艦隊これくしょんー啓開の鏑矢ー   作:オーバードライヴ/ドクタークレフ

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あけましておめでとうございます。
新年最初の投稿ですが、オーバードライヴ節(?)全開で参ります(普通に戦闘まで入ろうとしたら既に5000字超えていて順番を入れ替えた模様)。

それでは、抜錨!


ANECDOTE032 軍人たれ

 

 

 

「なに拗ねてるんだ、満潮」

「うっさい」

 

 艦娘の艤装キャニスターが整然と並ぶあきつ丸のドライデッキを見下ろすキャットウォーク。そこの柵に寄り掛かって顎を乗せる満潮を見つけた東郷が横に並んだ。

 

「拗ねてなんか……」

「なら自責の念か? 律儀だな」

「ちがっ……」

 

 満潮がそう言って東郷の方を勢いよく振り返った。その先で東郷がどこか微笑んでいるのを見て、半ばからかい交じりと知った満潮は顔を真っ赤にしながら下唇を噛み締めた。

 

「そんないじらしい顔をしなくてもいいぞ満潮。ミスはだれにでもあるし、そもそも取り逃したT6の危険域に他の艦はいなかった。落とす必要があったのはただのパフォーマンスのためだ。ミスは戦況に大きく影響するようなものじゃない」

「それでも私は撃てと言われたものを撃てなかった。それは事実よ。それには憐憫も同情も必要はないわ。それは」

「お前への侮辱にあたる……当然だな。だが、それを引きずられるとこちらも困るんだ」

 

 東郷はそう言って笑って彼女の頭に手を乗せた。

 

「たしかにお前はミスをした。それは紛れもない事実だ。一瞬朝潮の動きに気を取られた。その間にT6は朝潮が撃破したT7の衝撃波の影響を受けて射線が僅かに南へずれた。それに焦ったお前は対空砲の弾を1マガジン分使い切り、リロードの間にT6が後ろに抜けた。……だが、お前も俺も、今更それを責めてなんになる? ミスは戦況に大きく影響するようなものじゃない。ただ、お前がそのまま落ち込んでると戦況に大きく関わる可能性がある。だから言っているんだ」

 

 口調は厳しいが声色は幾分明るいものだった。その姿勢のまま黙って聞いていた満潮がハッとしたような顔をして頭に乗っていた手を払い退ける。

 

「だ、だからそんなこと気にしてないって言ってるでしょ!?」

「拗ねてるとか自責の念を抱いているとかは言ったが、気にしてるとは言ってないぞ?」

「揚げ足をとるなっ、東郷中佐っ!」

 

 満潮と東郷にはかなりの身長差があるため、必然的に満潮は東郷を上目遣いに睨むことになる。その仕草を見て東郷はどこか愛おしさを覚えつつもその笑みを隠した。

 

「まだ問題の海域まではかなりの時間がある。それまでにはいつもの調子に戻しておけよ」

「なにそれ意味わかんない! 今私がいつもの調子じゃないみたいじゃないの!」

「いつもの調子じゃないだろう。いつもの調子なら、俺が声をかけるまで俺の接近に気が付かないはずがない」

「……あーもーっ! うるさいうるさいうるさいっ! ほっといてよ!」

 

 それに肩を竦めて答えた東郷は踵を返す。

 

「次の哨戒任務は明朝0300時の予定だ。それまでは休んでおけよ」

「了解っ!」

 

 勢いよく答えが帰ってくる。半ばヤケクソらしい。笑いをかみ殺してキャットウォークの出口を過ぎて足を止める。

 

「……それで、覗き見が趣味だとは知らなかったんですけどね、井矢崎少将。あと景鶴」

「いや? なかなか面白いものが見れたなあと思ってね。いいんじゃない? 部下思いで」

「私が部下思いだというなら世の中の大半は聖人君子の集まりになりますよ、少将?」

 

 その言いぐさが面白かったのか井矢崎が笑う。その間にどこか不満そうな顔をした景鶴が東郷に近づいた。

 

