機動戦士ガンダムUC F   作:壊れゆく鉄球

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釈放~そして連邦へ~

連邦につかまってから何ヶ月経っただろうか。地球に降ろされ、最低でも1ヶ月は経ったはずだ。だが、そこから先は数える気にならなかった。ヘタしたら1年経っているかもしれない。

 

捕まった後のことを簡単に言うと、形だけの裁判を受け、拘置所に連れていかれた。裁判の結果は言わずもがな死刑で、生きていられるのは死刑の執行待ちと言ったところだ。

 

拘置所での生活は最悪だった。メシはまずく、ベットは固い。おまけに拘置所にいる兵にド突かれたり聞こえるように陰口を言われるのだ。唯一よかったのは個室だったってところか。ほかにも誰かいたら俺は発狂していた。

 

そんな俺に転機が訪れた。なぜか、いきなり釈放されたのだ。……これには語弊があるかもしれないが、ともかく拘置所から出られたのだ。出た先には、連邦のヤツらがいて、今護送車に乗せられどこかに移送されている。……釈放だよね?

 

「今どこに向かってんです?」

 

「………」

 

さっきからこんな調子だ。聞いても答えないのはどうかと思うね。時間を聞いても答えてくれない。

 

 

 

何時間経っただろうか……。いくら護送車と言っても、外の音はある程度聞こえる。すると、外からシャッターが動く音が聞こえてきた。それに合わせて護送車も止まり、また動き出す。

 

嫌な予感がする。なんかの実験のサンプルに使われるのかも。そんな考えが俺の頭の中を駆け巡る。

 

「おら、出ろ」

 

そう言って、護送車の扉が開く。目を少しだけ動かしてまわりを見る。降ろされた場所はどこかの施設の中のようだ。

 

連邦兵が俺の周りを囲っている。しばらくすると、黒服が動き出した。こいつらについて行け、ということなのか。

 

少し歩いて、ある扉の前に立つ。その扉が開くと、そこには初老の男性がいた。

 

「やあ、初めましてだな。私はこの基地の司令を務めているマイケル大佐だ」

 

「……小官はカイト・マツムラ少尉であります」

 

名乗ってきたのでこちらも名乗ったが……こいつはなんか危険な気がする。温和な笑みを浮かべてはいるがその内側は何を考えているのかまったくわからない。

 

「君たちは下がっていい。……それで君をあの拘置所から出したのはちょっとしたお願いがあったのでね」

 

兵が引くのを確認したマイケル大佐は何かを言ってくる。俺のカンはそれ危険な誘いだと言っている。それ以上に俺の命にかかわりそうな気がする。

 

「質問よろしいでしょうか」

 

「構わんよ」

 

「なぜ、自分が選ばれたのでしょうか。連邦にもそのお願いとやらを実行できるものがいるはずです」

 

「いい質問だ。その答えは……恥ずかしいことながら優秀な人材は先の戦争で消えてしまってね。生き残ったのもほとんどが宇宙の残党狩りに出ているうえに外郭部隊のロンド・ベルにいるときた。そうなってしまっては手が出せないんだ。そんな時に君が来た」

 

あっ……コックピットからデータを吸い出したということか。

 

「君の乗っていたバウのデータを見させてもらったよ。なかなかいい腕だ、そう思っていろんな機関に圧力をかけさせてもらった。だから君はここにいる」

 

あ…もうこれは逃げられないな。大佐殿のお願いを聞くしかなさそうだ。

 

「もちろんただではないさ。一度連邦に属してもらうことになるが、ある程度の自由がある。給料もしっかりもらえる」

 

「……では、そのお願いとやらは?それを聞かされなくては判断のしようもありません」

 

「おお、そうだったね。それは……新型のオプション装備のテストだ。ここから先おそらくは大きな戦争はない。そうすると新規にMSを造ったりする資金が削られる。だから、そういったものがなくなったら君は連邦から離れてもいい。ある程度の監視を受ける羽目になるがね」

 

確かにこの後シャア総帥のようなカリスマ性を持った人が決起する可能性は低いだろう。それに加えて決起するほどの資金もないはずだ。噂ではあったがシャア総帥が決起するからアナハイムもかなりの低額でMSを配給してたらしいし。

オプション装備のテストか……。それなら早めに終わるかな……?そのあとはサイド6とかに行けばいい。

 

「わかりました。お引き受けします」

 

「うむ。その返事が聞けて助かったよ。試験は明日からだ。今日はしっかり休んでくれたまえ」

 

 

 

そして1日経った。渡された地図を見て食堂とかに寄ったが、連邦はいつもこんなうまいの食っていたのか!?さすが地球だ。やることが違うぜ。それよりも司令室に向かわなくては。

 

「さて、これからの君のことなんだが……階級は中尉に昇格してもらった。任務は昨日言ったとおり試作兵器のテストだ。で、早速だが任務だ。ジェガンのマイナーチェンジのオプション装備をテストしてもらう。それに合わせて試作OSもテストしてもらう。頼んだぞ」

 

「はっ!」

 

MSのテストか……。これは逃げるチャンスか!

