機動戦士ガンダムUC F   作:壊れゆく鉄球

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休暇

所属不明のスタークジェガンの試験乱入から数日たった。私の所属する『新型兵器試験部隊』という何のひねりもない名前の部隊はその名のとおり新型兵器(武装だけでなく、MSやOS含む)を実戦で使用、どのような効果をもたらすのか試験するものだ。それは、新型兵器を試験する部隊なのであって、裏を返すと新兵器がなければただの無駄飯ぐらいと揶揄されるのである。

 

まあ何が言いたいのかと言うと、ここ最近暇なのだ。そのため、休暇を申請し、現在は基地を離れ街に訪れている。

 

「街に訪れはしてみたものの…やはり暇だな……。しかし平和なのはいいことか。……やっぱり暇すぎる。何か趣味をつくるべきか?」

 

それは基地の中でもできることならなおいい。無難に料理でもしてみるか?私の柄ではないにしても、所詮は趣味。何をしても許されるはずだ。

 

「『善は急げ』って言うらしいし、材料とか買ってみるか。あ、あとは料理本も買っておかないと」

 

そう言って、デパートに足を向ける。キッチンとかは食堂のを使わせてもらえばいいし、食材は冷蔵庫でも買っておけば保存ができる。

 

 

 

 

「これはここに輸送しておいてくれ。代金は現金で払うからちょっと待ってくれ」

 

食材と冷蔵庫を買い、今は基地に輸送の手続きをしている。確か連邦軍では私物の持ち込みはある程度容認されていたはずなので問題はないはずだ。

 

「はいよ。これで正しいか一応確認してくれ」

 

「おう、きっちりあるな。まいど!」

 

さて…あとはサングラスか。ヘルメットをかぶってないときにあの金ぴかは目に悪いからな。近くにサングラスを売っている店があってよかった。

 

「このサングラスとかいいかもな。……昔テレビでこれと同型のを掛けてたやつを見たことがあるような……?」

 

疑問に思いつつ購入。このグラサンはマジックミラーのようなもので、外側からは一切見えなく、内側ははっきり見えるというものだ。……最近はこーいったやつも販売しているとは知らなかった。

 

「……買いたいやつを買ったがどうしよう……。結局また暇になってしまった」

 

買った材料は後日基地に届くし、サングラスは今掛けている。昼は既にとっているしな。

 

「あ~結局暇だァ~。このまま基地に帰るか?でもあそこですることないしな~非常にn「カコちゃん家にいるんじゃなかったの?」!?」

 

このあとどうするか迷っていたら、1人の女性が絡んできた。しかもかなり酒ぐさい。なんで真昼間に酔っ払いに絡まれなくちゃいけないんだ……。

 

「私は『カコ』とかいう人物ではないぞ。それと離れろ」

 

「え~?ここら辺では珍しい黒髪じゃん~……あれ?カコちゃんにしては大きいような……」

 

この酔っ払いしつこいぞ!?いい加減離れろよ。

 

「それよりも聞いてよ~!キャッツがさっき負けちゃったんだよ~…うぅ……グスッ……」

 

「やけ酒かよこの野郎!」

 

「酔ってないモン……!」

 

完全にめんどくさいなこの人!そう思いつつベンチに座らせる。水を近くの自販機で買って酔っ払いに渡す。

 

「これ飲んで酔いを醒ませ」

 

「だから酔って「飲め」……ハイ」

 

私に諭され、ちびちびとだが水を飲み始める。すると若干だが、顔色は良くなっていった。

 

「う~頭がくらくらする~」

 

「何も考えずに飲もうとするなよ……。『酒は飲んでも呑まれるな』って聞いたことがないのか」

 

「何も言わないで…いろんな言葉が頭に響くから」

 

「はぁ…それよりも『カk{ウゥーー!}なんだ!?」

 

私が『カコ』とかいう人物のことを聞こうとしたら、スピーカーから警報が流れた。

 

《現在、街の西側からジオン残党と思われる武装集団が接近中!安全のため緊急避難場所まで移動してください!繰り返します!――――――》

 

周りがざわついてくる。無理もない。自分の命を奪うかもしれない存在が近づいてきているのだから。

 

「(規模はわからんが楽観視してはいられないか……!)おい酔っ払い、おんぶするから急げ」

 

ここの基地の防衛隊がどの程度の実力なのかは知らんができれば街に侵攻させるなよ?