「満潮ちゃんにお熱ですか? 提督さん?」

「あんな子に欲情してるように見えるか? 外見年齢で言えば父親と娘ぐらい離れているだろうが」

「ふーん。そーですかそーですか」

 

 どこか膨れた顔をしながらも景鶴は隻眼で東郷を睨む。そして数瞬の間があいて、東郷の脛を蹴りつけた。

 

「でっ!?」

「小っちゃい子撫でてご満悦のロリコン中佐殿の嘘なんて御見通しですよーだ」

「―――――ッ! おーまーえーなー!」

「まぁまぁ駈クン、そこまでにしておこうよ。傍目に見たら景鶴の意見も正しいよ?」

「つまり井矢崎少将からは私が児童性愛者に見えてるってことですか?」

「おや、そこまではいってないよ」

 

 ムッとしたように東郷が眉をひそめると気にもしてないようにケラケラと笑う井矢崎。その顔が、一瞬で引き締められた。

 

「先ほど、深海棲艦由来と思われる電波の存在を確認した。場所は北方棲姫の証言通りだったよ。アリューシャン列島フォックス諸島だ」

「……アクタン島、ですか」

「北方棲姫がアッツ・キスカ方面に飛ばされる前の古巣だそうだね。そこにアリューシャン方面を取り仕切る部隊がある」

 

 それを聞いて東郷は眉をひそめた。

 

「フォックス諸島は南北アメリカ方面隊の管轄域ですね」

「あぁ、これで南北アメリカ方面隊の要求を無視できなくなった。戦艦ネヴァダを旗艦とする向こうの応援部隊が既に出港したらしい」

「それで、どうするのですか?」

「うん? どうもしないよ。北方棲姫の交渉を見届けて、うまくいけばそのまま北方棲姫が相手のトップになってもらって交渉開始。行かなければ強行突破して北方棲姫、ひいては国連に友好的な個体のみを残して殲滅する。それだけだ」

「……どちらが侵略者かわかったものじゃないですね」

「正義を急速に広めようとすれば粛清か強制収容所送りになるのは世の常だよ、駈クン。多種多様な正義を無視して一つの正義を急速に広げるには武力で無理矢理に押し広げるしかない。太古からの歴史を紐解けばそれしかないのがよくわかる」

「そして、その正義を押し付ける先には南北アメリカ方面隊も含まれる、ということですか?」

 

 東郷の声に井矢崎は笑った。

 

「いつも私はそうならないことを切に願っているよ。……だが、善意だけに頼って生き残れるほどこの世界が甘くないことはわかっている。正義の押し付けでもなく、相手の正義の押し付けにも付き合わない。それらをする余裕はない。だから駈クン……景鶴を前線に出すよ」

「景鶴が切り札になり得る、と?」

「まぁね、君が育てた艦だ。十二分だと思ってるんだよ? それに、切り札は切るためにあるんだ。適切な時に、適切な手順でね。切り札を切らずに死にたくはないだろう?」

「しかし」

「提督さんは私のこと信用してないの?」

 

 どこか陰険な光が混じる瞳で景鶴は東郷を睨んだ。一瞬東郷が怯む。

 

「トラックの時だって生き残って見せた。提督さんはそれでも信頼できない?」

 

 それに答えることは東郷にはできない。―――――それをわかって、井矢崎は、景鶴の前でその話題を出してきた。奥歯を噛み締める。

 

「……なんで黙ってるのよ」

「信頼してない訳じゃないさ」

 

 そう言った言葉が腐り落ちていくのを感じる。心からの言葉のはずだが、届かない。

 

「――――そんな甘言を吐くくらいならずっとヴェルちゃんとか満潮ちゃんと駆逐隊でイチャイチャしてればいいのよこのロリコン提督っ!」

 

 そう言ってもう一度脛を蹴って去っていく景鶴。痛みに悶絶していると、どこか笑い声が上から降ってきた。

 

「ごめんごめん、まさかここまで怒らせることになるとは思ってなかったよ」

「……少将」

「そんな恨みがましい目で見られても困る」

 

 声の裏に普段は混じらない色が混じる。井矢崎の顔を、東郷は睨んだ。

 

