機動戦士ガンダムUC F   作:壊れゆく鉄球

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ジオン軍残党狩り編
平和になった世界で


アクシズ落としが失敗して1ヶ月ほど経った。その間に俺たちネオ・ジオン軍はテロリストとされ指名手配にされた。総帥は行方不明になり士気はがた落ち、現在は旗艦のレウルーラとともに行動しているが、もうそろそろ決めねばならないと思う。潜伏を続けるか、投降するか、はたまた船を降りて民間人として生きるか。

俺はまだ決めかねている。仲間たちと一緒にいたいという気持ちもあるし、この不安定な状態にいたくないという気持ちもある。

 

「……ふぅ。もうそろそろ決断しなきゃいけないか……」

 

自室から出て、食堂に向かう。国際的な立場が不安定でも食事がとれるのはまだましな方だろう。

 

食堂に着くと、そこにはスポッターさんがいた。

 

「おっ、少尉じゃん。いつもより遅かったけど寝坊か?」

 

ちなみに、あの戦争のときの戦功で階級が少尉に上がった。これで給料も上がったのだが……負けた今となっては金がもらえるのかどうかが疑わしい。予定ではそろそろ給料日なんですが……。

 

「いえ、ちょっとボーっとしてて。それと階級で呼ぶのやめてください。階級同じ人結構いるんですから」

 

「いや~そう呼ぶの少尉だけだからさ~」

 

「知ってます」

 

昨日はB定食にしたから今日はA定食にしようかな。カウンターでA定食を受け取りスポッターさんのところまで行く。

 

「……そろそろこの艦を降りるやつを募集するらしい」

 

「?」

 

ボソッとスポッターさんがそう言ってきた。本当だとしたら……降りろって言ってるのか?たしかにこのチャンスを逃したらもうずっと戦い続けなけることになるかもしれない。すると、放送が流れた。

 

《艦長より達する。1000に補給物資を買いに行く。それと同時に、この艦から降りるものを募集する。その者はシャトルに乗せコロニーで降ろす。この機を逃したら2度と募集することはないと思ってくれ。降りる決意をしたものを攻めるつもりはない。艦長からは以上だ》

 

ほんとにどうする?でも………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、これとあとこれをこんぐらいください。輸送先はえっと……第3スペースポートに。そこで受け取るんで」

 

「あいよ。毎度あり!」

 

(これで最後か……。思ったより早く終わったな。物資を積むのは今日の夜当たりだから……あとは自由に過ごすか)

 

降りることになったのは10人で結局、俺は艦を降りることをしなかった。しかし、補給物資を買いに来たのだから未練があるのかもしれない。

 

アイスを買って、適当な場所を歩いく。すると、ザクとガンダムが切りあっている絵が描かれている場所に出た。そういえばこのコロニーは連邦が秘密裏にガンダムを造っていたな。

 

「よく見ると上手に描けてるな。「グラフィティに興味ある?」!?」

 

いつの間にか後ろに女の子が立っていた。手にペンキの缶を持っていることや先ほどのセリフからこの子が描いたんだろう。

 

「ペンキを使うの。ラクガキじゃないよ」

 

「特に興味はないが、この家の持ち主に許可とってんのか?犯罪だぞ」

 

テロリストの俺が言えたことじゃないけどな。

 

「ここはあたしの家っすよ。だから犯罪じゃないと思うな」

 

「Oh…」

 

見た限りただの1軒家だが、シャッターが掛かっていて昔は商売でもしていたのかもしれない。それかエレカの格納庫か。

 

「まあ、本人の家ならいいんだけどな。で、MSとかが主に描いてあったがそれにも興味あんのか?」

 

「そこまでないけど……デザインにちょっと」

 

「ふ~ん」

 

まあジオンは今も昔もいろんな種類のMSを造っているからな。いろんなデザインの。しかしそのおかげで規格が合わないってスポッターさんが嘆いてたのを聞いたことがある。

 

「あ、そういえば自己紹介してなかったすね。あたしはサキ。サキ・ヨシオカっす」

 

「俺は……カイt…カイ・シデンだ」

 

とっさに偽名を言ったがなんでカイ・シデンにしちゃったんだ!1年戦争の英雄の1人じゃねえか!

俺のバカっ!

 

「へえ、1年戦争の英雄と同じ名前なんだ!」

 

「…まあな。といっても彼と違って俺は日系だがな」

 

「ふ~ん。観光でここに?」

 

「そんなところだな{ぐ~}。うぅ」

 

なぜこんなところで腹の虫が鳴くのだ。初対面の人では恥ずかしいではないか!

