◇いい歌ライブ気分
「…………ッ!?(訳)なん…だと…ッ!? 来れない…だと…ッ!?」
『ごめん…ッ!ごめんね響…!お父さんがどうしても行くって言って…ッ!』
……………! お、オォウ読者の皆様方…!傷付いてなんか無いぞ!我はグリーン・グr違うッ!!!我は立花響ッ!!無敵なのだッ!
……すまない、少しトチ狂っていた。もう落ち着いた大丈夫だ。
……我は前回、お好み焼きを食べた帰りに未来から『ツヴァイウィング』のライブを見に行こうと誘われ、集合場所である○○駅前に来ている。
そこでSF世界のような都会を暇潰しがてらに眺めていると、未来から『森岡の叔母がケガをしたので来れない』と電話で伝えられたのだ。
「…………。(訳)ムゥ…、家族の事情なら仕方ない…。しかし、それならば何故早くに言ってくれなかったのだ?」
『うん…。ぬいぐるみを身代わりにして隠し通路から出たり、窓から飛び降りて行こうとしたりしたんだけど全部親に阻止されちゃって…』
…と…飛び降り…。
「…………?(訳)…そこまでしてライブに行きたかったのか?」
『当然だよ!!何でこのタイミングでこんな事になるの!?神様ももう少し子供の
「………!?(訳)未来の未来に関わる程か!?」
『ルビをふって響!私の名前がわかんない!』
…そう言って声を荒らげる未来。その言葉には強い無念さがあり、話に混じってピキパシと何かがひび割れる音がする。スマホの悲鳴ではあるまいな…。いや、落ち着いて考えてみればこれは未来が誘ったライブ。行きたいと考えるのは当然の既決か。
…そうだな…。
「…………。(訳)未来よ、お前の気持ちはよくわかった。だから機嫌を治し、我にまかせろ」
『え…?任せろってどうするの?』
「………………。(訳)我にいい考えがある。我のスマホでライブを撮影し、その映像を未来のスマホに送り続けるのだ。森岡まで距離もあろうから車の中で見るも良いし、後で観れるように調整もしておく。いわば自動保存される生中継だ」
『そんな事できるアプリなんて配信されてたっけ?』
「………。(訳)否、今から自分で作る。電車の時間を考慮すればカメラアプリを少しいじって何とかなるだろう」
『作るって…、響ってそんな事できたんだ…』
「………。(訳)できるのだ」
……まぁ、前世から引き継いだ
…高い防御力の、数多い代償の一つというヤツだ。しかし、それは遠き昔の前世の話。今の我はそういう物に縛られていない。グリーン・グランデは、もういない
…ここにいるのは普通の中学生の立花響だ。
…技術はもとより、体の硬さもあくまで前世の我から引き継いだだけにすぎない。
…この世界ではただ平穏に、静かに一般人として一生を終えたい。
……普通に大きくなり、大人になって…。そしていつか伴侶を見つけ一緒に子供を…。
ガ ゴ ォ ン ッ!!! ※頭を拳で打ち付けた音です。
『えっ!? 今すごい音しなかった!?響?響!!』
…………おいちょっとマテ今何を口走ろうとした今!?
…間違いない、精神が引っ張られているッ!精神が身体に引っ張られているッ!!!
…そういえば最近、だんだんとスカートに抵抗がなくなってきた気がする。最初の頃は未来や母上が願おうとも断固絶対拒否してきたはずなのにだ!
※グリーン・グランデがスカートはいてるイメージをしてみてください。
…駄目だ…、想像をしたら吐き気がする…、目眩もだ…、これは必然的だ気分が悪いィ!!