「それが私のかかわったファーヴニル生化のことなら、感謝してます。ですが私は、貴方を無条件で信じられるほど、純粋ではいられなかった」

 

 井矢崎は東郷の眼を見ても、涼しい顔をしている。

 

「それは僥倖かな。無条件の信頼とは盲信だからね。それで死なれちゃこちらも困る。それで? 駈クンがそこまで怒るようなことを私はしたかな?」

「正義の押し付けでもなく、相手の正義の押し付けにも付き合わないと貴方はおっしゃった。それを可能にするとしたら、交渉、もしくは何らかの取引が必要になります。しかし、コミュニケーションがとれることが最近明らかになったばかりで、相手の文化などの情報がない深海棲艦相手ではどれが切り札かの判別はつかないはずです」

 

 東郷の脳裏を一人の同期が過る。軍人でありながら、外交官としての役割をになう軍事アタッシェ。ネゴシエーターたる北方棲姫と電のサポートを担う同期は、どの交渉材料が有効かすら判別がつかないと言ってなかったか。

 

「切り札は切るためにあり、適切な時に適切な手順で切る。そして貴方はその切り札として景鶴をあげた。艤装のマッチングが完全ではなく、左腕に震えと痛みが残る状態の景鶴を切り札に据えようとしている」

 

 つまり井矢崎莞爾少将の言う切り札は、深海棲艦のための切り札ではない。

 

「少将、貴方が今切ろうとしているカードは、誰に向けてのカードですか? 景鶴が切り札となりうる相手とは、いったい誰ですか?」

 

 東郷の声を聞いて井矢崎は冷ややかに笑った。そして答えない。

 

「貴方は帝政アメリカともコネクションがある。だからこそ、西部太平洋の指揮官ながら北方海域のアリューシャン方面の指揮を任されました。それはこの作戦に帝政アメリカとの交渉という要素が発生することが予想され、それを優位に進めるために駐在武官時代の能力とコネクションを期待されたからにほかなりません。そして、ファーヴニル生化、六連星(むつらぼし)造船が何をしようとしてきたかを貴方は覚えているはずだ。なにせその暗部を抉りだし、私の目の前でファーヴニル生化を事実上壊滅させたのは貴方だ。そしてその残った勢力をまとめて消し去った……」

「“白夜の鐘”が鳴ることを事前に知っていた、かな? それは否定しないよ。さて、そこから君は今どんな考察を導きだしたのかな?」

「井矢崎少将、貴方は……貴方はアクタンで“白夜の鐘”の再現をしようとしているのではありませんか」

 

 それを聞いても井矢崎はなんの反応も示さなかった。ただ冷ややかな笑みを保持し続けるだけだった。

 

「君の考察はそこまでかい? もしくは、それ以上は話したくもないかな?」

 

 井矢崎はそう言って凍てついた笑みを深める。東郷は答えなかった。

 

「君が信じるかどうかは勝手だけどね、私は日本、ひいては国連の利益になるように行動しているつもりだよ。我々は兵士だ。人間世界を構成する生命、土地、経済、それらすべてを守り、この世界を構成する人々が利潤を最大化するに足るインフラストラクチャーを守る衛兵だ。侵入してくる外敵は深海棲艦であり、それを探知し討伐するための猟犬として、矛として、水上用自律駆動兵装が配備されている。わかるかな? 我々が戦うのは深海棲艦がいるからではない。深海棲艦が人間の使用可能な土地を圧迫し、経済の発展を妨げているからだよ。それを排除する必要があるから我々のような国連海軍が必要になるんだ」

 

 そう言って井矢崎は後ろの壁に背を預け、腕を組んだ。

 

「では私から質問だ。白夜の鐘を再現して、人類は今何を得る? ファーブニルの遺産である景鶴を抹消するとして、その遺産に関わった君を葬るためとして、なぜ今更戦術核を持ちだす必要がある? 約束された勝利の剣(エクスカリバー)となりうる北方棲姫と電ちゃんを犠牲にして、強大な戦力を削ってまで焼き払わねばならない不都合な真実がここに存在するとでも言うのかい? そんなものは存在しない。したがって私が白夜の鐘の再現を目論んでいると勘ぐることは見当違いだね。最も」

