艦隊これくしょんー啓開の鏑矢ー   作:オーバードライヴ/ドクタークレフ

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さて、キスカ撤退戦開始です!

それでは、抜錨!


Chapter5-4 偽の命に

 

 

 

 

 爆音が響く。巨大なファンが高速で回り、それで得た推力で海面を文字通り飛んでいく。

 

「ランディングゾーン視認! 原速赤20!」

《原速赤20!》

 

 ホバークラフト式の船が4隻、海岸線に近づきそのまま乗り上げる。海岸線に集まった人たちから見れば、霧の中から不気味に現れる鋼鉄の塊だっただろう。その横から海面に立っている人型がついていればなおさらだ。

 バラック街に人を入れまいとするように人の壁ができていた。それを見て誰かが“歓迎されてるって感じじゃなさそうだ”とつぶやいた。

 

 十分に減速して砂浜に乗り上げるとそのままファンを停止する。正面のランプが海岸に下ろされるとスロープのような形になった。そこを真っ先に下りていく人影が一つ。――――国連軍を示す水色のヘルメットにグレーの防具をつけた月刀航暉だ。その後ろに国連海軍警邏隊が整列、電と雷が上陸し、響と阿武隈は海上待機だ。

 航暉が手に持ったメガホンを構える。

 

「国連海軍です。近海に強力な深海棲艦が発生しています。皆さんを安全なところまでお連れ致しますのでご協力お願いします」

 

 英語を使ってメガホンで呼びかけるも、その声も聞こえない程の騒音に包まれていた。

 

『返回!返回!返回!返回!(帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!)』

「……ランディングできただけましだが、もう少し説得してくれてると助かったなぁ、高峰」

 

 そんなことをぼやきながらも、航暉は引かず立ち止まったままメガホンを構えた。

 

「深海棲艦の襲撃を受ければここは持ちこたえられない可能性もある」

『返回!返回!返回!返回!(帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!)』

 

 説得も聞く気はないのだろう。それでも説得は続けなければならないのは痛い。航暉の横に電が駆けてきた。航暉の護衛のつもりだろうか?

 

「艦娘の護衛付きで今から皆さんを択捉クリリスク市までお送りします。どうか協力をおねがいします!」

 

 帰れ帰れの大合唱の中、一人が石を航暉に向けて投げた、航暉はそれを避けなかった。

 

「司令官さん!?」

「動くな電!」

 

 ヘルメットにあたって硬質な音を立てる。それがきっかけになったかのようにいくつもの石が飛んでくる。航暉の後ろ、LCACを守るように立っていた海軍警邏隊の面々が銃を構えようとする。航暉がとっさに叫ぶ。

 

「総員武器を向けるな!」

 

 航暉のヘルメットや防弾チョッキなどにガスガスと石が当たっていく。電が前に出て守ろうとしたがそれを航暉は押し戻した。同時に電脳通信がつながる。

 

《攻撃に転ずるな、ここで攻撃したら相手に銃を出してくる理由を与える!》

《でも、司令官さんが!》

《おれは大丈夫だから自分に向けて飛んでくる石だけ守ってろ、命令だ》

《……っ》

 

 ガラス瓶が飛んできたのかその破片で頬を切りながらも航暉はそれでも背筋を伸ばして立っていた。涼しい顔とは言わないがそれでも澄ました顔で前を見続ける。

 

「司令官さん、ごめんなさい!」

 

 それでも前に出た電は航暉の前に出て両手を横に広げた。まるでとおせんぼするかのような位置だ。武器を向けるなと言っただけだからまだ命令違反にならないはずだ。

 

「やめてください! 私たちはあなたたちを助けに来たんです!」

 

 ちょうど飛んできた大きな石が電のこめかみにあたる。一瞬視界にノイズが走るがすぐに止んだ。ナノマテリアル被膜があれば人間が投擲した石ぐらいなら難なく防げる。それでも衝撃は十分に電の脳を揺らし、くらりとよろめいた、その肩を支えるようにしながら航暉は一歩前に出る。

 