どうしても アーッ な展開しか浮かばな『響ィ!!!』
「………!」
『全くもう…。考え事すると黙っちゃうの響の悪いクセだよ?気をつけてね』
「……………。(訳)お…あぁすまない、ありがとう未来。」
『うん、それじゃあ響監督のライブ生放送。楽しみにしてるからよろしくね』
…最後にそう伝えると満足したのか、未来は電話を切った。
…本当にすまんな未来。未来にはいつも助けてもらってばかりだ。
…では
ただ一人の、大切な視聴者の為にもな…。
―その頃、未来は両親の車の後部座席にいた。
持参してきたまくらを顔にうずめて。
「んんっ~~~!!!」
あぁあああああああああああ~ッ!!!響響響響響響響響響響響響響ィィィイイイイ!!!!!!嬉しい響響響ィ優しい嬉しい嬉しい嬉しいよぉおぉおお響ィエヘヘ私ただ一人の為にあそこまでしてくれる何てえぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!それにしても響がインテリ系だった何て私知らなかったよぉぉおおおおおぉぉぉぉおおおおぉぉ!!!響ノート500071に追記しなくっちゃ!!こんな事になるんだったら去年の響の誕生日の時にメガネをあげるべき!!あげるべきだったよぉおおおおおお!!!!響がメガネをかけて椅子に腰かけて…、ビデオを撮影して鋭い瞳で…「………。(訳)カットだ、なっていないぞ」(キリッ…きゅわああああああああああああああんん格好いい格好いいカッッコ可愛い!かっこよすぎて失神しちゃうよおぉぉおおおおおおおぉおおおおぉおおお!!!!それにしても珍しく黙って佇んじゃうなんて…響なに考えてたんだろ見たかったよぉぉおおおおおぉんもおぉぉぉぉぉおおおおぉぉ!!!頭のナカをぉ頭のナカをぉ見られるメガネがあったら欲しい位だよぉぉおおおお!!!!いいえッ!駄目そんなこと駄目よ!!響はちょっとミステリアスでクールで、それなのに無言で一喜一憂する姿が至高なんだよっ!それが無くなったら響の魅力の1割半分が消えちゃう大切な1割半分が消えちゃう!!!それじゃぁどうしたらいいの!!!!!そうだっ!!未来こんな時は逆に考えればいいんだっ!!『見られちゃってもいいさ』って!そうよ響にそのメガネをあげればいいんだ!!そしたら優しい響はさふぃげない←※さりげない優しさをもっともっともっ―――――――とくれるハズ!!!それどころかもしかしたら「未来…こんな事を考えていたのか…いけない子猫ちゃんだ」っていってきゅれる←※くれるかもおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおぉおおぉおお!!!!
ご主人に撫でられて、テンションMAXになった小型犬の様に内心狂っていた…
◇―――???&???サイド―――◇
「…………。」
とある会場の舞台裏。そこにはコンテナを背に銀色の合羽を目深に被った女性が体育座りになり、何が不安なのか小さくうずくまっていた。
その回りを慌ただしく動くスタッフ達に関わる事なのだろう。時々薄く開けられた瞳が動き、スタッフの後を追う―
「つぅーばさっ♪」
「ひゃっ!?」
が、突然頬に駆け巡る冷たさに驚き飛び上がる。その拍子に合羽のフードがめくれ、特徴的な蒼い髪が露出する。
彼女の名は『風鳴 翼』今まさに響が向かっているライブ会場で歌う『ツヴァイウィング』の『右翼』である。
そんな彼女が冷たくされた頬の方向を向くと、目の前にしてやったりの笑顔を浮かべ、二本のポカリを振り子の様に揺らしている相方の姿が映った。
「そんなに固くなるなって翼、歌う時に声が出なくなっちゃうぞ~?」
「もう…、本番前にいたずらしないでよ『奏』」
「ハハハッワリィワリィ♪ そうむくれんなって」
そして、先程翼に冷えたポカリで冷凍攻撃を行ったおちゃめさんは『天羽 奏』
翼と共に飛ぶ『左翼』であり、もう一人の『ツヴァイウィング』
特徴はスーパー○イヤ人3の如く盛り上がった赤い髪で、翼を引っ張る良き姉貴分だ。
ちなみに、作者からの愛称は「バーロー」理由は声を聴けばよぉーくわかる。
それはさておき、いたずらが成功しひとしきり笑った奏は、いたずらに使ったポカリを翼の傍に置くともう片方のポカリのフタを開け、中身を口に注ぎ喉を潤す。
そんないつも通りの明るさを見せる彼女を見て気が緩んだのか、翼の口から言葉がこぼれる。
「それにしても…、あの人達はなんでこんな事をしたんだろう…『チケットを奪う』だなんて…」
「あぁ、そのことか…」
そう、それこそが翼に元気がなかった理由なのだ。
奏も正直、それをマネージャーの緒川から聞いた時は驚いた。自分達に恨みでもあるのかと怒りたくなるほどに。
なぜなら前の日の夜、突如としてこの町のヤクザというヤクザが動き出し、ツヴァイウィングのチケットを買った人々からそのチケットを買収、脅しなど思い付く限りの方法で根こそぎ奪い取っていったのだ。
幸い死傷者は出ず、チケットを奪われたのもこの地元に住む人達だけで、買ってくれた者達の下へと戻ったらしい。
…そのほとんどが燃えカスだったのだが…。
賠償罪、器物損害などにより大量検挙されたヤクザ達も全員「何であんな事をしたのか覚えてない」と発言、真実は闇の中となった。
その事件自体もこのライブに関わる『大事な事』のために秘匿され、一部の人間以外だれも知らない。
(全く…、あたしの一番嫌いな終わり方だ、タイミングも考えると米国政府あたりの仕業か?)