 

 君がこの言葉を信じても信じなくても私には関係ないけどさ、と井矢崎は続けた。東郷はきつく拳を作った。

 

「だが、貴方は景鶴を交渉材料に何かを引き出そうとしている。私の元部下に値札をつけ、売りさばこうとしている」

「そうだね、その通りだ」

 

 井矢崎は悪ぶることもなくそういった。なにを当然のことを、と言いたげな表情だ。

 

「感情的にならないほうがいいよ、駈クン。人は様々なものに価値を見出した。それを人は貨幣という共通のバロメーターで比較、運用する――――経済の根源だよね。それは自分以外の人間も例外じゃない。みんな労働が生み出した価値の対価として給料をもらい生きている。生命保険はある一定期間にある個人がが死ぬリスクを換算し、その人がその期間内に生きるか死ぬかを賭けあったのが始まりだ。私達の世界はそうやっていろんなものに値札をつけることで成り立っているんだよ。それには誰だろうが例外はない。景鶴も君も、むろん、私もだ。それには必ずリスクとベネフィットが存在する。そしてリスクがベネフィットより大きければ、切り捨てられる」

「即ち、景鶴がリスクだと?」

「周囲の状況によってはそうなるっていう話さ。そうならないように状況を整えるように全力を尽くしているけどね。それでも、リスクの方が上回る時は……わかるね?」

 

 井矢崎がそう言って東郷との距離を詰める。超至近距離で互いの視線が交錯する。

 

「僕は言ったはずだよ。私は日本、ひいては国連の利益になるように行動しているつもりだ。だから現状私の部下である景鶴を無駄にするつもりはさらさらない。リアリズムの塊であるべき軍に所属する君も、極度にリスクになる対象を切り捨てる覚悟はしておくべきだ。部下思いであることは時に軍人であることを妨げるぞ」

 

 そう口にして井矢崎は少し間を開けた。

 

「―――――軍人たれ、東郷駈国連海軍中佐。君は既に血に塗れた衛兵だ」

「言われなくともわかってますよ、少将」

 

 その答えを聞いて満足そうに笑った井矢崎が東郷の肩を叩いてすり抜ける。

 

「―――――ただし」

 

 東郷は背後の足跡が止まる気配を感じる。

 

 

 

「貴方が値踏みしてるその子の価値はそんなところにないことをお忘れなく。井矢崎少将」

 

 

 

 そう言って東郷は歩き出す。振り向くことはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、正ちゃん外出?」

 

 択捉経済特区内、国連海軍極東方面隊クリリスク基地。正門に向かう小柄な影を見つけて、那珂は声をかけた。

 

「どうもまだ出撃要請は出ないみたいなんで、少し」

 

 小柄な影はそう言うと右手を軽く振った。小ぶりな花束が握られている。

 

「そっか、合田ちゅ……大将のお墓参りかぁ」

「きっと父は以前のように中将って呼んでほしいと思いますよ」

 

 どこか寂しそうにそう言って制帽を目深にかぶる少年、合田正一郎少佐を見て、那珂は目を細めた。

 

「那珂さんは基地内哨戒ですか?」

「もー、那珂ちゃんって呼んでって言ってるでしょー? まぁ、那珂ちゃん今日は艤装のメンテナンスで非番なのでうろついてるだけ。まぁ、基地内1500人のファンのみんなとの交流タイムってところかな?」

「基地内に1500人もいない気がしますけど……」

「正ちゃんは頭も態度も硬いなぁ、リラックス、リラーックス!」

 

 那珂はそう言って抱きついた。黒い防水外套の襟首から白い詰襟が覗いている。その体は想像以上に華奢に感じた。

 

「や、やめてくださいよ……!?」

「へへーん。普段は阿武隈ちゃんがべったりだからこんなことできないしねー」

「そこまでべったりじゃないと思いますけど……それに、僕に遠慮してか、父の殉職した場所に行くときはついて来ないので……」

「もしかして、毎日行ってるの?」

「こういうときじゃないと、行けませんから」

 