「電、下がってろ。ここは男の戦場だ」

「你要女孩子盾不害羞吗?(女の子を盾にして恥ずかしくないのか!)」

「保护弱的人的军队不存在!(弱きを守る軍隊が聞いてあきれる!)」

 

 電のことを無視したかのように罵詈雑言は航暉に向けられたままだ。

 

 航暉はメガホンの電源を切ると大きく息を吸い込んだ。

 

 

 

「那个是你们的正义吗!(それがあなた方の正義か!)」

 

 

 

 その声量に前に立っていた電は思いっきり肩を跳ねあげた。英語でずっとしゃべっていた航暉がいきなり華僑語で怒鳴ったことに周りは一瞬怯み、投石が止む。

 

「不久"深海栖军舰"来! 如果那个来这里定为战场、生存的可能性变得非常低! 你们尽管如此留下在这里吗? 你们不听想生存这样的人的意见,逐回我们吗? 弃而不顾想生存这样的人的是正义吗!?(もうすぐここに深海棲艦がやってくる! そうすればここは戦場になって、生きて帰れるかわからないんだ! それでもここに残るか? 生き残りたいと思う人の意見を封殺し、船を追い返すことがあなたたちの正義か!?)」

 

 場の空気が一瞬だけ冷え込んだ。それだけで場の主導権が航暉たち国連海軍に移る、

 

「哪边的意见正确没有关系。帮助生命的重要。如果死,丢失全部的可能性!(どちらが正義かなど関係ない。生き残ることだけがこの場では重要だ。死を迎えることは、可能性を全て失うことだ!)」

 

 航暉の叫びを、電の電脳は日本語訳して理解する。

 

「私からもお願いです! 今は一緒に避難してほしいのです!」

 

 電も慣れない英語を繰り、叫ぶ。

 

 生き残ってほしい、救ってほしい。このままいけば死ぬとわかっているのにそのまま突っ走ることは許せない

 

 だから電も叫ぶ。

 

「お願い、します。一緒に逃げてください……!」

 

 最後は僅かに声が揺れた。場がしんと静まり返る。どこからか吐き捨てるような笑いが漏れた。

 

「笨拙的表演已经充分。快速――――――(茶番はもう十分だ。早く―――――)」

「请停止!(やめんか!)」

 

 投石をしようとした若い男を引き留めるように太い声が上がった。

 

「他们对我们投了石头吗?(彼らが石を投げ返してきたか?)逐回来的人失礼,光是话也试着听吧。(わざわざ訪ねてきてくれた人を追い返すのも失礼だ、話だけでも聞こうじゃないか)」

 

 人ごみを割るように車いすに乗った老人が出てくる。十分な距離を保ったまま車いすが止まる。

 

「さて、君も日本人だね? 名を何という」

 

 その男が日本語でそう聞いてきた。航暉は僅かに面喰いつつもすぐに答えた。

 

「月刀航暉、ここの避難の指揮を任されているものです」

「軍人か?」

「はい、国連海軍極東方面隊中部太平洋第一作戦群第三分遣隊指揮官を務めております」

「その隣の嬢ちゃんは部下かね?」

「はい」

 

 品定めするように航暉を見る老人は車いすをゆっくりと近づけた。

 

「我々渤海民主主義人民共和国民は国を追われここまでたどり着いた。もう信ずる国もなく、ただここで閉じた暮らしをするしかない我々だ。国連という戦勝国の集合体の都合で生活を狂わされるのは御免被りたい。それはわかってくれるな?」

「確かに、貴方たちの祖国はもう存在しない。その時の戦争では我々日本人は敵として貴方たちと殺しあった。それは認めましょう。その戦後処理の一環でこの土地に追いやったのも事実だ。それをどうとらえ、恨むも妬むも自由ですし、それに対する批判は一日本人として甘んじて受けましょう。ですが、もうすぐここは戦場に変わる。深海棲艦という化け物を相手にしての戦いが始まるんです。その前には―――――」

「――――――人間同士の愚かな戯事に興ずる時間はない、か?」

「はい」

 

 航暉はそう言って瞳をそらすことなく見つめ返した。

 