頭の中で考えを交錯させ眉をひそめる奏。だがその感情を表に出す事はしない。
(顔に出したら不安になってる翼を怖がらせちゃうからな。こういう時にあたしのやることは、いつも一つ…)
そう決めた奏は思いを行動に変え、冷えた翼の両手を包みこみ優しく彼女を鼓舞する。
「なぁーに、心配ない。私達のやる事は変わんないよ翼。相手が誰だろうが何人だろうが、私とアンタ、両翼の歌で魅了してやるだけだ」
「奏…」
「そうだろ?」
「…そうだね…うん、きっとそう…ありがとう奏」
翼の背中を押してやるだけだ。翼の元気が戻ったのを見て、奏は立ち上がる。
するとそこへ、ガタイの良い赤いスーツのマッチョメンが歩いてきた。
「準備は出来たようだな二人とも」
「おぉ~!これはこれは弦十郎の旦那ァ!さっきの見てた?」
「ん? さぁな」
見てたろ~。とジト目で笑う奏と、その後ろに隠れて頬を染める翼。そんな二人の前にいるこの男の名は「風鳴 弦十郎」だ
名前から見て分かる通り風鳴翼の関係者で叔父なのだが、髪は某火竜を思わせる赤い髪をしている。亜種じゃないのは何故だろう。
「それはそうと、客の方は心配するな。今特別配布という形で客を出来るかぎり集めている最中だからな」
「流石は旦那だ!仕事が早い!」
「それでも人の数は予定より大きく下回っている。お前達には予定よりたくさん歌ってもらう事になるぞ!」
「あぁ、ステージの上は任せてくれ!待たされた分大暴れしてやるよ!」
「頼もしい限りだ、では頼むぞ!」
拳を前に出し、気合いを見せつける奏とその気合いに呼応するかの様に頷く翼。
二人の顔を見て気合い十分、心配無用と判断した弦十郎は声援を贈るとその場を離れ、携帯を取りだして技術スタッフに連絡をいれる。
その姿を見送った二人は、ライトが灯され明るくなったステージの方へ振り向く。
「さあ、難しい事は旦那や了子さん達に任せてさ、あたしらはパーっとやろう!」
「…うん!」
小さく、しかししっかりと答えた翼を見て、もう大丈夫だなと安心した奏は彼女の手を取り、来てくれたファン達の待つ舞台へと歩いていく。それと同時に信念を示す口上を口ずさむ。
「アタシとアンタ、両翼揃ったツヴァイウィングなら…」
「どんな壁でも、飛び越えて見せる!」
そして二対の両翼は、お互いの手を強く握ると決意を新たに羽ばたいていく。
戦場の下へ、もう一つの戦場《いくさば》の下へと。
◇―――響サイド―――◇
…ウム、読者の皆様方、我だ。立花響だ。
…今我は、苦心してやっとの事でライブ会場の内部にたどり着いた所だ。
生中継のプログラムを作成しながらライブ会場に向かっていたので電車を乗り過ごしたり、サラリーマンの荒波に呑まれたりして大変キツかった。特に加齢臭が。
…周りが見えなくなる程の凝り性も、ここまで来ると苦労する…。
…余りにも遅れていたのでもう始まっているやも。と思ったのだが、幸運な事に会場側も軽いToLOVEるが起きたらしく、少し公演が遅れていたのだそうだ。
…そう言えば、来る途中でここのスタッフと同じ服を着ていた者達が何か配布していたな。
我は急いでいたので無視したのだが…。
「…………。」ピラッ
「ツヴァイウィング・ライブ公演のチケットですね。ありがとうございまーす。これをどうぞ~」
…未来から貰ったチケットの片方を受け付けのスタッフに手渡すと、半分に切られ帰還したチケットと共に何やらプラスチックで出来た二本の棒を手渡された。何なのだコレは?
…それよりも会場だ。と、とりあえずその棒を小脇に挟み、受け付けの隣にある扉を手で押すと…。
「あっ響さん!」
「…ッ!?(訳)オヴッ!」
…おぉ…あ、危ない…ッ!滑って転んでしまった…!驚きのあまり艦○れの島○の様な声を上げてしまったぞ恥ずかしい(無論無傷です)
…しかし、どこかで聞いた声だった様な…。
…ん?目の前に白い手が。
「おっとごめんなさい、驚かしちゃいましたか?僕ですよ響さん」
「野山悠詞です!」
戦姫防御のグリーン・シンフォニーランキング入り!! いえーい!