艦隊これくしょんー啓開の鏑矢ー   作:オーバードライヴ/ドクタークレフ

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さて、次の作戦に入る前にすこしだけ。

それでは、抜錨!


SEQUEL003 それをきっと後悔って言うのね

 

 

 

 それで、しれーかんのことを聞きに来たのね。いいわ。話してあげる!

 

 それにしてももの好きよねあなた、わざわざ私達に話聞いてるの? ふーん。

 

 それで何を聞きに来たんだっけ? あぁそうね、最初の航海が終わったころのことだったわね。ゆーちゃんがろーちゃんになって一気に日本に馴染みすぎてビビったころの……え? 聞いてない? あれは傑作だったわ。もともと日本語堪能だったんだけど、日本式の艤装に更新してからタガが外れたのかいきなり底抜けに明るくなっちゃって……たぶんあれが素なんでしょうね。しおいとも仲いいし、ゴーヤとはもうべったり。なんだかんだで煩そうに扱うゴーヤも本気で苛立ってないのが丸わかりで可愛いのなんのって。

 

 まあそんな感じで馴染んでいったんだけど出動要請があまり出なかったのが幸いしたわね。訓練で密に交流できたし、それが大きかったと思うわ。しれーかんもQRSプラグの調整やらなんやらで病院通いが続いてたし、あまり大きく動かせなかったせいだと思うけれど。

 

 しれーかん? 大切な人よ。

 

 私と電の命の恩人見たいな感じだし、私は……異性としても魅力的だと思うわ。でも、もう電がべったりだったから始まる前に終わっちゃったみたいな感じで生殺しだったけど。あれ? 貴方は私達の“出自”知ってるのかしら?――――そう、まぁ義理の妹、言えて妙ねそれ、説明する機会あったら今度からそれ使おうかしら?

 

 しれーかんはきっとだれも頼れない状況にずっといたんだと思う。だから誰かを頼る前に何とかしようってする癖がついてたのよ。だから……そう、誰も頼ろうとしなかった。もちろん私たちを信じてくれていたし、それを疑うつもりはないわ。それでもしれーかんからは何処か孤独の匂いを感じてた。

 

―――――それはそうよね。家族をいっぺんに失って、生き残ったしれーかんは一人、仲良くなかった本家に養子に取られた。その後からはずっと命がけの戦場で生きてきたんだもん。誰かに頼って生きてくようだと、生き残れるはずがないわよね。しれーかんはそうやって生き残ってきた。それを否定する気はないわ。

 

 

 

 それでも、できることなら頼ってほしかった。辛いって言ってほしかった。

 

 

 

 そう言うことはしれーかんにとってはタブーかもしれないわ。それでも話してほしいって願うのは、間違いじゃないと思う。

 

 しれーかんって本当は世界一軍属に向いてない男だと思うのよね。妙に責任感とか強い癖に、その手段で暴力を使うことを是とできない。なのになまじ優秀なものだから、そのストレスをどこにも吐きだせないままずっと戦わなきゃいけなくなっていたわけだから。何人にもこうやって話を聞いてるとみんな言うでしょ? しれーかんがボロボロだったって。それでもしれーかんは諦めてなかったのよね。だから全部背負っちゃった。

 

 何人分もの死を背負って、部下の命を背負って、その上、世界の命運なんてものも背負って。一人で背負いきれるものじゃ到底ないもの。それでも彼は弱音を見せることを嫌ったの。

 

 泣いてもいいってしれーかんが言うのにさ、貴方が泣けないのに、泣こうとしないのにこっちが先になく訳にいかないじゃん。そばにいることしかできないけど、それでしれーかんの力になるなら、そう思ってたわ。

 

 この辺りはきっと電もそうでしょうね。しれーかんのことになると私よりも電の方がお節介だったわね。私から見てもそう見えるんだから相当なものよね? ほんと……電はしれーかんのことになると本当になにも見えなくなっちゃうんだから。恋の暴走特急その1よ、あれは。その2? 候補あげだすときりがないからやめとくわ。まぁ金剛さんあたりは自分で名乗りを上げそうだけど。

 

 

 まぁ、それでもしれーかんと電と私で出かけたあたりからは少しだけ心を開いてくれるようになったかなぁと思うわ。しれーかんはどこか区切りをつけようとしてたのかもしれないし、もしかしたらもうどこか……なんていうべきかしらね、覚悟、というか決心というか……まぁ、気持ちを固めてたんだと思うわ。そうじゃなかったらしれーかんは私達を北陸まで連れて出るなんてことしないだろうし。

 

 その時は嬉しかったわよ? あ、ただの部下としてだけじゃなくて、特別だと思ってくれてるんだって実感できたから。まぁ、しれーかんと外出してただで済むはずないってわかってたし、まぁ実際いろいろあったけど。それでも、それに付き合わせても大丈夫って思ってくれたことは素直に嬉しかった。

 

 

 

 だから、なのかなぁ。とも思うのよね。

 

 

 

 どっか歯車が外れたって気がつくべきだったのに、見なかったふりをしたんじゃないかって、思う。

 

 

 

 今となっては結果論にすぎないし、わかったところで何ができた訳でもないとは思う。それでも、どこかずっと引っかかり続けてるのよ。今でも。それをきっと後悔って言うのね。たぶん。後悔していないといったらウソになっちゃうだろうなって。

 

 

 

 

 

 

 

 あの時もっと良く聞いていれば、しれーかんも電も止められたのかな、なんてさ。

 

 

 

 

 

 

 

 もう言っても仕方ないのにね。

 

 

 

 

 

 

 





艦これのイベント……自分はいろいろ大変です。

E6丙の削りまだ半分いってないです。バケツ80個切りました。バケツ節約しつつじわじわ削ってます。空母おばさんで退避艦が出ると攻めきれずにとかなります。
でも、秋津洲目指してちまちま進めます。まだ、まだ1週間あるもん……!

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次回から本格的に『月刀航暉 怒りの帰省』編に入ります。

それでは、次回お会いしましょう。

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