 

「言い忘れていたが、機密保持の意味を含めて遠隔操作式の自爆装置もあるからな」

 

知ってました。だが試作OSってなんだ?新しいMSでも造んのか?

 

「第3格納庫だ。地図は持っているな?1020に試験開始だ」

 

「了解しました」

 

 

 

連邦のパイロットスーツに着替えて格納庫に着き、扉を開ける。しかし連邦のパイロットスーツって性能いいんだな。今まで俺が着ていたものよりぴったりだしそこまで息苦しくない。

 

「ここか……。連邦の機体に乗ることになるとはな……。あれが俺の乗るジェガンか……マイナーチェンジって聞いたが……なるほど確かに肩とかの形状が違うな」

 

肩とかにオプションパーツをつけられるのか…。

 

「おい、聞きたいことがあるんだが」

 

ジェガンに乗り、渡されたマニュアル通りに設定するが……この操縦桿はなんだ!?アーム・レイカー式じゃない!?

 

「あ~これは新型の94式コックピットですね。先の大戦でアーム・レイカー式の弱点があらわになったのでそれを改良したものと聞いています。操作性も向上しているはずですよ」

 

「そうか……」

 

このコックピットのテストもするのか……。まずはノーマルの状態でテストでそのあとにオプション装備か。

 

「武装は以前のジェガンと同じです。準備いいですか?」

 

「ああ……構わん」

 

「お~い!シャッター開け!中尉殿がテストに出るぞ!」

 

そう指示を出して離れていく。しばらくすると、機体の固定具も外れていった。それを確認すると、ジェガンを歩かせ外に出る。

 

「操作性は確かに上がっているな。俺の動きたいように動いてくれる……!」

 

《中尉、操作性のほうはどうですか?》

 

「素晴らしいな。今までとは全く違う」

 

《そうですか。ではスラスターなどで移動してみてください》

 

「了解」

 

スラスターを吹かしてホバーの真似事でもしてみる。意識していなかったがMS形態のバウより早いのか。マイナーチェンジに合わせて推力も強化されているのか。それに加えてシールドのビームコーティングも強化されているらしい。ガザCのハイパーナックルに耐えられるくらいには。

 

《必要なデータは取れました。一度戻ってオプション装備に換装してください》

 

「了解した」

 

 

 

 

「オプション付けるとこうなるのか」

 

「ええ。一部一部に追加装甲を付けるんですよ。バックパックも換装するんで追加装甲の重量を相殺するだけでなく機動力も上がりますよ」

 

「そうか。でもこっちのオプションはなんだ?」

 

いくつかあるうちの1つの装備を指さす。試験したらそのまま極秘扱いされるようだが……。

 

「あ~これは……極秘部隊専用だと聞いております。サバイバビリティを上げるためにバイザーやコックピット周りに追加装甲を施すようですね」

 

「狙撃用のバイザーも用意されているのか」

 

「中尉、換装が終わりました。試験がもうすぐ始まります。搭乗を」

 

「わかった」

 

名称は確か…『RGM―89S スタークジェガン』だったか。こいつのテスト内容は専用バズーカとミサイルの照準だったか?

 

《中尉、よろしいですか?》

 

「問題ない。出るぞ」

 

肩にミサイル、右手に専用バズーカ。いろいろありすぎだな。総合強化型としてはいいかもしれないが。

 

《中尉、テストを開始します。的に向かってミサイルランチャーを発射した後パージしてください。そのあとは適当に動いてシステムが機能しているかをテストします》

 

「了解した」

 

的に向かってミサイルを撃ち、素早くパージする。ミサイルは所詮模擬弾のため基地に被害を出すことはまずない。

 

「素早いな。これは……《中尉、司令から連絡が》……繋げてくれ」

 

《カイト中尉、先ほどこの基地から10㎞離れたところにMSを不法所持している武装集団を見つけた。これを鎮圧してきたまえ》

 

「……了解しました」

 

どうかジオンの部隊でありませんように。ジオンの人だったら迂闊に動かないと思うけどね。とりあえず整備主任に指示を出す。

 

「聞こえるか?スタークジェガンのすべての武装とベースジャバーを用意してくれ。今すぐにだ」

 

《了解です中尉》

 

格納庫に戻り、武装を装備させる。今度はEパック換装できるように改造されたビームライフルも装備させる。

 

《中尉、ベースジャバーの準備が整いました》

 

「了解した」

 

ビームサーベルを使えるように再設定しながらベースジャバーに乗る。

 

《中尉、今回の実戦で『ナイトロ』というシステムのテストもさせてもらいます》

 

「『ナイトロ』?なんだそれは」

 

《渡された資料によりますとオールドタイプでもニュータイプのように動けるようにするシステムと書かれておりますが……》

 

「そんなもんもテストされるのかよ{ボソッ}」

 

《?》

 

「何でもない。スタークジェガン、出るぞ」

 

その掛け声とともにディスプレイに『n_i_t_r_o』という文字が現れる。

 

「ちっ……」

 

 

 

 

数十分の飛行末やっと武装集団を見つけた。向こうもこちらを視認したようで弾幕を張ってくる。

 

「さて、ベースジャバーは上空で待機してもらって、俺は行くとするか!…ん?」

 

ベースジャバーから飛び降り、スラスターを吹かしながら降下する。一瞬モニターに青い炎を見たので確認するが、ディスプレイに異常はどこにも見当たらない。……気のせいか?

