機動戦士ガンダムUC F   作:壊れゆく鉄球

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追撃戦

買い出しから3日ぐらいたち、これで当分潜伏できると思ったのもつかの間、連邦のパトロール艦隊に見つかってしまった。……って連邦って暗礁宙域まで出張るほどやる気あったっけ。絶対ここ張ってただろ。

 

《カイト少尉、気を付けてくれよ。この機体はあと一回戦えるかどうかってレベルだ。機付長としてはこの状態では出したくないんだが…いまが正念場なんだ。準備はいいか?》

 

「……ヤバくなったらすぐに戻ってきますからね。ヤクト・ドーガ、カイト・マツムラ、行きます!」

 

フットペダルを踏み機体を加速させる。外では既に戦闘が始まっているようで、爆発の光がいたるところに見える。

 

「さて……この機体でどこまでできるか……」

 

ちなみにだが、この機体は以前とはカラーリングが違っており、赤い部分を金色に塗り替えている。そのおかげか(せいで)敵がわんさか寄ってくるようになった。(スポッターさん曰く「新式のビームコーティングだ」とのこと)その結果、機体に無茶をかけすぎてこのようになってしまったのだが。

 

「よし、敵がこっちに集まってきている。いいな?ひよっこども。先に言った通り足が止まったヤツを狙うんだ」

 

《了解です少尉!》

 

まあ悪いことばかりではない。この機体を使うことに加え、ギラ・ドーガの一個小隊の指揮権ももらっているのだ。といっても、1ヶ月前の戦争の時の予備パイロットだったヤツらだが。……あれ?これって体のいい厄介払いじゃ……。

 

「ファンネル!」

 

ファンネルを展開をしてジェガンに攻撃を仕掛けるが、本隊と戦うことを想定していたのか技量が高く、ファンネルを避ける。しかし、避けた先にはギラ・ドーガがいてハチの巣にされる。それから逃れたやつもいるが、そいつは俺が落とした。

 

「ヤクトⅠより各機、機体の損傷報告」

 

《ヤクトⅡ問題ありません》

 

《ヤクトⅢ損傷なし》

 

《ヤクトⅣシールド破損》

 

「了解した。ヤクトⅣはⅡ、Ⅲの援護にまわれ」

 

《了解!》

 

「母艦を沈めに行く。ついてこい!」

 

『了解!』

 

部下に指示を出し、敵艦に向かってビームを撃ちながら前進する。途中でジェガンの小隊にも会うが、部下を先に行かせ、照明弾を使って目をくらませて撃破した。敵艦の近くにまで移動すると、戦艦の弾幕の前で右往左往する部下と合流した。

 

「各機何やっているんだ!敵艦を沈めろ!」

 

《隊長、敵の弾幕が厚くて接近できません!》

 

「機銃より早く動け!自動だろうが手動だろうがMSのほうが機動力がある。それを忘れるな!」

 

『はっ!』

 

弾幕を避けながら左舷の機銃を破壊し、サーベルを抜いた瞬間、撤退信号が上がった。

 

「なっ……『帰還セヨ』だと~~!?あと少s……!」

 

俺が撤退信号を確認した瞬間、戦艦がメガ粒子砲を発射した。避けられないと判断した俺はシールドで防御をする。

 

「(さすがは新式のビームコーティングだ。なんともないぜ。)連邦の機体が戻ってくる前に撤退するぞ」

 

『了解』

 

ゴキンッ!

