サラブレッド エコーズside
『サラブレッド』の甲板からロト2機が発艦、一定距離まで離れたのちにダミー隕石を纏った。
「ロト、2機とも発艦。ダミー隕石を纏って件のジオン艦に接近。MS隊は現在各々の配置位置で待機中です」
「作戦を確認する。まずロト2機がダミー隕石を纏って敵艦に接近、取り付く。それを確認したジェガンが敵のエンジン、メガ粒子砲の破壊、目標をクリアしたのちロトは脱出、ジェガンはその援護。もし敵機が発艦した場合はそれの対処もだ。OK?」
『OK』
男は作戦を確認しつつもある懸念があった。それは乗り込む人員に限界があるとはいえ、小隊の人数を2人でよかったものかと。相手は強化人間。常人の反射速度を超えて反撃されたら、と。
(いや、俺たちは訓練されているんだ。それに場数も踏んでいる。たかが1人に負けるはずはない。部下を信じて待つのみか……)
エンドラⅡ カイトside
ウィーーン
目の前の扉が開く。カイトの視線の先にはヤスハがいる。目をつぶってはいるが死んでいるわけではないと自らに言いつけ、奥から出てきた医師の姿を見る。
「ああすまないね。呼んでおいて遅れるとは」
「治療してもらってる身なので何も言いませんよ。それに無償ですし。それで話とは?」
「おおそうだった。それでヤスハ…ちゃん?の容体だけどね。腕を骨折、肋骨にヒビが入っていたんだけどね。まあ命にかかわるほどでもないしこの程度なら放置でいいよ。あとは君が無茶な操縦をしなければ、ね」
「ありがとう…ございます。あとは私の聴収が終わり次第引き取りますので」
「いいよいいよ。ゆっくり待つさ。医者としてはダメなんだろうけど誰もケガしなくて暇なんだよ。話し相手がいないってのはね」
「そ、そうですか。ではまた後で」
先生にお辞儀をし、兵士に小銃を向けられながら医務室から出る。出た先にもやはり兵士がいて小銃を突きつけてる。豪華な護衛を伴って独房に向かおうとした瞬間、カイトはほんのちょっとのプレッシャーを感じ取った。
(うっ……。プレッシャー……?いったいどこから……?私に向けて?)
「おら、なに立ち止まっている。いけ」
「ちょっと立ちくらみがしただけだろ?そう気張るなよ」
「……{カチャ}」
「おおこわ」
さすがのカイトも何の装備もなく小銃持ちの相手とは戦いたくはなく、素直に独房に歩いて行った。
ロト エコーズside
エンドラⅡまであと5㎞を切った。ロト内部ではアサルトライフルを装備したエコーズ隊員がセーフティを解除していた。
「残り5㎞。偽装を解除して敵艦に張り付きます」
「
パンッ
バルーンがはじけ、ロトは敵艦に向かって加速、エンドラⅡは主砲を放つ間もなくロトの接近を許した。ロトはビームバーナーで隔壁を焼き切り、カタパルトデッキから侵入した。
「カタパルトデッキから侵入、上陸部隊は艦のコンピューターをハッキングして目標の位置を探れ」
《
『
「GO!GO!GO!」
ロトの後部ハッチから白兵装備をした隊員が次々と降りていく。状況を理解したエンドラⅡの整備兵がブリッジに報告をしようとした瞬間に撃ち殺された。それを目撃した者から逃げ出し、それにつられて逃げ出すものが現れる。
「ブルーリーダーからレッドリーダーへ。『じゃがいもは食べられた』」
《レッドリーダーからブルーリーダーへ。了解した。食中毒を起こす》
数秒後、爆発音とともに艦に衝撃が訪れる。それがさらにエンドラ隊に混乱を呼び起こす。
《グリーン4から各員へ。目標の所在位置を確認した。データを送る》
《確認した。俺と10が向かう。11から16は攪乱を》
『
独房 カイトside
カイトは独房に入った時に艦の異常な揺れを感じ取った。それをカイトは、先ほど感じ取ったプレッシャーが引き起こしたのだと結論付けた。
「おい!今どんな状況だ!?」