 

「じゃあこっちも始めさせてもらうか!……!?」

 

ミサイルやバズーカを撃った途端に頭の中にいろんな情報が入ってきた。以前ファンネルを使った時にもいろんな情報が入ってきたが、これはそれ以上の量だ……!

 

「……はっ!後ろ!」

 

後ろにいたジムⅡのビームサーベルを避け、バズーカを撃つ。それを相手は避けられるはずもなくバックパックに当たり爆散。

残りは5機か。機種は連邦だけでなくジオンのヤツもいる。ジオンは連邦の機体をあまり使わないからこいつらはホントにテロリストかもしれない。

 

そう考えていたら、1機がサーベルを構えて突っ込み、ほかの機体がそれを援護するように下がりながらビームを撃ってくる。

 

「バズーカは弾切れか……」

 

そう言い、バズーカを捨てて左腕のボックスからビームサーベルを取りだしてつばぜり合いになる。

 

「その程度の腕で私の相手になると思うな!」

 

サーベルを相手のグリップまで下げ、破壊しながら切りはらう。爆発し、その間にビームラフルを腰から取り出す。

 

「敵の位置は把握している。そこ!」

 

フルスロットルで機体を動かし、1機をビームで打ち抜きながらもう1機をサーベルで突きさす。その瞬間、1機のマラサイがサーベルを構えてくる。

 

「へぇ…キサマが一番できるヤツか!!」

 

つばぜり合いになるが、それは一瞬だけで、マラサイは手から煙幕を放ち、下がる。そして、ビームが肩に命中した。威力が低かったのか、貫通まではしなく、追加装甲を破っただけであった。だが、撃破されたことを演出するために右腕のボックスのグレネードを地面に向けて撃つ。

 

「チッ……スナイパーもいるのか」

 

煙が晴れる前にバーニアを吹かす。ヤルのは私を狙ったスナイパーだ。私を墜としたと勘違いをしていたため、動きが一瞬止まる。その隙にビームをありったけ撃ちこむ。

すると、マラサイがいつの間にか接近していて、ビームライフルを切り裂いた。

 

「たかがビームライフル!」

 

そう言って左手にもサーベルを持たせつつ切りかかる。それをマラサイはたやすく受け止める。

 

「ならこっちはどうだ!」

 

左のサーベルで突くが、それをマラサイは後ろに下がることで避ける。そのまま、ビームライフルで牽制しながら後ろに下がっていく。

 

「逃がすかよッ!!」

 

こっちもバーニアを吹かして追いかける。ところどころビームが当たるがそれは許容の範囲内だ。それよりも私をもっと楽しませてくれ!

 

《もう……終わりだ》

 

相手から通信が入ったと思ったら、ミサイルが飛んできた。ミサイルをバルカンで掃射しながらマラサイに突っ込む。

 

「そうだぜ。これで……終わりだ!」

 

サーベルを交差させるが、マラサイは切っ先をうまく使いスタークジェガンの両腕を上に切りはらわれる。

 

「やばい……!」

 

しかし、マラサイはスタークジェガンを切らずに抱き着いてきた。

 

「こいつ……何をする気だ!?」

 

モニターはマラサイのコックピットからパイロットが降りる様子をとらえる。

 

「まさか自爆する気か!?」

 

すぐさまビームサーベルでマラサイの両肩を切り裂いて蹴り飛ばす。その瞬間にマラサイは爆発した。

 

「ちっ……。逃げたやつがどこにいるかはわからないか……。任務完了した。これより帰投する」

 

 

 

 

 

 

 

 

《司令、『ナイトロ』の運用データが取れました》

 

「そうか。それはロック大佐に提出し、ジェガンからナイトロを削除しろ。あとパイロットはどうだ」

 

《『ナイトロ』の使用前より気性が荒くなり、記憶の一部を失ったようです。運用に問題ありません》

 

「念のためにオーガスタで調整してもらえ」

 

《はっ》

 

通信が終わり、音が聞こえなくなる。

 

「これで『UC計画』からビスト財団を排除するための駒が一つできたな」

 

 

つづく




ナイトロの出番はこれだけです。強化人間にする口実がほしかったんです。(泣)

あとマラサイのパイロットは長年の潜伏生活で牙が抜けちゃったんです。たぶん生きてる。

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