 

「うぅ…ごめん」

 

「その感じじゃ避難所まで行けないだろ?そこまでは送ってやる。あとは自分でどうにかしろ」

 

「え!?そのあと君はどうすんの!?…うっ頭が……」

 

「私はそのあとは避難誘導の手伝いでもするさ。今の自分にできるのはそんぐらいだからな」

 

せめてジムⅢがあればもうちょいいい仕事ができると思うが…ないものねだりはよしたほうがいい。

酔っぱらいを背負い、歩き始める。周りはまだ混乱している。行くのなら今のうちか……。

 

「落ちないようになしっかりつかまっててくれよ。なるべく早めにあんたを避難所に送ってやる」

 

歩を進め、次第に走り始める。そのころには他の奴らも状況を理解し始めたようで避難所まで走っていく。

 

「もうちょっとゆっくり進んで……吐きそう……」

 

お願いだから吐かないでくれよ?

 

 

 

 

 

走り続け、避難所がようやく見えてきた。片っ端からシェルターを訪れていったが、そこは既に許容限界で扉を閉めてやるのが精いっぱいだった。せめてこの酔っ払いだけでもと思ったが、そんな余裕があるところはなかった。

 

「ようやく見えてきたな。あともうちょっとだ。気をしっかり持て」

 

「……」

 

返事はないが重くはなっていないから死んではいないんだろう。おそらく気絶でもしたのだと思う。

すると、視界の端におろおろしている少女が目に映った。この酔っ払いのことも気になるが…くっ、私は誇りある連邦の軍人だ。今急いでいるからと言って民間人を見過ごすことはできない……!

 

「君ィ!そこで何をしている!今は非常事態宣言がされているんだぞ!早く避難所にいきたまえ!」

 

「あっ、え…えと……知り合いの子と別れちゃったんです!その子は留学生だからこっちの言葉とかあまりしゃべれないんです……」

 

「その子の名前は?」

 

「アナスタシア…ですけど……あなたは?」

 

「カイト・マツムラ、ただの軍人だ」

 

そう言って腕のドッグタグを見せる。すると、突然少女は謝りだした。

 

「すすみません!軍人さんに失礼な行動をとってしまって……」

 

「謝るなよ。君の反応は当然さ。それよりも避難所にいそごう。そのアナスタシアちゃんの特徴も教えてくれ」

 

MSの音が結構近い。かなり近くまで侵攻されているようだ。しかし何が目的でここを襲ったんだ?

 

「アーニャは髪と肌が雪のように白いんです。それと今日は青い服を着てきたんでたぶんすぐにわかると…聞いてますか?」

 

「聞いていたさ。白い髪で青い服を着てたんだろ?そこまで特徴が分かるならすぐに見つかるさ」

 

そうこうしている内に避難所に到着する。さすがはこの街最大の避難所か?まだまだ人が入る。

 

「おい、起きろ酔っ払い。避難所についたぞ」

 

「う…うぅ…あまり揺らさないで……まだ気分がすぐれないんだよ~」

 

「じゃあ君はこの酔っ払いとともに避難しててくれ。君の友人は私が責任もって見つけ出してくるからな。あ、あと君の名前を教えてくれないか?君の名前を出せばアナスタシアちゃんも安心するだろうし」

 

「そ、そうですね……。ホタル……ホタル・シラギクです」

 

「そうか、じゃあホタルちゃん気をつけてな」

 

「カイトさんも気を付けてくださいね……?」

 

「わかっている」

 

おんぶしている酔っ払いを下ろし、立たせる。酔っぱらいはおぼつかない足取りだが、ホタルちゃんに連れられ避難所の中に入っていく。

 

「さて、アナスタシアちゃんとやらを探しに行かなくてはならないんだが……どこから探す?手当たり次第に探してもただいたずらに時間と体力を消費するだけだし……」

 

ずどーーん!

 

遠くで何かが爆発する音がする。うかうかしていると私も爆発に巻き込まれて死ぬぞ。

 

「チッ……さっきホタルちゃんを見つけたあたりを探すしかないか……!」

 

そう考え、先ほどホタルちゃんがいたあたりに行く。ケータイのマップ機能によると、この近くで避難できる場所はさっきのあそこのほかに一か所しかないようだ。人ごみに紛れてはぐれたとすると、そこにたどり着くまでの道にいる可能性がある…か。

 

 

 

 

「おいおい……マジかよ……」

 

違う場所の避難所についたが、その道中にはホタルちゃんの言ってた特徴の子はいなかった。

だが、私が言いたいのはそこではない。私が言いたいのは、この避難所が破壊されていることだった。おそらくだが、先ほどの爆発音がそうだったのだろう。生存者がいるかは絶望的だが探すしかないか。

 

「おーい!生きているやつはいるか!いるなら返事をしてくれ!」

 

破壊された場所から入り叫ぶ。そこは肉の焼けたにおいや血のにおいがする。誰でも生きててくれよ…!