 

「ガイドに載ってないようなうまい店教えるっすよ。ついてきて」

 

「おい、手ェ離せ!」

 

そう言ってヨシオカは俺の手をつかんで走り出した。ちなみに、ちゃっかりこの話をしている間にペンキの缶を家の中に入れていた。

 

ヨシオカが連れてきたのは『フィリップズベーカリー』と書かれたパン屋だった。外にはテーブルと椅子があり、外で食べることもできるようだ。中に入ると、少数だが客がいて、うまそうなパンが並んでいる。

 

「おう、いらっしゃい嬢ちゃん!いつものか?」

 

「ええ、いつもので」

 

「待ってな…ってなにぃ!?嬢ちゃんが男を連れてきているだと!?おいユウ!こりゃあ一大事だぜ!」

 

「話を広げないで!案内してるだけだから!」

 

「落ち着け、サキ」

 

「落ち着いてられないっすよ!」

 

パンの値段を見るが、そこら辺のパン屋より安い。ほかにもサンドウィッチなども少し置かれているようだ。

 

「それにカイはなんでパンを見てるんすか!弁解してよ!」

 

「え?あ、ああ。彼女とはたまたま会っただけだ」

 

「なにぃ!?偶然会った男と一緒にいるのか!?」

 

「あ~もうっ!」

 

「冗談だよ嬢ちゃん。ちょっとからかっただけだろ?」

 

「乙女をからかうのはどうかと思うんすけどねェ」

 

「あ、会計お願いします」

 

「マイペース過ぎっすよ!?」

 

うるさい!こちとら腹減って死にそうなんだよ!

 

「はいよ嬢ちゃん。会計はこの兄ちゃんと一緒か?」

 

「一緒じゃなくて「俺が払う」え?」

 

「ここ案内してくれたお礼ね。俺はやられたことはやり返す主義だからな。それがいいことでも、悪いことでもな」

 

それに銀行の俺の口座にしっかり給与が振り込んであったしな。

 

「はっはっは!いいねぇ!気にいったよ!サキもいい男を見つけたじゃねえか!サキの分は俺からのおごりだってことにしてやる!」

 

「いい男って……{カアアア}」

 

ヨシオカの顔が赤くなってる。かわいい。そう思いながら買ったパンを受け取り、テラスのほうに移動する。

 

「さっきフィリップさんが言ったのは忘れて……」

 

「え?あ、ああ」

 

そう返しながらパンをかじる。ほう、確かにうまい。しかも安い。有名になってもおかしくないと思うんだがな。

 

「どうっすか?」

 

「ああ、うまいな」

 

「できた当初はそこまでうまくなかったんすよ。でも、さっきいたユウって人が来てからかな、うまくなったのは」

 

その人がパンを作ってること確定じゃねえか!でもまあそこまで人がいない理由がわかったしいいか。

 

 

 

 

その後も談笑もしたが、時間が迫っていた。

 

「すまんな、ヨシオカ。もうそろそろ時間だ」

 

「今日は楽しかったっすよ。で…その……」

 

「?」

 

「また会えるっすか?」

 

若干赤くしながらヨシオカが言う。やっぱりかわいい。

 

「あ~、それはわかんねえな」

 

「そうっすか……」

 

その目で見るのやめてくれ、俺がいわれもない罪悪感感じちゃうから。

 

「でも、だ。気が向いたらこっちに来るよ」

 

「本当すか!」

 

「気が向いたらな。こっちだってそこまで暇じゃないからな」

 

「でも来るんすよね!約束っすよ!」

 

「ああ、じゃあな!」

 

「もう迷子にならないでね!」

 

「最後にそれ言うな!」

 

いい感じに終わっただろ!確かに道に迷ってスペースポートまで送ってもらったけど!

 

 

 

「すまん、ちょっと遅れた」

 

「問題ありませんよ少尉殿。してもさっきの娘は?まさか彼女!?」

 

「ちげえよ!それよりも物資は積んだか?」

 

「ええ積んでいますからいつでも出れます。それよりもさっきの娘との関係を――――」

 

「さっさと出せ!」

 

パイロットに指示を出して座席に移動する。パイロットは文句を言いつつも仕事をこなす。

座席に座ると、今日の疲れがたまっていたのか、すぐに睡魔に襲われたのだった。

 

 

 

『―――殿!起きてください少尉殿!」

 

「どうしたぁ?もう着いたのか?」

 

パイロットに起こされ、予定ポイントに到着したと思ったが、パイロットの顔が必至だ。何か問題でも起きたのか?