「なら一つ聞かせてほしい。これは国連軍を信じるかどうかの問題じゃなく、指揮官である君を信じることができるかに関わる大事な質問だ。――――――君は戦争に正義があると思うか? 我々が興じ、殺しあった戦争に、いま直面している戦争に正義があると思うかね」

「そこに意味を求めてしまうのは人間の性分なのでしょう。何かを得るために他者を蹴落とす行為にさも崇高な理由を付けた時点でそこに正義は存在しえない」

「なら今君がしていることはなにかね?」

「あなたたちの命を保護という目的に則ってあなたたちにここから退去してもらうための交渉です」

「それに正義はあるかね?」

「これまでに正義があった戦いはありましたか?」

 

 そう、これは戦いだった。難民キャンプの人々の命がかかった戦いだった。

 

「なら最後の質問だ。もしここで君たちを殺すと宣言したら、どうする?」

 

 電が動こうとするのを航暉は目で制した。

 

「それでもここから皆さんを避難させるよう全力を尽くします。もちろん」

 

 攻撃してくるようであれば応戦させていただきますが。と航暉は笑った。

 

「……诸位,请要这个人们说的那样。(……みんな、この人たちの言う通りにしなさい)」

 

 バラック民がどよめく、それを制するように老人が声を上げる。

 

「为了重画我们的屈辱的历史,我们必须生存。为了逃跑不是逃跑,为了胜逃跑。现在追随那个人吧。(我々の屈辱の歴史を塗り替えるためにも、我々は生き残らねばならない。逃げるために逃げるのではなく、立ち向かうために逃げるのだ。今は恥を忍び、この人に従うべきだろう)」

「理解感谢,长老(ご理解いただき感謝します、長老)」

 

 航暉が膝をつき首を垂れると、その男は溜息をついた。

 

「そんなものしとらんよ。理解なんてものは概ね願望に基づくものだ。ただ客観的に判断しただけだ」

 

 老人はそう言って車いすから立ち上がる。

 

「忘れるな日本人。お前らと戦った我が祖国渤海の民は生きている。我々の最期の一人が失われるまで、我々は日本人を許さない。最後の一人に至るまで我々はお前らを憎み、戦い続ける」

 

 老人は一歩前へよろりと前に出た。子供が飛び出してきて、その老人を支えた。

 

「世界が我々を否定しようとも我々は生き続ける。お前ら日本人を恨み続ける。忘れるな、深海棲艦と戦っていても、お前らが儂らを守ったとしても、その恨みは消えることはない!」

 

 そう言うと急き込んで背を丸める老人。それを聞いたうえで航暉は叫ぶ。

 

「国連軍全兵! 傾注!」

 

 その号令に電たち艦娘も含め背筋を伸ばす。

 

「これより、全バラック民の避難誘導を開始する。各員最大限の敬意を払い、迅速に行動せよ! 一人たりとも置いていくな! 総員かかれ!」

「了解!」

 

 その号令で全員が動き出す。それを見送ってから航暉は目の前の老人と改めて目を合せる。

 

「あなたの判断に敬意を表します」

「ふん。かわいらしい女の子に泣かれては男が廃る、それだけだ」

 

 長老は航暉の横に立つ電に目を向けてから航暉に戻した。

 

「優しいいい目をしておる……、感情を持ついい目だ。大切にしてやれ」

「言われなくとも、私の自慢の部下ですから」

「すまんな、もう一度名前を教えてもらえるか?」

「国連海軍大佐、月刀航暉です」

「月刀大佐、これも何かの縁だろう。一つだけ忠告しておこう」

「なんです?」

 

 長老は笑った。目だけは冷えた笑みだった。

 

 

 

「DIHには近づくな。いくら月一族のバックがあっても、パンドラに触れれば脳を焼かれるぞ」

 

 

 

 長老はそういって車いすを自力で押していく。

 

「……あなた、何者ですか?」

「なに、ただのバラック街の年寄りさ」

 

 すれ違いざまに長老は獰猛な笑みを一瞬浮かべた。

 

渤海対外偵察局(B-SVR)の椅子にしがみついているしかできなかったしがない老兵さ」

「……!」

「高峰中佐にもよろしく伝えておいてくれ。ものを頼むときは偽名なんて使うもんじゃないときつくいっておけよ。さすがに目に余る」

 