 

「Кто-то?」

 

「だれかいるのか!?」

 

微かだが声が聞こえた。どこだ!?少なくとも1人は生きているんだ……!

 

「Это здесь! 」

 

「そこか!」

 

今度は声とともに何かをたたく音が聞こえた。今度はどこから聞こえるのかはっきり聞こえた。

そこには、周りにコンクリートの塊が落ちていてその奥から音が聞こえてくる。

 

「そーれ!」

 

近くにあった大きいコンクリートを前に動かす。すると、そこにはホタルちゃんの言ってた特徴と一致する子がいた。

 

「君がアナスタシアちゃんかな?」

 

「!?」

 

「おっと!警戒しないでくれ。私はただの連邦の軍人だ。ホタルちゃんから君を探すように頼まれたんだ」

 

「Истинный?……本当…ですか?」

 

ロシア語なまりがある…ロシアあたりからの留学生だったのか。

 

「ああそうだ。足とかにケガはないな?ホタルちゃんのいる避難所まで移動しよう」

 

「わかり…ました」

 

アナスタシアを先に外に出し、念のために他に生存者がいるか確認したがダメだった。外ではいまだに戦闘が続いている。

 

「……戦闘が続いているな。急ごう、ホタルちゃんが待っている」

 

「はい……」

 

ピューン ピューン ピューン

 

「なに!?」

 

どこからかビームの流れ弾が飛んでくる。それを私はアナスタシアを抱くようにして横に避けようとする。

 

「(間に合わない……!)」

 

そう思った時、何かが上からきてビームを防ぐ。恐る恐る目を開くと、そこには『デルタガンダム』がいた。

 

「хороший ……きれいなMS……」

 

「な…なぜデルタガンダムがここにいるんだ……?」

 

そして、デルタガンダムはこちらを向いてコックピットを開く。奇妙な確信があったと言うべきか、やはり中は無人だった。

 

「アナスタシアちゃん、このMSに乗ろう。このタイプのMSに乗ったことがある」

 

「え?は、はい」

 

コックピットに入り、簡易型の補助シートを出す。それとともに予備のヘルメットをかぶる。と言っても、戦闘機パイロットのモノだが。

 

「シートベルトはしたな。身構えてくれよ。結構Gがかかるからな」

 

コックピットを閉め、機体を起動させる。そのまま変形して上空に上がって状況を確認する。

 

「う…ん……!」

 

「大丈夫か?つらいならスピードを落とすぞ」

 

「だ、大丈夫です」

 

アナスタシアの返事を聞きながら計器を見る。ディスプレイには敵のMSの数が示されていた。数は8。内1機がMA。敵はこちらには注意を払っていない。下ろすなら今のうちか。

 

「今から降りるぞ。下からのGに気をつけろ」

 

「はい……!」

 

MS形態に変形し、バーニアを吹かしてゆっくり降りる。出来得る限りGを押さえたつもりだが……大丈夫のようだな。

 

ガシーーン

 

「んッ……!」

 

「これでたぶん大丈夫だ。早く降りてホタルちゃんを安心させるんだ」

 

「はい……!Спасибо……ありがとう…ございました!」

 

コックピットを開けると、そう言って降りていった。後ろからはドライセンが接近している。アナスタシアちゃんは走ってるけど、間に合わない。これは私が守るしかないか……!

ドライセンが3連ガトリングガンを撃ってくるが、それをシールドで防御。私が動けないのをいいことにドライセンはトライブレードも展開してくる。

 

「早く避難してくれよ…!このままではいい的だ」

 

ドライセンの攻撃は止まず、むしろどんどん激しくなっていく。その激しさに耐えられず頭部のロッドアンテナが折れる。

 

「よし、避難完了!やり返す!」

 

アナスタシアちゃんが建物に入っていくのを確認して、フットペダルを踏む。サーベルを抜いたデルタガンダムは、シールドを構えつつ全速力でドライセンに接近する。ドライセンは突然の行動に対応できずに真っ二つにされる。

 

「残り7機。……こちらシャイアン基地に所属するカイト中尉である!状況を知らせろ!」

 

《援軍か?助かる!現在MSを残り3機にまで減らしたが、他にMAがいてそいつに手間取っている!データを送る!》

 

「助かる」

 

受信したデータを見るが……ビグ・ザムのマイナーチェンジ機なのか?もともとのデータベースにあったビグ・ザムのデータを見てそう考える。主な変更点はメガ粒子砲の砲口を減らしたことか。減らしたと言っても、口径がでかくなり、拡散ビームを撃てるように改良されているのだ。他にも機銃を増やして近接防御に力を入れている。

 

「近づく前にハチの巣だなこりゃ。さて、どう接近するか」

 

