機動戦士ガンダムUC F   作:壊れゆく鉄球

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『機動戦士ガンダムサイドストーリーズ』明日発売記念




《…尉!准尉!起きろ!》

 

「………はっ!」

 

寝てから何分経った?まさか作戦は完了したのか?慌てて時計を見るが、時間はまだ10分も経っていない。

 

《カイト准尉、大丈夫か?》

 

「……スポッター機付長。今戦況はどんな感じで?」

 

《まだ戦闘は終わっていない。でも准尉が乗れる機体が見つかったぞ!》

 

「本当ですか!?」

 

《ああ、ついてきてくれ》

 

スポッターさんについていくと、そこには俺が運んだヤクト・ドーガがあった。もちろん、修理はされている。

 

「スポッター機付長、こいつニュータイプ専用だったはずですよ?」

 

《確かにこいつはサイコミュ搭載機だがビームライフルとかを使うのだったらオールドタイプでもできる。しかもこいつには『サイコフレーム』と呼ばれる材質がコックピット周辺に使われているからニュータイプ適性が低いヤツでも使えるそうだ》

 

「説明書を見る限りほかの材質はガンダリウムだから対弾性もいいのか。しかも分離状態のバウぐらいの機動力がある」

 

渡された資料通りに機体の機動設定をする。武装もバウのものに近い。何とか使えるか……?

 

《しかし准尉のニュータイプとしての能力がわからないからサイコミュの調整ができない。つまりファンネルの細かい動作はできないって考えてくれ》

 

「わかりました。しかしなんでこの機体自分に支給されたんです?」

 

《ほかに准尉に回せる機体がないってのと、この機体を遊ばせておく余裕がないからってよ》

 

「ま、そんなもんですよね。では行きます」

 

《ちゃんと戻って来いよ》

 

「わかってますよ。カイト・マツムラ、ヤクト・ドーガで出ます!……っ!」

 

カタパルトから離れ、フットペダルをいつも通りに踏み込んだら予想以上のGが来た。機種転換の訓練も受けていないのにこの機体を扱うのは無理なんじゃないか?

 

「早く慣れるしかない…か。うぅ……!」

 

しかしこの機体はサイコミュを搭載しているからか不思議だ。いろんな感情を感じ取ってしまう。もちろん、死に際の言葉まで。敵味方問わずだ。

 

「いけ、ファンネル!ジェガンを撃て!」

 

サイコミュの調整ができていないからってファンネルが使えないわけではない。だが、以前使っていたパイロット用に調整されているからか違和感を感じぱなっしだ。

俺が使えるのは頑張って2基だが、立ち止まって集中すればもうちょいいけそうな感じがする。

 

「よし、足が止まった!今!」

 

左手に持ったメガガトリングガンがジェガンをハチの巣にする。これでいけばある程度いけるかもな。

 

《カイト君?その機体は?》

 

「テルス少尉!自分の乗機がすぐには修繕が不可能とのことでこの機体を拝領しました!」

 

《その機体……不思議な感じがする……》

 

「は?」

 

思わず間抜けた声を出したがそれはサイコフレームのことではないだろうか。

 

《いえ、問題ないわ。援護して》

 

「了解!」

 

テルス少尉が敵に切りかかり、その間にファンネルが敵のコックピットを破壊する。敵の思念が聞こえるがすべて無視だ。ヘタしたら飲み込まれてしまう。

 

《テルス、それに准尉、無事だな》

 

「大尉!機体の修理が終わったのですか」

 

《そうだ。しっかし准尉がサイコミュ機になるとは……》

 

「?」

 

《何でもない。連邦に反撃を加えるぞ!》

 

『了解!』

 

―――――ハサウェイ!