「今確認している!ブリッジ、今の振動はなんなんです!?………え!?襲撃!?了解です!直ちに向かいます!」
(襲撃……?このタイミングだと……私を追ってきたととらえるべきか。撃沈せずに侵入してきたのがそれを証明するか……)
「あんたはココから出るなよ?出たくても無理だろうがな!」
「うっせ、さっさと鎮圧して来い」
「わかっている!」
護衛2人が走っていくのを見てカイトは思案していた。通常の連邦軍(もしくは海賊)がここまで鮮やかにジオンの艦に侵入できるのかと。
(さっきのヤツらの反応を見るとかなりの数の兵士が侵入したらしいな。そんなことができる兵器は私が知る限り『ロト』のみ。ロトを扱うことができる部隊はかなり限られてくる。
パンパン ドババババババババババ
カイトが思案していたら、乾いた音が聞こえてきた。それはカイトのいる独房に近づいてきている。
(こっちに来ている。迷いもなくまっすぐにだ。これはもしかするともしかするかもしれないぞ)
そして、扉の向こう側から指示が来た。
「扉の近くにいるなら離れているんだ。扉を爆破して開ける」
「おい、ちょっと待「3、2――――――」ええいままよ」
カウントダウンが聞こえてきたあたりにカイトは諦めて独房の端に跳ぶ。その瞬間、扉が勢いよくカイトのいたところに吹き飛んだ。
「あぶねえなァ。もうちょっと中の人を気遣ってもいいじゃないかな?」
「カイト・マツムラ中尉ですね?」
「無視かよ。だがその質問の答えはイエスだ。それで?私の救出にでも来てくれたのかな?」
「いえ、あなたを―――――始末しに来ました」
カチャ
ライフルを向けられた後のカイトの行動は素早かった。まず作業着を素早く脱いで1人のエコーズ隊員に投げ、それに目を奪われたもう片方の隊員のライフルの向きをで変えつつ裏拳を叩き込む。ふらついたところでナイフを奪い取って首を切り、そのままライフルを奪って作業着を取り払ったばかりのエコーズ隊員に向かって鉛玉をぶち込んだ。
ドババババババ
「うおお!」
「ふぅ……。まず2人。ロトに乗れるのが8人前後だったはずだから最低でもあと6人いるのか。それに外にもMSがいるっぽいし厄介なことになったな」
そう言って作業着を手に取って着ようとして――――断念した。なぜなら、脱ぐために無理やり引きはがしたことに加え、エコーズ隊員がナイフを使って作業着を取り払ったことでボロボロになったからだ。強化人間とはいえ、若干オシャレを気にする年頃。味気ない作業着とはいえボロボロになったものを着ることに抵抗もあるのだ。
着るものはないかと周囲を見るカイト。あるのはボロボロの作業着にエコーズの死体。硬いベットに申し訳程度の毛布。カイトは決断した。―――――エコーズのを奪おうと。
「こんなもでいいか」
偶然、体格が同じのエコーズ隊員のノーマルスーツを奪い着替える。
(ちょいと汗臭いが我慢するしかないか……)
ヘルメットをかぶり、トレードマーク(と思ってる)サングラスを防弾チョッキに掛け、ライフルを手にとったところで思い出す。
「おっと。
エコーズ隊員の死体を独房の中に入れて占める。これで準備良しと思い走り出す。
「ヤスハ、無事でいてくれよ……!」
エンドラⅡ 自室 ザミュside
眠っていたザミュを起こしたのはブリッジからの通信であった。不機嫌さを露わにしていたザミュだが、映っていたのが艦長だったためにすぐに引き締まった顔にする。
「艦長、人が寝ているときに起こすとは何事ですか」
《済まない大尉。しかし事が重大なのだ》
「重大……?」
《そうだ。艦内にエコーズが侵入してきた。狙いはおそらく連行したアイツだろう》
「艦長がおっしゃりたいのはアイツの始末と…?」
ザミュが怒りを少し表に出して聞くが、艦長はそれを受け流して要件を言う。