機体を変形させ、最高速度で移動する。すると、ものの数分で例のMAがいるところまで移動できた。

 

「あれか……。2機のMSがビグ・ザムの下にいて、残る1機が上に乗ってカバーするのか。そりゃあ手こずるな」

 

ロングメガバスターを撃つが案の定Iフィールドによってビームが無効化される。しかも一定距離に近づいたら拡散メガ粒子砲を撃ってきてめんどくさい相手だ。

 

「死角がないな。あったとしても3機のMSによって阻まれるか……」

 

《どうやってあのMAを破壊するんだ!?このままじゃじり貧だぞ!》

 

「せめてあっちのビーム兵器も無効化できれば……。……それだ!聞こえるか守備隊!ビーム攪乱幕を展開できるか!?」

 

《こちらはバズーカの残弾がない!出撃準備しているの機体が他にもあったはずだが……》

 

「なら向こうに攪乱幕弾を装備した部隊を寄越せって言っておけ!」

 

《了解!司令部、聞こえるか!こちら―――――》

 

しかしこの間に何もしないってのも無理な話だ。敵は少しずつだが侵攻しているのだ。民間人の被害をこれ以上増やすわけにはいかない。

 

「……カイト中尉、突貫する!」

 

しょうがない。この機体のビームコーティングに期待させてもらう!

 

ペダルを踏み、機体を加速させる。当然、敵は近づけさせまいとして弾幕を張る。それを避けつつ途中でMS形態に変形する。そして、手からダミーバルーンを射出した。それはすぐに破壊されるが、破壊された瞬間に爆発した。機雷を仕込んでいたのだ。MS形態のまま爆煙を突っ切る。ビグ・ザムはすぐに拡散メガ粒子砲を撃って迎撃するが、コックピット部分をシールドで防御しつつ前進する。

いくらビグ・ザムとはいえ所詮は拡散ビーム。ディスプレイにはまったく被害報告が入ってこない。

 

「ビグ・ザムのメガ粒子砲はチャージ時間がある。今撃ったんだから今のうちに接近すれば……!」

 

《中尉殿!援護します!》

 

通信が聞こえ反対側から爆煙が見える。バズーカを持った新たな部隊が来たのだろう。しかし、それでもビグ・ザムをよろけすらさせない。

 

「間合いに入った。これなら!」

 

シールドからビームサーベルを起動させて接近する。下にいたザクⅢがビームサーベルを抜き、デルタガンダムとつばぜり合いになるが、デルタガンダムはさらにスピードを上げてビグ・ザムの脚に叩きつける。

そのままザクⅢを切って爆発させ、脚をやられたビグ・ザムが倒れる。その影響で下にいたもう1機が押しつぶされ、体勢を崩した上のMSが守備隊のMSに撃破された。

 

《このまま終わってたまるか…!宇宙のジオンが活動を再開したのだ。我々がこのまま指をくわえて待っているわけには……!》

 

「キサマらの機体はもう動かせまい。諦めて投降するんだ。裁判を受け、然るべき罰を受けるんだ」

 

《我らここが朽ち果てようとも……同志が志を継いでくれるはずだ。後は頼んだ、ジーク・ジオ{グシャアア}》

 

ヤツらの言葉が言い終わる前にコックピット部分をシールドで突きさす。どーせ自爆でもしようとしたんだろう。

 

「それに、関係のない市民を巻き込んだ連中に大義などありはせんよ……」

 

この胸のイライラを抱えたまま、私の休暇が終わったのだった。

 

 

つづく




日刊ランキング1位ありがとうございます!
しかし……お気に入り数が最後に見てから2倍に増えていたときは「これ自分のアカウントだっけ?」と思いましたね。

今回オリジナル機体を出したので、その解説をします。

MA-08-2
ビグ・ザム改

頭高長:59,6m
出力:140,000kw
本体重量:896,3t
全備重量:2103,2t
推力:580,000㎏
センサー:162,000m
装甲:超硬スチール合金+一部ガンダリウム合金
武装:大型メガ粒子砲
メガ粒子砲×13
機銃×13

ビグ・ザムをU.C.94の技術で改修した機体。姿はより円盤のようになった。
メガ粒子砲を半分に減らし、代わりに機銃を設置することでビームコーティングした機体に対応している。
メガ粒子砲は口径を出かくして拡散ビームを撃てるように改良されている。
地上で運用することを前提しているため脚部クローを廃止、地盤をしっかり『掴む』ことができるようにしている。
原型機に問題があった排熱は解決し、Iフィールドの出力も安定している。
上空からの爆撃を考慮してガンダリウム合金に変更されているが、MSを上下に配置することで資格を補っているようだ。

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