 

そう言って振り向いたとき、機体に嫌な音がした。恐る恐るディスプレイを見ると、右腕が肩から折れているではありませんか。

 

「オーノー!なんてこった!機体がここで壊れれちまうのかよ!」

 

素早く折れた右腕を回収し機体の速度を上げる。部下に怪しまれたが問題はない。……たぶん。

 

 

 

 

「貴重なサイコミュ機をここまでするなんてたいしたやつだよまったく」

 

「いえ、本当に申し訳ないです。反省しております」

 

でもさ、戦艦の主砲を受け止めたんだよ?むしろ誇っていいんじゃないかな。……いえ、何でもないです。

 

「……肩が根元から折れているな。とするとカイトにはバウに乗ってもらうか」

 

「バウか…。久しぶりに乗りますね」

 

「だがメンテはしっかりしてるしカイトのこれまでの運用データを反映しているんだ。結構変わると思うぜ?……あ~でもスピードはヤクト・ドーガより下だから気をつけろよ」

 

「了解」

 

ヤクトの隣には、以前俺が乗ってたバウが置いてある。もちろんと言っていいのかわからないが金のカラーリングに変更されている。(……趣味が悪いといってやりたい。)また、武装もギラ・ドーガのビームマシンガンに変更されているが、シールドはそのままだ。

 

 

 

 

2時間ほど時間が経った。依然連邦は俺たちの艦隊をつかず離れずの距離をとっている。観測班によるとまだ連邦には援軍が来ていないらしい。それで先ほどお上の人たちが連邦に援軍が来る前に攻めようということを採決したことを伝えた。しかし、旗艦のレウルーラを逃がしつつ戦うため戦力がかなり減る。そのために援軍が来る前に叩くのだが。

さて、シャワーを浴びてすっきりしたし、メシも食って気力は万全。いつでも行けるぜ!

 

「バウ、カイト行きます!」

 

ペダルを踏むが、いつもより遅い。分離しないとヤクトの感覚でやっていけないな。だが、反応速度はヤクトとあまり変わらない。これは助かるな。

 

「ヤクトⅠより各機、相手は手負いだ。そういった相手にはさっきより気を引き締めてかかれよ」

 

『了解!』

 

《おお、『隊長』をやってるなぁカイト少尉?》

 

「何ですかザミュ大尉、自分は今かなり忙しいんですよ?」

 

《あんまり気負うなよ?お前はいいセンスを持っているんだからよ》

 

「…ありがとうございます」

 

《ま、無駄話はこんぐらいにしとくか。ちゃんと帰って来いよ》

 

「少なくとも部下は帰しますよ」

 

《バーカ、お前も帰ってこなくちゃ意味がないんだよ》

 

そう言ってザミュ大尉は離れていく。確か大尉はテルス少尉とともに遊撃だったな。

目線を戻すと、段々と大きくなっていく戦艦とMSが見える。

 

「各機、対MS戦闘だ。戦艦の主砲にも気をつけろよ。Cフォーム!」

 

『了解(です)』

 

Cフォームとは、俺がミサイルを放って敵機を分断し、1機になったところをギラ・ドーガが攻める。その繰り返しだ。そうすれば効率は多少悪いが新兵だけのこの小隊には確実な戦法だ。

この戦法を何回かやるが、まだ戦艦にたどり着けない。

 

「……機体が多い。連邦め…既に補給を受けていたな……?」

 

おそらくだが自軍のセンサー範囲に入ったときにエンジンとか消してたな?それで熱源探査が効かなかったとかそんな感じか。

 

《すまない。遅れた》

 

「大丈夫ですよ大尉。では申し訳ありませんがここのMSは頼みます」

 

《任せろ!》

 

「大尉がここを抑えてくれる。各機、戦艦を落とすぞ!ついてこい!」

 

『了解!』

 

大尉のドライセンや他隊のMSが俺たちを追いかけるMSを押さえてくれる。早く1隻でも落とさないと……!

チラッと部下を見るが、さっき俺が言ったことをしっかり実践している。

 

ドーーンっ!!