《そうではない。艦の周りにハチが現れて刺されてしまったんだ。だから少し駆除してもらうとね》
「要件はわかりましたが…侵入された分はどうするつもりで?」
《次の任務で使うはずの海兵隊を使うさ。それに侵入されたのはMSデッキだ。1個小隊を護衛につけよう》
「了解、送る小隊を自分の部屋ではなく医務室にしといてくださいよ?」
《?君がそう言うならそうしよう。オペレーター―――――》
「通信終わり」
そう言って通信を切る。次にザミュがしたのは武器の装備であった。この状況ではパイロットスーツを着る時間がないと判断したためであった。拳銃の残弾を確認し部屋から鏡を出して通路の安全を確認する。
(敵はいないし発砲音が聞こえない……いや、かなり遠くだがするな。こちらに近づく様子はなさそうだが急ぐに越したことはない。行こう)
一瞬、ザミュの脳裏にジェトロの姿が浮かび、すぐに消す。ジェトロは生きている。そう信じて、ザミュは医務室に向かって走り出した。
医務室 カイトside
医務室に入り、先ほどヤスハがいたベッドを見る。しかし、そこには誰もいなく部屋の反対側にある薬品庫から音が聞こえてきた。
「誰だ」
短くそう言い、武器をライフルから拳銃に持ち替え、音をたてないようにして扉の横につく。そして、扉を開けると途端に銃弾が飛び出してきた。
「撃つな、私だ!」
「君は……さっきの?」
「そうだ。格好はこれだが敵じゃない。銃を下ろしてくれセンセー。ヤスハの状態がわからないだろ?」
「……そうだったね。済まなかった。この状況だからね。先手は打てる時に打っておかないと」
同意だがそれで殺されてはたまらない。そう思いながら中に入る。中は薬品庫のため両脇の棚に薬品がかなり多く置いてある。そしてその先には車輪付きのベッドで寝ているヤスハがいた。
「運よくここには誰も来ていないからね。僕もヤスハ君も死なずにすんだよ。それに、海兵隊にザミュ大尉がここを起点にMSデッキに向かうらしいよ?」
「そうか、ならそれに便乗してMSを回収、外にもいるであろう敵機と母艦を壊すとしましょうか」
バンバン! ドババババババ!
その時、銃声が聞こえてきた。しかもその銃声は医務室に近づいてきている。
「先生?」
「わかっているよ。ベッドを盾にしておとなしくしているよ」
「OKそれでいい」
医師の言葉を聞き、カイトは行動に移る。ヤスハを担ぎ、ベッドを倒してその奥にヤスハをゆっくり下ろす。
「ヤスハを頼んだ」
それだけを言い、薬品室を出る。そこでカイトがしたのは鏡を置くことだった。なぜなら、鏡を置くことによって比較的安全に敵の確認ができるからだ。
(見えるのは2人……。さっきのヤツらも2人組だったから2人1組で行動しているのか?だったら好都合。2人なら対処できる。……ん?アレは…)
カイトが鏡を見ていると、鏡で見えているエコーズ隊員は何かを投げた。それは医務室の前でバシュッと音を鳴らしカイトの視界を白で塗りつぶした。
(やはりスモークグレネードか!ということは近づいてナイフで仕留めてくるハズ……!)
カイトの予想通りエコーズは拳銃を使うことをせずナイフを抜き取ってカイトを仕留めようとしていた。
「……」
「想定済みなんだよ!」
そう言って拳銃をエコーズ隊員のヘルメットに押し付け発砲する。1発だけではなく3発撃ち、確実に仕留めに行った。その銃声に反応し、もう1人のエコーズ隊員が拳銃を引き抜こうとしたが、背後から近づいた何者かに首の骨を折られて絶命した。
「やっぱりこっちに来ていたかカイト」
煙が晴れ、カイトが声のした方に顔を向ける。そこにしたり顔の男が立っていた。
「確かあんたは―――――ザミュ大尉…だったか?」
つづく
全部3人称にしてみましたが違和感しかないな。どうしよう……。