 航暉は弾かれたように振り返る。電が怪訝な顔をした。

 

「あの、渤海対外偵察局って……?」

「……アジアで絶対的な強さを誇った諜報部隊だ。すべての情報は渤海に集まると言われたほどの情報収集能力と操作能力をもち、第三次世界大戦においてアジアで核が使用されなかったのは、最悪の事態を避けるように彼らが暗躍していたからと言われている。間違いなく世界トップクラスの諜報機関だよ」

 

 航暉はその後ろ姿に敬礼を送ってから、笑いをかみ殺すように笑った。それを見て電は恐るおそる口を開く。

 

「……じゃぁ、もしかして」

「あぁ、おそらく渤海対外偵察局のトップ、元渤海陸軍上将劉華清(リュウ・ファチン)だ。……こりゃあ、出来レースに組み込まれたかな?」

 

 航暉は引きつった笑いを浮かべながらバラックの方を振り返る。

 

「とりあえず、暴動なく収容が進みそうだな。避難誘導、急ぐぞ」

「はい、なのです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱりおかしい」

 

 杉田は紙のデータをぱらぱらと捲りながら唸った。

 

「杉田、なにか見つけたか?」

 

 テーブルの向かいに腰掛けた武蔵は眼鏡の奥の瞳を細めた。人気のない食堂の一角でカステラをつまみつつ2人は印刷資料を広げていた。

 

「やっぱり月刀と合田少佐の通信量が合わない」

「通信量?」

「ホールデンが傀儡を送り込んだとして、傀儡を送り込めるほどの膨大なデータを送った信号がない」

 

 杉田はその紙を武蔵の方に回した。こっちのプロじゃないから確かなことは言えんが、と前置きしたうえで杉田は口を開く。

 

「航暉に銀弓作戦へ参戦が確定してからの電脳通信のログだ。右端の積算棒グラフはその内訳のパーセンテージだ。傀儡のようなスクリプトを紛れ込ませることができるバッファ込みの通信量は全体の10.4%、容量として50GB程度だ」

「……この容量じゃ収まらないのか?」

「収まらんことはない。だが、義体制御プログラムやクラッキングツールや月刀自身の攻勢防壁の突破プログラムなども含めて転送し、月刀の体を操るにはまるで足りない」

 

 眼鏡を押し上げて紙を眺める武蔵はそのまま口を開く。

 

「この情報が改ざんされている可能性は?」

「もちろんあるが、ここのデータベースの防壁が攻撃を受けた痕跡がない。外部アクセスについてはゼロ、通信自体が存在しないんじゃ。枝もへったくれもねぇな」

「つまり、月刀大佐や合田少佐は傀儡の侵入を受けていない?」

「データだけをみるとそうなる。ただし戦術ネットへの不正規アクセスがあった時、おれが最初に撃たれたときだな、合田少佐の電脳の傀儡が活性化している。なんらかの方法で対外アクセスの制限や攻勢防壁をすり抜けて二人にアクセスしたんだ」

「そんなことができるのか? アクセスした痕跡も、防壁破りの痕跡を残さず電脳にアクセスする方法なんて」

「あったら魔法か毒電波か?」

 

 杉田はそう笑って武蔵から紙を取り返す。

 

「ネットを介さずに電脳にアクセスできる方法なんて……ある、わけが……」

「……どうした?」

 

 杉田の顔が凍り付く。目を見開いたまま一点を見つめ杉田は固まった。

 

「おい、おい杉田! どうした!?」

「……ある。ひとつだけ、例外がある」

「なんだと?」

 

 杉田はいきなり立ち上がり近場のQRSジャックに首の後ろから引き出したコードを叩き込んだ。アクセスするのは硫黄島基地の監視カメラの映像記録。

 

 

 

 

「――――――、見つけたぞ“ホールデン”」

「なに?」

 

 

 

 

 QRSプラグを引き抜くと速足でそこを離れ部屋に戻る。

 相変わらず汚い部屋に電気が灯る。鍵付きの引き出しを開けると拳銃とマガジンを取り上げる。

 