 

《1隻落としましたよ!t》

 

「なに!?」

 

部下が戦艦を落とし、声を掛けようとした瞬間、部下の機体が爆散した。ビームのした方向に目を向けると、そこにはゲタを履いた若干の青みがかかったジェガンがいた。

 

「キサマが部下をやったのかぁ!」

 

《カイト!レウルーラが撤退に成功した、俺たちも引くぞ!》

 

「……大尉、部下を連れて撤退を、自分は殿を務めます」

 

《少尉!》

 

「ザミュ大尉、あなたの機体は損傷しています。それにあの機体のパイロットですよ。だから……!」

 

《……くっ……!ギラ・ドーガの坊主どもついてこい!》

 

《しかし、ザミュ大尉!隊長が……!》

 

《お前らがいるとあいつも撤退できないんだ!いいから撤退するぞ!》

 

《……了解》

 

やっと撤退していったな。これで俺はまわりを気にしないで思う存分戦える。

 

ビームマシンガンを撃ちジェガンをけん制する。ま、射程もないし1発1発の威力も低いから期待は全くしてないからな。

 

ジェガンは余裕でそれを避けて、ビームライフルで応戦する。

 

「こいつ…!」

 

それを幾度か続けるが、埒が明かないと思い、ビームサーベルを抜く。向こうもそう思ったのか、ビームサーベルを抜いてきた。

 

ギィィン!

 

サーベルとサーベルがぶつかり合い、火花が散る。すると、敵から通信が入ってきた。

 

《総帥であるシャアは消えた。なのになぜ戦い続ける!?お前たちもあの光を見ただろ!》

 

「その結果がどうした!連邦政府はますます腐敗しているじゃないか!!」

 

《なっ!?この声はサキと一緒にいた……!》

 

そのことを言うってことはあんたは『ユウ』と呼ばれてたやつか!?

 

《キサマ……!サキを誑かしたのか!》

 

「あいつは関係ない!あん時にたまたま会っただけだ!」

 

ユウのジェガンがシールドを使ってバウを弾き飛ばす。機体を立て直し、仕返しとばかりにシールドのメガ粒子砲を撃ち、シールドのグレネードに当てて破壊した。しかし、そこにジェガンはいなかった。

 

「なっ……!消えただと!?ヤツは…上かァーー!」

 

気づいた時にヤツはビームを撃ってきた。それをシールドで受け止めるが、運が悪く、シールドのメガ粒子砲の銃口に当たった。もう使えないと判断した俺はシールドとビームマシンガンを捨て、左手にもビームサーベルを持たせる。

それに呼応してか、ヤツもビームサーベルを持つ。

 

「ウオオォォ!」

 

《ハァァーーー!!》

 

サーベルとサーベルがぶつかり合う。俺は、左手にあるサーベルで突こうとするが、ユウのジェガンはそれを蹴りあげた。

 

《俺は連邦の軍人だ。サキの友人だろうが容赦しない!》

 

「勝手にそう言ってろ!」

 

一端離れて、腕部のグレネードをすべて撃つ。そして、サーベルを突きの構えにしてバーニアを吹かす。予想通りユウは無傷でいた。そして、ユウはダミーバルーンを放った。

 

「ちっ……!センサーが誤認している!この……うぉぉぉ!」

 

ダミーバルーンをバルカンで掃射するが、それには機雷が仕掛けてあったのか弾丸が当たったものから爆発する。すると、後ろから殺気とともにユウの声が聞こえた。

 

《もらった!》

 

「後ろかッ!」

 

後ろだと気づいた俺は振り向いたが、ユウのほうが行動が早く、右腕を持っていかれる。そのままユウのジェガンは俺を戦艦の残骸に叩きつける。

 

「ぐはっ……!」

 

《こいつで終わりだ!》

 

そう言ってユウのジェガンは腰のグレネードを発射した。俺が避けられるはずもなく全弾命中し、その衝撃で脱出ポッドが作動した。

 

「友軍は近くにいないうえに目の前に敵の機体。終わりだな」

 

《これでお前の負けだ。然るべき場所で然るべき罰を受けてもらう》

 

世界的に見れば俺はただのMSを使ったテロリストだからな。極刑の未来しか見えない。誰かホント助けて……。

 

つづく


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