が一瞬の違和を覚えたのはその時の事だった。胸騒ぎがする。機関のモニターやレーダーに目を落す。そして一瞬の雑音に目を見開いた。

 

「……! 電、取舵いっぱい! 衝撃にそなえろ!」

 

 直後、バットでぶん殴られたかのような衝撃が体を襲う。中継機のセーフティが作動し、リンク率がミニマムまで瞬間的に引き下げられる。次々に表示される警告文に飽和する警報。

 

 

(やはり初期型ホーミング魚雷の最終探信音……!)

 

 

 中継機のセーフティを解除、リンク率を引き上げる。電の鈍痛が脳に流れ込む。

 

「電、大丈夫か!?」

《右舷に被雷しました……!》

 

 右舷タービン制御部に被雷。浸水発生。タービン損壊、ソナー沈黙。右舷主機機能停止による出力低下、艦機能の維持困難により武装の一部を切り離す。

 いくつも出る警告文にまぎれて深海棲艦の艦隊を電探が捉える。直後電のすぐ脇に水柱が立つ。

 

《っ……!》

「左舷注水! 電、動けるか!?」

《やって……みます!》

 

 左舷側の主機がフル回転を始める。右舷側の出力を補うように動力を分散させ、なんとかバランスを保ちながら敵から離れる方向にのろのろと動き出す。今横波を受けるとまずい。なんとか転進し波に向かって垂直に進む。9.5ノット――――正面から叩き付けられる波と暴風に加えて、大破、浸水している状況で左の主機のみしか使えなくてはこれが限界だった。

 頭のすぐ脇を敵弾頭が接過する。衝撃と共に電探がブラックアウトした。敵艦隊の位置も友軍の位置も分からなくなった。波の合間に敵影が見える。駆逐ハ級が猛スピードで迫って来ていた。

 

「主砲旋回!」

《距離測定儀大破! 狙いが……!》

「めくら撃ちでいい! 右舷4時方向! テッ!」

 

 電の視界を借りて敵影を捉える。距離も方向も大雑把で当たるとは思えないが、撃つしか無い。接近されれば、沈むのだ。撃って、撃って、撃ちまくる。砲身の赤熱エラーが出るが、無理矢理解除した。雨が蒸発する音が響く。目視でなんとか誤差修正をするが至近弾が精一杯だ。それでも、撃つ。

 

 ハ級の砲身が閃いた。距離測定儀が使えれば必殺の間合い。避ける事などできるだろうか。

 

 

 

 

 

 そして、弾丸が飛来する。

 

 

 

 

 

 電には飛んでくる弾丸など見えなかった。この雨の夜に高速で飛翔する鉛の塊を見ることができる者などそういるものではないだろう。だから電が見る事ができたのは二つの水柱だけだった。それと同時に目の前に黒い影が立っていることを知る。

 

「……よく耐えた、電。もう大丈夫だ」

 

 僅かに光る舷灯に赤い刃が煌めく。直後に眩しいほどの閃光と共に轟音が轟き、ハ級が炎上する。

 その光で浮かび上がったシルエットに、電は目を見開き、口を押さえた。闇に溶けるような紫がかったジャケットに、頭の脇に浮かぶ距離測定議ユニット、右脇に差した鞘から抜かれた抜き身の刀は妖しい朱に光り、驚く電の瞳を写した。

 

「天龍、さん……?」

「フフッ、怖くて声もでねぇか? だけどもう心配いらねぇ。この後は“俺たち”が引き継ぐ」

 

 電の右肩に手が置かれる。驚いて横を見ると、電よりも華奢な女の子が並んでいた。

 

「遅くなってごめんね。でも大丈夫なんだにゃ〜ん? ね、如月?」

「ふふっ。大丈夫よ。如月さんにまかせてね?」

 

 揃いの緑色の角襟セーラーに明るい茶色の髪を揺らす、睦月と如月。その懐かしい笑顔を見て、電はつられて笑顔を浮かべながらも、目尻に涙を浮かべた。

 

「天龍ちゃん。感動の再会はいいんだけどそろそろ本気で戦わないとまずいんじゃないかなぁ?」

 

 天龍と同じ色のジャケットに天使の輪のような機械を浮かべた女性が電の左側に立った。右手には薙刀のような大振りな刃物を抱えて電の方を見た。

 

「わかってらぁ、龍田。……電、お前の司令官に繋げるか?」

「は、はいっ!」

 

 天龍に無線のチャンネルを教えるとすぐにそれに合わせたようだ。

 

「ウェーク551司令、こちら第550水雷戦隊旗艦、天龍。感度いかが?」

《天龍、こちら551司令月刀中佐。クリア&ラウド》

「遅れて申し訳ねぇ、今から天龍以下龍田、睦月、如月、以上4隻が551水雷戦隊の指揮下に入る。指示をくれ」

 

 そう言って彼女は刃筋を立てて中段に構える。もう臨戦態勢を整えて敵艦隊を睨む。相手は急に現れた増援に仲間を沈められた事で混乱しているのかまだ撃って来ない。

 

《……電以下所属艦の生還を最優先。如月は電を曳航しつつ進路3-0-5へ。睦月は如月のバックアップ。敵艦隊はホーミング魚雷を装備。機関出力を適宜変更しながら撤退開始。天龍、龍田両名は危険要素の排除、無理に深追いする必要はない。……必ず生きてウェークまで帰還せよ。以上》

 

 それを聞いた直後、天龍が海面を蹴って前に飛び出した。

 

 

 

「天龍様の攻撃だ! おっしゃぁああ!」

 

 

 

 勢いが乗った刃が閃き、敵を一閃する。

 

 

 

 

 

 

 反撃が、始まった。




場面転換の多い拙い描写ですいません。
そして夜戦っぽいことあまりしてないという……

さて、天龍ちゃんたちが復帰です。この後どうなるやら。

感想・意見・要望はお気軽にどうぞ
次回は戦闘の続き(?)お楽しみに!

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