 そう言った彼の目線が下がる。それを見て那珂はばれないように唇を噛んだ。

 

 この子は無理をしている。曇った心を必死に押し隠そうとしている。そしてそれが負担になっている。阿武隈もみんな、それを知っていながらどうすることもできないのだろう。正一郎はそれを父に会いに行くという形で向き合おうとし、阿武隈もそれを応援している。それはきっと正しいし正攻法だ。ただしそれで解決するには時間がかかるのだ。そしてその間ずっと心が曇るのをごまかしていては、疲れ切ってしまう。

 

 一瞬でもその曇った心を晴らさねばいけない。それが解決にならなくても、やらなきゃいけない。

 

 

 

 そしてそれが那珂(アイドル)にはできる。

 

 

 

「ねぇ正ちゃん、一年くらい前にあったときのこと覚えてる?」

 

 声のトーンを上げて声をかける。正一郎は一瞬考え込むような仕草を見せた。

 

「確か、歌を歌ってくれた……」

 

「そうそうそれそれ。あれ実は、合田中将、キミのお父さんが教えてくれたんだよ」

 

 そういって、息を吸った。目を閉じて緩やかなメロディーを思い出す。

 

 

 

明けない夜がないことを 僕らは知っているけれど

暮れない昼がないことも 僕らはすでに知っていて

だれかが歩いた道のりを ただ辿るのは嫌なのに

ひとりでは歩けもしない 自分がたとえいやになっても

 

それでもきっと世界は周り それでもきっと夜は明けて

笑って迎える朝日があると 僕らは今も信じてる

 

夢を追って傷ついて それでも願う愚かな役者

明日をめざし涙流して 今日を笑顔で締めくくろうか

泣いてもいいよ心行くまで でも最後は笑ってね

笑顔で迎える明日があると 僕は信じているから

 

 

 

 そう歌って目を開ける。

 

「キミはすごい人だし、いろいろ責任とか背負っちゃってるけど、無理して背負わなくてもいいんだよ」

「……ありがとうございます。でも、大丈夫です」

「本当に?」

「本当です」

 

 そう言ってそっと那珂の手を解いた。

 

「歌、上手になった気がします」

「そう?? 那珂ちゃんうれしいなぁ」

「また、聞かせてくれますか?」

「もっちろん! 今度ライブやろうと思うから見に来てね!」

「ぜひ」

 

 そう言って笑って正一郎は敬礼をした。那珂も少しラフに答礼。

 

「それでは、また」

「うん、正ちゃんも気をつけて」

「はい、那珂さんも」

「だから那珂ちゃんだってば」

 

 笑って踵を返す正一郎。その手にあるのは、花束にするにはいささか珍しい花だった。

 

「マリーゴールド……?」

 

 なぜか胸騒ぎを覚える那珂だったが、声をかけるか悩むうちに、正一郎は軍の敷地から出ていってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まさか自分が狙われてるとは思ってないみたいね」

「護衛もつけずに毎日父親の殉職地に足を運ぶっていうのは、真面目だけど迂闊だろうねぇ」

「それでも、あの子は国連の人事サーバーを吹き飛ばした子よ。……もしかしたら、死にたいのかしらね」

「だから、わざと一人で毎日同じ時間に同じルートで歩いてるって? まぁ、いいけどさ。護衛がいようといまいと、やることは変わらない、違う?」

「……その通りです。狙撃ポイントに移動します。竹、援護を」

「了解。それじゃ」

 

 

 

「オペレーション・ウォルシンガムを開始―――――合田正一郎少佐を殺害します」

 

 

 




MI組を出すつもりが出したら明らか2話分の文字数を超えそうなのでこんなことに。
那珂ちゃんは久方ぶりの登場ですね、Chapter0-1を改めて読み直してみると面白いかもしれません。

感想・意見・要望はお気軽にどうぞ
次回は……多分MI組かな、多分、メイビー。パハップス……

今年も『啓開の鏑矢』をどうぞよろしくお願いいたします。

それでは次回お会いしましょう。

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