 

「どうした?エンジンにトラブルか?」

 

「いえ、それよりもヤバいっすよ……」

 

そう言ってパイロットは外の風景が映ったモニターを見せる。するとそこには、何機かのMSがいたのだった。

 

「……宙賊か」

 

「のようですね」

 

シャトルにはMSを載せていない。なぜなら、入るスペースもないしばれたら入国審査にも引っかかるからだ。だからあるポイントに行きたかったのだが……。

 

「振り切れるか?」

 

「無理に決まってるじゃないですか」

 

「あそこまではドンくらいかかる?」

 

「あと10分です」

 

「それまで何とか持ちこたえろ。できる限りのスピードでな」

 

「了解!」

 

「じゃあ俺は着替え…うぉっ!」

 

この野郎!俺が着替えるときに加速すんじゃないよ!

着替え終わり、外を見ると、ここは暗礁宙域のようだ。振り切れなくとも相手のスピードは落ちるし何とかなるか?

敵の行動を見る限り、ヤツらはこのシャトルを鹵獲するつもりのようだ。だから積極的に攻撃を仕掛けてこない。まだ距離はあるが、詰められたらヤバいぞ。

 

「少尉殿!もうすぐ着きます!ハッチへ!」

 

「了解した」

 

シャトルがデブリと相対速度を合わせる。そして、俺はボタンを2つ押す。すると、ハッチが開き、目の前のデブリが破裂した。その中から、俺の乗機が現れる。

 

「せー…の!」

 

勢いをつけてヤクト・ドーガまで飛ぶ。すると、チラッとだが敵MSが見えた。

シートに座りコックピットをすぐに閉めて起動する。敵の数は……6か。

 

「シャトルは先にエンドラに帰還しろ。俺はこいつらを片付けてから合流する」

 

《了解です少尉殿。御武運を》

 

「ふっ、武運が必要なのは連邦と戦う時だけだ。行けっ、ファンネル!」

 

デブリがあるせいで敵を視認することはできない。それは敵も同じだが、こっちにはサイコフレームのおかげで敵を感じ取れる。

遠くで爆発の光が見える。それに伴ってそこから離れるMSを確認する。

 

「バカは来る!……そこ!」

 

シールドのメガ粒子砲でもう1機落とす。よく見ると、敵はティターンズの残党のようだ。昔はエリート部隊でも、今となってはただの宙賊。落ちたもんだな。

 

《ファンネル!?敵はニュータイプなのか!?》

 

《敵がいくらニュータイプだろうがこっちは数で勝っているんだ!落ち着いて行動しろ!》

 

《了解!》

 

腐ってもエリート部隊なのか、すぐにファンネルの直撃を避ける。が、それでも武装がやられる。

 

「まだまだ!ファンネル!」

 

さらにファンネルを展開して追撃する。さすがに多方向からのビームは避けられないのか次々とあたり爆散する。

 

《エリオット!このぉ、キサマぁ!》

 

「その程度で!」

 

マラサイがサーベルを抜いて接近してくる。それをシールドで受け止めてメガ粒子砲で破壊する。その後ろにいたハイザック2機をファンネルで撃墜。これであと1機。

 

「どこだ。どこにいる……?」

 

ミノフスキー粒子によってレーダーがまともに使えないため敵の場所を察知できない。しかも破壊したMSからの残留思念もあり見つけることができない。

すると、後ろから殺気を感じるとともにビームが飛んできた。それをシールドで受け止め、メガガトリングガンで応戦する。

 

「なんだ今のMSは……{ピピピピ!}なに!?」

 

背後から警告音が鳴り、振り向く。すると、敵MSがビームサーベルを抜いてきた。とっさにビームサーベルを取り出しつばぜり合いになる。

ディスプレイを見ると、バイアランと表示される。

 

「旧式だが速いな……!」

 

《小僧!よくも仲間を!》

 

「そっちが仕掛けてきたんだろうが!ファンネル!」

 

しかし、バイアランはそれを巧みによける。ガトリングガンを撃つが、ヤツの装甲もガンダリウムなのか効き目が薄い。接近戦しかないか……!

ビームサーベルをもう1本抜き切りかかる。しかし、それもバイアランは受け止める。

 

《子供にしてはかなりの腕前じゃあないか……!》

 

「コンニャロ!」

 

肩のバインダーからミサイルを発射する。離れてよけようとするが、バイアランは避けきれずに左腕を持っていかれる。

 

「これでとどめだ!ファンネル!」

 

そこらへんに漂っているファンネルを呼び戻し掃射する。バイアランは、はじめは避けていたものの、左腕がやられてことによってバランスが崩れたのか次第に当たるようになっていく。

 

《このままで終われるかよぉーー!!》

 

そう叫びながらバイアランは突っ込んでくるが、俺は冷静にサーベルを一閃し、撃破した。

 

―――――ジオンのごみが……!

 

「……。残存敵部隊なし。シャトルと合流する」

 

ギギギ!

 

フレームが悲鳴を上げている。もうそろそろオーバーホールが必要か?

 

 

つづく




詰め込み過ぎたか……!

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