「どうする気だ?」

「武蔵、悪い。艦娘続けたいなら知り合いの艦娘のところに避難してろ」

「なにを始める気だ?」

「ん? 軍への反逆。急がないと月刀も高峰も危ねぇ」

 

 そう言って、杉田は拳銃にマガジンを叩き込んだ。サプレッサーも取り出し、マズルに取り付けていく。

 

「そんな物騒なものが必要なのか?」

「話し合いで解決できれば越したことはないが、今回ばかりは分かり合える気がしねぇ」

「シーザーを理解するためにシーザーになる必要はないらしいぞ」

 

 武蔵はそう言って冷や汗を流しつつ笑った。

 

「悪党と話し合うのに悪党になる必要はないが、武器は必要だろう?」

 

 予備のマガジンをチーフポケットに突っ込んで、ジャケットの下に拳銃を隠すようにした。

 

「おい、一番の武器を忘れてないか?」

「なんだ?」

 

 武蔵は部屋のドアをふさぐように立って笑った。

 

「どこに殴り込みをかけるか知らないが、射程は広いほうがいいだろう? 射程41キロの最終兵器があるのに置いていく気か?」

「……馬鹿野郎」

「正確に女郎だろう?」

 

 そう言うと素早く拳銃を引き抜いた杉田は引き金を引く。ガスンという抑制された発砲音が武蔵の耳のすぐ隣に穴をあけた。

 

「早死にするぜ? 武蔵」

「あんたには言われたくないよ、勝也」

「はん、名前呼びか?」

「失敗すれば軍籍抹消ものだろう? たまには女の私も見てくれよ」

「勝手に言ってろ」

 

 改めて拳銃をジャケットに隠した杉田が部屋を出る。その後ろを武蔵がついていく。

 

「急ぐぞ、高峰たちがあぶねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗くひび割れたコンクリートを蹴って高峰は進む。暗く冷えた地下通路は結露に覆われ、歩くたびにパシャパシャと足音が響く。

 拳銃はすぐに撃てるように肩の高さに構えたままだ。曲がりくねった廊下で方向感覚が狂っていく。道がわかるように所々マーキングはしてあるが、今どこに向かっているのかわからなくなりそうだ。

 

(山の中腹の地下通路……砂利交じりのコンクリートってことはかなり古いな、第二次世界大戦の時のものか?)

 

 大きく回り込むように角を周り、拳銃で警戒しつつクリアリング。先に進んでは警戒してを繰り返す。

 そのうちにあかりが見えてきた。青白いあかり、LEDだ。

 

(扉が開けてある、罠のつもりか?)

 

 高峰はゆっくりと足音を消して進む、扉の影で息を殺した。

 

(電子機器の作動音……誰かいるな)

 

 一度ゆっくりと息を吸い、二割ほど吐きだして息を止めた。

 

(虎穴に入らずんば虎子を得ず……か)

 

 壁を蹴るようにして一機に部屋の前に躍り出る。

 

「動くな!」

 

 高峰は部屋の真ん中でこちらを見て笑う男に狙いを付ける。

 

 

 

「君なら気がついてくれると思っていたよ、国連海軍極東方面隊司令部隷下特設調査部第六課所属、高峰春斗中佐。いや――――――」

 

 

 

 赤いハンチングを後ろ向きに被って笑う糸目の男性。真っ白な壁に照らされたまま高峰を見て笑みを深めた。

 

 

 

 

 

 

 

「日本国外務省条約審議部の高峰春斗審議官と呼ぶべきかな?」

 

 

 

 

 

 

 “彼”は高峰の構える銃口を歓迎するかのように両手を広げて笑っていた。

 

 

 

 

 

 




やっぱり司令部のターン!

高峰さん、あんた何やってるんですか……な暴露回でした。

杉田も何かを掴んだ模様、我らが主人公月刀大佐は避難誘導中。
おっさん勢……もとい司令部員で物語を動かし過ぎでしょうか……?

感想・意見・要望はお気軽にどうぞ。
次回は思いっきりおっさん回です。明日更新できればいいなぁ……

それでは次回お会いしましょう。

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