 

「!?」

 

いきなり頭の中に()()()()()声に思わず立ち止まってしまう。敵のジェガンがそれを見逃すはずもなくビームサーベルでファンネルを切りながら接近してきた。

 

「うっ!!」

 

《准尉何をしている!》

 

「―――――はっ!なっ!?」

 

切られる。そう思った時に体が勝手に動きジェガンの背後にまわりガトリングガンを掃射した。

 

「サイコミュが俺を引っ張ったのか……?」

 

《准尉、大丈夫か?》

 

「問題ありません。それよりもロンドベルを!」

 

《わかっている!》

 

新たにファンネルを展開しながら移動する。バウよりも敵を察知しやすいため先手をとれるのは大きなメリットだ。この機体を回してくれたのを感謝しなければ。

しかしこの宙域は味方が多すぎる!敵意があふれ過ぎて敵を感知できない。結局は敵を目視しなければいけないのは何かの皮肉か?

 

「まったく…便利なのか不便なのかわからねえな……」

 

《なんか言ったか准尉?》

 

「いえ、何でもないです。なっ!?前方に連邦の戦艦が一隻、アクシズに張り付こうとしています!」

 

データにはない戦艦……アレはロンド・ベルの旗艦か?旗艦が前線に来るとはな。しかしジェガンが多すぎる。いくら新型でもさすがにあの数は対応できない。

遠くから狙撃か?いや、この機体にはそんなものは装備されていない。しいて言うならばファンネルだがあそこまで遠いとそんなことは不可能だ。援軍が到着するのを待つか?しかしそんな悠長なことが許されるほど時間に余裕もない。……このままで攻めるしかないか………!

 

《テルス、准尉。一撃離脱だ。それを繰り返してアレを落とす。俺たちの現状じゃあそれしかない。しかも運がいいことに俺たちの機体には遠隔操作できる兵装がある。それもとびきりのな》

 

それは大尉のロマンとやらで未だに設置されているんではないだろうか。まあ今はそのロマンのおかげで攻略できそうな感じなんだが。

 

《テルス、准尉、ガトリングガンで弾幕を張れよ……いくぞ!》

 

『了解!』

 

ガトリングガンを掃射しながら接近するが、敵艦は弾幕が厚くて接近することができない。代わりにジェガンが攻めてくる。

 

《限界だ。一度離脱するぞ》

 

「……了解」

 

こちらが引くと、一部を除いて艦の護衛にまわった。しかもその一部がかなり厄介だ。なかなか振り切れそうになく、囲むような連携で俺を追い詰めてきている。しかもそのせいでザミュ大尉とテルス少尉とはぐれてしまった。

 

「ちっ!ならこっちから仕掛けるしかないか……!」

 

振り向いてシールドのメガ粒子砲を撃ちまくる。ジェガンはそれをシールドで受け止めてビームラフルで応戦する。しかし、シールドにあるグレネードにあたり爆発。その影響で連携が崩れたのを逃さずに接近しビームサーベルで切る。

 

「まず1機。ファンネル!」

 

最後の2機を惜しまずに展開し1機に攻撃、そして俺はシールドを捨てて二刀流でもう1機のジェガンに接近した。

ジェガンはビームを撃ってくるが、動揺していてなかなか当たらない。そのまま切ることもできたが、確実に仕留めるために背後にまわって切った。

 

―――――次はど……どこから……。い……いつ襲ってくるんだ!?俺は!俺はっ!俺のそばに……!

 

「ハァ……ハァ……ハァ……これで……さ、最後か……」

 

ジェガンを切ったと同時にファンネルは敵を仕留めたようだ。しかし敵艦はアクシズに取り付いてしまった。しかも大尉たちとはぐれたままだ。このまま攻めても俺が落とされるだけだ。

ファンネルは全基消失してしまったしガトリングガンの残弾も心もとないから補給に戻ったほうがいいか。

 

 

 

 

《戻ってくんのが早いよ准尉!》

 

「す、すみません。無駄弾を撃ちすぎてしまいまして……」

 

《言い訳は聞いてない!まあともかくこれで准尉のサイコミュの運用データがとれたし調整ができるか……》

 

「言えた義理じゃないですけど早くしてくださいよ?」

 

《わかっている!調整はすぐ終わるからちょっと待ってろ!》

 

「了解」

 

スポッターさんはタブレットに目を通しながら何かを入力していく。これで俺に最適化しているのだから不思議だ。

 

 

数分ぐらいしたら、調整が終わったのかスポッターさんがコックピットから出ていく。

 

《これで准尉に合わせた調整は終わった。だからと言って弾数は変わったりしないんだ。気をつけろよ》

 

「……了解。カイト・マツムラ、ヤクト・ドーガ行きます!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

 

「っ!?」

 

警告音のしたほうに目を向けたら、アクシズが2つに割れていた。ロンド・ベルが割ったのか!?まさかの作戦失敗か?!

この動揺を感じ取ったのか、ジェガンが切りかかってくる。

 

「ちっ……!邪魔だっ!!」

 

すぐさまサーベルを取り出しジェガンを切り裂く。

そんなことよりもアクシズは落ちるのか?ディスプレイで計算すると、アクシズは地球に落下するコースをとっていた。軽くなって普通は落ちないはずだが……爆破の衝撃が強かったのか?しかし――――

 

「――――アクシズが光っている!?何が起きているんだ……?」

 

《准尉!大丈夫!?》

 

「テルス少尉!ザミュ大尉は!?」

 

俺が考えていたらテルス少尉と合流した。少尉の機体は特に目立つ損傷もなくパイロットの腕を再認識させる。というよりさっきのジェガン部隊俺に集中して攻撃してきたんだけど。

 

《今はエンドラにいる。ともかく一端エンドラに帰投するよ。作戦は成功したし、敵の部隊が新たに来ているし》

 

「了解」

 

すでに一部の小隊単位の部隊が到着しているが、敵に目もくれずアクシズに向かって行った。次々に到着するが、やはりアクシズに向かって行く。

 

「こいつら……何を考えているんだ?」

 

《アクシズを押し返そうとしているの?できるはずもないのに……》

 

ああいった行動には心に来るものもある。しかし、俺は軍人だ。自軍の作戦を否定するような行動はとれない。だが……!

 

「少尉は先にエンドラに戻ってください!自分はアクシズにいる友軍の脱出の支援に行きます!」

 

《准尉!ああもう!》

 

フルスロットルで機体を加速しアクシズに近づく。モニターがアクシズを段々と拡大している。すると、アクシズの先端にジェガンやジムⅢといった連邦の機体が取り付き押し返そうとしていた。よく見ると、ギラ・ドーガまで見える。

 

「ほんとに何やってんだよ……!なぜ命を捨てるような行動ができるんだ!?」

 

《地球g……な……価値……せ!》

 

ちぃ……!摩擦熱か何かのせいで電波が乱れて通信を受け取れねえ!

 

―――――ガンダムの力は……!

 

声が聞こえた。と思ったら、中心にいたガンダムから虹色の光があふれだした。その光は周囲の機体を包み、上へ押し上げる。そして、俺の機体も包んで押し上げる。

 

「暖かい。なんて暖かくて優しい光なんだ。これは……人の心が作り出した…のか?」

 

わからない。何が起きたのかさっぱりわからない。でもこれだけはわかる。これは人の心が作り出したモノ。そして人の可能性を表している。……………柄にもないことを考えるべきじゃないな。めっちゃ恥ずかしい。

 

「おっ。あそこに友軍機発見。大丈夫ですか!」

 

今考えたことを忘れたかのように通信を試みる。

 

《バックパックと足のメインスラスターがやられた。済まないがどっかの艦まで引っ張ってくれないか?》

 

「お安い御用ですよ。しっかりつかまって!」

 

手から撤退信号を打ち出し、両肩をつかんでギラドーガを運ぶ。途中で他隊のギラ・ドーガと合流し、エンドラⅡに帰還した。あの光を見たからかはわからんが、連邦が追撃をしてこなかったのは助かった。

 

 

 

 

あの光は地球を覆い、アクシズを地球の外へ押し出した。そして、総帥は行方不明になった。つまり、ネオ・ジオンは負けたのだ。こうして、俺の第二次ネオジオン戦争は終結を迎えたのだった。

 

 

第1部 完


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